原題:SCREAMING MASTERPIECE

ここには音楽の遺伝子が息づいている

2005年/アイスランド/カラー/87分/ 配給:エイベックス・エンタテインメント

2007年7月7日、シネクイントにてロードショー

公開初日 2007/07/07

配給会社名 0316

解説


彼らには独自の文字と偉大な勝利の物語がある
人々はいまも自らの歴史を歌にしたり岩に刻んだりしている
歴史の記憶が永遠に残されるように
大自然の力がかき消すとしても
ーーーサクソ・グラマティクス(デンマークの歴史家)12世紀

 北大西洋の海に囲まれ、氷に覆われた大地アイスランド。北海道と四国を合わせたほどの国土に、人口わずか30万人が住むその島には、音楽学校が90校あり、合唱団員は6000人、オーケストラは400を数え、バンドやDJは数知れず……。
 これまであまり知られることのなかった、多種多様なアイスランドの音楽シーンを描き出すドキュメンタリーが誕生した。アイスランドの首都レイキャビクを中心に、ビョークやシガーロスといった世界的アーティストから、日本ではあまり紹介されることのないインディーズミュージシャンまで、生のアイスランドの音楽が登場し、私たちを魅了する。
 自然を愛し、詩を愛するアイスランドの人々。北極圏に近い小国から、これほどまでに多様なミュージシャンが生まれるに至った背景には何があるのか。そして何が彼らを音楽に向かわせているのかーー。

 果てしなく続く氷壁、雪に覆われた岩山、冷たく光る海。幻想的で美しい風景と、ビョーク、シガーロス、ムーム、カラシといったアーティストの、世界各地でのライブ映像やインタビューが交錯する。古代詩を詠唱するパフォーマンスでシガーロスとも共演しているペガン教の司教ヒルマール・オゥルン・ヒルマルソンが、音楽と詩について語り、アイスランドの著名な映画監督フリドリク・トール・フリドリクソンが、自身が監督した記録映画『ロック・イー・レイキャビク』と当時のシーンを語る。シュガーキューブス時代のビョークの映像や、カラシの東京でのライブ映像も貴重だ。さらに見逃せないのが、個性豊かなミュージシャンたちの数々。ミュージックボックス(オルゴール)などユニークな楽器を用いるバンド、ストリングスにストーンハープ(石のハープ)などを加えた大編成バンド、エレクトロニカ、さらにはラップまで、登場する音楽は多岐にわたる。田舎町で結成された少年たちのバンドが、フー・ファイターズと共演するなど、にわかに信じがたい光景も、ここではあり得ることなのだ。
 アイスランドのミュージシャンたちは、ジャズやパンクなど、あらゆる音楽を取り入れては、独創的な自分たちの音楽を生み出してきた。それはまた、地理的にも文化的にもヨーロッパとアメリカの中間に位置し、北欧やケルトなどさまざまな文化の影響を受けながら、独自の文化を築いてきたアイスランドの豊かさでもある。
 監督したのは、母国アイスランドでドキュメンタリー映画制作を続けるアリ・アレクサンダー・アーギス・マグヌッセン。
 アイスランドの火山のように熱く爆発的なエネルギーと、氷河のようにクールで神秘的なサウンドに彩られた奇跡の音楽を、観客はスクリーンで体感するのだ!

このドキュメンタリーには、登場するアーティストやバンドのストーリーを組み込んでいる。スタジオやコンサート会場など、彼らの活動の現場を追い、彼らの視点や考えに密着する。それぞれのストーリーごとにテーマがあり、コンサートの開演や曲のリリースなどで盛り上がりを迎えるようになっている。注目に値するのは、ヒルマル・オルンとステインドール・アンデルセンが中世の伝統的な物語をベースにした作品の大がかりなプロデュースを手がける部分だ。ベースとなるのは運命の女神ノルンが人間界のさまざまな血まみれの人生を織り成す11世紀の詩である。このプロジェクトに対するアーティストたちの関心は高いという。アーティストたちの多くは、ステインドール・アンデルセンやヒルマル・オルンとともに活動した経験がある。ヒルマル・オルンは、アイスランドの前衛的なポップ・シーンのパイオニア的存在だ。ほぼすべてのバンドが彼の影響を受け、何らかの形で彼のサポートを受けている。この2人のアーティストと彼らが手がけるプロジェクトが中心的なストーリーとなり、それを取り巻くようにその他のストーリーが組み込まれているのである。

ストーリー



<出演アーティスト>
●アミナ AMINA
女性4人からなるカルテット。ヴァイオリンの旋律にさまざまな音楽要素を加え、電子音やシロフォン(木琴)、ミュージックボックス(オルゴール)などを用いて演奏している。シガー・ロスのバックバンドをつとめ、その音楽の一部ともなっている。

