原題:Once You're Born You Can No Longer Hide

2005年5月13日イタリア公開

2005年/イタリア/カラー/シネマスコープ/1:2.35/SR-D・120分 配給:コムストック

2006年6月3日(土)より、Bunnkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

公開初日 2006/06/03

配給会社名 0028

解説


瑞々しい感性に満ちたイタリア映画の今がここにある。
「幼い主人公の澄んだまなざしが生と死と直面するとき、未知で無限の幼年時代へと私たちを誘ってくれる。」(ル・フィガロ誌)
イタリア映画の新しい名作が誕生
 『輝ける青春』(03)で、1960年代から37年間にわたるイタリア人家族の年代記を6時間6分という長大な叙事詩として浮き彫りにし、カンヌ国際映画祭・ある視点部門グランプリ受賞のほか、イタリアのアカデミー賞に当たるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞6部門受賞など数々の賞に輝き、世界中で熱狂的な賞賛を浴びたマルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督。彼の待望の最新作が『13歳の夏に僕は生まれた』である。家族の姿を通じて激動の20世紀後半を見事に描いた前作に対し、本作では思春期の少年のピュアな目を通して、現代イタリアの抱える問題を映し出した。また、2005年カンヌ国際映画祭に正式出品され、社会の現実をリアルに描きながらも叙情的で瑞々しいスタイルが大きな感動を呼び、イタリア映画の新しい可能性を全世界に証明した。

命を救われたのは不法移民たちの密航船。
そこで垣間見た別世界が、
サンドロを変えていく・・・・。
 北イタリアの小都市ブレシャの裕福な家庭に生まれ育った少年サンドロは、13歳の夏に父親と地中海クルージングに出かけ、誤って海に転落してしまう。ところが、力尽き、海の底に沈みかけていた彼は何者かに助けられる。目覚めた所は、様々な国籍の不法移民たちがひしめく密航船。水も食料も乏しい地獄のような世界だった。彼を救ったのはルーマニア人の少年ラドゥ。やがて運よく生還したサンドロは、移民収容センターに留まり、命の恩人であるラドゥと彼の妹アリーナを助けようとする。「二人を養子にして欲しい!」と主張する息子に、涙の再会を果たしたばかりの両親は驚きを隠せない。生き残るための試練にさらされたサンドロは、はじめて大人のお仕着せではない道を自らの意思で歩き始めていた。世界中から押し寄せる移民たちと共存の仕方を模索する現代のイタリア社会で、身近にあって見えなかった世界がはじめてサンドロの前に立ちはだかる。ラドゥ、そしてアリーナの生きる場所はイタリアにあるのだろうか?

少年の無垢な視線で、
イタリア社会の現実を映し出す
 本作では、たった数日間の出来事を通して、13歳の少年の心に大きな変化が起こり、移民の兄妹との友情によってそれまで見過ごしてきたイタリア社会の現実に気づいていく姿が描かれている。
 イタリア語のオリジナル・タイトルは、移民問題を深く洞察したマリア・パーチェ・オッティエーリの原作「生まれたからには逃げも隠れもできない──埋もれた民族をめぐる旅」から取っているが、アフリカの言語で、”ソキ・オボタミ・オコキ…”と発音する「生まれたからには…」という呪文のような言葉が、物語の中でサンドロの社会への、大人への目覚めを示す効果的なキー・ワードになっている。『輝ける青春』でも組んだサンドロ・ペトラリアとステファノ・ルッリがこの原作をもとに重層な脚本を書き上げた。

映画初出演で奇跡的な演技を披露
 主人公のサンドロには、物語の舞台であるブレシャ在住の少年マッテオ・ガドラがオーディションによって選ばれ、初めての映画出演で大役を堂々とこなしている。また、エキゾチックで強烈な印象を残す二人の移民役、ラドゥとアリーナ。ラドゥ役は、アルバニア、モンテネグロ、コソボなど多くの移民の子供たちから、ルーマニア人の少年ヴラド・アレクサンドル・トーマが選ばれた。コケティッシュな表情で物語のラストを切なく締めくくるアリーナ役には、エジプト人を父に持つイタリア人エスター・ハザン。父親ブルーノ役には、『輝ける青春』でもお馴染みのアレッシオ・ボーニ。母親ルチアに扮するのは、イタリア演劇界で活躍する女優ミケーラ・チェスコン。
 撮影はジョルダーナ監督と過去2作品で仕事をしている名手ロベルト・フォルツァ。遭難シーンをリスクの多い実際の海上で撮影し、また移民収容センターの様子をドキュメンタリー・タッチでカメラに収めるなど、リアリズムにこだわるジョルダーナ監督の期待に応えている。音楽は、オープニングにトム・ウエイツの「ルビーズアーム」(J=L・ゴダール監督『カルメンという名の女』で使用)、ジョルジュ・ドルリューの『柔らかい肌』(フランソワ・トリュフォー監督)やマイケル・ナイマンの『ピアノ・レッスン』(ジェーン・カンピオン監督)、他にマドレデウス、チェット・ベイカーなどが抒情的に使われている。

