天使の分け前
原題:The Angels' Share
日々を懸命に生きるすべての人に、幸せあれ。 願いをこめて名匠が贈る 笑顔と涙と喜びにあふれた、感動のエンディング!
2012年/イギリス・フランス・ベルギー・イタリア/101分/35mm/1:1.85/ドルビーデジタル、カラー 配給:ロングライド
2013年4月13日より銀座テアトルシネマほかにて全国順次公開
(C)Sixteen Films, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve, Urania Pictures, France 2 Cinema, British Film Institute MMXII
公開初日 2013/04/13
配給会社名 0389
解説
かけがえのない出会いとスコッチウイスキーがもたらす人生の大逆転!
本作の舞台はスコッチウイスキーの故郷スコットランド。グラスゴーに暮らす若者ロビーは、育った環境のせいでケンカ沙汰が絶えない。ロビーはまたもトラブルを起こすが、恋人との間に子供が生まれることに免じて、刑務所送りの代わりに社会奉仕を命じられる。ロビーは、指導者として働くウイスキー愛好家のハリーと、同じく社会奉仕を命じられた仲間に出会う。ハリーからウイスキーの奥深さを教わるうちにテイスティングの才能に目覚めたロビーは、100万ポンド(約1億4000万円)以上という信じられないような高値がつく樽入りのスコッチウイスキーの存在を知り、人生の大逆転を賭けて、仲間たちと一世一代の大勝負に出る!
過去を断ち切りたいのに、そこから抜け出せない。家庭をつくりたいのに、恋人の父親に認めてもらえない。でも、ロビーはハリーと出会った。職もなく、住む場所もない落ちこぼれが、初めて信じられる大人の存在で変わっていく。果たしてロビーは、ハリーとの出会いをきっかけに新しい人生をつかむことができるのだろうか。
タイトルの“天使の分け前”とは、ウイスキーなどが樽の中で熟成されている間に、年に2パーセントほど蒸発して失われる分のこと。10年もの、20年ものと年数を重ねるごとにウイスキーは味わいを増し、それとともに天使の分け前も増していく。
本作を締めくくる鮮やかなエンディングに触れた時、私たちはこのタイトルを反芻し、幸せな余韻に浸ることだろう。
人間味あふれる魅力的な登場人物と、スコットランドの美しい風景
登場人物たちは人間味にあふれている。主人公ロビーは、暴力から足を洗ってまともな職に就きたいと切望しているが、それは容易なことではない。絶望しかけた時にハリーと出会い、才能が目覚めて自信を持ち始めると、どんどん魅力的に輝いていく。そんなロビーの仲間となる3人の男女も、欠点だらけの落ちこぼれではあっても気のいい若者たち。意外な才能を覗かせて周囲を驚かせたりする。
一方、ハリーはどこにでもいそうな中年男だが、仕事で出会ったロビーの窮地を見かねて手を差し伸べ、また規則破りのリスクを冒して休日にロビーたちを蒸溜所見学に連れ出す。彼らと過ごす時間を楽しみ、彼らの中に可能性を見出すことのできるハリーは、社会にはみ出し者のレッテルを貼られた者たちにとって、唯一の尊敬できる大人なのだ。
キャラクターの魅力とともに、本作を印象づけるのが、スコットランドのウイスキーとユーモア、そして美しく雄大な風景だろう。グラスゴー近郊やハイランドと呼ばれるスコットランド北部の有名スコッチウイスキー蒸溜所が登場し、オークションのシーンも大きな見所になっている。そして、ある計画のためにスコットランドの伝統衣装キルトをまとってハイランドを目指すロビーたち4人の旅は、まさに珍道中。爆笑が、いつしか感動に変わる。それが本作の醍醐味でもある。
名匠ケン・ローチが、日々を懸命に生きるすべての人に贈る感動作!