●アパラット・オルガン・カルテット APARAT ORGAN QUARTET
オルガン奏者4人からなるカルテットに、ドラマーが加わり、自由な演奏スタイルで注目を集める。アルバムもリリースし、メンバーそれぞれがソリストとしても活動中。

●バルディ・ヨハンソン BARDI JOHANNSSON
シンガーソングライター、アレンジャー、プロデューサー、プログラマーとして活躍する、鬼才ミュージシャン。注目のポップスプロジェクト「バングギャング」でも活動中。

●ビョーク BJORK
アイスランドを代表する天才シンガーであり、サウンドクリエイター。1965年生まれのビョークは、11歳でアルバムをリリース。いくつかのバンドを経て18歳のときにパンク/ニューウェーブバンドのKUKLに参加。86年に解散するが、同時期にそれを母体としたバンド、シュガーキューブスが誕生。88年にアメリカのレーベルからファーストアルバムが発表され、世界的に注目を集める。93年にソロアルバムをリリースしてからも、常に注目を集める世界のトップアーティストのひとり。『ビョークの「ネズの木」』(86)、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00)では女優としても活躍。最新アルバム「Volta」が5月に発売。

●エギル・ショービョルンソン EGILL SÆBJORNSSON
サーカスの団長からミュージシャンに転向したというユニークな経歴を持つ。本編では、アクロバティックな身体の動きをとらえた映像に合わせて、ドラムを演奏するパフォーマンスが見られる。

●エイナール・オゥルン・ベネディクトソン EINAR ORN BENEDIKTSSON
伝説的ロックグループ、プルクル・ピルニックの一員としてシーンに登場して以来、アイスランドのニューウェーブの第一人者として知られるようになる。その後ビョークらとKUKL、続いてシュガーキューブスを結成。86年にはシュガーキューブスのメンバー数人とバッド・テイストというレーベルを設立している。現在は、ゴースティギタル(GHOSTIGITAL)名義で活躍中。

●アイウ゛ォール・パルスドッティル EIVOR PALSDOTTIR
フェロー諸島出身のシンガー。もとはフェロー諸島の民謡を歌っていたが、その才能を見いだされ、彼女が19歳のときに録音したアルバム「krakan」は、アイスランド音楽賞で大賞を受賞した。

●エルプル・エイヴィンダルソン ERPUR EYVINDARSON
アイスランド・ラップの伝道者。アイスランドの若者や社会に、独自のスタイルでメッセージを伝えている。

●フィンボギ・ピエトゥルソン FINNBOGI PETURSSON
アイスランドを代表するヴィジュアル・アーティスト。彼の作品は音楽を重要なモチーフとしており、本編でも一瞬だが彼の作品が見られる。2001年にはヴェネチアビエンナーレでアイスランド代表として作品を出品。今年5月のレイキャヴィーク芸術祭では、ゴースティギタルとのコラボレーションが企画されている。

●ヒルマール・オゥルン・ヒルマルソン HILMAR ORN HILMALSSON
現代アイスランド音楽シーンのゴッドファーザーとも称される人物。80年代初頭に最も影響力のあるバンドとして有名だった「ティール」で活躍したあと、さまざまなグループで活躍。古代音楽や古代詩の発掘に力を注ぎ、伝統的なアイスランド歌手のスタインドール・アンデルセンやシガー・ロスとコラボレーションを続けてきた。アイスランド独特の宗教ペイガンの司教でもある。

●ヨハン・ヨハンソン JOHANN JOHANNSSON
アパラット・オルガン・カルテットのリーダー的存在で、ムームなどと活動してきたミュージシャン。アイスランド映画で数々のサウンドトラックも手がけている。

●ミヌス MINUS
クルンミのリードヴォーカルと激しいサウンド、電子音楽の融合で人気のあるロックバンド。上半身裸のステージパフォーマンスで若者を熱狂の渦に巻き込んでいる。

●ムーギソン MUGISON
船乗り出身のシンガーソングライター。デビューアルバム「ロンリー・マウンテン」がいきなりヒットし、サードアルバム「ムーギーママ・イズ・ディス・モンキー・ミュージック?」がアイスランド・ミュージック・アワードで4部門を受賞するなど話題となる。シガー・ロス、ムームに続く注目株と評されている。

●ムーム MUM
エレクトロニカ・ロック・グループ。アルバム「イエスタデイ・ワズ・ドラマティック・トゥデイ・イズ・オーケー」でデビューし、アコーディオン、トランペット、オルガン、のこぎりといった生楽器とデジタルを融合させたサウンドで注目を集める。最新作「サマー・メイク・グッド」はアイスランドの人里離れた灯台の中で制作されたという。

