原題:The Wind That Shakes the Barley

第59回カンヌ国際映画祭 パルムドール受賞

2006年/アイルランド、イギリス、ドイツ、イタリア、スペイン/カラー/124分/ 配給:シネカノン

2007年04月25日よりDVDリリース 2006年11月18日(土)シネカノン有楽町、渋谷シネ・アミューズにてロードショ-、他全国順次公開

公開初日 2006/11/18

配給会社名 0034

解説


10分を超える喝采と、とまらない涙。
名もなき人々の悲しみを描いた名匠の最高傑作に、カンヌは審査員全員一致で最高賞を贈った。

これまで「ケス」「SWEET SIXTEEN」などで少年たちの魂を、「レイニング・ストーンズ」「マイネーム・イズ・ジョー」などで社会の底辺に生きる人々の心を、そして「大地と自由」や、「カルラの歌」で自由のために闘う人々の尊厳を見つめ、過酷な現実とそれでもそこにある希望を描いてきたイギリス映画界の至宝、ケン・ローチ。
本作は、その名匠が、独立戦争から内戦にいたる1920年代のアイルランドを舞台に描いた本年度カンヌ映画祭パルムドール受賞作である。今も語り継がれる激動のアイルランドを描いた映画はニール。ジョーダン監督の『マイケル・コリンズ』ほか数々あるが、“Man of the people”と呼ばれるケン・ローチが描いたのは、歴史上の英雄ではなく、名も無き市井の人々の物語だった。
ワールド・プレミアとなった5月18日ノカンヌ映画祭での初上映。映画が終ると、客席は涙に包まれ、スタンディング・オベーションは10分以上もつづいた。そして、あるもドバル、カウリスマキ、イニャリトゥら話題作が並ぶコンペティション部門で、ウォン・カーウァイを審査員長とする審査員たちは全員一致で本作を最高賞に選んだのだ。

「これは反英国映画なのか」。
英国マスコミを揺るがせたケン・ローチの集大成にして最大の問題作!

カンヌでの上映前から英国マスコミは、本作の題材を知ると大論争を始めた。今も北アイルランド問題を抱える英国にとって、世界中からの尊敬を集めるケン・ローチ監督が、英国が支配していた時代のアイルランドを描くことが何を意味するのか。本作が、賛否両論を巻き起こすのは必至だった。タイムズやデイリー・メール紙が「これは反英国映画だ」「ローチは何故自分の国を嫌うのか?」と批判すれば、ガーティアン紙はローチの「(批判と戦う)準備はできている」と言う言葉を掲げて擁護にまわり、その論争はアイルランドやオーストラリアにも飛び火。劇場公開後も議論は白熱し、図らずも今年もっともマスコミを騒がせた問題作になっている。

ストーリー

アイルランド、1920年。長きにわたるイギリスの支配のもとで、アイルランドの人々の暮しは苦しいものだった。富と繁栄は、イギリス人の支配階級や、イギリスに協力的な一部のアイルランドの富裕層に限られていた。飢饅、立ち退き、貧困が市井の人々の宿命だった。彼らはアイルランド独自の言葉(ゲール語)を話すことを禁じられ、ハーリングなど独自のスポーツを楽しむことさえ禁じられていた。そんな中、アイルランド独立を求める人々の叫びは大きくなるが、その動きを封じようとイギリスから冷酷な武装警察隊”ブラック・アンド・タンズ”が送り込まれた。

