原題:TERRAFERMA

2011年/イタリア・フランス合作/カラー/93分/ 配給:クレストインターナショナル

2013年4月6日(土)より、岩波ホール他にて全国順次ロードショー

(C)2011 CATTLEYA SRL・BABE FILMS SAS・FRANCE 2 CINEMA

公開初日 2013/04/06

配給会社名 0096

解説


地中海の小さな島で、海の掟に生きる家族と、生きる望みを探し求める人々。
世界の歪みと人間としての良心を描く、現代イタリアの心揺さぶる感動作!

南イタリアのシチリアから遠く離れた地中海に浮かぶリノーサ島。時間が止まったような小さな島も、夏になれば観光客であふれ活気づく。しかし時代が大きく変わりゆく中、漁業が盛んだった島も衰退の一途をたどり、人々の暮らしも大きく変わろうとしていた。
父を海で亡くした20歳のフィリッポも、漁師を続けようとする祖父、観光業に転じた叔父、本土で新生活を始めたいと願う母との間で、この変化に戸惑いを隠せずにいる。
そんなある日、アフリカからの難民、サラとその息子が一縷の望みを求めて、決死の覚悟で海を渡ってきた。海の掟を重んじる祖父は、法を無視して母子を救い、家に迎え入れる。しかし、この人間として尊いはずの行為が、さらなる波紋を呼ぶことになる。この出来事により、家族はそれぞれに自らの人生を見つめることになるが…。
圧政を逃れて海を渡ってきた母子と、先細る生活に不安を抱える一家。両者とも立場も状況も異なるが、不安を抱え、明日が見えない。難民の彼女たちが必死で生きようとする姿に、島の家族が自らの生活も危機に瀕しているにもかかわらず、葛藤しながらどのように応えてゆくのか。青い海と青い空、溢れる太陽の光の中で、人間の持つ本当の勇気、生きようとする力、優しさ、高貴な心を感動的に描いている。

南イタリアの島で生きる人々、その変わりゆく暮らしを鮮烈な映像で語り続け
世界の注目を集める、俊英クリアレーゼ監督が渾身の力で描く傑作!

エマヌエーレ・クリアレーゼ監督は1965年ローマ生まれ。
ニューヨーク大学で映画演出を学び、長篇劇映画第1作「Once We Were Strangers」(97)は、サンダンス映画祭に出品され、高い評価を受けた。イタリアに帰った後、祖父の故郷でもあるシチリアに関心を深め、南イタリアを舞台にした作品を一貫して撮るようになる。
第2作『グラツィアの島』(02)では、ランペドゥーサ島の自然の中で、自由で天衣無縫に生きるひとりの母親を描き、カンヌ国際映画祭批評家週間グランプリを受賞。さらにシャルロット・ゲンズブールを起用し、20世紀初頭のアメリカへの移民を描いた第3作『新世界』(06)では、ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞。本作『海と大陸』では、ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞を受賞し、『新世界』に続いてアカデミー賞外国語映画賞イタリア代表作品にも選ばれ、今やその名声はイタリアのみならず国際的に揺るぎないものになっている。
クリアレーゼ監督は、イタリア・ネオレアリスモの伝統を受け継ぎながらも、テーマの本質に鋭く迫る斬新なイメージ映像を用いて、リアルで象徴的、重厚な作品世界を創りあげてゆく。『海と大陸』は、その彼の力を存分に発揮した傑作である。
また、クリアレーゼ監督作品の出演はこれが3作目となる主演のフィリッポ・プチッロは、9歳の時に監督にランペドゥーサ島で見出された。天性の俳優として監督からも絶大な信頼を置かれており、これからの活躍が期待されている。

ストーリー



地中海に浮かぶリノーサ島。そこに暮らす20 歳のフィリッポ(フィリッポ・プチッロ)は、代々漁師をやってきたプチッロ家の一人息子。父親を2 年前に海で亡くし、今は70歳になる祖父エルネスト(ミンモ・クティッキオ)と共に海に出ている。

