2005年/日本/カラー/35mm/1:1.66/105分/ 配給:ビターズエンド

2006年10月21日、新宿K's cinemaにてロードショー 

公開初日 2006/10/21

配給会社名 0071

解説


迷えるおとなたちの想いや恋の悩みを受け止める、
それがキャッチボール屋。
クスッと笑って、ホッと明日へ進む勇気が湧いてくる。
愛すべき人生賛歌、ここに誕生!

 主入公タカシはある日突然会社からリストラきれ、高校時代から恋心を抱いていた恭子は結婚したと聞:き…。30代、仕事なし、おまけに記憶もなくして…
これぞ人生の正念場。「自分が何をしたいのか、分からない」。そんな人生大ピンチのタカシは、たまたま公園で出会った謎の紳士(庵野秀明)から10分百円でキャッチボールをするキャッチボール屋を任される。その先代のキャッチボール屋から渡されたのは部屋のカギーつと地図…。公園で過ごす日々の中で出会うのは、一癖あるあとなたち。甲子園での果たされなかった思いを引きずるサングラスの男(寺島進)、こまめに仕事を探しているおしゃべりな借金取り(水橋研二)、ベンチに座り暇をもてあそぶ体の大きなサラリーマン(松重豊)。きらに、面倒見のいい売店のあばちゃん(内田春菊)や、キャッチボールに息子への思いを重ねる帽子の男(光石研)、タカシに声を掛けてくるOL(キタキマユ)。次第にわかる彼らの過去。それぞれに忘れられない思いを抱えて立ち止まっている現在一一。彼らはタカシとのキャッチボールを通じて、不器用にあたたかく心を通わせていく。そして、それぞれに心の決着”をつけて新しい一歩を踏み出す勇気を取り戻していく。そんな中でタカシもまた…

 たくさんの人との出会いの中で、ずうっと忘れていた大切な思い出に気づく主人公タカシ。心の中にちょっとしたわだかまりを抱えていた大人たちがそれぞれの未来へと進み出す姿を爽やかに描いだ本作品は、迷い、立ち止まりながらも懸命に生きている全ての現代人に贈る人生賛歌!都会の片隅にある公園で、少しずつ繋がっていく人の輪のあたたかきは、人間関係がどこか希薄になりつつある私たちの乾いた心に染み渡る。どこかぎこちない会話の中に、ほのぼのとしたユーモアを散りばめて、観終えた後「ほっ」と優しい気分にきせてくれる。「また明日からもしっかり生きていこう」と、背中を押してくれる大人のファンタジーが、ここに誕生した。

本格初主演となる大森南朋をはじめ、
目本映画界を支える個性派俳優たちが一挙集結!

 本作品が単独では初めての主演作となる大森南朋は、『殺し屋1』、『ヴァィブレータ』などアクの強い役柄にもリアソティを持たせる希有な俳優である。主人公の青年タカシを自然体でいて存在感の溢れる演技で魅せ、個性派俳優との絡みを豊かに表現している。そして、映画の中で彼が出会うのは、どこまでもひとクセある魅力的な実力派俳優たち。作品のヒロインであるOL役には、『ゆれる』、『笑う大天使』、『パビリオン山椒魚』と立て続けに話題作への出演が続き、歌手としても華麗な経歴を持つ注目の女優、キタキマユ。自身のトレードマークでもある(?)ジャージ姿で元甲子園球児を熱演しているのは『花よりもなほ』、『フラガール』と話題作に欠かせない、今や日本のアニキ的な存在となった俳優・寺昂進。コミカルな借金取り役には『くりいむレモン』、『カナリア』などでの透明感溢れる演技が光る水橋研二が、タカシとのテンポのいいやりとりをアドリブを盛り込みながら演じ、作品に軽妙なアクセントを加えている。言葉少ななサラリーマン役には、『刑務所の中』、『血と骨』など、どんな役どころで観る者に強い印象を残す演技で定評のある、松重豊。帽子の男には『ハッシュ』などの光石研・妙味に富んだ演技で作品に哀愁と可笑しさを加えている。色艶のある売店のおばちゃんを演じたのは内田春菊。また、『ほえる犬は噛まない』での好演も記憶に新しい韓国の実力派女優キム・ポジョンが特別出演していることや、庵野秀明監督が普殺絶対に見ることのできないハツラツとしたキャッチボール姿を披露していることも、マニアックなファンも思わずにやりとしてしまうお楽しみである。

名助監督・大崎章、人生に迷いながらも再び歩き畿そうとする
大人たちをあたたかな目線でとらえた監督デビュー作!

