原題:The First Grader

マルゲの夢は、学校に行くこと。 学びたい——強い気持ちが奇蹟を起こす。 ケニア独立のために戦った日々、 その過去に打ち勝ち、未来を変えた “84歳の小学生“の、これは真実の物語。

ロンドン映画祭2010 公式出品 ドーハ・トライベッカ映画祭2010 観客賞受賞 トロント国際映画祭2010 観客賞・次点

2010年/イギリス映画/カラー/シネスコ/ドルビーデジタル/103分 提供:クロックワークス、アミューズソフト 配給:クロックワークス

2011年7月30日より岩波ホールほかにてロードショー

(C)2009 British Broadcasting Corporation, UK Film Council and First Grader Productions Limited. All Rights Reserved.

公開初日 2011/07/30

配給会社名 0033

解説


アフリカ大陸ケニア。イギリスの植民地支配から独立を勝ち取った39年後の2003年、政府がついに無償教育制度をスタートし、田舎の小学校の前には何百人もの子供たちが押し掛けた。そして、その中にはただ一人、老人の姿が。
彼の名は、マルゲ。今まで教育を受ける機会がなかったマルゲは、“文字を読みたい”一心で、からかわれながらも、何キロもの道のりを学校まで来ては門前払いされる日々を繰り返していた。
そんな彼の情熱に突き動かされた校長のジェーンは、周囲の反対を押し切り、入学を認める。子供たちに交じり、初めて学ぶことの楽しさを体験するマルゲ。だが、50年前の悪夢は、毎夜、彼を苦しめ続けた。独立戦争の戦士として闘い、愛する妻子や仲間を目の前で虐殺され、強制収容所で拷問にかけられた日々…。
過去に打ち勝つため、未来を変えるため、マルゲは勉強を続ける。その情熱は、歴史を知らない幼い級友たち、そして政府までも動かしていく。

はじまりは、ロサンゼルスタイムズに掲載された1本の記事だった。そこには、小学校に通う84歳のケニアの老人、キマニ・マルゲの人生が語られていた。かつて祖国解放のために戦い、すべてを失いながらも、自由のために戦った一人の戦士。そして、“学ぶこと”の大切さを誰よりも知り、死の直前まで勉強を続けた強い信念の男。
そんな彼の姿に胸を打たれた者たちは、マルゲの歩んできた人生の旅路を、そしてメッセージを世界中に伝えるべく、映画化へと動き出した。『ブーリン家の姉妹』で長編監督デビューを果たした若手実力派のジャスティン・チャドウィック、アフリカにルーツを持つ作品も多く手掛ける『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』、『最後の初恋』のアン・ピーコック、『リトル・ダンサー』『イースタン・プロミス』他、数々のアカデミー賞作品を輩出する名プロデューサー、デヴィッド・M・トンプソンら一流の製作陣たちだ。彼らは、実際に撮影も行われたケニアの地で入念なリサーチを行い、西洋からの一方的な視点に偏らぬよう繊細に注意を払いながら、今まだ傷跡の癒えぬ独立への戦いにまで踏み込みんでいった。
そんな彼らの情熱は、出演者たちにも伝わっていった。主人公のマルゲを演じたのは、ケニアのTV局でニュースキャスターとして活躍していたオリヴァー・リトンド。そして、マルゲの良き理解者にして師である若き女教師ジェーンに、『28日後…』 のヒロインや『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのダルマ役でお馴染みのナオミ・ハリス。彼らは、TVすら見たこともない現地の学校に通う子供たちを相手に実際に授業を行い、溢れる生命力とリアルな演技を引き出すことに成功した。

“世界最年長の小学生”としてギネス記録をもつキマニ・マルゲ。息を引き取る瞬間まで、決して“学ぶこと”を諦めなかった彼の奇蹟と感動の物語は、国や世代を超えて、私たちに未来への希望を託してくれることだろう。

