原題:A Time to Love 情人結

2005年/中国映画/上映時間:112分/アメリカンビスタ/ドルビーデジタル 字幕翻訳:水野衛子 /特別協力:パラマウント ジャパン株式会社 配給:ブロードメディア・スタジオ

2008年10月4日(土)より、渋谷シアターTSUTAYA他全国順次ロードショー *Q-AXシネマは、8月下旬より渋谷シアターTSUTAYAに館名変更いたします。

公開初日 2008/10/04

配給会社名 0551

解説



ヴィッキー・チャオ、ルー・イー競演。
80年代の中国を舞台に贈る、一途な想いを美しい映像で描いたフォ・ジェンチイ監督最新作。

詩情に満ちあふれた映像美で人間の機微を描き出し、『山の郵便配達』(99)では、中国のアカデミー賞ともいえる金鶏賞最優秀作品賞及び、最優秀主演男優賞を受賞。『故郷の香り』(03)では、金鶏賞最優秀作品賞、最優秀脚本賞の他に、第16回東京国際映画祭コンペティション部門最優秀作品賞、優秀男優賞を獲得。国内外を問わずに高い評価を得ているフォ・ジェンチイ監督が、80年代の中国を舞台に、”宿命的な愛”と”運命の皮肉”に翻弄される一組の男女を描く珠玉のラブストーリーに挑戦。一途な恋を美しい映像で綴る本作は、初恋のほろ苦い想い出が胸に迫る、切なく純粋な恋愛映画に仕上がった。

ストーリーの舞台は、1980年代の中国。家の干渉が個人に及ぼす影響が非常に強かった時代。チー・ラン(ヴィッキー・チャオ)とホウ・ジア(ルー・イー)は家族と共に官舎に住んでいた。幼馴染みのふたりは、成長するにつれ、いつしか惹かれあい、将来の愛を誓い合うようになった。しかし、ふたりの家同士の”ある因縁”が、皮肉にもふたりの運命を弄んでいく…。

「若いふたりに80年代の雰囲気をどう演じさせるのか?」
監督は、まず主演のふたりと共に、当時と現代の違いを分析した。
「今の若い人たちは、家族に反対されて恋人と別れるということが理解できないと思う。でも、当時は家族の干渉が恋愛だけではなく多岐に渡っていた」。これが中国の伝統的道徳観であり国情だった。このような時代背景から、主人公たちは、愛と家族の板挟みに悩み、家族も捨てられず、駆け落ちもできなかったのだ。
映画で主人公のふたりは、『ロミオとジュリエット』を読み、映画やバレエを観に行く。古い物語であるからこそ、ふたりは生きる道しるべを見つけ、耐え続けられた。そんな主人公ふたりの愛に対する一途さは、現代の人々が学ぶべきものだと監督は語る。「社会の進歩にしたがって、人々は感情の渦から逃げ出せなくなっている。しかし、本当の愛は、そんなに簡単で手近なものだろうか」。

本作の結末は、観る人によってハッピーエンドとも切ないラストとも受け取れる。監督は「時には涙を流さないことが涙を流すことより感動するのだ、と思った記憶がある」と話す。表現しようとしてもしきれない、人の感情のその境地が、最も感動的なものなのだと。そんな監督の細やかな感性が映画にも反映されている。最後のシーン、ふたりはまったく喜びの情を示さず、カメラに向かって涙をこらえている。これは、「長い間の忍耐がこの時に感極まるに違いない」と考えた結果だった。ふたりの初恋が想い出に変わった瞬間…。だからこそ、ふたりの静かな表情が、観る者の胸に迫ってくる。

監督は、『山の郵便配達』(99)、『故郷の香り』(03)など、国際的にも評価の高いフォ・ジェンチイ監督。主演のふたりには、中国で圧倒的な人気を誇る『少林サッカー』(01)や『レッドクリフ』(08 )の公開が控えるヴィッキー・チャオと『セブンソード』(05)、『ジャスミンの花開く』(05)のルー・イー。中でも、ヴィッキー・チャオは、18歳の少女が30歳の女性に成長する過程を、瑞々しくも表情豊かに演じ、本作で第8回上海国際映画祭主演女優賞を受賞した。

恋愛中の人、かつて恋愛をした人たちが、さまざまな思いで自らの愛を噛みしめ、見直す機会を与えてくれる本作。映画を観終わって、自分の人生を振り返る、そんな余韻に浸る、大人のためのラブストーリーが誕生した。

ストーリー




いつかは想い出に変わる時が来ると知りながら、
それでも求め合い、赤い糸をたぐり寄せ続けたふたりの初恋。

 1970年代の中国。小学生のチー・ラン(ヴィッキー・チャオ)とホウ・ジア(ルー・イー)は、同じ官舎で同じ時間を過ごしていた。チー・ランは、評判の美少女で、男の子はみな彼女を意識していた。ガキ大将だったホウ・ジアもそのひとりだった。