 風変わりな人々の再出発までの道のりを優しく描き出したのは、北野武、竹中直人・諏訪敦彦といった監督たちの作品で助監督を務めてきた、大崎章。本作は、構想に5年を掛けた満を持しての監督デビュー作となる。脚本を手掛けたのは『MASK DE 41』の足立紳。音楽は、フジ・ロックへの参加も決定しているインディーズシーンで人気上昇中の4入組インスト・バンドSAKEROCK。今回初めてとなる映画音楽を手がけ、作品に陽気なファンクを鳴らしている。そして、撮影は大崎監督が絶大な信輯を寄せる『独立少年合唱団』、『銀のエンゼル』の猪本雅三、また照明には『着信アリ』、『KT』の松隈信一らを配し、監督の応援団として万全なるベテラン勢が脇を固めている。

ストーリー



会社をリストラされたタカシは、田舎に帰ってきた。同窓生の山田と共に、高校時代の野球部の監督に会いに行く。口癖のように「どんまいどんまい、タカシ、投げろ」と、監督は言う。タカシは3年間補欠だっ於のだ
が…。居酒屋では、元野球部員たちと思い出話に花が咲く。“高校最後の試合”の話になるが、みんななぜかゲームセットの時のことが思い出せない。タカシが片思いをしていた恭子が東京で結婚したという話になり、はやし立てられたタカシは、酒の勢いも手伝って、東京行きの最終電車に飛び乗る。

タカシが目覚めるとそこは都会の公園。…と、突然紳士から声をかけられる。紳士はこの公園で10分百円でキャッチボールの相手をする、キャッチボール屋をしているのだ。誘われるままにキャッチボールをするタカシ。すると子供たちが飛ばしてしまったバットがタカシの頭に直撃(!)する。水飲み場に来たタカシ、そこにはションベン小僧のオブジェが置かれている。隣にあったはずのションベン少女はなくなってしまっている様だ。ふと、制服姿のOLが、タカシを見てハンカチを貸してくれる。キャッチボール屋の紳士が「ちょっと代わって頂けませんか?」と、タカシにグローブを押し付けてどこかへ行ってしまう。留守番をしながらサラリーマンや、マイグローブで剛速球を投げるサングラスの男とキャッチボールをするタカシ。売店のおばちゃんと仲が良い帽子の男も常連だ。にも暮れるころ、おばちゃんが紳士からタカシに預かったと手渡された封筒の中には、地図と鍵がひとつ−−−。

地図を見ながら向かった先はあるマンションの一室。置手紙には、「…常連の方もいますので工事まで続けていただければ幸いです」とある。レコードプレーヤーに張られた張り紙には、「毎日10時半に山口百恵の『夢先案内人』をかけてください」。言われるがままにレコードをかけるタカシ。ふと、留守電に女の声でメッセージが入る。「女の子は戻しにこれそうですか?」タカシはなんのことだか分からない…。コインランドリーにハンカチを洗いに行く。待っている間、目の見えない外国人の女性に会うタカシ。部屋に戻るとまた留守電が入っている。「注文の品出来てますのでご連絡いただけますか?」今度は墓石屋からだ。

毎日公園でキャッチボール屋を続けるタカシに、売店のおばちゃんは嬉しそうに差し入れをくれる。昨日のOLがまた来ている。二人でキャッチボールをするも、へたくそなOLはボールを取りそこね、顔面に当たってしまう。それでも、また来て欲しいとOLは言う。マンションに戻ると部屋の入口に男が待っていた。男は借金取りで、「タケムラ」という男を探しているようだが…。

次の日、サングラスの男と遠投をしているタカシ。男は、「このジャージ派手か?」と、気にしている。帽子の男も来た。帽子の男は、幼い頃に父親とキャッチボールが出来なったのだという。部屋に戻り、ズボンの中に入っていたメモを見て電話をかけるタカシ。聞き覚えのある声、それは恭子だった。タカシがその声に動揺して何も話せないままでいると、電話は切られてしまう。

翌日、OLが公園に来た。OLは以前に、別のキャッチボール屋から「みんな、自分とキャッチボールしててもホントに見てる相手は違う」と言われたのだという。そしてタカシに「あなたの相手は誰なの?」と聞いてくる。サングラスの男からタカシは、明日行われる草野球の試合でのキャッチャーを命じられる。草野球の監督によると、サングラスの男は甲子園球児だったらしい。少しずつ、公園に集まる人々の過去が見えてくる…。タカシは自分が何をしにこの公園に来たのかまだ思い出せない。その帰り道、タカシは誰もいないマウンドで壁打ちしているサングラスの男を見つける。男は汗びっしょりで全力投球している。