ストーリー





政府が、すべての人を対象に無償教育をスタートさせた2003年のケニア。
このニュースをラジオで耳にした84歳のマルゲ(オリヴァー・リトンド)は、自らも教育を受けるべく、新聞の切り抜きを手に地元の小学校へやってくる。何百人もの子供たちが押しかけるなか、校長のジェーン(ナオミ・ハリス)に「学びたい」という思いを伝えるマルゲ。だが、同僚の教師アルフレッド(アルフレッド・ムニュア)は、生徒となるには鉛筆2本とノート1冊が必要なことを告げ、老人を追い払う。
翌日も再び小学校に現れたマルゲは、ジェーンに大統領府から送られた1通の手紙を見せ、文字を学び、自分の力で読みたいと訴えるが、またもや門前払いされてしまう。
しかし、マルゲは諦めなかった。ズボンの裾を他の子供たちのように切り落とし、再び門の前に立ち続ける彼の情熱に心動かされたジェーンは、ついに周囲の反対をよそにマルゲの入学を許可し、自分のクラスに受け入れる。
80歳近く年の離れた同級生たちと机を並べ、初めて学ぶことの楽しさを体験するマルゲ。しかし、50年前の過去はトラウマとなって彼を苛み続けた。マウマウ団の戦士としてケニア独立のため戦い、愛する妻子や仲間を目の前で虐殺され、強制収容所で拷問にかけられた日々…。誰よりも自由の価値を知るマルゲは、子供たちに自分がかつて戦士だったこと、そして“自由”という言葉の意味、重さを教える。
その頃、マルゲが教育を受けることに、周囲から反対の声も巻き起こるようになっていた。その矛先は、当然マルゲ本人にも向けられた。そして老人が小学校に通っているという話は、瞬く間にラジオで広まり、学校の調査官、キプルト氏(ビュスムジ・マイケル・クネネ)の耳にも入ることに。マルゲの勉強を続けさせるため、ジェーンは、ナイロビの政府で働く夫のチャールズ(トニー・キコロギ)に助けを求める。しかし、逆にたしなめられ、ついには教育委員会に直接足を運び、マルゲの受入れ容認を嘆願するも、申し立ては却下。マルゲは成人向けの教育センターへと移ることになってしまう。しかしそこは、学ぶ意欲のない者ばかりが集まる、ただの容れ物だった。
学ぶことを諦めきれないマルゲは、ジェーンの元を訪れる。そんな彼の姿をみて、ジェーンはあることを思いつく。それは、マルゲに自分の助手になってもらい、一緒に授業に参加することだった。
再び教室に戻ったマルゲ。この噂は瞬く間に広まり、ついには世界各国からマスコミが大挙して押し寄せ、マルゲは一躍時の人に。そして、マルゲの名声を利用しようと企む政治家も現れ、平穏だった小学校は混乱の場と化していく。その様子に、子供を学校に通わせる親たちの反感はさらに強まり、ジェーンも金のための売名行為と疑われ、脅迫まがいの嫌がらせを何度も受けることに。
その状況がキプルト調査官の知ることとなり、ついにジェーンは遠方の学校に移動となってしまう。
学校に新しい教師がやってくる日。しかし、子供たちは校門に鍵をかけ大人たちを受け入れず、一方、マルゲはただ一人、首都ナイロビの教育省に向かう。そこで彼は、審議会のメンバーを前に、かつてイギリス軍の拷問によって負った身体の深い傷を見せるのだった。
マルゲの働きかけによって、小学校に復帰したジェーンを温かく迎える子供たち。そして、マルゲは例の手紙をジェーンに差し出す。そこには、彼が収容所で過ごした長き時間を補償する旨が書かれていた。

スタッフ

監督:ジャスティン・チャドウィック
脚本:アン・ピーコック、リチャード・ハーディング、サム・フォイアー、デヴィッド・M・トンプソン
製作総指揮:ジョー・オッペンハイマー、アナン・シン、ノーマン・メリー、ヘレナ・スプリング
共同プロデューサー:トレバー・イングマン
撮影:ロブ・ハーディ
プロダクション・デザイン:ヴィットリア・ソグノ
編集:ポール・ナイト
衣裳:ソフィー・オプリサノ
音楽:アレックス・ヘッフェス
キャスティング:ムーニエーン・リー、マーギー・キウンディ

キャスト

ジェーン・オビンチェ:ナオミ・ハリス
キマニ・ナンガ・マルゲ:オリヴァー・ムシラ・リトンド
チャールズ・オビンチェ:トニー・キコロギ
アルフレッド先生:アルフレッド・ムニュア
エリザベス先生:ショキ・モガパ
ミスター・キプルト:ビュスムジ・マイケル・クネネ
アグネス:アグネス・シマロイ
カマウ・チェゲ:カマウ・ムバヤ
マルゲの妻:エミリー・ニョキ
マルゲ(青年時代):ルワンダー・ジャワー
DJマシャ:ダニエル・ヌダンブキ(チャーチル)

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