「ムーランルージュ新宿座」生誕80周年記念映画

2011年/日本/カラー/デジタル/ビスタサイズ/1時間50分/ 企画製作:幻野プロダクション

2011年9月17日〜新宿K's cinemaロードショー

(C)幻野プロダクション

公開初日 2011/09/17

配給会社名 1253

解説


ムーランルージュ新宿座とは、浅草の玉木座の支配人だった佐々木千里が1931年(昭和6年)の暮れに開館した芝居とレビューを提供する常設の劇場でした。魅力的なレビューダンス以外に風刺劇や抒情劇で学生・インテリ層の人気を集め、新宿の街にその屋根に乗せた赤い風車の目印とともに戦争を挟んで20年間もオリジナルのドラマを配信しつづけました。そしてこの小さな劇場から有島一郎、望月優子、明日待子、森繁久弥、三?千恵子、由利徹などの名優が巣立って行きました。歌ありコントありトークありのバラエティという言葉はこの劇場から生まれました。この劇場が閉館してから60年が経ち、数少ないムーランの出身者に取材をして隠れていた貴重な資料や証言と共につくりあげた記録映画です。

■元祖アイドルたちの登場
何よりも今でいうアイドルの元祖がこの劇場のトップスターだった明日待子さんだったという発見は極めて大きいものでした。15,6才の無垢な踊り子を芝居に子役(それも男の子役)として出して胸の膨らんだその少年の一言二言に若い観客は、ドキドキしたものでした。トップアイドルだった明日待子と小柳ナナ子は、当時の雑誌や新聞に紹介されコマーシャルのモデルとして活躍しレコードや映画出演と今と変わらない十代のアイドルでした。特に明日待子さんは、初代カルピスの「初恋の味」のコマーシャルモデルでした。

■製作までの道のり
映画「二十四の瞳」、「幕末太陽伝」などの映画美術を手掛けた中村公彦さんが晩年自分の美術監督の出発であったムーランルージュ新宿座の記録を残そうと講演や著述をされていて、その取材をはじめようとした2010年7月に94才で亡くなられました。
もうムーランのことを語れる人がほとんどいないと思われたあの暑い夏、一旦ムーランの記録取材が危ぶまれました。しかし大空千尋さんという元ムーランの女優が中村先生と近しいとわかり、そのインタビューからムーランの関係者が一人一人パズルのようにつながって行きました。そして撮影は楠トシエさんまで延べ20人に及ぶ関係者に貴重な証言をとることができました。

■絆で結ばれたスタッフ
監督は1981年の「西風」以来一貫してオリジナリティーにこだわり続けてきた田中重幸。脚本は多くのテレビドラマや楳図かずおのドキュメンタリーを手掛けた大隅充です。
ムーランの舞台場面は中村公彦さんの日活時代の弟子、美術監督の三輪敏雄、林隆の二人がその再現にあたり、劇場外観のセットは「海猿」「GANTZ」の星川造型が製作を担当しました。ほかにも、プロデューサーの一人千葉一彦をはじめスタッフのほぼ全員が中村さんとの深い絆で結ばれたメンバーで、先生の遺志を継ぐかたちでスクラムを組み、献身的情熱的に映画人の魂を結集しました。

ストーリー



昭和6年の大晦日、佐々木千里によって旗揚げした「ムーランルージュ」は、浅草のアチャラカ喜劇のスター中心と違って、文芸史中心の軽演劇とレビュー中心を目指した。出し物は現代劇2本と時代劇1本、歌、踊りのバラエティーショーで、合間に風刺の効いた哲学講座があった。客席数430の小さな劇場でありながら、戦前戦後の20年間、一貫して質の高いエンターテインメントを提供し続け、日本の演劇史に歴史を残した。
そして、「空気・めし・ムーラン」と合言葉になるほど、その時代の人々に「ムーラン」は無くてはならないものになり、生きる夢や心ときめくものを観客に与えていた。その原動力とは何だったのかを検証していく。

平成10年6月、かつて戦後のムーランルージュの舞台美術を担当していた中村公彦さんが緊急入院された。木下恵介監督「二十四の瞳」や今村昌平監督「にっぽん昆虫記」など多くの名画の映画美術を担当した、映画史に残る名デザイナーである中村さんは現役を引退後、90才を超えてなお情熱的にムーランルージュの歴史を語り続けてきた。
他にも当時ムーランルージュに関係のあった人たちや思い入れのある人たち、そして当時のムーランを知る人たちを訪ねていく中で、当時の人々にとって「ムーランルージュ新宿座」とは何だったのか、そして今まで知られていなかった新証言が飛び出し、次第に明かされていく。

ムーランルージュで有名になった俳優たちが引き抜かれていく中で、巣立った才能を花開くのを楽しむような人だった佐々木千里のことなど、当時の関係者たちの人物像が興味深い。また、10代トップアイドルだった明日待子さんを知る人たちは、彼女が当時のファンの心をときめかせ、誰もがその美しさに惚れ惚れし、ムーランの象徴であったことを語る。
本編では途中に、阿木翁助代表作の「女中あい史」やレビュー「ペットと税金」の再現がある。またラスト近く、明日死ぬかもしれない戦時下で青年将校や学徒兵が観客として訪れ、上演中に明日への希望をもって「明日待子、バンザイ」と言う証言シーンが印象的である。
戦前と戦後に誇る昭和という時代背景も写しとれる作品である。

スタッフ

プロデューサー:千葉一彦、三輪敏雄、橋本啓一、田中知英
脚本構成:大隅充
撮影:本吉修
照明:三枝隆之 
美術:三輪敏雄、林隆
音楽:仙石幸太郎

キャスト

明日待子
中村公彦
三崎千恵子
野末陳平
中島孝
楠トシエ
築地容子
森川時久
大空千尋
本庄彗一郎
藤枝利民
小峰葉子
宮里明見
奈良典子
小澤公平
ラサール石井

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