原題:秋雨

2004年/中国映画/中国語/原題:秋雨/ヴィスタサイズ/ドルビーSR/98分 提供:ジェネオン・エンタテインメント、フォーカスピクチャーズ、ワコー 配給:ワコー、フォーカスピクチャーズ/配給協力:グアパ・グアポ

2008年06月25日よりDVDリリース 2007年11月3日、銀座シネパトスにてロードショー

公開初日 2007/11/03

配給会社名 0321/0837

解説


 京劇の世界を題材にした映画といえば、陳凱歌(チェン・カイコー)監督、レスリー・チャン、張豊毅(チャン・ホンイー)が主演し1993年カンヌ国際映画祭パルムドール賞(最高賞)に輝いた『覇王別姫 さらばわが愛』が真っ先に思い浮かぶ。第二次大戦、国民党、共産党の内戦、中華人民共和国の成立、文化大革命そして四人組の失脚、文化大革命の終結と時代の荒波に翻弄されたふたりの京劇役者の姿を描き、鮮やかに中国の現代史を切り取った名作として世界的に評価されファンの多い作品である。日本でもこの映画から中国映画が好きになり、レスリー・チャンのファンになったという人も多い。
 1992年孫周(スン・チョウ)監督『心の香り』は、田舎に隠居している元京劇役者のおじいちゃんとそこに預けられた孫の男の子の心の交流を描いた佳作。おじいちゃんと孫、おじいちゃんといい付き合いをしている美しいおばさん、孫と近所の同年代の少女、その心の通い合いが、きめ細かに清廉に描写されて、最後におじいちゃんが、孫がまごう事なき天才京劇役者であることを知るシーンは圧巻ですらあった。
 1993年東京国際映画祭ヤングシネマゴールド賞を受賞した寧瀛(ニン・イン)監督『北京好日』は、京劇「西遊記」の舞台から始まる。北京の京劇院・珠子口劇院の住み込み管理人を退職した韓じいさんが、京劇を趣味にした退役老人の素人劇団と知り合い演出家に奉られ、彼らが舞台に立つまでの顛末を面白おかしく哀しく暖かく描いた。
映画『時を経て、海を越えて』も、こうした映画と同じく京劇と京劇院を舞台にしている。京劇を勉強するため中国に来た日本人女性と京劇俳優の青年との恋。元京劇の女形スターの家に居候できた彼女は、一度京劇を捨てたその家の息子と恋に落ちる。「本当に私は日本人なの、パスポートを見せるわ」「その必要はないよ。中国人で、自ら日本人と名乗る奴はいないよ」という環境の中、反対や嫉妬にめげず、ふたりは国境を越えた愛を実らせようとしていた。ところが、ふたりのおじいさんの時代に、日中両家の祖父は会っていた。しかも、それは不幸な出会いであった。過去のことではあったが、ふたりの間には再び乗り越えるべき高い壁ができた。京劇の名作「四郎探母」の稽古を通じて愛をはぐくんだふたりは、演目さながらに愛し合いながら敵味方の思いを味合わされなければならなかった。「四郎探母」は宋代の中国の物語で、宋の名門・楊家の四郎は異民族国家・遼との戦いに敗れ、兄ふたりを失い遼の捕虜になった。四郎は身分を隠して生活しているうちに遼の王女に見初められ結婚する。しかし、再び宋が力をつけ母と弟が国境付近まで攻め込んで来た。望郷の念に耐え切れない四郎は、妻の王女に身分を明かし懇願して母と弟に会いに行く。王女は四郎が帰って来る事を信じ、四郎は必ず遼の国に戻ることを約束する。この四郎と王女の心が映画『時を経て、海を越えて』の主人公ふたりの愛の形に呼応してくる。
日本人女性と京劇俳優との恋を縦軸に日中戦争の悲劇を横軸に描かれているこの映画は、2005年中国国内で、七七事変(盧溝橋事変)68周年記念、日中戦争勝利60周年記念の式典で上映された。しかし、これまでの中国映画では「鬼」としてしか描かれなかった日本兵が、この映画の日本兵は罪の意識を持ち、終戦の後も贖罪意識を持っている。巧妙な反戦映画となり、北京の大学生映画祭の上映作品の一本にも選ばれ大きな評価を得た。
監督は、葛優(クー・ヨー)をスターダムにのし上げた、今も伝説的に語り継がれるヒットテレビドラマ「編集部物語」で有名な孫鉄(スン・ティエ)。主演は台湾で活躍する 東(チン・トン)。そして外国人で初めて北京電影学院本科を卒業し、中国映画で女優デビューした前田知恵、現在、NHKテレビ中国語会話に出演中である。

