原題:Oh Boy

2013年ドイツ・アカデミー賞 6部門受賞 作品賞・監督賞・脚本賞・主演男優賞・助演男優賞・音楽賞 2013年バイエルン映画賞 男優賞・脚本賞 2012年ミュンヘン映画祭 「新しいドイツ映画 奨励賞」最優秀脚本賞 2013年ヨーロッパ映画賞 作品賞・男優賞・ディスカバリー賞・観客賞ノミネート 2012年ブラティスラヴァ国際映画祭 監督賞 2013年ドイツ映画批評家賞 新人監督賞・音楽賞 2012年オルデンブルク映画祭 作品賞・シーモアカッセル賞(トム・シリング)・観客賞 2012年タリンブラックナイト映画祭 レッドへリング賞・観客賞 2013年ドイツ新人賞 新人監督賞

2012年/ドイツ/カラー/85分 配給:セテラ・インターナショナル

2014年3月1日公開

© 2012 Schiwago Film GmbH, Chromosom Filmproduktion, HR, arte All rights reserved

公開初日 2014/03/01

配給会社名 0117

解説


2013年ドイツ・アカデミー賞主要6冠制覇!
眩しいほどの才能に溢れたドイツの新鋭監督ヤン・オーレ・ゲルスター、
鮮烈なるデビュー作!

 “ドイツ映画界に救世主が現れた!”──2013年、そんなセンセーショナルな言葉がメディアに躍り、眩しいほどに輝く新しい才能の誕生にドイツ中が沸いた。人々を夢中にさせた新鋭監督の名は、ヤン・オーレ・ゲルスター。ドイツ映画テレビ・アカデミーの卒業作品にして初監督作となる『コーヒーをめぐる冒険』が、海外で熱狂的な人気を呼び、30を超える映画祭で数々の賞を受賞したのだ。ドイツ国内でも、大ヒットを記録、ドイツ・アカデミー賞9部門にノミネート、作品賞・監督賞を含む主要6部門を獲得するという快挙を成し遂げた。
 世界のアートを牽引してきたフランスでも、ヌーヴェルヴァーグが生まれた時のようなフレッシュさ、ジム・ジャームッシュのデビュー作を感じさせ、ウディ・アレンのようにチャーミングな映画とまで絶賛された。さらにヨーロッパ映画大賞では、作品賞をはじめ4部門にノミネート、その勢いは止まらない。
 そして2014年春、ヨーロッパに大いなる笑いと、キラリと光る希望を吹きこんだ新しい風が、日本に届く──!

コーヒーを飲みそこねた朝からはじまり、
どこか普通じゃない人たちと出遭う1日
ツイてないけれど、なぜかホッとひと息つける物語
 
 2年前に大学をやめてから、ベルリンでただ“考える”日々を送っているニコ。恋人の部屋でコーヒーを飲みそこねた朝、ツイてない1日が幕を開ける。車の免許は停止になり、銀行のキャッシュカードはATMに吸い込まれ、アパートの上階に住むオヤジに絡まれる。親友マッツェと街に繰り出せば、ダイエットに成功してまるで別人の元同級生ユリカ、クサい芝居の売れっ子俳優等々、ひとクセある人たちが次々に現れる。さらに退学が父親にバレ、ユリカに誘惑され、行く先々でコーヒーにふられ──と災難は続き、逃げ出した夜の街で、ナチス政権下を生き抜いた老人と出遭う。果たして、ツイてない1日の幕切れは──?

 法律を学んでいたが何だかイヤになり、生きる目標を見失って、ただ今・人生・一時停止中のニコ。これは、そんなニコに少し揺さぶりをかける、ある1日の物語。どこか普通じゃない人たちと出遭い、ちょっと奇妙な出来事を通り抜けたことで、喜び、傷つき、戸惑いながらも、次の道へと続く扉が、ぼんやりと見えてくる。誰にでも身に覚えのある、何をすれば良いのか分からない不安な時期と、そこから抜け出す瞬間が、力の抜けたユーモアにアイロニーがピリッときいたタッチで繊細に描かれる。「大丈夫、また歩き出せる」という安堵感と未来への可能性が、ニコと私たちを励ましてくれる──そんな、少し苦いけれど心まで温めてくれる、一杯のコーヒーのような物語が完成した。

