原題:As It Is in Heaven

第77回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品

2004年/スウェーデン映画/132分/ドルビー・デジタル 配給:エレファント・ピクチャー

2006年06月21日よりDVDリリース 2005年12月17日、Bunkamuraル・シネマにて感動のロードショー

公開初日 2005/12/17

配給会社名 0244

解説


『歓びを歌にのせて』はケイ・ポラック監督の18年振りのカムバック作品として、そしてスウェーデン映画史上最高の成績を記録した作品の一つとしてスウェーデンで大成功を納めた。スウェーデンで160万人を越える観客動員を記録し、これはスウェーデン国民の5人に1人が見た計算になる。興行収入は16億円を越え、近年のスウェーデン映画史上第3位の興行成績をあげている。

国内外から高い評価を受けたこの作品は、18年ぶりにメガホンをとった66歳の監督/脚本家ケイ・ポラックにとって大きな喜びとなった。ポラックの前作「Love Me!」(86)はベルリン国際映画祭のコンペ部門で上映された。「Love me!」のスウェーデンでの公開の夜、当事の首相オロフ・パルメがストックホルムで殺害された。この暗殺事件はスウェーデン全体に精神的ショックを与え、これをきっかけにポラック自身も映画制作から離れてしまった。それから18年の間、彼は国中を旅し、個人の発達に関する講義やセミナーを開いたりしていた。

しかしポラックのあらゆる物事に対する興味は尽きず、映画に対する探究心も消えることはなかった。そんな彼に『歓びを歌にのせて』のアイディアを与えたのは彼の妻だった。彼女は聖歌隊のメンバーで、ポラックはよく彼女を教会に迎えに行っていた。彼自身、聖歌隊の歌を聞いて色々学んでいくうちに、やがて人間性のメタファーとは何か、聖歌隊とは何かということに興味を抱いた。およそ70万人もの人々が毎週聖歌隊の練習に励んでおり、非常に大きな文化を築いていることに気付いたポラックは、このムーブメントをより深く調べ始めた。そして聖歌隊のリーダーと長時間語り合ううちに、脚本が少しずつ形になっていったのである。

脚本が完成すると、彼はプロデューサーのアンダース・ビルケランとヨーラン・リンストロムに見せ、リンストロムはソネット・フィルム(注:スカンジナビアを代表する映画製作・配給会社)のペーター・ポッスネに送った。ポッスネは「金曜の午後に脚本を受け取って、土曜の朝には “やるよ”と電話をしていた。こんなに早い決定を下したのは初めて。それほどこの脚本は素晴らしかったんだ!」と言う。

ポラックはこのドラマチックな物語には、特別な光が溢れる夏と吹雪で覆われる厳しい冬とのコントラストが必要不可欠だと考え、スウェーデン北部でしか成立し得ないと考えていた。本作の美術監督モナ・テレシア・フォーセインはロケハンのため、スウェーデン北部を回った。彼女は2種類の内装のセット—古い校舎と歌の練習をする教会−だけを作れば済むようなぴったりの場所を何箇所か見つけてきた。しかも教会はすでにそこに建っていたのだ。
キャスティングに関しては、ポラックは当初から頭の中に、ミカエル・ニュクビスト(ダニエル役)とフリーダ・ハルグレン(レナ役)の姿を思い描いていた。ハルグレンはフィルモグラフィーに出演作がわずかにある程度の新人である。ニュクビストは彼女よりも遥かにキャリアの長い、スウェーデンの人気俳優の1人である。ポラックとニュクビストはもう20年来の知り合いで、『歓びを歌にのせて』の構想中から、“ダニエルには、ニュクビストしかいない”と確信が持てるようになっていったという。撮影は長期に渡り、波乱に富んだものであったという。編集はポラックが絶賛するトマス・テン。ポラックは、「トマスを僕の元へ送り込んでくれた神様に感謝するよ。彼は天才なんだ。」と言う。

2004年9月にスウェーデンで公開され、批評家・評論家から高い評価を受けた本作は瞬く間にヒットを飛ばし、2ヶ月間1位の座をキープした。ニュクビストはスウェーデンではすでに知名度の高い俳優であったが、『歓びを歌にのせて』への出演によりさらなる名声を得、ハルグレンもスターの仲間入りをした。ハルグレンは2005年のベルリン国際映画祭期待の新人の1人にも選ばれた。そして2005年アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたのである(受賞作品は『海を飛ぶ夢』)。ポラックは、この素晴らしい作品とともに再び映画の世界に戻ってきたが、次回作のクランク・インまでに18年の月日が流れないことを願うばかりである。

ストーリー




ダニエル・ダレウス(ミカエル・ニュクビスト)は、天才指揮者として誰もが羨むような世界的な成功を手にし、大きな名声を得ていた。しかし、命を削るかのような激しい表現や分刻みのスケジュール、そして絶えず注目を浴び続ける生活のせいで彼の心臓はボロボロになり、次第に孤独と惨めさを感じていった。あるとき、ついに舞台で倒れてしまい、肉体的・精神的に限界を感じたダニエルは、突然すべてを捨てて、幼少時代を過ごしたスウェーデン北部ノルランド地方の村ユースオーケル(架空の村)に一人戻った。
唯一の肉親である最愛の母親は彼が幼い頃に事故で亡くなっていたし、音楽にすべてを懸けて生きてきたため、恋人と呼べる人もいなかった。