1920年、アイルランド南部の町、コーク。
医師を志す青年デミアンは、ロンドンの病院での仕事が決まり、アイルランドを離れようとしている。故郷を離れる前に、デミアンたち若者は皆でハ一リングを楽しむ。デミアンはゲームのあと、両親を早くに亡くした彼にとって家族のような存在のペギー家に別れの挨拶のため訪れた。そこへブラック・アンド・タンズがあらわれる。デミアンたちがハーリングをやったことを咎め、厳しく屈辱的な尋問を始めたのだ。若者たちの中、ペギーの17歳になる孫ミホールは、”マイケル”という英語名を名乗ろうとしなかった。そして彼は、アイルランド名を言ったばかりに、ブラック・アンド・タンズの暴行を受け、殺されてしまう。
ミホールの葬儀の日。村の女性が「麦の穂をゆらす風」を歌って若者の死を悼んだ。イギリスへの抵抗、そしてアイルランド独立のために、若者たちは武器をとって戦うことを話し合う。かつて神学校に通っていたデミアンの兄テディは、そんな若者たちのリーダー的な存在だ。しかしデミアンは、イギリス軍の強大な武力の前に何ができるのかと疑問を投げかける。そんなデミアンに、ミホールの姉シネードは落胆を隠そうとしなかった。
デミアンがロンドンへ出発する日。駅で見た光景が、彼の気持ちを変える。
イギリス兵氏を列車に乗せることを、駅員、運転士、車掌が拒否。彼らは兵士に手酷い暴力を受けるが、断固として態度を変えず、兵士たちに乗車をあきらめさせたのだ。
デミアンは、医師になる道を捨て、兄テディとともにアイルランド独立をめざす戦いに身を投じる。

これまで暴力にはまったく縁のない生活をおくり、人の命を助ける医者になりたいと願っていたデミアン。そんなデミアンが、銃を手に敵の命を奪うようになるまで、たいして時間はかからなかった。戦いは悲惨だった。敵も味方も命を失う。裏切りもある。しかし村の人々は彼らの戦いを助け、シネードもまたその闘争に加わり、彼らの戦いを支えた。デミアンは、長く独立への戦いをつづけている男ダンに出会う。彼は、あの日見た、列車の運転士だった。デミアンはダンから、この戦いがアイルランドの貧しい人々を救うためのものであるべきだということを学ぶ。
戦いは日に日に激しくなり、シネードとペギーらが暮らす家が焼き討ちにあう。しかし、独立をめざす激しいゲリラ戦は各地でイギリス軍を苦しめ、ついにイギリスは停戦を申し入れ、戦いは終結する、ようやく自由と平和を手にする時が来たと喜ぶデミアンたち。アイルランドの音楽とダンスで、村の人々が自由を祝ったその夜、デミアンとシネードは初めて結ばれた。
だがデミアンたちの喜びはつかの間だった。イギリス軍は撤退し、イギリスとアイルランドは講和条約を結んだが、その内容はアイルランドを完全な自由にするものではなかったのだ……

スタッフ

監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァティ
プロデューサー:レベッカ・オブライエン
製作総指揮:ウルリッヒ・フェルスバーグ、アンドリュー・ロウ、ナイジェル・トーマス、ポール・トライビッツ、
共同プロデューサー:レッドモンド・モリス
美術:ファーガス・クレッグ
衣装:イーマー・ニー・ウイルドニー
撮影:バリー・エイクロイド
録音:レイ・ベケット、ケヴィン・ブレイザー
編集:ジョナサン・モリス
音楽:ジョージ・フェントン
史実監修:ドナル・オドリスコル

キャスト

キリアン・マーフィー
ポードリック・ディレーニー
リーアム・カニンガム
オーラ・フィッツジェラルド
メアリー・リオドン
メアリー・マーフィー
ローレンス・バリー
デミアン・カーニー
マイルス・ホーガン
マーテイン・ルーシー
シェイン・ケーシー
ジョン・クリーン
マーテイン・ド・コガン
ジェラルド・カーニー
シェイン・ノット
ケヴィン・オブライエン
ウィリアム・ルアン
ペギー・リンチ
ロジャー・アラム
サブリナ・バリー
フィオナ・ロートン
キアラン・アハーン
クレア・ディニーン
コリーナ・ゴッホ
トマス・オへ一リー
デニス・コンウェイ
バリー・ルーニー
コニー・オコネル
アーニャ・オコナー
フランシス・オコナー
パダル・オリアダ
ニール・ブランド
アラン・レデイ
トム・シャーノック

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