ぼくのおばあちゃん
原題:My Grandma
忘れていた優しさがここにある。 家族を愛する全ての人へ…。涙と希望で紡いだ心温まる物語。
第21回東京国際映画祭 日本映画・ある視点部門 公式出品作品
2008年/日本/カラー/123分/ 配給:チェイスフィルムエンタテインメント
2008年12月6日、テアトル新宿ほか全国順次ロードショー
©2008「ぼくのおばあちゃん」製作委員会
公開初日 2008/12/06
配給会社名 0867
解説
砂利が敷かれた学校までの小道、夕飯のおいしそうな匂いが漂う路地、小さいながらも活気のある商店街、庭の陽だまりに植えられた柿の木——。まるで昨日のように覚えている子供の頃の懐かしい風景。そこにはいつも、おばあちゃんがいた。温かい思いやりでぼくを包んでくれた大好きなおばあちゃん。大人になって忙しい日々を過ごす今、ふと立ち止まってあの笑顔を思い出すだけで優しい気分になれる宝物のような存在。そんなおばあちゃんとの愛おしい日々を描く、涙と希望あふれる珠玉の感動作が誕生した。
家族が幸せになるための家づくりを提案する仕事に就き、トップ営業マンとして活躍する智宏。幼なじみと結婚しかわいい一人息子をもうけ、順風満帆な生活を送っていながらも、仕事に追われる毎日の中で自分自身の家族を省みる余裕を失いかけている。そんなとき客として担当したある一家と関わることで、心にしまいこんでいたおばあちゃんとの記憶が甦る。不在がちな両親の代わりにいつもそばにいてくれたおばあちゃんから、大切なことを教わった智宏。それは現在の智宏が忘れかけていた、かけがえのない家族の絆だった・・・。
原作はイラストレーターで詩人でもあるなかむらみつる。彼が実体験を元に描いたノスタルジックな物語を映画化するにあたって、素晴らしいキャストが集結した。孫思いのおばあちゃんに、今年御年82歳を迎えた菅井きん。黒澤明、川島雄三、成瀬巳喜男といった巨匠の作品で名バイプレイヤーぶりを発揮、近年では「必殺」シリーズなどで日本を代表する“おばあちゃん”として愛される彼女にとって、なんと映画主演は初めてのこと。半世紀以上にわたるキャリアの正に集大成としてこのはまり役に扮し、血の通ったキャラクターを見事につくりあげている。成長した孫の智宏に男闘呼組のメンバーとして一世を風靡、現在は舞台を中心に活躍する岡本健一。彼にとっても映画での主演は『あいつ』以来17年ぶりとなり、この作品に賭ける意気込みがひしひしと伝わってくる。また脇を固めるのもこれ以上は考えられないくらい豪華な面々。智宏の父に『容疑者 室井慎次』の柳葉敏郎、母に『Shall we ダンス?』の原日出子、妻に「花より男子」の加藤貴子が演じる他、阿部サダヲ、清水美沙、寺島進、宮川一朗太、津田寛治、桐谷健太、石橋蓮司、そして船越英一郎と主演クラスの名優がずらりと顔を揃えた。監督は『この窓は君のもの』でデビュー後、『VERSUS』『魁!!男塾』などで活躍する俳優でありながら、昨年『GROW —愚郎—』で初めて長編映画のメガフォンをとった榊英雄。過度な感傷に陥ることなく、鋭い洞察力に裏打ちされた誠実な演出を披露、監督としても類稀な才能を発揮している。音楽は監督の公私ともにパートナーである榊いずみが務め、息の合ったところを見せる。また回想シーンの撮影は昭和の佇まいを今なお残す愛媛県大洲市で行われている。
誰もが心の中に持つ懐かしくて穏やかな思い出。『ぼくのおばあちゃん』はそんな遠い日の物語であると同時に、脈々と受け継がれていく力強い家族の物語でもある。劇場を出たときには皆自分のおばあちゃんの顔を思い浮かべ、優しい気分になるだろう。そして今を生きる家族への愛情や命の大切さを改めて実感するに違いない。
ストーリー
智宏(岡本健一)は住宅展示場に勤務するトップ・セールスマン。客の幸せを第一に考えるその営業姿勢は山口常務(船越英一郎)ら上司や同僚から高く評価されているものの、いつも仕事に追われて夜も眠れない智宏の姿に、妻の絵美(加藤貴子)の心配は募るばかり。