 ふたりは成長し、大学受験を控えていた。相変わらず男子生徒の憧れの的だったチー・ランを自転車のうしろに乗せて走るホウ・ジア。ふたりの間には、いつしか恋心が芽生え始めていた。何故か、ふたりの交際を快く思わない親たちとは対照的に、惹かれあうふたりは、地元にある東林大を受験する約束を交わす。ホウ・ジアは優秀な成績で東林大に合格し、チー・ランは東林大の分校に決まった。合格発表の日、ふたりは高校の仲間たちと遠出する約束をして帰宅した。合格を告げるホウ・ジアに母親が突然、「亡くなったお前の父さんはチー・ランの父親のせいで自殺した。誰と付き合おうと構わないが、チー・ランだけはダメだ」と叱責する。約束の場所に現れないホウ・ジアを迎えにきたチー・ランに、ホウ・ジアは「もう訪ねてこないでくれ。理由は父親に聞けよ」と冷たく突き放す。傷ついたチー・ランは、兄や両親にホウ・ジアの父親の死について尋ねたが、誰も真相を答えてはくれなかった。

 大学生活が始まり、シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』に深い感動を覚えたチー・ランは、ホウ・ジアに会い、想いの丈を込めてその本を手渡した。一途にお互いを慕い、想い合うふたりは、周囲の反対との板挟みの中で、ロミオとジュリエットに自分たちの境遇を重ねた。そして、親の目を逃れ、将来も考えずふたりきりの時間を過ごした。
 しかし、親たちの反対は激しさを増していき、彼らを引き離そうとしていた。ふたりは”ロミオとジュリエット”の本や写真、舞台やオペラを見てまわった。この物語に自分たちを投影させ、互いの気持ちのよりどころとした。ホウ・ジアが言った。「生命を捨てるか、希望を捨てるか」と。チー・ランもその意味することを繰り返し考えた。

 初めて結ばれた日、ふたりは命を断とうとする。しかし愛する人に生きて欲しいという思いから実行できずに警察に保護されてしまう。そこでもお互いの両親が口論となり、さらにふたりを傷つける。その帰り道、ホウ・ジアは母親から父親の自殺の真実を聞かされる。当時、父親と職場の若い女性が親しくなり、彼女が妊娠したという噂が流れた。チー・ランの父親が党を代表して女に話を聞きにいき、女がホウ・ジアの父親に強姦されたと告発した。父親は留置所に入れられ、取り調べが始まる前に自殺してしまったというのだ。ホウ・ジアの母親は、私は裏切られたが、父さんの名誉だけは守ってあげたいと悲しげに言った。
 ホウ・ジアは、悩んだ末、母親の気持ちを汲んで、留学を決めた。当日、「何も言わないのは何も変わらない証拠。何も言わなければ永遠に気持は変わらない」という言葉を変わし、ふたりは離れた。チー・ランはホウ・ジアの帰りを静かに待った。ホウ・ジアからは、 “ロミオとジュリエット”にまつわるものを添えた手紙が送られてきた。
 いつ会えるのか、いつ家族にわかってもらえるのか…。先がわからないふたりにとって、今は”ロミオとジュリエット”だけが心の支えだった…。
 ある日、チー・ランは、ホウ・ジアの母親から女性と笑いあうホウ・ジアの写真を見せられる。それを見たチー・ランは、初めて孤独を感じ、自らホウ・ジアとの連絡を断ってしまう。

 7年後、ホウ・ジアは帰国するが、チー・ランをすぐには訪ねなかった。彼女が違う人生を歩んでいるのではないか…という不安からだった。一方のチー・ランも、自分の殻に閉じこもり、独りきりでいた。お互いが距離を置くほど、お互いを想い続ける日々が続いた。
 時は過ぎ、チー・ランの父親が末期癌に侵されていることが分かる。余命短いチー・ランの父親は、ホウ・ジアの母親に電話し、昔の事件のことを謝罪した。そして、ホウ・ジアを家に呼んで欲しいと頼んだ。家を訪ねたホウ・ジアにチー・ランの父親は、「私が娘の幸せを奪ったも同然だ。娘と結婚してやってくれ」と静かに話した。しかし、父親が病になったのは、親不幸だったから…と思い悩んだチー・ランは、ホウ・ジアと会おうとはしなかった…。

 ある年のバレンタインデー。同僚の結婚式の下準備に同伴していたチー・ランは、ホウ・ジアと偶然再会する。ふたりは、レストランで食事をしながら、男性が女性に花を贈る様子を見ていた。チー・ランが言った。「今の若い人はロマンチック。私たちは時代遅れね」と。ホウ・ジアが「何も言わないのは何も変わらない証拠。何も言わなければ永遠に気持は変わらない」と以前交わした言葉を口にして言った。「結婚しよう。幸せにする」と…。

 しかし、ふたりはウエディングドレスとタキシードに身を包み、記念として写真だけを撮影した。
 それは、ふたりの初恋が、20年以上の時を経て、想い出に変わった瞬間だった…。

スタッフ

監督:フォ・ジェンチイ

キャスト

ヴィッキー・チャオ
ルー・イー

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