原題:Bright Star

2009年 カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品 2009年 英国インディペンデント映画賞 技術貢献賞受賞、 主演女優賞・監督賞・助演女優賞ノミネート 2009年 シカゴ映画批評家協会賞 主演女優賞・撮影賞ノミネート 2009年 サテライト賞 主演女優賞(ドラマ部門)・作品賞(ドラマ部門)・監督賞・脚本賞ノミネート 2010年 アカデミー賞衣装デザイン賞ノミネート 2010年 英国アカデミー賞衣装デザイン賞ノミネート 2010年 全米映画批評家協会賞 助演男優賞受賞 2010年 ブロードキャスト映画批評家協会賞衣装デザイン賞ノミネート 2010年 ロンドン映画批評家協会賞 女優賞・イギリス映画賞ノミネート 2010年 クロトゥルーディス賞 主演女優賞ノミネート

2009年/イギリス、オーストラリア/119分/カラー/アメリカンビスタ/ドルビーデジタル/字幕翻訳:戸田奈津子 配給:フェイス・トゥ・フェイス

2010年6月5日(土)、Bunkamura ル・シネマ、 銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館他にてロードショー

(c) 2009 Apparition, All Rights Reserved

公開初日 2010/06/05

配給会社名 1132

解説


ロマン派詩人ジョン・キーツの恋人ファニー・ブローンに対する愛は、これまでで最も美しいとされる彼のラブレターに表れている。ブローン家の長女ファニーは当初キーツの目にはおてんば娘としか映っていなかった。しかし1819年から20年にかけてロンドン北部のハムステッドにある彼女の家の隣家で暮らすうち、素晴らしい創作能力に目覚め、彼の詩作のうちでも最も美しいとされる3編の詩−「ギリシャの壺のオード」, 「憂愁のオード」そして「ナイチンゲールに寄せるオード」を書き上げた。
二人は1819年に非公式に婚約するが、結婚式の日を迎えることはなかった。結核を患ったキーツは温かい土地への転地療養を進められ、1820年に英国を離れイタリアへと渡った。その後彼はファニーに会うこともなく、後に偉大なる詩人となるなど誰にも気づかれぬまま、1821年2月にローマで帰らぬ人となった。25歳という短い生涯だった。彼の最後の詩はごくシンプルに「ファニーへ」と題されている。
ファニーは未亡人が身につける黒のドレス姿で部屋に篭り、キーツの手紙を繰り返し読んだり、思い出の草原を一人で散歩をしたりしながらその後の3年間を過ごし、まるでキーツと夫婦であったかのように喪に服した。1833年にファニーは結婚して二人の子供をもうけるが、キーツから贈られた指輪をはずすことはなかった。またキーツから送られた36通を超えるラブレターも大切に保管していた。その多くは単なるメモに近いものだったが、彼の思いを切々と綴ったものもある。これらの手紙はのちにその美しさで称賛された。

本作のタイトル『BRIGHT STAR』はキーツがシェークスピアの本の表紙の裏側にファニー宛に書いた愛の詩からとられている。本企画の実現は監督ジェーン・カンピオンの長年の夢だったという。
「キーツの伝記を読んでいたのですが、彼がファニーと出会ったくだりでこの物語に惚れ込んでしまったのです。彼らの痛みと美しさ、そして純粋な愛に惹かれました。心から感動してしまったのです。彼らはあまりにも若く、まるでロミオとジュリエットの物語なのに、私は彼らのことを知らなかった。終盤では思わず涙を流していました。この物語はそれほど悲しくて優しさに満ちていたのです。そして彼の詩でした。これは自分の人生と自身が体験していることについて書いているのだとすぐにわかりましたが、この時点ではどういう映画にするかはイメージが湧いていませんでした。ですから本作には具体的な視点が必要だと思いました。」
そこで監督はキーツの物語を、その存在をあまり知られていないファニーの視点から語ることにした。彼女が体験するように、2年間という時間の中で、観客もキーツと出会い、彼を失うのだ。物語はキーツの手紙や詩、伝記など、様々な資料から練り上げられた。