監督は、『麦の穂をゆらす風』(06)でカンヌ国際映画祭パルムドールに輝いた英国の至宝ケン・ローチ。そして、脚本はもちろん『カルラの歌』(96)以来の盟友ポール・ラヴァティ。貧しい労働者や失業者など社会の底辺で生きる人々を描き続けてきたローチだが、そこには厳しい現実が反映され、時に苦い味わいを観客に感じさせてきた。しかし本作では、これまで同様に深刻な問題を見据えながらも、コメディというスタイルを選び取り、笑いとユーモアの中に、“人生の師”との出会いを転機として自らの手で未来を切り拓く若者を描いている。そして、見事なエンディングはまるで、日々を懸命に生きる市井の人々に幸せあれと、願いをこめた杯をかかげるかのように温かい。そこには、誰もが誰かの天使になれるというメッセージを読み取ることもできるだろう。
ローチ作品としては『ケス』(69)や『SWEET SIXTEEN』(02)に連なる青春映画であると同時に、ピーター・カッタネオ監督の大ヒット英国失業コメディ『フル・モンティ』(97)のスコットランド版とも言える本作は、英国ではローチ作品最大のヒットを記録。ロビー役を演じるポール・ブラニガンが、リサーチ中のラヴァティと出会ったのを機に演技の才能を見出された、ロビーさながらのラッキーボーイとなったことも話題になった。
ありふれた日常にこの2人のような出会いが待っていることを予感させ、観る者を元気づける本作は、名匠ローチがすべての人に贈る、まさに天使からのギフトのような感動作である。
ストーリー
スコッチウイスキーの故郷スコットランド。グラスゴーに住む若者ロビー(ポール・ブラニガン)は暴力にあふれた環境で育ち、少年刑務所を10カ月前に出所したばかり。恋人レオニー(シヴォーン・ライリー)と生まれてくる赤ん坊のために人生を立て直したいが、まともな職も家もない上に、親の代からの宿敵クランシーにしつこく付け狙われている。
売られたケンカを買い、裁判所から300時間の社会奉仕活動を命じられたロビーは、現場の指導者である鷹揚なハリー(ジョン・ヘンショー)と、作業仲間のアルバート(ガリー・メイトランド)、ライノ(ウィリアム・ルアン)、モー(ジャスミン・リギンズ)と出会う。彼らもまた失業中で行き場のない若者たちだ。
レオニーが息子ルークを出産した日、ハリーの車に送られて病院へ駆けつけたロビーは、彼女の父マットに殴られ追い返された。クラブ経営者で金持ちのマットは娘とロビーの交際に反対していたのだ。ケガを負ったロビーに同情し、自宅に連れ帰って手当てをしてくれたのはハリーだった。さらに彼はとっておきのウイスキーを開けてルークの誕生を祝ってくれた。父親としての責任を自覚したロビーは、ハリーに励まされ、また自分がかつて傷つけた被害者とその家族との面談を通して改めて罪の重さを噛みしめ、二度と誰も傷つけないことを固く心に誓う。
そんなある日、ウイスキー愛好家のハリーは“課外活動”と称してロビーたちを蒸溜所見学に連れ出した。ウイスキーを嗜む余裕はおろか、グラスゴーから出たこともない若者たちにとっては見るものすべてが新鮮だった。奥深いウイスキーの世界に興味を持ったロビーは、モーがつい失敬してきたミニボトルを飲み比べ、ハリーに教わりながら勉強するうちに、テイスティングの才能に目覚めていく。
ハリーのおかげで初めて自分に自信を持ち始めたロビーだが、しかしクランシーの襲撃はエスカレートし、マットからは5000ポンドでレオニーと別れるよう最後通告を突きつけられる始末。レオニーと息子との平穏で安定した生活を手に入れるためには、大きなチャンスが必要だ。ロビーがそれを見出したのは、100万ポンド以上で落札が見込まれる樽入りの最高級スコッチウイスキー。熟成中のウイスキーの樽から年に2パーセントほど失われる“天使の分け前”にヒントを得た大胆な計画を、仲間と力を合わせて実行に移すのだ!
キルト姿で“カーンタイン・モルトクラブ”の会員に扮して、オークションが行なわれる北ハイランドのバルブレア蒸溜所にヒッチハイクでたどり着くロビーたち。そこにはマスコミが詰めかけ、ロビーがエジンバラのウイスキーの会で知り合った自称コレクターの謎めいた男タデウス(ロジャー・アラム)も姿を見せている……。果たしてロビーたちは、自分たちの人生を大逆転させることができるのか?
スタッフ
監督:ケン・ローチ
キャスト
ポール・ブラニガン
ジョン・ヘンショー
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