ダニエルは、故郷の廃校になった母校の小学校を買い取り、そこに住むことにした。
暖房設備もろくになく、とても人が住める環境ではない場所だったが、彼の胸は生まれて初めての穏やかな気持ちと期待でいっぱいだった。
幼少時と名前を変えていたため、村人は彼がこの村の出身だとは気付かなかった。それどころか、あまりにも突然の有名人の登場に村人は好奇心を隠さなかった。
彼は間もなく、牧師のスティッグ・バーゲン(ニコラス・ファルク)らに小さな教会のコーラス隊の指導を頼まれる。そのコーラス隊は毎週木曜日に教区のホールで練習を重ねていた。ダニエルは再び脚光を浴びることに抵抗を感じてはいたが、彼らの歌を聞き、自ら指導を引き受けたいと熱望する。コーラス隊の指導を始めてから、心から音楽を愛する彼らの気持ちに触れ、ダニエルは再び音楽の素晴しさを実感していく。

コーラス隊のメンバーは、それぞれに様々な問題を抱えて生きていた。
どんな人にも分け隔てなく天使のような母性を持って接するレナ(フリーダ・ハルグレン)は愛する人に騙されたという過去の辛い恋を引きずっていたし、二人のかわいらしい子供と美しい歌声に恵まれたガブリエラ(ヘレン・ヒョホルム)は夫の激しい暴力に日々耐えていた。おしどり夫婦と思われた牧師夫婦の妻インゲ(インゲラ・オールソン)でさえも、聖職者である夫(スティッグ)との夫婦生活に密かな不満を抱いていた。
みんな今の生活を変える勇気をなかなか持てなかったが、ダニエルを通して音楽から勇気をもらい、人生の“一歩”を踏み出す自信を得る。もちろんそれを面白く思わない者もいた。牧師のスティッグは村人から信頼の厚いダニエルを脅威に感じて嫉妬心を露わにし、暴力で妻ガブリエラを支配していたコニー(ペア・モアベア)は妻を失うのではないかという不安を、暴力でダニエルにぶつけた。
しかしダニエルには、すでに心から信頼できる友人がたくさんいた。彼らに助けられながら立ち直ることができたし、母のように包んでくれるレナの存在が彼の中で特別なものになっていった。

練習の成果あって、コーラス隊は夢にまで見たコーラスコンクールに参加できることとなり、期待に胸を膨らませ、コンクールが開催されるオーストリアのインスブルックへ向かう。
コンクール当日、ダニエルは初めてレナに言葉で愛を伝えることができ、レナは優しくそれを受け入れてくれた。2人は結ばれ、ダニエルは今まで経験したことのないような人生で最高の幸福感を得る。ダニエルはこの瞬間すべてのものを手にいれたのだ。心から通じ合うことのできるすばらしい友人たちと生まれて初めてできた愛する人。幸せで張りさけそうな胸を抱え、一人コンクール会場に向かう。会場ではコーラス隊が彼の到着をチューニングしながら今か今かと待っていた。
会場に向かう途中、ダニエルは突然の心臓発作に襲われる。倒れこむダニエルの耳にはスピーカーから、天使たちの美しい歌声が聞こえていた—。

スタッフ

監督:ケイ・ポラック
脚本:ケイ・ポラック 
脚本協力:アンダース・ニューベア、ウーラ・オルソン
     カリン・ポラック、マーガレータ・ポラック
製作:アンダース・ビルケラン&ヨーラン・リンストロム
撮影監督:ハラル・ゴナ・パールガー
美術監督:モナ・テレシア・フォーセイン
衣装:ヘルヴィ・アンデア
編集:トマス・テン
録音:ボセ・ペアソン&ヨナス・ルーデルス
音楽:ステファン・ニルソン

キャスト

ダニエル・ダレウス:ミカエル・ニュクビスト
レナ:フリーダ・ハルグレン
ガブリエラ:ヘレン・ヒョホルム
アーネ:レナート・ヤーケル
スティッグ:ニコラス・ファルク
インゲ:インゲラ・オールソン
コニー:ペア・モアベア
フローレンス:アクセル・アクセル
エーレック:ラッセ・ペタソン
オルガ:バーブロ・コルベア
シヴ:ウルヴァ・ルーフ
アマンダ:ウラ=ブリット・ノアマン
ホルムフリード:ミカエル・ラーム
トーレ:アンドレ・シューベア
ゴードン:ニルスーアンダース・ヴァルゴーダ
ジェニファー:ロッテン・ヴァルゴーダ
エージェント:ミアセア・クリシャン
マンマ:クリスティーナ・トーンクヴィスト
ダニエル(7歳):ヨハネス・シャンツ
ダニエル(14歳):アナ・ルンストロム

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