『BRIGHT STAR』の二人の主演俳優、アビー・コーニッシュとベン・ウィショーも1818年に始まる物語にありがちな堅苦しい雰囲気を排除するのに貢献した。
「時代物は堅苦しく感じがちなので、俳優がリアルな感情を得られるようにしなければなりません。アビーはすべてをとても直感的に捉えてくれました。ベンもリアリティに溢れていましたね。オーディション会場の外でベンに初めて会った日のことを今でも覚えています。若くて猫みたいに美しい青年は、この世のものとは思えないほどでした。彼の喋り方は上品ぶった感じはないのに、ロンドンかちょっと北部の雰囲気が感じられ、キーツそのものでした。オーディションでの彼は完璧なまでに勇敢で、感情をほとばしらせ、熱がこもっていながら強く繊細で、ファニーとの本読みではとても親密な雰囲気をかもし出していました。リハーサルに入るようになってからは、私は彼の存在感のとりこになっていきました。ベンは口数の多いほうではありませんが、とても正直で信頼できる人間です。ベンとアビーがリハーサルを前に初めて顔合わせをしたとき、アビーが“ごきげんよう”というようなことを言ったのを覚えています。二人は完璧な組み合わせでした。」
と監督は述べた。
ベン・ウィショーは主役に抜擢され興奮したという。
「脚本がとても感動的で、読み終える頃には泣いてしまった。まさに僕がいつも探し求めていた脚本だった。何かに対して感情的な反応をするタイプの作品。キーツのことは全く知らなかったけれど、何かひらめくものがあった。オーディションに行った時、どうしてもやりたいっていう気持ちが湧いてきた。この役は僕のものだ、この人物を理解できるのは僕だ、ってね。キーツについて読めば読むほど、彼の文学に何世紀も費やされ、人となりについてとてつもなく多く人々がそれぞれの意見を持っていることに気づいた。監督は彼のことを普通の人に比べたらとても度量が大きくて神に対してもオープンになれる、つまりエンジェルのようなタイプと捉えていた。きっと彼はとても理解しづらい天才だったのじゃないかな。」

監督はファニーのキャラクター設定に、自分の娘からインスピレーションを得ていることに気づいた。
「ファニーの描写には苦労しました。娘のアリスは13歳なのですが、とても情熱的で早口なので、“ファニーはこの場合どういう行動に出るだろう?”という状況に出くわしたときはいつでもアリスならどうするだろう?と考えていました。この方法は随分役立ったのですよ。彼女は私にとってのミューズみたいな存在です。そしてアビーがキャスティングされた。彼女は意志強固なタイプで、ファニーがやるようなことができるガッツがありました。例えば社会常識に対抗するような行動とか、想像を絶する痛みを伴うことになるパートナーを選んでしまうとか。アビーは何でも現代的かつリアルに表現することができる。どうしてそんなことができるのか私にはわからないほど。彼女はきっとページに書いてある言葉を現実の世界に馴染ませてしまう技を持っているのでしょうね、皆が魅了されました。私が驚かされたのは彼女の演技の深さだけではなく、ユーモアや軽やかさ、もっと言えばちょっと馬鹿っぽくさえ見せることが出来る点でした。」
アビーは脚本の強さとキャラクターに惹かれたという。
「読んですぐにこの脚本のとりこになりました。まだ愛というものに目覚めたばかりで、その中の自分というものを見つけていく、彼女は素晴らしいキャラクターだと思いました。キーツが彼女の人生の扉を開いてくれたっていうのが本当に美しいと思いますね。これはそんな美しいラブ・ストーリーなのです。」
彼女はまたこう付け加える。
「恋に落ちて、婚約をして、その愛する人が亡くなるという、ファニーがあの2年間で経験した人生にもとても興味が湧きました。実在の人物を演じるときは出来る限り正直に忠実に演じるという、大きな責任感が伴います。彼らの人生を調べ、それを自分の演技を通して伝える。でもそれと同時に直感というものも大切にしなければならないと思うのです。正しいと感じることに従う、そういうことがとても大切だと思っています。」

