原題:The Counterfeiters

2007年ベルリン国際映画祭 コンペティション部門正式出品作品

2006年/ドイツ-オーストリア合作/カラー/96分/1:1.85ビスタ/SRD・ドルビーSR 原題:DIE FÄLSCHER /英題:THE COUNTERFEITERS 翻訳:佐藤一公  提供:クロックワークス、デックスエンタテインメント 配給・宣伝:クロックワークス

2008年1月19日より日比谷シャンテシネにてロードショー

公開初日 2008/01/19

配給会社名 0033

解説


ナチス・ドイツから紙幣贋造を強制されたユダヤ系技術者たち。
自分の命か、それとも家族を、仲間を守るのか。
正義をかけた闘いが始まる。

第二次世界大戦中のドイツ、ザクセンハウゼン強制収容所。
そこに各地の収容所から送られてきたのは、世界的贋作師・サリー、印刷技師・ブルガー、美校生のコーリャなどユダヤ系の技術者たち。彼らに課された使命は「完璧な贋ポンド札」を作ること。収容所内には秘密の工場があり、ナチス・ドイツは、そこでポンド札の大量贋造を行い、イギリスへ経済的打撃を加えることを狙っていたのだ。
サリーたちの命をかけた贋札作りは、成功しつつあった。しかし、それはナチスに資金を与え、戦況を有利にし、収容所にいる家族や恋人を苦しめ続けることを意味する。自分の命か、正義を全うするか。彼らは葛藤し、苦悩する。そんな中、なかなか完成しないことにしびれを切らしたナチス親衛隊の将校から期日までに完成できない場合、見せしめに5人を銃殺すると通告される——

国家による史上最大の贋札事件「ベルンハルト作戦」。
驚愕の歴史的事件に隠された感動の物語。

1959年、オーストリア・トプリッツ湖から大量のポンド紙幣が見つかった。引き上げたところそのすべてが贋札。一緒にみつかった資料から、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツがイギリスの経済混乱を狙った「ベルンハルト作戦」のもと、強制収容所内の紙幣贋造工場で作ったものだということが判明した。
この驚きの事件については、贋ポンド札が主にドイツのスパイ活動に使用されていたことから、ミステリー小説などでナチス側の視点から語られることが多く、強制的に贋札作りに従事させられていたユダヤ系技術者の視点から描かれたものは少なかった。本作『ヒトラーの贋札』は、彼らの苦悩と葛藤、命をかけて信念を守り抜いたその姿を、よりリアルに観客へと伝えるため、実際に強制収容所で紙幣贋造に携わった印刷技師アドルフ・ブルガー氏の著書「THE DEVIL`S WORKSHOP(日本語版「ヒトラーの贋札 悪魔の仕事場(仮)』朝日新聞社刊」をベースに、フィクションを加え映画化。当時の印刷技術や贋札作りの工程を忠実に再現しながらも、スリリングかつドラマティックな物語に見事に仕上げている。

ベルリン国際映画祭コンペティション部門正式出品
ドイツ・アカデミー賞最優秀作品賞を含む主要7部門ノミネート
第80回米・アカデミー賞外国語映画部門 オーストリア代表作品

2007年のベルリン映画祭コンペティション部門では、私的かつアーティスティックな作品が並ぶ中、『ヒトラーの贋札』のエンターテイメント性を備えた物語の面白さは異色であり、受賞は逃したもののマスコミ・観客の評価はきわめて高かった。その後行われたドイツ・アカデミー賞では、最優秀監督賞、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞など主要7部門にノミネートという快挙を成し遂げ、第80回米・アカデミー賞外国語映画賞のオーストリア代表作品にも選出された。

