原題:Marie Heurtin

2014年/フランス/カラー/94分 配給:スターサンズ、ドマ

2015年12月02日よりDVDリリース 2015年6月6日、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー

(C)2014 - Escazal Films / France 3 Cinema - Rhone-Alpes Cinema

公開初日 2015/06/06

配給会社名 1100/1282

解説


■あなたに伝えたい。言葉の力、世界の輝き、そして生きる喜びのすべてを——。
 ふたつの魂が出会い奇跡を起こした、真実の物語。

19世紀末のフランス・ポアティエ。聴覚障がいをもつ少女たちのための学院を併設する修道院に、生まれつき目も耳も不自由な少女マリーがやってくる。しつけと教育を一切受けずに育ってきたマリーは野生動物のように獰猛で、誰にも心を開かない。不治の病を抱え、近づく死の気配を感じながら日々を過ごす修道女マルグリットは、ひとめ見た時からマリーが放つ強い魂の輝きに導かれ、自らマリーの教育係を申し出る。限られた時間のなかで彼女に「世界」を与えようと、むきだしの魂がぶつかりあう「戦い」と呼ぶべき教育が始まった。ものには名前があること、身だしなみを整えること、食べる時はナイフとフォークを使うこと……何一つ知らないマリーに根気強く向き合うマルグリット。進歩がない日々にマルグリットが限界を感じ始めたある日、ついに奇跡が起きる。言葉の存在を、マリーがついに理解したのだ! 言葉によって他者と心を通わせ、気持ちを相手に伝えることができると知ったマリーは、深い愛情とともに学ぶことの喜びを与えてくれたマルグリットと強い絆で結ばれてゆく。だが、マルグリットの“命の期限”はすでに目前に迫っていた——。

■マリーとマルグリット、ふたりのヒロインが放つ再生と希望の光。

本作は、三重苦で生まれた女性マリー・ウルタン(1885〜1921)と、彼女を教育したシスター、マルグリット、共に実在したふたりの女性による真実の物語。「三重苦の女性と、彼女を支える教育者」といえばヘレン・ケラー(1880〜1968)とサリバン先生の物語が有名であるが、後天的な病気によって視力・聴力・言葉を失いサリバンをはじめ複数の教師から教育を受けたヘレン・ケラーとは異なり、本作のヒロイン・マリーは、生まれつきの三重苦であり、彼女を教育したのは献身的な修道女、マルグリットただ一人であったという。
不治の病を抱えながら、人として生きる喜びと尊厳、そして死をマリーに教えたマルグリット。母のように惜しみなく愛を注ぎ、知識を分かち、命をつなぐ——。彼女が身をもってマリーに示したのは、人としての営みそのものだった。「喪う悲しみ」より多くの「生きる喜び」を与えたマルグリットの遺志を受け継いだマリーが、「いつもあなたを想っている」とマルグリットの魂に語りかけるラストシーンでは、手話がもたらす言葉以上の豊かさ、彼女の笑顔がもたらす希望の光に、誰もが心をうたれるに違いない。

■“奇跡の新人”アリアーナ・リヴォアールの無垢な魅力。
  マリーとマルグリットが過ごした修道院の、つましく清廉な暮し。
 
マリーを演じたのは、自身も聴覚にハンディキャップを抱えるアリアーナ・リヴォアール。彼女は、マリー役をろう者、もしくは盲者の少女に演じてもらおうと考えていた監督のジャン=ピエール・アメリスによって見出され、本作で映画デビューした期待の新星で、前半部分では野性児のようなマリー、言葉を知った後半部分ではいきいきと表情豊かなマリーを、それぞれ見事に演じた。
また、物語の舞台となっているのは、フランス・ポアティエ近郊にあるラルネイ聖母学院で、ここはラルネイ英知会という修道院によって 1835年に創設され、1世紀半を経た今も、耳が不自由な人たちのための施設として現存している。1895年、10歳の時にやってきたマリーは、ゲーム、縫い物や編み物のほか、読み書きも覚え、その後もここにとどまって後輩たちを指導したという。
劇中では、マリーとマルグリットら修道女たちの学院および修道院での生活も垣間見られる。素朴だが清潔な服、自給自足のつましい食生活など、まったく無駄のないシンプルなその暮しぶりは、マルグリットの教えと同様、人として生きることの真の豊かさとは何か? を私たちに語りかけてくれる。