監督の『エンジェル・アット・マイ・テーブル』(90)に主演したケリー・フォックスもファニーの母親ブローン夫人役でキャストの仲間入りをした。
「ブローン夫人というのは、私にとってとても重要なキャラクターでした。私自身娘がいるので、物語におけるブローン夫人の立場がとてもよくわかるのです。彼女とファニーの関係はとても複雑です。ファニーのなぐさめ役である一方で、娘の未来にも責任がある。そこには無一文の詩人の入る余地はないわけです。この恋人たちを見守る気持ちと分別が、ブローン夫人の中で激しくせめぎ合うのですが、最後はこの愛し合う二人の気持ちにほだされて折れることになる。ケリーの自然な感情と彼女が見せた純粋さはこの役を演じる上で欠かせない要素で、また本作に新たなトーンを加える上でも重要なポイントとなりました。」
と監督は述べた。
また、キーツの友人ブラウン氏を演じたポール・シュナイダーについて、監督はこう述べている。
「私がポールを見たのは『ジェシー・ジェームズの暗殺』(07)だったのですが、彼は素晴らしい俳優だと思いました。とても大胆で冒険を厭わない。それに常にいかにリアリティを持たせるかを模索している。彼が演じたブラウンはデリケートで繊細さが特徴のファニーとキーツと好対照を見せていると思います。」

撮影は2008年4月と5月に、ローマでの1日を除いてすべてイギリスのベッドフォードシャーで行われた。ルートン近郊のハイド・ハウス邸が主なロケ地として使用され、同じ敷地内の2軒がブローン家とブラウンが同居していたウェントウォース・ハウスと、ブローン家が最初に暮らしたエルム・コテージとして使用された。
監督がこれに付け加えて述べる、
「私たちは多くのリサーチを行いましたが、イギリス国内でさえも1820年代はほとんど残っていませんでした。幸い本作の物語は2軒の家とそれを取り巻くヒースの生えた原野を中心に展開されます。ハイド・ハウスは私たちが最初に検討したロケ現場だったのですが、家の中に入り階段を上がっていくと、そこに地元のパブから出てくる家族の写真が飾ってあり、その背景に写っているパブの名前がなんと「BRIGHT STAR」だったのです。これは文字通り何かの啓示だと思いました。一箇所での撮影することの素晴らしい点は季節の移り変わりを感じられることです。歩道にツリガネスイセンが咲くのを心待ちにしたり、木々が芽吹き、ラッパ水仙が咲き乱れる様は本当に魅力的です。こういう風景が本作にも映り込んでいるといいのですが!」

ストーリー


1818年ロンドン郊外のハムステッド。詩人としての才能を世に知られ始めたジョン・キーツ(ベン・ウィショー)とはいえまだ貧しく、親友であり編集者のチャールズ•ブラウン(ポール・シュナイダー)の家に居候する。そしてそこで出会った隣人、ブローン家の長女ファニー(アビー・コーニッシュ)の輝くばかりの美しさに次第に惹かれてゆく。弟の死や、評論家からの詩への酷評に傷つくキーツを優しく包みこんでくれるファニーとの“恋”はキーツを詩人として成長させ、英国文壇から少しずつ評価されるようになる。そんな時、キーツは弟と同じ結核を患ってしまう。日々弱っていくキーツに寄り添うファニー、幸せな時間は長く続かない‥‥。二人の純粋な愛から紡ぎ出されたその“詩”は、キーツの死後さらに耀きを増し、“世界で最も美しい詩”として現在も語り継がれている。
ジョン・キーツは詩人としては5年という短命であったものの、その才能は後年、シェイクスピアと比較されるほど称えられた。そんな彼の儚い人生に魅了されたジェーン・カンピオン監督(『ピアノ・レッスン』(93))が、若く魅力的なベン・ウィショー(『パフューム ある人殺しの物語』(06))とアビー・コーニッシュ(『エリザベス ゴールデン・エイジ』(07))という俳優陣を起用し、まるでフェルメールの絵画のように美しい映像美によって、純粋で情熱的で品格ある作品が誕生した。

スタッフ

監督・脚本:ジェーン・カンピオン(『ピアノ・レッスン』)
撮影監督:グレッグ・フレイザー
美術監督&衣装デザイナー:ジャネット・パターソン

キャスト

アビー・コーニッシュ(『エリザベス:ゴールデン・エイジ』)
ベン・ウィショー(『パフューム ある人殺しの物語』)
ポール・シュナイダー(『ジェシー・ジェームズの暗殺』)
ケリー・フォックス(『インティマシー/親密』)

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