ストーリー



未知なる世界の友と出会い、生きる意味を知った夏

北イタリアの小都市ブレシャの裕福な家庭に育った少年サンドロ。父親ブルーノは小さな会社の社長であり、母親ルチアも会社で経理を担当している。13歳の夏、父親と友人ポーピとヨットで地中海クルージングに出かけたサンドロは、過って真夜中の海に転落してしまう。
しばらくしてサンドロがいないことに気づいた父親と友人は、あわてて引き返し、声も嗄れんばかりにサンドロの名を呼ぶが、見つけることはできなかった。
必死に助けを呼ぶサンドロだったが、無情にもヨットは遠ざかり、海を漂うままに力尽きようとしていた。そこに通りがかったのが不法移民を乗せた密航船。見て見ぬふりをして航海を続けたい船員の怒りを買いながら、移民のひとりが海に飛び込み、サンドロを船にひきあげた。悪徳業者に望みを託して密航船でイタリアをめざす不法移民たちの一人、ルーマニア人の少年ラドゥである。ラドゥは、妹のアリーナと一緒に船に乗り込んでいた。
クロアチア、モンテネグロ、クルド、アルバニア、インド、スリランカ、モロッコ、スーダンなど様々な国籍の難民たちがひしめきあう船上に引き上げられたサンドロは、これまでとはまったく違った世界を発見し、生き残るための試練にさらされる。水を分け合うこと、他人と肩を寄せ合って暖をとること、強者の横暴に耐えること、自分の身を守る動物のように噛みつくこと—彼はさまざまなことを学んでゆく。
乗船している不法移民たちをイタリアへ連れていくという約束を破り、船員たちは彼らをイタリア海域の海に置き去りにして他のモーターボートで逃げてしまう。やがて海上巡視船に発見された密航船は、移民センターのある港へ曳航されていく。サンドロは自分が遭難したイタリア人であることを告げるが、ラドゥとアリーナの行方を見届けるために彼らと一緒に移民受け入れセンターに留まることを主張した。そして彼を迎えに来た両親に、二人の兄妹を助けて欲しいと懇願するのだった。この13歳の夏の体験が、彼のなかで何かを変えはじめていた。彼は、旅の試練で孤独や恐怖、期待や絶望に向き合ううちに、裕福な両親に与えられた価値観を捨て、「見えない境界線」を越えようとしていたのだ。
一方、一人息子をかすがいとして家族の愛を育んできた夫婦を恐慌のどん底に突き落としたこの事件は、息子が無事に生還して喜びに包まれた後も彼らの心に消えない恐怖を残していた。困惑するサンドロの両親に向かって片言のイタリア語で訴える—「俺が18歳だからというだけで妹から引き裂く。祖国に帰されたら食っていけない。こんなのがまともといえるのか?」
やがてサンドロは信じられないような厳しい現実を目にすることになる・・・。

スタッフ

監督・脚本:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ
脚  本:サンドロ・ぺトラリア、ステファノ・ルッリ
原  作:マリア・パーチェ・オッティエーリ
「生まれたからには逃げも隠れもできないー埋もれた民族をめぐる旅」
撮  影:ロベルト・フォルツァ
美  術:ジャンカルロ・バジリ
衣  裳:マリア・リタ・バルベラ
音  響:フルジェンツィオ・チェッコン
録  音:デーチョ・トラーニ
編  集:ロベルト・ミッシローリ
キャスティング:バルバラ・メレーガ、オテッロ・エネア・オッターヴィ
製作統括:ジャンフランコ・バルバガッロ

提供:レントラックジャパン コムストック 配給:コムストック  宣伝:アステア   宣伝協力:キネティック
後援:イタリア文化会館

キャスト

ブルーノ:アレッシオ・ボーニ
ルチア:ミケーラ・チェスコン
ポーピ:ロドルフォ・コルサート
サンドロ:マッテオ・ガドラ
アリーナ:エスター・ハザン
ラドゥ:ヴラド・アレクサンドル・トーマ
トーレ:マルチェッロ・プレイヤー
バラッカーノ:ジョヴァンニ・マルトラーナ
路上生活者:シニ・ンキンドゥ・ビンダンダ
サムエル:クビウィマニア・ジョージ・ヴァルデストゥルロ
クアレズミーニ:ジャンルイジ・スピーニ
ニジェッラ:ローラ・ペプロー
マウラ:シモネッタ・ソルダー
ディアーナ:フスキア・キャサリン・サムナー
ンダイエ:ディオップ・エル・ハッジ・イバ・ハメット・フォール
ムハンマド:モハメド・ネジブ・ゾガラミ
沿岸警備隊員:ヴァルテル・ダ・ポッツォ
軍警察:パネロ・ボナンニ
ソキ:エマニュエル・ダボーン
リアナ:アナ・カテリナ・モラリュー
チェルソ神父:アンドレア・ティドーナ
特別出演:アドリアーナ・アスティ

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