愛したときに、あなたはいない。

2005年東京国際映画祭 日本映画・ある視点部門正式上映作品 2006年ベルリン国際映画祭 ヤングフィルムフォーラム部門正式上映作品

2004年/日本/35mm/カラー/92分/DTSステレオ 配給:ホリプロ、スローラーナー

2007年03月21日よりDVDリリース 2006年6月24日、ユーロスペースにてロードショー

(C)2006『真昼ノ星空』製作委員会

公開初日 2006/06/24

配給会社名 0639/0048

解説



なまぬるい風が吹く、夜のコインランドリー。
彼女はそこにいて、小さなため息を残した。
彼は、はじめての恋をした。
少女は、水辺で彼を見つめ続けた。
あなたの笑顔が見たい。あなたのことを、もっと知りたい…。
リャンソンは台湾人の殺し屋だった。今はひとつの仕事を終え、沖縄に身を潜めている。
誰も知らない広い一軒家。孤独にはとうの昔に慣れている。生活は美しく穏やかだ。キラキラ光るプールの水の中だけが、唯一本当に心を休められる場所。
土曜の夜のコインランドリー。彼女は必ずやって来る。無表情のあいまにのぞく、どこか寂しげで僅い、彼女の横顔。
あなたが好き。はじめての恋だ。と彼は由起子に伝えた。けれど由起子は、彼を愛することができなかった。いまだに疹く胸の傷。ふいに甦る遠い記憶。誰とも深く関わらない単調な暮らしに身を沈め、こうしてひとりで生きていくと決めたのだ。
サヤは、誰も来ない市民プールの受付に座っていた。いつまでもこの退屈な真昼が続いていくように思えた。毎日決まってやって来るひとりの男。彼はとてもしなやかに水の中を泳ぐ。まるで青く光る魚のように。
すだれを揺らす海からの風。午後の木漏れ日。明け方の雨音。鮮やかな緑と、湿った夜道。
そして、あの人の小さな笑顔。
どんなことでもいい。あなたのことをもっと知りたい…。
まばゆい太陽の日射しの中で、たゆたうような夜の匂いの中で、三人の孤独は、緩やかに交差する。
それはどこまでも青く澄んで、何もかもを見透かす光のようで、少しだけ、痛い。

ストーリー



銃声が鳴り響く。リャンソンは台湾の殺し屋。
今はひとつ仕事を終え、沖縄に身を潜めて暮らしている。毎日泳ぎに通うスイミングプール。
静かな水の中。ヒマラヤでは真昼でも星空が見えると聞いたことがある。沖縄ではどうだろう。
水面に上がるたびに、いつも探してしまう。自転車を走らせ自宅へ帰る。僕がここにいることを誰も知らない。静かで穏やかな生活。寂しいなんて、思わない。
仕出し弁当屋で働く由起子。
夕方・今日も仕事を終え、誰もいない部屋でうたたねをする。目覚めると、店の弁当を食べ、再び出掛ける。今度は、工事現場の交通整理の仕事。いつもと変わらない毎日。
土曜日。夜のコインランドリー。
リャンソンは待っていた。今日は由起子がやって来る。彼女はいつもと同じように洗濯をする。
由起子の横顔を盗み見るリャンソン。その顔は、はかなく美しい。
誰もいない昼間のスイミングプール。
退屈そうに受付に座っているサヤ。毎日泳ぎに来る男を見ている。彼の泳ぎはしなやかで、無駄がない。何も喋らない彼は、今日もいつもと同じ仕草で去っていく。
ある日台湾のボスに電話をしたリャンソンは、あと1週間で帰るように言われる。
リャンソンは・コインランドリーで由起子を待ち伏せて声を掛けた。つたない日本語で由起子を食事に誘う。由起子は断った。その後再びコインランドリーで二人は会った。リャンソンは由起子をまた食事に誘った。由起子は、今度は断らなかった。リャンソンの家。彼の作る料理はとびきりおいしくて、由起子の顔にも笑顔がこぼれた。つかの間の楽しい時間。リャンソンは、由起子に好きだと伝えた。こんな気持ちは生まれてはじめてだ、と。
由起子はその気持ちに答えることが出来なかった。傷付くのは、もう二度と嫌だから。
リャンソンは台湾のボスに電話をする。向こうの状況が急変した。明日台湾に帰ることになる。
僕は雇われの殺し屋だから、仕方がない。でも…。
リャンソンはその晩、由起子に宛てて手紙を書いた。
由起子はその頃、閉ざした記憶を辿っていた。もうあれから長い月日が経っていたのだ。
翌日リャンソンは、サヤに手紙を託して空港に向かった。
———彼女が空港に来たら、台湾には行かない。
サヤは、手紙を握り弁当屋の前に立ちすくんでいた…。

スタッフ

プロデューサー:菅井敦、三瓶慶介、大塚馨
監督+脚本:中川陽介
撮影:柳田裕男
照明:市川徳充
録音:岡本立洋
美術監督:安田喬
編集:奥田浩史
音楽:沢田穣治
音楽プロデューサー:鎌田岳彦
製作協力:大風
後援:財団法人沖縄観光コンベンションビューロー
   那覇市 
製作:ホリプロ、USEN
配給:ホリプロ、スローラーナー 

キャスト

鈴木京香
ワン・リーホン
香椎由宇
柳沢なな
中川知也
幸野善之

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