原題:Don't Come Knocking

2005年/ドイツ=アメリカ/カラー/シネマスコー/SRD・ドルビーSR/124分/ 配給 クロックワークス

2006年08月25日よりDVDリリース 2006年2月18日、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー

公開初日 2006/02/18

配給会社名 0033

解説


カンヌ国際映画祭パルムドールに輝き、世界的な成功をおさめた『パリ、テキサス』(84)から20年。以来、『ベルリン・天使の詩』(87)、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(99)など数々の名作を生み出し、常に好奇心に溢れた活動を精力的に続けているヴィム・ヴェンダースが、60歳を迎えてまた新たな領域に挑戦した。ヴェンダース曰く「『パリ、テキサス』での仕事が”完壁な体験”だったため、20年もの間再び組むことに躊躇していた」というサム・シェパードを脚本に迎えたのだ。二人は”完壁な体験”を越えるため、何度も意見を交換し合い、3年かけて脚本を完成させた。それが『アメリカ、家族のいる風景』である。

本作は、2005年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、20年前を彷彿とさせる拍手と熱狂で迎えられた。かつては西部劇のスター俳優、今はすっかり落ちぶれてしまったハワード・スペンス(サム・シェパード)。彼は新作の撮影現場から突然逃げ出し、長い間帰っていなかった故郷を訪れる。そこで彼は、30年ぶりに再会した母から、驚きの事実を聞かされる。20数年前、彼の子供を身ごもっているモンタナに住む女性から連絡があったというのだ。ハワードは、まだ見ぬ自分の子供を探し出すため、彼がスターダムにのし上がるきっかけとなったデビュー作の撮影地、モンタナ州ビュートヘ向かった。ふと自分の人生を振り返ってみて、そこに何の意味もないと知ってしまった時の耐え難い孤独、そんな自分に家族がいると知った時の喜び、そして息子に会って望むような家族との関係は今さら取り戻せないことを知った時の悲しみ一再び逃げ出そうとする男は、息子を産み育ててくれた女と、自分の存在にさえ気づいていないと知りながらも、優しく接する娘に支えられ、あるべき自分の場所に戻っていく。

『アメリカ、家族のいる風景』は、一人の男が抱える孤独を通して、血のつながりや家族の意味、失われたものと新たに生まれる愛について暖かく描いている。才能ある監督、優れた脚本に更なる力を与えたのは、「人生でこれ以上のキャスティングに恵まれたことはない」とヴェンダースが言うほどの実力を備えた俳優たちだ。主人公ハワードを演じるのは、脚本も担当したサム・シェパード。『パリ、テキサス』の製作時、主人公トラヴィスをサム・シェパードに演じて欲しいと何度も懇願したが、『演じる自信がない』と断られたヴェンダースの夢が叶ったといえよう。ハワードの子供を生んだ昔の恋人ドリーンには、『ブルースカイ』(94)でアカデミー賞主演女優賞を受賞、シェパードの私生活のパートナーでもあるジェシカ・ラング。その息子アールには『ハイ・アート』(98)で注目を集めたガブリエル・マン。そしてハワードの娘、アールの異母兄弟であるスカイを演じたのは『スウィートヒアアフター』(97)、r死ぬまでにしたい10のこと』(03)などでの演技が高く評価される若手演1技派のサラ・ポーリー、ハワードの母親には『北北西に進路を取れ』(59)の名女優エヴァ・マリー・セイント、そしてハワードを撮影に連れ戻すべく保険会社から雇われた私立探偵サターを、ティム・ロスが演じている。

キャスティングと共にヴェンダースの名作を語るには欠かせない音楽は、ボブ・ディラン、エルヴィス・コステロ、ロス・ロボス等のプロデューサーとして活躍し、映画『オー・ブラザー!』(00)でサントラの枠を超える大ヒットを生み出したT・ボーン・バーネットが担当。ユタ州モアブの荒涼とした風景、モンタナ州ビュートの寂れた町並みに響く、独特の重厚なルーツ・ロック・サウンドが、人生に彷律う主人公の心情と混迷する家族の想いに重なり激しく心を揺さぶる。

ユタからネバダヘとハワードが辿る道のりに広がるアメリカの原風景、そしてモンタナ州ビュートに残る古き良きアメリカの町並み、情けないほどに無責任でありながら、魅力ある主人公のキャラクターなど『パリ、テキサス』と共通する点を多く持ちながら、二つの作品はまったく違った感動を与えてくれる。「若い頃はすべての物事を、難しく考えていた。年を重ねていくことによりもっと楽な視点で見ることができるようになった」というヴエンダースの言葉に表れているように、伝説となった『パリ、テキサス』からの20年という長い時間が、優しい眼差しを映画に与え、『アメリカ、家族のいる風景』という傑作を生み出した。

ストーリー



ユタ州モアブ。辺り一面に広がる古き良きアメリカの原風景の中を馬に乗って走り去るハワード・スペンス。西部劇の華麗な衣装を身にまとっている。彼は今やすっかり落ちぶれてしまった俳優で、撮影中の現場から逃げだしてきたのだ。ハワードは乗っていた撮影用の馬と衣装を牧場の老人に渡し、列車とレンタカーを乗り継いで、30年近く前に家を飛び出してから、一度も帰っていなかった母親の住むネバダ州エルコヘと向かう。一方、ハワードが消えてしまった撮影現場は混乱を極めており、撮影は一時中断となってしまった。映画が完成しなければ大損害となってしまう保険会社はハワードを見つけるために私立探偵のサターを雇う。

突然帰ってきたハワードを、久しぶりに会った母親は暖かく迎え入れた。ふとしたことからハワードは母の部屋で、自分に関する記事のスクラップ帳をみつける。女と酒と薬に溺れて起した様々な事件が書き立てられたゴシップ記事の数々。それは会うことがなくても、ハワードの30年間を知るには十分なものだった。母はハワードに家族はどうしているかと尋ねる。なぜなら20数年前、ハワードが西部劇の撮影をモンタナで終えた後、彼を探しているという若い女性から電話があり、ハワードの子供を妊娠していると告げたのだという。自分に子供がいるかもしれないという事実に驚いたハワードは、旱速モンタナ州ビュートヘと向かうのだった…

スタッフ

監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:サム・シェパード
原案:サム・シェパード&ヴィム・ヴェンダース
制作:ピーター・シュワルツコフ
製作総指揮:ジェレミー・トーマス
プロデューサー:カーステン・ブルーニグ

キャスト

サム・シェパード
ジェシカ・ラング
ティム・ロス
ガブリエル・マン
サラ・ポーリー
フェアルーザ・バーク
エヴァ・マリー・セイント
トム・F・ファレル
ジェームズ・ギャモン
ロドーニ^・A・グラント
ジョージ・ケネディ
ティム・マティソン
ジュリア・スウィーニー

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