オヤジ、先に逝ってくれ。

2009年/日本/カラー/108分/ 配給:ギャガ・コミュニケーションズ

2009年8月22日(土)より、シネカノン有楽町1丁目ほか全国ロードショー

(C) 2009「ちゃんと伝える」製作委員会

公開初日 2009/08/22

配給会社名 0025

解説


親と子、男と女ー 誰だって、愛する者へ本当の思いを伝えるのは難しい。 それでも最期には、ちゃんと伝えたい。あなたが、大好きだったと−。

人は最期に何を思い、どうやってそれを伝えていくのか。 あなたの“ちゃんと”は何ですか?

鬼才・園子温監督が想いを込めた新境地。
ちゃんと伝える、ちゃんと伝える。映画の中でも何度も繰り返されるこの言葉が、静かな感動を呼ぶ。本作は、このタイトルにこそ、監督の深い想いが込められている。あなたは大切な人に、”ちゃんと”伝えていますか?胸にじんわりと染み込んでくる、そんな問いかけ。そして、なんとこの感動的な物語の監督は、日本映画界の鬼才・園子温なのである。
 2001年の問題作『自殺サークル』で、世界中のシネフィルを驚かせ、その姉妹編に位置づけられる、05年の異色ホームドラマ『紀子の食卓』でも海外の著名な映画祭を席巻。そして08年、ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞&カリガリ賞をダブル受賞した約4時間の大作『愛のむきだし』も記憶に新しい園子温監督は、一作ごとに型破りなテーマ性と映像感覚で映画ファンを驚嘆させ、今や国内外からつねに動向が注目される存在となった。この異端の天才フィルムメーカーは、いったい次は何をしでかすのか。かくして『愛のむきだし』の余韻も醒めやらぬうちに完成した最新作『ちゃんと伝える』は、ある意味でこれまでの何よりも監督の支持者を驚かせる作品となった。それは、誰も予想しなかった園子温の新境地。父から息子へ、息子から父へ。そして家族へ、恋人へ。大切な人に想いを伝えたいという切なさと愛おしさが観る者の共感を呼び、温かな情感が胸に染み入るヒューマン・ドラマなのである。

病に倒れた父に、初めて向かい合おうとする息子。
監督自身が亡き父に捧げたオリジナル・ストーリー。
 地方都市に住む27歳の青年・史郎。父は高校教師で、史郎は幼い頃から家でも学校でも厳格だった父に対して、鬱屈した感情を抱いてきた。絶対的な存在であるその父が重い病気を患って入院したことにショックを受けた史郎は、初めて父に向き合おうと、毎日1時間、必ず病室を訪ね、それまでできなかった親子の対話を重ねるようになる。「退院したら湖へ釣りに行こう。お前と俺、ふたりで行くんだ」。そんな言葉を急に口にする父。そのささやかな願いをしっかりと胸に刻み込んだ史郎を待ち受けていたのは、思いもよらない医師の理不尽な宣告だった。「史郎さん、あなたがガンです」。その命は父よりも先行き短いというのだ。あまりにも残酷な現実を家族にも恋人にも伝えられない史郎は、父と交わした約束との狭間でひとり悩む。
 背を向けていた父と息子が絆を再生するという共感度の高いテーマを掘り下げたこの映画は、園子温監督自身が実父を亡くした個人的体験に基づくオリジナル・ストーリーである。客観性を保つために設定は事実と大幅に変えながらも、感情という関係性では実体験に基づいたと監督は言う。父と同じ病を息子も背負うという設定は、一見劇的だが本作ではむしろその悲劇性よりも、まるで病が父と息子をつなぐものであるかのようにも映る。二人の背が並ぶ湖のほとりのベンチが美しい夕陽にきらめくショットを交えた詩情豊かな映像世界は、『愛のむきだし』までの荒々しさや緊迫感を強調した攻撃的な作風とは対照的。園子温の多彩なフィルモグラフィにおいて、最も優しく、最もピュアな感情を、まっすぐにつかみとった作品といえよう。

真摯に平凡な青年役に挑んだ、映画初主演のAKIRAと、
彼を支えた父親役の奥田瑛二をはじめとする豪華共演陣。
 人は限られた生の中で、愛する者に対して何を想い、何を伝えたいと願うのか。そんな切実な状況に陥った主人公・史郎を演じるのは、EXILEのAKIRA。園監督の脚本に深い感動を覚え、涙までこぼしたという彼が、映画初主演作としては極めてハードルの高い役どころだが、ありったけの真心をこめた演技で監督の要求に応え、ナイーブな表情をふと垣間見せる史郎を清々しく体現した。
 史郎の父親役は、日本映画界に欠かせない名優であり、監督業にも意欲的に取り組んでいる奥田瑛二。鬼のような厳しさで我が子を突き放しながらも、セミの抜け殻に切ない想いを託そうとする男の哀感を、さすがの存在感で演じている。また、病気や死をもってしても断ちきれない家族の絆の強さを、慎ましくもしなやかに証明する母親役、高橋惠子の好演も見逃せない。さらに『スワロウテイル』(96)、『リリイ・シュシュのすべて』(01)から、近作『TOKYO!』(08)、『青い鳥』(08)まで着実に成長を遂げてきた伊藤歩、『クローズZERO』シリーズ(07/09)、『ROOKIES−卒業−』(09)などの話題作が相次ぐ高岡蒼甫という若手俳優たちがナチュラルな演技を披露。園子温監督は、既に次回作としてハリウッド資本&ノルウェー・ロケによるスキャンダラスな実録ドラマ『LORD OF CHAOS』を来る秋に撮ることが決定している。本格的な世界進出に乗り出す鬼才の活動から、ますます目が離せない。