ストーリー

第二次世界大戦終結直後、モナコ・モンテカルロ。一流ホテルにみすぼらしいスーツを着ている男サロモン・ソロヴィッチが入ってくる。その手には札束が詰まったスーツケース、腕には強制収容所の囚人番号の刺青がある。
1936年、ベルリン。賑わう夜の酒場で、ソロヴィッチ、通称サリーは商売に忙しい。彼はその秀でた芸術的才能を利用し、パスポートや紙幣などあらゆる偽造を行う贋作師だ。捕まることを防ぐため、同じ場所に長く滞在はしない。今晩中にベルリンを発つ予定の彼のもとに最後の客アグライアがやってくる。その美しさに惹かれ思わず、一晩をともにしてしまった翌朝、彼は犯罪捜査局の捜査官ヘルツォークに捕らえられてれしまう。
サリーはマウトハウゼン強制収容所に送られた。彼はそこが犯罪者の送られる刑務所だと思っていたが、ほどなくしてそうではないことに気づく。ここでは囚人たちが次々と組織的に殺されていくのだ。そしてサリーをはじめ囚われているのは皆ユダヤ人だった。ナチスによるホロコーストが始まっていた。
地獄のような日々の中、息抜きに描いたスケッチがナチス親衛隊の隊長に気に入られ、サリーは彼らの肖像画やプロパガンダの壁画を描くお抱えのアーティストとなり生き延びるが、ある日ザクセンハウゼン強制収容所への移送が言い渡される。死を覚悟した彼を待っていたのは、ベルリンで自分を捕らえたヘルツォークだった。彼はサリーの逮捕により親衛隊で出世し、いまや極秘任務を指揮する立場となっていた。その驚くべき任務とは、イギリス経済に打撃を与える目的の「ベルンハルト作戦」に使用する完璧な贋ポンド紙幣を、特殊技術を持つ囚人を使って大量生産すること。サリーはその腕を見込まれ移送されてきたのだった。
贋札工場は、ザクセンハウゼンの一般の囚人とは完璧に隔離された場所にあり、各地の収容所から集められた印刷や銅版画のプロたちが働いていた。そこには美しい音楽が流れ、清潔でふかふかのベッド、温かい食事が用意されており、今までと比べるとまるで天国のような待遇だった。しかしそれは作業員たちの士気を高め、完璧な仕事をさせるためのもの。もし任務が成功しなければ、作業員たちはガス室へ送られるであろうこと、そして任務が無事終了した時も同じく死が待っていることは明白だった。サリーは一緒に送られてきた美校生のコーリャ、印刷技師のブルガーなどと共に作業にとりかかった。とにもかくにも完璧な贋ポンド札を完成させ、量産すること。それが自分達の命を一日でも延ばすことになる。
いくつかの困難な課題を乗り越え、サリーはその卓越した技術で完璧なポンド紙幣を作り出すことに成功する。すぐにその大量生産が行われた。その間は、まるで収容所にいることを忘れるかのような日々だった。今まで自分のことしか信用せず一人で生きてきたサリーは、ブルガーやコーリャたち仲間に心を許し始めていた。しかしある日、アウシュヴィッツから資材として送られてきた古紙の中に、仲間の一人ロセックの子供たちのパスポートがみつかったことから事態は急変する。それは子供たちの死を意味していた。この出来事により、彼らは今まで考えないようにしていた現実を突きつけられる。自分たちが生き残るためにナチスに協力していること、それがドイツの戦況を有利にし家族や恋人、そして同胞たちが置かれている状況を悪化させているということ。正義感の強いブルガーは、自分たちが決起し戦うべきだと協力を求めるが、サリーは無駄死にになると相手にしなかった。
贋ポンド札の生産が軌道に乗ると、サリーたちに新しい任務が言い渡される。今度は贋ドル札の製造だ。その印刷には、ブルガーの持つ特別な技術が必要だった。しかし「ナチの金は刷れない」とブルガーは協力を拒否し、その上、作業を妨害しはじめる。なかなか成果のでないことに痺れをきらせたヘルツォークは、あと4週間以内に出来上がらなかった場合、ブルガーを含む5名を銃殺すると宣告する。死に怯える作業員たちは、ブルガーのことを密告するべきだとサリーに詰め寄るが、サリーは仲間を売ることはできないと拒否し、なんとか贋ドル札をブルガーなしで仕上げようと寝る間も惜しんで作業し続ける。そんな中、コーリャが結核に侵され、薬がなければ命が危ない状態になってしまう。サリーはヘルツォークとある作業を引き受ける代わりに薬をもらう取引をする。それはヘルツォークと妻子の、スイスのパスポートを偽造すること。戦況を不利とみたヘルツォークは国外逃亡を企てていたのだ。
贋ドル札完成の期限が来た。サリーは見事に贋ドル札を作り上げ、ヘルツォークとの取引にも成功し、コーリャの薬を手に入れることができた。しかし、コーリャの病気がなぜか親衛隊にばれてしまい、感染防止のために銃殺されてしまう。
数日後、親衛隊は工場の作業を停止し、すべての機材を運び出し始める。すぐそこまで連合軍が迫ってきていたのだ。親衛隊の兵士がすべて去った夜、工場にヘルツォークが忍び込んでくる。密かに隠しておいた贋ドル札を取りに戻ってきたのだ。それを見つけたサリーは、彼から銃を奪い突きつける。コーリャの銃殺はヘルツォークの命令だと確信していた。引き金に指がかけられる。
翌朝、硬く閉ざされていた工場の扉を破ったのは、連合軍ではなく収容所に囚われていた人々だった。サリーは扉の外の想像以上に悲惨な現実に打ちのめされるように彷徨い、歩いていく。