衰退の一途を辿る漁業から観光業に転じた叔父のニーノ(ジュゼッペ・フィオレッロ)は、船を廃船にし、老後を楽しむべきだとエルネストを諭すが、エルネストは聞く耳を持たない。また、母ジュリエッタ(ドナテッラ・フィノッキアーロ)は、息子を連れて島を離れ、息子とふたり新たな世界で人生をやり直したいと思っている。フィリッポはそんな中で自分の進む道が見えなくなっていた。

夏になり、島は観光客で溢れ活気づく。一家は家を改装し観光客にレンタルし、自分たちはガレージで生活することにする。貸し出す客はマウラ(マルティーナ・コデカーザ)、ステファノ(ピエルパオロ・スポッロン)、マルコ(フィリッポ・スカラフィア)に決まり、同世代の3 人組との交流に、フィリッポも浮き足立つ。

ある日、いつものように漁に出ていたエルネストとフィリッポは、アフリカからボートに乗ってやってきた数人の難民を助け、その中に居た妊娠中のサラ(ティムニット・T)とその息子をガレージに匿うことになる。その晩、サラはジュリエッタの手によって出産。しかし不法難民である彼女らは一家の生活を脅かす存在であることは紛れもない事実であった。

翌日、エルネストの船は、不法入国幇助の罪で警察に差し押さえられる。一方、島の漁師たちはこの一件について話し合うが、世代や立場によって意見は分かれ、自分たちの直面する問題に改めて向き合うのだった。

ジュリエッタは、サラたちを警察に引き渡すべきだとエルネストに詰め寄る。エルネストはこれまでの価値観が覆される現実に戸惑うばかりだ。気高く立派な行いが罪になるとは…。エチオピアから2 年をかけてこの島にたどり着いたというサラは、夫のいるトリノへ向かいたいと話す。ジュリエッタはサラたちを疎ましく思っているが、行くあてのない彼らを見放すこともできない。ふたりの母親は全く違う世界に生きながらも、今いる場所から逃げ出し、子供のためにより良き未来をつかみたいという思いは一緒なのだ。

その夜、マウラを連れ出し海に出たフィリッポは、暗い海の向こうでなにかが騒ぐ音に気づく。それは一斉にこちらに向かって泳いでくる難民たちだった。船に乗り込んでこようとする彼らに恐怖を感じたフィリッポは、彼らを見捨て逃げるように去っていく。
翌日、ビーチに昨晩の難民たちが打ち上げられ、島は騒然となる。マウラはこの一件のあと、フィリッポと話すこともないまま島を発っていった。生き残った難民たちも同じ船で帰されていくのを、フィリッポはただ見ていることしかできなかった。
その夜、エルネストは言う。「行こう。大陸が待っている」ついにサラたちの出発が決行されることになるが…。

スタッフ

監督:エマヌエーレ・クリアレーゼ
製作:リカルド・トッツィ、ジョヴァンニ・スタビリーニ、マルコ・キメンツ
製作総指揮:ジーナ・ガルディーニ
原案:エマヌエーレ・クリアレーゼ
脚本:エマヌエーレ・クリアレーゼ、ヴィットリオ・モローニ
撮影:ファビオ・チャンチェッティ
美術:パオロ・ボンフィーニ
衣装:エヴァ・コーエン
編集:シモーナ・パッジ
音楽:フランコ・ピエルサンティ

キャスト

フィリッポ・プチッロ
ドナテッラ・フィノッキアーロ
ミンモ・クティッキオ
ジュゼッペ・フィオレッロ
ティムニット・T
マルティーナ・コデカーザ
フィリッポ・スカラフィア
ピエルパオロ・スポッロン
ティツィアーナ・ロダト
クラウディオ・サンタマリア(友情出演)

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