ストーリー



聴覚障がいのある少女たちを教育するラルネイ聖母学院に、ある日、薄汚れたぼろを身に纏い、髪はぼさぼさの女の子が父親に連れられてやってきた。目が見えず、耳も不自由だという彼女は、父親が目を離したすきに園庭を駆け回り、ついには一人で木の上によじ登る。この騒ぎを見た学院長は、「当校は聾唖の娘たちの学校。聾唖で盲目となると私たちの手に負えない」と父娘を帰してしまう。
だが、木に登ったマリーを降ろそうと彼女の手に触れた修道女のマルグリットは、マリーが放つ強い魂の輝きに惹かれ、彼女を学院で預かり教育係になりたいと院長に訴える。手話もできない彼女にどうやって教育するのかと渋る院長を説得し、マルグリットはマリーを学院へと連れてくる。

今日 魂に出会った。小さくもろい魂。驚くべき魂。
囚われた檻の中から魂が輝いていた。

生まれてきてからこれまで、しつけも教育も一切受けていないマリーへの、「戦い」と呼ぶべき教育が始まった。
着席しての食事を嫌い、ナイフとフォークももちろん使えない。野生動物のようにお風呂を嫌がり、新しい服に着替えさせるのも至難の業。4か月が過ぎても、進歩がないばかりか、むしろ後退を感じ焦るマルグリットだったが、徐々に入浴やブラッシングにも慣れ、食事の時にはナイフとフォークが使えるようになり、ブランコで遊ぶこともできるようになっていく。しかし、物には名前があるということがなかなか理解できない。マリーが実家から持参したお気に入りの小さなナイフを握らせ、同僚たちにバカにされながらも、根気強く“ナイフ”の一言を教えようとするマルグリット。

マリーがやってきて8か月目、ついに奇跡が起こる。ふとしたことから、ようやくマリーは、“ナイフ”が“ナイフ”であることを理解したのだ。最初の1語こそ苦労したものの、その後は単語、形容詞、抽象語、文章、文法と、言葉を次々と精力的に会得していくマリー。面会にやってきた両親に自分の名前のスペルを正しく並べ「愛している」と手話で語りかける娘の姿に、父と母は驚き、感激の涙を流した。

素晴らしい進歩。言葉がほとばしる。
最初の1語には苦労したがその後はまるで奇跡のようだ。
死ぬ前にすべてを教えたい。

学ぶことの喜びを知り、日に日に成長するマリーと、母親のように惜しみなく愛情を注ぎ、教育を続けるマルグリット。ふたりの絆はより強いものとなった。もともと体が弱く不治の病をわずらうマルグリットは空気のよい場所での静養を命ぜられるが、医者の反対を押し切ってマリーと共に生きることをあらためて誓う。

彼女は私の喜び。私の魂の娘。私の人生の光だ。
私はマリーに教えられた。
未知の世界に導いてもらった。

しかし、ふたりの別れの時間は刻々と迫っていた——。

スタッフ

監督:ジャン=ピエール・アメリス
製作:ソフィー・ルビル
デニ・カロ
脚本:ジャン=ピエール・アメリス
フィリップ・ブラスバン
撮影:アン・スリオ
美術:フランク・シュワルツ
衣装:ダニエル・コラン=リナール
音楽:ソニア・ビーダー=アセルトン

キャスト

イザベル・カレ
アリアーナ・リボアール
ブリジット・カティヨン
ジル・トレトン
ロール・デュティユル

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