不滅の男　エンケン対日本武道館

「姓は遠藤、名は賢司、人呼んで天下御免の純音楽家」それが“エンケン”こと遠藤賢司のステージでの前口上である。デビューから３６年経った現在も決してジャンルに捕らわれず独自の音楽を創造し続けている。遠藤賢司のライブは小猫のように語りかける繊細な曲もあれば、瞬く間に観る者の体力を奪っていく情熱溢れる攻撃的な曲もある。しかし、どの場面も遠藤賢司しか作りえない世界が拡がっている。この世界をフィルムに記録することこそがこの映画製作の最大の目的だった。
　そして、２００４年８月、この映画製作について話をするべく、直接本人と対面した。交渉の末、熱意に打たれた遠藤賢司は映画出演を了承する。更にエンケンの世界は本人以外に創造しえないという思いから、遠藤賢司監督作品としての製作が決定した。そして監督・遠藤賢司が選んだ舞台は＜日本武道館＞。しかも、観客を一人も入れず、たったひとりで演奏をするという。「タイトルはエンケン対日本武道館でどうだろう？」スタッフの想像力を遥かに凌駕する演出プランと舞台美術そして、未曾有のステージが無人の武道館に出現した。