ある日、タカシは借金取りとボールを投げている。逸れたボールを拾ってくれたのはベンチにいたサラリーマン。もの凄い剛速球で返球してくる。その姿を見て借金取りが気がつく。彼は過去に甲子園で5打席連続敬遠された後藤という選手だったのだ…。夜の公園、ふと、タカシの元でOLが酔っ払ってふらふらと現れる。OLは、4代目のキャッチボール屋と、事の最中にションベン少女を壊してしまったのだという。OLはタカシを誘惑してくるが、タカシはもじもじしているうちにタイミングを逃してしまう。
コインランドリーではいつもの外国人の女が「元気ないね」と気遣ってくれたりする。

OLがタカシに古い新聞記事の切抜きを見せてくれる。甲子園での「後藤、5打席連続敬遠」の記事。投手は、あのサングラスの男だ。甲子園で二人は“敬遠”のために勝負が出来なかったのだ。帽子の男がやってきてタカシに自分の過去を話す。どうやら息子とキャッチボールが出来なかったことを悔いているようだ。さらに、売店のおばちゃんには半年前にいなくなってしまった夫がいて、ここでキャッチボールしている姿を見た人がいると知り、帰りを待っているのだという。

夜、サングラスの男は今日もマウンドにいる。タカシは、男に新聞記事を見せて、後藤がピッチャーのことをまだ覚えていると伝える。サングラスの男と帽子の男がいつのまにか声をかけ合い、キャッチボールをしている。サングラスの男は、タカシを勝負の日のキャッチャーに任命する。タカシは、どことなく嬉しそうだ。夜の公園、マウンドにいたタカシのところでOLがやってくる。バットを構えるOLに一球投げてやるタカシ。OLの打ったボールは、センターを越えていく。「あのサングラスの人、明日勝負しますよ」。タカシは、OLにも見守って欲しいのだ。部屋に戻ると、数人の男たちが家財家具を運び出している。借金取りもいる。がらんとした部屋で電話が鳴る。「もう工事にはいっちゃいます。…女の子は戻しに来れそうですか?」それはあのOLの声だ。そしてまた電話が入り、今度は墓石屋から、「ご連絡いただけますか?」

公園は明日から閉鎖してしまう。借金取りがふらりとやってくる。帽子の男も来ている。すると、彼方から後藤がバットを持って現れる。そして反対方向からはサングラスの男。甲子園での敬遠以来、長年果たすことが出来なかった勝負が始まるのだ。そして、それは一瞬にして終わった。後藤が打ったボールは青空に吸い込まれていく。みんながボールの行方を追う。また新しい始まりが、後藤やサングラスの男、そして皆にも訪れることを予感させるかのよう。男たちの過去のわだかまりは、この瞬間にすーっと青空へととけていったのだった。

そして、タカシ、勝負を影で見ていたOLが、タカシの元に現れる。手には、自分で戻しに来たションベン少女を抱えて。「相手は、犯人じゃなきゃだめですか?」と、告白するタカシ。OLは「君、下手だから。じゃあね!」と去っていく。“犯人”の姿をもう追ってはいないのだ。
タカシは、そこでやっと高校最後の試合でのゲームセットのことを思いだす。あの時、試合が終わっているののい、ボールをホームへ投げ返したのは、他の誰でもなくタカシだったのだ。最後にOLに、「バックホームしたんすよ!」と声をかける。

その夜、窓の外を見ると、ふらふらと歩いているコインランドリーの女の姿が見える。タカシは手を引いてあげる。「最近百恵さんの歌聞こえないから、場所わからなくて…」女は、タカシがかける「夢先案内人」の曲を目印にしていたのだった。

もう一度田舎を目指すタカシ。
野球部時代の同窓生と監督を囲んでの飲み会の席。山田はタカシに、恭子のことを問いただすが、タカシは返事をにごしている。飲み会もお開きになろうとした時、監督が喋りだした。「バックホームせい!どんまいどんまい」突然の言葉に一同唖然とする。
だが、タカシは言った。「続いてんだよ、試合は」「よし、野球やるそ!」
「どんまいどんまい!」また監督だ。元部員たちは、野球をするために店を飛び出していく。

ある高校のグラウンド。そこには青空の下ノックをする、
野球部の新米監督になったタカシの姿があった−−。

スタッフ

監督:大崎章
脚本:足立紳
音楽:SAKEROCK
撮影:猪本雅三
照明:松隈信一
録音:整音:白取貢
美術:松尾文子
衣装:宮本茉莉
ヘアメイク:小田多佳子
助監督:小野寺昭洋
製作担当:刈屋真
ラインプロデューサー:金森保

キャスト

大森南朋
キタキマユ
寺島進
松重豊
光石研
水橋研二
内田春菊
三浦誠己
康すおん
貴紫いち子
梶原阿貴
熱田佐武
日向丈
眞嶋秀和
山地健仁
浜崎茜
藤村あさみ
浜上竜也

キム・ホジョン(特別出演)
庵野秀明
峰岸徹

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