ストーリー

 2004年1月冬、北京・西直門駅。
 ネットで知り合った大連の友人・橋社長を出迎えに来ていたカ何は、その男性の名前を名乗る女性に呼び止められ驚く。京劇ファンの男性を迎えに出たはずが、現れたのは日本人の若い女性しこ栀子だったからである。彼女は祖父のチャット友達であるカ何を頼って、京劇院で京劇を学ぶために日本からやって来た。仕方なくカ何が京劇院の舞台袖にしこ栀子を連れて行くと、やはり大変な問題となり、院長から強く意見されてしまう。日本人に京劇を学ばせるのは規則違反、さらに年齢が離れているとはいえ同じ屋根に住む訳にも行かず、カ何は突然の来訪者に戸惑いを隠せない。同じ夜、廊下に突然の訪問者が立っていた。8年ぶりに戻ってきたカ何の息子ミン鳴だった。梨園に育ったミン鳴だったが、一度芝居を離れ、父の元を去り実業の道を志した。しかし、再び父の後を継ぐため役者として舞台に立つ決心をしていた。カ何は受け入れる事が出来ず、出ていけとミン鳴に言い放つ。
 次の日の早朝、中庭では槍を手に鳴が芝居の稽古をしている。役者に戻るという息子を部屋に入れ、カ何が怒っていると、今は学院の先生となっているミン鳴の姉弟子シュー徐先生が朝食を持って入ってくる。ミン鳴はそこで初めてしこ栀子に会い、彼女がシュー徐先生の下にいる日本人の生徒だということを知る。
 腰の悪いカ何を心配して、しこ栀子の祖父はわざわざ日本から薬を持たせていた。しこ栀子本人の印象も悪くない。カ何は彼女の滞在に協力することにした。
 鳴が戻ってきて狭くなった部屋を見て、しこ栀子は学院近くのホテルを探し始める。途中、財布を掏られてしまい、ミン鳴が追いかけるが、結局捕まえることが出来なかった。お詫びに鳴は、自分の家に好きなだけ住めばいいと、しこ栀子の滞在を許す。
 ある日、部屋の中に髪を五分刈りにして稽古着を来たミン鳴が立っていた。しこ栀子は、何がかつて演じた事があり、今も部屋に写真が飾ってある演目で、初めて学院に来た日にシュー徐先生が演じていた演目、京劇【四郎探母】を演じて見せてくれと頼む。その演技にすっかり魅せられたしこ栀子は、徐先生のところに【四郎探母】を教えて欲しいと頼みに行った。
 誰もいない舞台、早朝の町、しこ栀子はミン鳴が必死で役者として頑張ろうとしているのを見かける。ミン鳴を応援したいと思ったしこ栀子は、2ヶ月後の公演でミン鳴が【四郎探母】の四郎を演じることが出来るように院長に口添えしてくれと、徐先生のところに頭を下げに行く。結局シュー徐先生の口添えもあって、ミン鳴は四郎役を演じる事に決まった。相手の存在が気になっていたミン鳴としこ栀子は、いつか一緒に【四郎探母】を演じたいと思い始めていた。ふたりは、稽古を通じて少しずつ愛情を深めていく。
 旧暦の大晦日。カ何とシュー徐先生、ミン鳴としこ栀子、旧暦の伝統である餃子を4人で作って食べようとしていた。しかしその様子を電話の向こうで聞いたしこ栀子の祖父は、突然具合いを悪くする。心配する4人。しばらくたって祖父からしこ栀子送られてきたメールには、驚くべき事実が書かれていた・・・。

スタッフ

監督:スン・ティエ(孫鉄)
脚本:シュエ・シャオルー(薛暁路)『北京ヴァイオリン』
撮影:スン・ミン(孫明)
美術:ツイ・レン(崔韧)
音楽:ホアン・シャオチウ(黄小秋)
製作:中国電影集団公司
   国家広電総局電影頻道節目中心
   北京鉄哥華亜影視文化発展有限公司

キャスト

チン・トン(靳東)
前田知恵
ピー・イエンチュン(畢彦君)
チャン・ハン(張?)

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