スタッフ

監督・脚本:ステファン・ルツォヴィッキ−
アドルフ・ブルガー著
「THE DEVILS WORKSHOP(日本語版「ヒトラーの贋札 悪魔の仕事場」(朝日新聞社刊による)
製作:ヨーゼフ・アイヒホルツァー/二ーナ・ボールマン/バベッテ・シュレーダー
共同製作:カロリーネ・フォン・ゼンデン/ヘンニング・モルフェンター/カール・L・ヴェプケン博士
プロダクション・マネージャー:モニカ・マルシュコ/クリスティアン・シュプリンガ−
撮影:ベネディクト・ノイエンフェルズ
編集:ブリッタ・ナーラー
音楽:マリウス・ルーラント
タンゴ演奏:ウ−ゴ・ディアス
メイク:ヴァルデマール・ポクロムスキー/ダニエラ・スカラ
衣装:ニコ−レ・フィッシュナラー
美術:イジドール・ヴィマー
キャスティング:ヘタ・マンチェフ/マルクス・シュラインツァー

キャスト

サロモン・ソロヴィッチ:カール・マルコヴィクス
アドルフ・ブルガー:アウグスト・ディール
ヘルツォーク親衛隊-少佐:デーヴィト・シュトリーゾフ
ホルスト親衛隊-小隊長:マルティン・ブラムバッハ
クリンガー医師:アウグスト・ツィルナー
アツェ:ファイト・シュテュプナー
コ−リャ :セバスチャン・アーツェンドウスキ
ツィリンスキー:アンドレアス・シュミット
ハーン博士:ティロ・プリュックナー
ロセック:レン・クトヤヴィスキ
プラップラー:マリアン・カルース
アブラモヴィッチ:ノーマン・シュトフレーゲン
シャワー室の囚人:ベルント・ラウカンプ
親衛隊-衛兵:ディルク・プリンツ
グレーテ・ヘルツォーク:ヒーレ・べゼラー
銀行支店長:エリック・ヤン・リップマン
工作員:ティム・ブレイフォーゲル)

モンテカルロ
カジノの令嬢:ドローレス チャップリン
コンシェルジュ:ローラント・フィッシャー・ブリアント)
ギャンブラー:ルイ・オースティン
支配人:ミヒャエル・ラシナス
ディーラー:ミヒャエル・ブローン

ベルリン
アグライア:マリー・ブロイマ−
ハンス:アーンツ・シュヴェリング・ゾーンレー
サーシャ:ヤン・ポール
女:リリー・クーグラー
ならず者:マティアス・ルーネ
故買人:ハインツ・シュバート   
踊り子:ロージ・シュトラーカ)

マウトハウゼン
伍長:ホルガー・ショーバー
囚人班長:スティーブ・シード
親衛隊-将校:ペーター・シュトラウス
同房の青年:ベルンハート・リンケ
ローゼンタール:ヴァーナー・デーン
親衛隊-小隊兵:レアンダー・モダーゾーン

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