住宅展示場に茂田夫妻がやってきた。妻の美佐子(清水美沙)は、年老いた義父の源次郎(石橋蓮司)を老人ホームに入れて家を建て替えたいと主張するが、夫の洋一(阿部サダヲ)は煮え切らない態度。後日、美佐子の要望に沿った家の図面を持って茂田家を訪れる智宏だったが、意見の対立する夫婦は智宏の前でケンカを始める。その傍らで仲の良さそうな源次郎と孫のタケシの様子を見た智宏の胸に、少年時代の記憶が甦ってくる。
おばあちゃん(菅井きん)は過去に撮影所でかつらをつくったりちょんまげをゆったりする結髪の仕事をしていた。その影響からか智宏は時代劇に夢中。模造の刀を振り回すやんちゃな少年だった智宏を、おばあちゃんは人一倍かわいがり買い物もいつも一緒。商店街の人々は薬局の憲次(宮川一朗太)をはじめ皆いい人ばかりで、特に八百屋の幸太郎(寺島進)は、口は悪いが智宏の切られ役に徹してくれる。でも一番の遊び相手は父の征二(柳葉敏郎)だった。入退院を繰り返す征二は自分に先がないことを自覚していたが智宏は知る由もない。お母さんとおばあちゃんを守るよう語る征二の言葉に無邪気にうなずく智宏。父の看病で母の千恵子(原日出子)はよく家を空けるため、家は智宏とおばあちゃんふたりきりのことが多かった。
そんな思い出に浸りながらも、智宏は相変わらず仕事に没頭する。忙しい合間を縫って息子の雄太の授業参観に行くことを約束するものの、美佐子からタケシがいなくなったと聞いて探しに出かけてしまう。源次郎と公園で遊んでいるタケシを発見した智宏は、祖父と孫の強い絆を目の当たりにし複雑な心境で学校へ急ぐが、既に授業参観は終わっていた。
少年時代、授業参観に来てくれるのは不在がちの母ではなくおばあちゃんだった。いつだって優しいおばあちゃんを、智宏はずっと守ると誓う。そんな中、征二が死んだ。葬式の晩、奥の部屋でひとりからだを丸めて泣くおばあちゃんは、智宏が近づくと力強く抱きしめた。
おばあちゃんががんに冒されていると分かったのは智宏が中学生だった頃。しかし智宏は、入院するおばあちゃんに病名を悟られないよう努めて明るく接する。その日から友人の誘いも断って毎日病院に通う智宏。だが医師から手の施しようがないことを知らされ、おばあちゃんを自宅に連れ帰ることを決める。
智宏はあることを考えた。家族みんなが幸せになる家づくり。それを実現させるために徹夜で家の模型作りに励む。
智宏はおばあちゃんが淋しくならないよう夜を徹して作業し、天井を写真で飾りつける。決してひとりじゃない。そんな智宏の思いやりにおばあちゃんは胸を熱くする。また誕生日には商店街のみんなを呼んでパーティーを開いた。プレゼントは幸太郎の娘・絵美が福引で当てたビデオカメラ。幸せそうなおばあちゃん。この瞬間が永遠に続くように祈る智宏だったが、残された時間はわずかしかなかった。
突然庭に出たいと言い出すおばあちゃんを背負って庭に出た智宏。翌朝、おばあちゃんは息を引き取ったのだった。
茂田家に赴いた智宏は、家の模型を見せながら最終説明をする。すると突然美佐子が源次郎と同居型の家にしてほしいと提案する。嬉しそうにすかさず別の模型を取り出す智宏。それこそが夜な夜な誠意を込めてつくっていた2世帯型の模型だった。
清々しい気持ちで久々に家族3人で故郷の実家へ帰る智宏たちを、千恵子は温かく迎える。そこで智宏は思いがけないものを発見した。それは時間を越えておばあちゃんから贈られた、最高のプレゼントだった・・・。
スタッフ
監督:榊英雄
プロデューサー:川上泰弘、亀石太夏匡
製作総指揮:木下直哉
原作:なかむらみつる
脚本:亀石太夏匡、榊英雄
音楽:榊いずみ
キャスト
菅井きん
岡本健一
阿部サダヲ
寺島進
清水美沙
加藤貴子
柳葉敏郎
船越英一郎
石橋蓮司
原日出子
吉原拓弥
伊澤柾樹
深浦加奈子
宮川一郎太
桐谷健太
並樹史朗
津田寛治
亀石征一郎
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