●ニルフィスク NILFISK
アイスランド南沿岸の小さな村で結成されたバンド。偶然フー・ファイターズと出会った彼らは、その後レイキャヴィークの大型コンサートでフー・ファイターズと共演を果たした。

●オーディンズ・レイブン・マジック ODIN’S RAVEN MAGIC
ヒルマール・オゥルン・ヒルマルソン、シガー・ロス、ステインドール・アンデルセン、マリア・フルドの4人を中心としたバンド。これまでにレイキャヴィーク芸術祭をはじめ、海外でも演奏会を成功させている。大編成の合唱団、大量のストリングスを擁したオーケストラ、ストーンハープ(石琴)などを加えた壮大な規模の演奏をバックに、古代詩の朗読が響きわたるさまは、古代の神々に捧げるような荘厳な雰囲気を醸し出している。

●カラシ QUARASHI
幅広いサウンドを持つヒップホップ・ロックバンド。ラップ、パンク、ハードロックをミックスしたサウンドは、ビースティー・ボーイズ+レイジ・アゲンスト・マシーンとも評され、全米でもブレイクを果たした。2005年、ヒットアルバム「ゲリラ・ディスコ」を発表するが、その後解散。

●シガー・ロス SIGUR ROS
ポスト・ロックとも言われる、いまやアイスランドを代表する4人組。美しいメロディラインと甘いリードヴォーカル、轟音ギターが生み出す幻惑的サウンドで聴衆を魅了している。レディオヘッドのヨーロッパツアーのサポートを務めて世界中に注目され、アルバム「( )」が世界で100万枚以上のセールスを記録。アイスランド語で「ありがとう」を意味する最新アルバム「Takk…」も彼らの独創性を決定づけている。

●シンガポール・スリング SINGAPORE SLING
ヘンリク・ビョルンソン率いるバンド。2002年にアイスランドエアウェイウ゛ス・フェスティバルに出演し、絶賛される。

●ショーン SJON
詩人で小説家でもあるショーンは、KUKL、シュガーキューブスとのコラボレーションで、ステージに立った経験もある。またビョークに詞を提供したり、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』では作詞も手がけている。2005年にはノルディック文学賞を受賞。

●スロウブロウ SLOWBLOW
ムームともつながりの深いデュオ。ピアノやウッドベースなどローファイ・アナログ・サウンドとソフトノイズなギターサウンドがマッチして、ホームメイドな温かさを生んでいる。これまで3枚のアルバムをリリース。彼らが音楽を手がけた映画『氷の国のノイ』の監督ダーグル・カウリは、スロウブロウの一員。

●ステインドール・アンデルセン STEINDOR ANDERSEN
神話や史実をモチーフにして語られる古代詩の語り、リームルの伝承者。アンデルセンは、アイスランドの古代音楽のルーツであるリームルを、初めて楽譜に起こし、レコーディングを完成させた。シガー・ロスらとコラボレーションも果たし、アイスランドの音楽界に多大な影響を及ぼしている。

●シュガーキューブス THE SUGARCUBES
ビョーク、エイナール・オゥルン、ソール・エルドンらによって86年に結成。88年に「Life’s Too Good」で衝撃的なデビューを果たし、世界の音楽プレスに絶賛される。その後も多くのアーティストに影響を与えるが、92年に解散。昨年、結成20周年を記念して、再結成コンサートが開催された。

●トラバント TRABANT
ヴィジュアル・アーティストでもあるラグナール・キャルタンソンらによるバンド。アイスランドの首相官邸で初めてエレキサウンドを演奏したバンドでもある。

●ヴィニール VINYL
レイキャヴィーク郊外で育った幼なじみ6人によって結成されたバンド。破壊的な激しいサウンドとパワフルなリズムで、独特のスタイルを築いている。

スタッフ

監督&製作&脚本:アリ・アレクサンダー&イルギス・マグヌッソン
プロデューサー:シガージョン・サイヴァッツォン
音楽:ソール・エルドン 
音楽デザイン:ヤータン・ヤータンソン

キャスト

アミナ
アパラット・オルガン・カルテット
バルディ・ヨハンソン
ビョーク
エギル・ショービョルンソン
エイナール・オゥルン・ベネディクトソン
アイウ゛ォール・パルスドッティル
エルプル・エイヴィンダルソン
フィンボギ・ピエトゥルソン
ヒルマール・オゥルン・ヒルマルソン
ヨハン・ヨハンソン
ミヌス
ムーギソン
ムーム
ニルフィスク
オーディンズ・レイブン・マジック
カラシ
シガー・ロス
シンガポール・スリング
ショーン
スロウブロウ
ステインドール・アンデルセン
シュガーキューブス
トラバント
ヴィニール

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