原題:BOY A

ひとりの青年の心の傷、希望、孤独を、胸が痛くなるほど エモーショナルに描いたブリティッシュ・インディーズの新たな傑作。

2008年 BAFTA最優秀男優賞(アンドリュー・ガーフィールド)、最優秀監督賞、最優秀編集賞、最優秀撮影賞 2008年 ベルリン国際映画祭パノラマ部門、エキュメニック審査賞

2007年/イギリス/107分/カラー/1:1.85/ドルビーSRD 配給:シネカノン

2008年11月15日(土)より、渋谷シネ・アミューズほか全国順次ロードショー

公開初日 2008/11/15

配給会社名 0034

解説



胸が痛いほどエモーショナル。ブリティッシュ・インディーズの感動作。

まるで幼い少年のようにはにかんだ笑顔を見せる青年。彼は、“新しい名前”を選ぶ。ジャック・バリッジ。今、初めて大人の世界に歩み出す。そして彼は、本当の過去を決して誰にも知られてはならない。たとえどんなに愛する人であっても。
『BOY A』は、英国期待の若手作家ジョナサン・トリゲルの受賞小説を、『ダブリン上等!』で才能を煌めかせたジョン・クローリーと脚本マーク・オロウのコンビが映画化。ひとりの青年の心の傷、希望、孤独をエモーショナルに描きながら、観客に深い問いかけをする。ベルリン映画祭受賞に始まり、本国イギリスでは栄誉あるBAFTAで主要4賞獲得、先頃公開のアメリカでも大絶賛された。衝撃的でありながら瑞々しいブリティッシュ・インディーズの傑作である。

次代のスター、主演アンドリュー・ガーフィールドの魅力。

まず目を奪われるのは、主人公を演じる英国の新星アンドリュー・ガーフィールドの素晴らしさだ。舞台出身で数々の新人賞に輝いた後、トム・クルーズ、メリル・ストリープ共演の『大いなる陰謀』で映画デビュー。ロバート・レッドフォード監督に「たいへんな掘り出し物の発見!」と言わしめ、本作後はテリー・ギリアム監督の新作でジョニー・デップらと共演している将来のスター候補。
繊細で力強い演技とともに、すんなり伸びた手足、細く長いうなじ、無垢な瞳から溢れるナイーヴな少年らしさに、思わず観客は彼を愛おしく感じる。その魅力が、この映画の重要なテーマを引き出す牽引力になっている。

名優ピーター・ミュランを始めとする英国らしいアンサンブル。

ジャックの後見人であるケースワーカー、テリーを演じるのは『マイ・ネーム・イズ・ジョー』でカンヌ主演男優賞の栄誉に輝いたベテラン俳優ピーター・ミュラン。ジャックと父子のような関係を築きながら、実の息子とは心をわかちあえない難しい役柄を、さすがの名演で見せる。
他に「ステレオタイプになりがちな役を、本当の美しさで輝かせた」と絶賛された、ジャックの恋人ミッシェル役のケイティ・リオンズ、ジャックを知るにつれて親友となっていく同僚クリスに『華麗なる恋の舞台で』のショーン・エヴァンス。イギリス映画らしい実力あるキャストが新星ガーフィールドを支えている。

先入観なしで、少しずつ主人公を知る。ラスト、あなたの心が大きく揺れる。

『BOY A』の監督、脚本、そして俳優たちが口を揃えるのが「先入観なしで、主人公と出会って欲しい」ということ。この映画で最も大切なのは、映画が進むとともに、観客が少しずつ主人公を知っていくという構成だ。
そして彼が過去にしたことを知った時、映画は問いかける。「人は新しく生き直せるのか」「人が生き直すことをあなたは受け入れられるのか」と。おそらく、この問いは見る人の心を大きく揺さぶる。
クローリー監督はこう語る。
「この映画は観客たちに、自分が持っていた先入観を思い起こさせます。ある意味、これは“先入観”へのチャレンジともいえるでしょう」。

ストーリー

穏やかな光の射す部屋。青年が、男性と向き合っている。
その顔は喜びに満ちあふれ、少年のように目は輝いているものの、どこか落ち着かない様子で、今の状況を「夢のようだ」と語る。男性—テリーから「ESCAPE」とタグの付いたスニーカーをプレゼントされた青年は、自分に新しい名前をつける。24年の生涯の大半を一般社会から隔離されて過ごした青年—ジャックの新しい世界はここから始まった。

大人として初めて見る世界は、何もかもが目新しく、とても大きく感じる。
新しいアパートに着いたジャックはそこでテリーの甥として紹介される。しかし、家の外には警護の警官の姿がある。テリーはケースワーカーなのだ。不安げなジャックに力強く言い聞かせる。「過去の君は死んだ」と。
その夜、ジャックは夢にうなされる。テリーを説得して出かけたある墓地で、「罪悪感から死を選んだのかな」とジャックは呟いた。

ジャックの、新しい職場は運送業だ。同世代の青年クリスとペアを組むことになる。どうやら仲良くやっていけそうだ。職場にはミシェルという、気になる女性もいた。
ある日、ジャックはクリスにも後押しされて、ミシェルを誘う。彼女の部屋を訪れたジャックは、不器用ながらも思いを告白し、ミシェルは彼を受け入れた。初めての経験はうまくいかず、ジャックは落ち込むが、ミシェルはそんな彼を優しく包みこむ。愛する人の側にいられる、そのあまりの幸福にジャックは涙する。ミシェルは、彼の涙の意味がわからずに、ただ静かに抱きしめた。

新しい世界は、何もかもが上手くいっているようだった。しかし、偽りの自分でいる事は、ジャックにとって祝福であると同時に苦しみでもあった。ジャックは、せめてミシェルには本当の事を打ち明けたい、と懇願する。しかしテリーは、君の安全のために、絶対に過去のことを口外してはいけない、と言い聞かせる。

世間では、「BOY A」が釈放されたことが報じられていた。成長した「BOY A」をモンタージュした写真に似た人物の家が放火され、ネットでは懸賞金がかけられるなど、世の中の人々の「BOY A」への憎しみは全く薄れていなかった。

ある日、クリスと配達に出たジャックは、その途中で事故をおこした車を発見。運転手はすでに息絶えていたが、助手席の少女には息があった。ジャックは必死で少女を助け出す。「命なんてあっけないな」と言うクリス。だがジャックが感じていたのは、命の軽さではなく重さだった。
そして、この行為がジャックの過去を白日に曝す引き金になろうとは、まだその時には思いもよらなかった。

スタッフ

監督:ジョン・クローリー
製作:リン・ホースフォード、ニック・マーストン、タリー・ガーナー
脚本:マーク・オロウ
原作:ジョナサン・トリゲル
製作総指揮:リザ・マーシャル
ライン・プロデューサー:スー・カルヴァリー
キャスティング・ディレクター:フィオナ・ウィアー
ヘアメーク:ジェシカ・テイラー
衣装:ジュリアン・デイ
作曲 パディ・キュネーン
音楽スーパーバイザー:リズ・ギャラチャー
サウンド・ミキサー:ジム・グリーンホーン
編集:ルチア・ズケッティ
美術監督:ジョン・ヘンソン
撮影:ロブ・ハーディ

キャスト

アンドリュー・ガーフィールド
ピーター・ミュラン
ケイティ・リオンズ
ショーン・エヴァンス
ジェレミー・スウィフト
アンソニー・ルイス
アルフィー・オウエン
テイラー・ドハーティ
スカイ・ベネット

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