父が息子に託したセミの抜け殻。
ラストシーン、観客がその意味を知る時、涙が思わず頬を伝う。
 本作は「余命」を描きながら、観る者に深い印象を残すのは、その悲劇性よりも何気ない日常のひとこまである。日常の何でもない風景に、どれほど人の想いがつまっているのか。その想いを知らずにいたら、見過ごしてしまう、そんな風景。その象徴とも言えるのが、本編中に何度か登場する「セミの抜け殻」である。倒れた父が握っていた掌からすべりおちたセミの抜け殻。その意味を観客が知るところとなるのは、ラストシーンである。父が託したのはどんな想いだったのか。いつかきっと息子はそれを知るだろう。
 本作のロケ地は、園監督の故郷である愛知県豊川市とその周辺である。自らの原点に立ち戻り、見すごされがちなごく普通の家族の営みに光をあて、その日常が緩やかに移ろいゆく様を、淡く柔らかなタッチで映し出す。それゆえにこの映画には、難病ものや余命ものといわれる他の作品とは一線を画す親密でみずみずしい空気感が宿り、家族の情愛が確かな温もりとともに滲み出す珠玉作となったのである。

ストーリー

余命わずかな父と、向き合うと決めた息子。 そんな彼に宣告された、もっと短い余命。 愛する人を失うことより、愛する人を悲しませたくない。 そして、父子でやり遂げた、最後の約束とは——。  とある地方都市のタウンマガジンの編集部に勤める27歳の史郎(AKIRA)にとって、それはまさしく青天の霹靂だった。地元の高校サッカー部で鬼コーチとして鳴らす父(奥田瑛二)が倒れ、病院に運び込まれたのだ。ほどなく容態は安定したが、すでに父の体はガンに蝕まれており、先行きはまったく楽観できなかった。  史郎の脳裏をかすめる高校時代の苦々しい思い出。当時、サッカー部に所属していた彼は、学校ではスパルタ主義のコーチとして、家では厳格な家長として、絶対的な存在感を誇示していた父とどうしても打ち解けることができなかった。その決まり悪さを大人になってからも引きずってきた史郎は、父との対話すら避けてきた自分を後悔し、ある決意を固める。それは必ず毎日1時間は病室を訪れ、できるかぎり父に寄り添い、親子の関係を修復することだった。そのひたむきな思いが通じたのか、父が釣りに興味を持っていると呟いたことで、ふたりの距離は次第に縮まっていく。 「元気になったら、湖へ連れて行ってくれ。お前と俺、ふたりで行きたいんだ」  そう真剣な眼差しで告げる父と、満面の笑顔で応じる史郎。男同士の固い約束が交わされた病室には、彼らをそっと優しく見守る母(高橋惠子)の姿もあった。  そんな未来への希望の光が差し込んできたある日、父の担当医師(吹越満)に呼び止められた史郎は、思いがけないことを告げられる。 「史郎さん、あなたがガンです」  悪夢のようなその宣告は、まぎれもない現実だった。父と同じように胃の痛みを感じていた史郎は、数日前に医師の薦めで検査を受けていたのだ。しかも医師の説明によると、史郎のガンは悪性で、父よりも病状が重いのだという。ひょっとすると父は、ひとり息子の死を看取ってからあの世に逝くはめになるのかもしれない。史郎には、そんな残酷すぎる事実を両親に伝えられるはずもなかった。  史郎がその事実を明かせない大切な人がもうひとりいた。幼なじみで同じ年の恋人、陽子(伊藤歩)である。 「もしも俺が、父さんみたいにガンで死ぬってわかっても……一緒にいてくれるかな」 「何で、そんなつまらない質問に答えなきゃいけないわけ?」  夜道でそんな会話を交わしたふたりは、近いうちに自分たちの結婚について話し合うことを約束する。 「ちゃんと伝え合いましょう」 「……うん、わかった」

スタッフ

脚本・監督:園子温 撮影:上野彰吾(J.S.C.) 照明:鳥越正夫 美術:大庭勇人 音楽:原田智英 録音:西條博介 編集:伊藤潤一

キャスト

AKIRA(北史郎) 奥田瑛二(北徹二) 伊藤歩(中川陽子) 高橋惠子(北いずみ) 高岡蒼甫(田村圭太) 吹越満(渡辺先生) 綾田俊樹(釣堀のオヤジ) 諏訪太郎(釣具屋店員) 佐藤二朗(葬儀屋) でんでん(田中先生)

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