彼女について知ることのすべて

原作：佐藤正午 × 監督：井土紀州 による
残酷なまでに失われた愛を追憶するエロス・ノワールの傑作誕生

映像化不可能とまで言われ、15年以上長らく沈黙を貫かれていた人気小説「彼女について知ることのすべて」が遂に映画化された。原作は多くの作家からリスペクトを受け、昨年末には「身の上話」が文庫化された佐藤正午。すばる文学賞を受賞し、大竹しのぶ・時任三郎主演で映画化もされた「永遠の1/2」、沢田研二主演で映画化された「リボルバー」、そして＜本の雑誌＞が選出した2000年度ノンジャンルベスト10で堂々の1位を記録した「ジャンプ」など、多数の傑作を生み出し続ける日本を代表する作家だ。
本作は地方都市を舞台に性と暴力、男と女、恋人たちの傷跡と切ない絆を描いた、ラブゲームというにはあまりに激しく切実な衝撃のラブストーリーだ。こんなはずじゃなかった、誰もが味わうであろうそんな一瞬の連続が生む悲劇的なカタルシス、そして残酷なまでの愛と美しさに打ちひしがれるマスターピースが誕生した。

元ブラン娘（ＴＢＳ系「王様のブランチ」レポーター）笹峯愛
迫真ので魅せた鮮烈なスクリーンデビュー

監督は鬼才・井土紀州。犯罪と性をモチーフにした瀬々敬久監督作『雷魚』(97)や『汚れた女』(98)等の脚本を手掛ける一方、ロッテルダム国際映画祭正式出品作品『ラザロ-LAZARUS-』(07)、モントリオール世界映画祭正式招待作品『行旅死亡人』(09)などを監督。2010年には「映画一揆」と題してこれまでの監督全作品が各都市で上映され、絶賛を浴びる。その評価は日本国内に留まることなく、世界中の注目を集め続ける。
本作は井土監督が長年温めていた幻の企画だ。失われし80年代を90年代に振り返った佐藤正午と同様、今作は井土監督が渇き切った現代に手向けた、全ての失われた愛へ捧げる漆黒の花束である。
そして女の激しさ・妖艶さ・全て投げ出した究極の愛を過激な演技で演じ切った笹峯愛の衝撃のスクリーンデビュー作だ。不用意でどこか頼りない相手役を演じる三浦誠己は、崔洋一監督作『血と骨』、熊切和嘉監督作『海炭市叙景』等にも出演する日本映画界に欠かせない俳優の一人である。その二人の切なさと濃厚な愛欲がフィルムからじっとりと滲み出る様は、フィルム・ノワールならぬ全く新しいエロス・ノワールと言っても過言ではないだろう。