シャープなモノクロ映像で迫る、
アートと歴史、過去と現在が溶け合った、
幻想的で美しい本当のベルリン

 ニコを演じるのは、ドイツで高い人気を誇る『素粒子』のトム・シリング。等身大の青年を演じ、ドイツ・アカデミー賞主演男優賞を獲得した。その他、ニコの人生に句読点を与える、ちょっとヘンな人たちを演じるために、総勢20数名の個性豊かなドイツの名優たちが集まった。
 モノクロのシャープな映像で捉えられたベルリンの街も、本作の重要なキャラクター。街のシンボルであるテレビ塔、かつて東西を隔てたフリードリヒ通り駅と壁跡、サブカルチャーの聖地“タヘレス”などが登場する。ベルリンという街は、実はちょっとしたワンダーランド。そこかしこに歴史が生きていて、過去と現在が交錯するのだ。そんな街の真実に迫るために、ナチス政権時代の水晶の夜事件など歴史の事実も盛り込まれている。観光では決して見ることのできないベルリンを体感することが出来るのだ。
 本作では、名作映画へのオマージュを探すのも楽しい。例えばオープニングはジャン=リュック・ゴダールの『勝手にしやがれ』を彷彿とさせ、シナリオにはフランソワ・トリュフォーのエッセンスが散りばめられ、おばあちゃんのシーンに流れる『惑星ソラリス』のサウンドトラックに心癒され、『タクシードライバー』のロバート・デ・ニーロのモノマネにニヤリとさせられる。さらに監督が大好きだというサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」のスピリットも物語に注入されている。ドイツ・アカデミー賞音楽賞を獲得したクールな音楽は、若きミュージシャンによるオリジナルのジャズ。
 今日も、飲めそうで飲めないコーヒーを求めてさまよう──それが人生──なのかもしれない!?

ストーリー

 確かにその日のニコは、朝からツイていなかった。彼女が寝ている間にこっそり帰りたかったのに、目を覚ました彼女から「今夜の予定は?」としつこく聞かれ、ウンザリだって顔をしたら、まとめた荷物と一緒に出て行くハメになってしまう。
 ニコは大事なアポを思い出し、ベルリンの街へ飛び出す。“運転適性診断室”へ行って、飲酒運転で取り上げられた免許証を返してもらうのだ。だけど、面接官はイヤミな男で、同性愛者かとか関係ないことまで聞いてくる。思わずムッとしたら、「情緒不安定で返せない」と言われる。
 フラフラと街を歩き、目についたカフェに入るニコ。ゴタゴタ続きで、まだ朝のコーヒーも飲んでいない。そしたら、何だかスカシた店で、「普通のコーヒー」って言ってるのに、新しい味だの、産地だの、細かくって仕方ない。とどめはバカ高い値段だ。持ち合わせが足りず、まけてくれと頼んだら、「他のホームレスも殺到しちゃう」とバカにされる。
 親からの仕送りを引き出そうと、ATMにキャッシュカードを入れるニコ。ふと脇を見降ろすと、ホームレスの男が眠っている。有り金の小銭全部を男の紙コップに恵んだ直後、カードが吸い込まれていく。紙コップから金を取り返そうとしたら女の子に軽蔑の眼差しで見られ、諦めるしかなかった。
 仕方なく引っ越したばかりのアパートに帰ると、上に住んでいるカールと名乗る男が挨拶に来る。カールは押しつけがましいオヤジで、奥さんの手製のミートボールと酒を掲げて部屋にズカズカと入り、アレコレ詮索する。ところが、子どもの話になると、夫婦関係がうまくいっていないと突然泣き出してしまう。
 何だかなぁ、な気分でいると、友だちのマッツェから誘いが入る。彼は自称俳優だけど、出演作はゼロ。レストランに入りコーヒーを頼むと、今度はマシンが故障中。そこで同級生だったユリカと偶然再会する。肥満児だったユリカはダイエットに成功、別人のようになっていた。ニコに片想いしていたことを告白するが、彼にイジメられたことも覚えていた。
 マッツェが仲のいい俳優の撮影現場を見学に行くが、目ざとく見つけたコーヒーのポットは空っぽ。そのあと、キャッシュカードのことで父親に会いにゴルフ場に駆けつけると、にこやかなやり取りから一転、大説教大会へ。2年前に大学を中退したことを黙っていたのがバレてしまったのだ。ニコは、援助打ち切りを宣言される。
券売機の故障のせいなのに無賃乗車と追いかけられ、チンピラに絡まれ、ユリカの前衛演劇を見せられ、夜の街へ逃げ出すニコ。コーヒーマシンを洗ってしまったバーで、ニコはナチス政権下を生き抜いた老人に話しかけられる。これがツイてない日のクライマックスなのか? 夜は長い。コーヒーは、まだまだ遠い──。

スタッフ

監督:ヤン・オーレ・ゲルスター
脚本:ヤン・オーレ・ゲルスター
製作:マルコス・カンティス
   アレクサンダー・ワドー
コミッショニング・エディター:イェルク・ヒムステッド(HR)
               ビルギット・ケンパ—(ARTE)
撮影:フィリップ・キルスアーマー
音響:マグヌス・プフリューガー
編集:アンニャ・ズィーメンス
美術:ユリアーネ・フリードリヒ
衣装:ユリアーネ・マイヤー
   イルディコ・オコリクサンニ
メイク/ヘア:ダーナ・ビーラー
音楽:ザ・メジャー・マイナーズ
   シェリリン・マクニール

キャスト

ニコ・フィッシャー:トム・シリング
同級生ユリカ:フリデリーケ・ケンプター
友人マッツェ:マルク・ホーゼマン
ガールフレンド:カタリーナ・シュットラー
上階の住人カール:ユストゥス・フォン・ドホナーニ
心理学者:アンドレアス・シュレーダース
クサい芝居の俳優:アルント・クラヴィッター
不良青年リーダー:フレデリック・ラウ
ニコの父:ウルリッヒ・ネーテン
老人フリードリヒ:ミヒャエル・グヴィスデク

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