2012年/日本/141分/japan/color/1:1.85/DIGITAL/R-18 配給:東京テアトル

2012年11月17日(土)テアトル新宿他全国ロードショー

©2012「ふがいない僕は空を見た」製作委員会

公開初日 2012/11/17

配給会社名 0049

解説


生きる。それだけのことが、何故こんなに苦しくて愛おしいのだろう。

2011年本屋大賞2位、2010本の雑誌が選ぶベスト10の1位に選ばれ、第24回山本周五郎賞を受賞し話題をさらった窪美澄の小説、『ふがいない僕は空を見た』(新潮社刊)。助産院を営む母子家庭で育った高校生・卓巳と、あんずと名乗るアニメ好きの主婦・里美の物語を軸に、「性」と「生」を真正面から描いた短編連作が、ついに映画化された。

監督は、日本映画監督協会新人賞を受賞した08年の『百万円と苦虫女』や同年の『俺たちに明日はないッス』で青春時代の葛藤を鮮やかに描き、今、最も次回作が待たれている気鋭・タナダユキ。長編映画としては実に4年ぶりの新作である。

映画化の発端は、2011年の2月。原作を読んだ佐藤現プロデューサーが、男女の「性(セックス)」を赤裸々に描くだけでなく、そこからさらに踏み込んで、妊娠、出産など、女性作家ならではの視点から「生」という大きなテーマに堂々と向き合ったストーリーに感銘を受け、企画を立ち上げた。冷徹な現実を生々しく描きつつも、ほのかに希望を感じさせてくれる原作の読後感は、タナダ監督の映画に通じるものがあると思ったプロデューサーが打診したところ、タナダ監督もすでに原作を読んでおり、偶然にも映画化してみたいと思っていたという。刊行元である新潮社には約30件の映像化のオファーが殺到していたが、「タナダユキ監督が撮る」ということが決め手となり、製作が実現した。

元いじめられっ子で、姑から不妊治療や体外受精を強要されている主婦・里美。
友達のつきあいで行ったイベントで“あんず”と名乗る里美と知り合い、アニメキャラクターのコスプレをして情事に耽るようになるが、その写真が何者かにばら撒かれてしまう高校生の卓巳。助産師として様々な形の命の誕生を見守っている卓巳の母。痴呆症の祖母と団地で暮らし、コンビニでバイトしながら極貧の生活に耐える卓巳の親友・福田。元予備校教師で福田に勉強を教える田岡……。現代社会に生きるそれぞれの登場人物が抱える思いと苦悩がリンクし合い、やがて一筋の光が見えるラストに収束していく群像劇を、タナダ監督は見事に作り上げた。

脚本を手がけたのは、『俺たちに明日はないッス』でもタナダ監督とタッグを組んだ向井康介。1章ごとに語り手となる主人公が入れ替わる原作を、映画ならではの感動と生々しさの詰まった物語として再構築している。
ダブル主演を務めるのは、永山絢斗と田畑智子。『ハードロマンチッカー』や『ぱいかじ南海作戦』などで多彩な魅力を放つ永山と、『血と骨』『隠し剣 鬼の爪』などで確かな実力を見せる田畑は、複雑な思いを抱える難役に挑戦。赤裸々な性描写も必要な役柄だったが、卓巳の「葛藤」とあんずの「闇」、ふたりでセックスしているときの「喜びと切なさ」を魅力たっぷりに体現。裏に隠し持つ真の感情まで感じさせる多面的な表現には、胸を揺さぶられる。

他、助産師である卓巳の母・寿美子に、圧倒的な存在感で物語にリアリティを加えるベテラン原田美枝子。痴ほう症の祖母と団地に暮らす卓巳の親友・福田に、『十三人の刺客』の窪田正孝。“団地から脱するための武器”である勉強を福田に教える田岡に、『わが母の記』の三浦貴大……と、個性あふれる実力派もタナダ組の元に集結し、印象的な芝居で世界観を彩っている。
今作の登場人物たちは皆、やりきれない思いや行き場のない感情を抱いている。
彼らは自身の苦悩や葛藤とどのように向き合い、乗り越え、どう新たな一歩を踏み出していくのか? 弱くても必死にもがいて生きていく人々の姿を切なく描いた、静かな衝撃作が誕生した!

ストーリー


マンションの一室に、制服姿の男子高校生が人目を気にしながら入ってくる。
部屋の中に用意されているアニメの衣装とウィッグを身につけ、ベッドルームに入ると、そこにはアニメのコスプレ姿をした女が横たわっていた。「いい子で待ってたかい? あんず」「はい。むらまささま」。

斉藤卓巳( 永山絢斗)は、助産院を営む母子家庭のひとり息子。友人に誘われて行ったアニメの同人誌販売イベントで、あんずと名乗るアニメ好きの主婦・里美(田畑智子)にナンパされる。里美は卓巳を自宅に招き、大好きなアニメキャラクターのコスプレをさせて情事に至る。以降、里美が用意した台本通りにセリフを言いながらコスプレセックスをすることが日常的になっていた。情事後、里美はいつも卓巳に現金を握らせるのだった。

そんなある日、卓巳は同級生の松永七菜( 田中美晴)に告白される。卓巳の親友・福田( 窪田正孝)に「好きな子が告白してくるって最強じゃん」とからかわれながら、里美との関係を断つことを決心する。卓巳に別れを告げられ、気が動転する里美。「なんであたしだけ悪いの! 呪ってやる! あんたは絶対ここに戻ってくるんだから!」と怒鳴る里美の声を背に受けながら、マンションを出る卓巳。

里美は、元いじめられっこ同士で結婚した夫(山中崇)と二人暮らし。執拗に子作りを求める姑( 銀粉蝶)からは不妊治療や体外受精を強要され、マザコンの夫は頼りにならず、卓巳との関係だけが心の拠り所だった。しかし、二人の情事は夫と姑に知られてしまう。夫に隠し撮りをされていたのだ。土下座して離婚を懇願する里美だが受け入れられず、代理母を捜すためにアメリカに行くことが決定する。

スタッフ

タナダユキ監督作品
原作:窪美澄『ふがいない僕は空を見た』(新潮社刊)
脚本:向井康介
音楽:かみむら周平
製作:福原英行/古玉國彦
エグゼクティブプロデューサー:加藤和夫
プロデューサー:佐藤現/木村俊樹
音楽プロデューサー:津島玄一
キャスティングディレクター:杉野剛
ラインプロデューサー:坂井正徳
撮影:大塚亮
美術:松塚隆史
録音:土屋和之
編集:宮島竜治
助監督:加藤文明
制作担当:鎌田賢一
製作:「ふがいない僕は空を見た」製作委員会(東映ビデオ、東映チャンネル、ステアウェイ)
制作プロダクション:ステアウェイ
企画協力:新潮社
宣伝:スキップ
配給:東京テアトル
助成:文化芸術振興費補助金

キャスト

永山絢斗
田畑智子
窪田正孝
小篠恵奈
田中美晴
三浦貴大
銀粉蝶
梶原阿貴
吉田羊
藤原よしこ
山中崇
山本浩司
原田美枝子

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