原題:The Corporation

資本主義社会サバイバルシネマ

本国アメリカにて2004年6月4日公開

2003/カナダ/145min/ 配給:アップリンク

2006年06月23日よりDVDリリース 2005年12月10日、UPLINK FACTORYにて1月12日まで公開 2005年12月10日、UPLINK Xほかロードショー

公開初日 2005/12/10

配給会社名 0009

解説


最近日本でも話題になった、企業買収の際に問われた「株式会社は誰の物か?」という議論、法令を破り連続する企業の不祥事の「原因」、そして郵便事業の「民営化の是非」といった問題の答えを導いてくれるのがこの『ザ・コーポレーション』です。

『ザ・コーポレーション』はカナダのマーク・アクバー、ジェニファー・アボットの共同監督により、ジョエル・ベイカンの『ザ・コーポレーション』(旱川書房)を原作として製作された長篇ドキュメンタリーです。2004年サンダンス映画祭で上映され観客賞を受賞したのを始め、2005年カナダ・アカデミー賞の最優秀ドキュメンタリー賞を含め全世界の映画祭で25の賞を受賞、そのうち10の観客賞を受賞しています。またニューヨークでロングラン上映されたのを始め、世界各国で草の根的に上映され、多くの観客の支持を集めてきた作品です。

本作は、株式会社の誕生から、政治システムを超えてグローバル化を続ける企業の正体を描いています。現在の企業を一人の人格として精神分析を行うと、「他人への思いやりがない/関係を維持できない/他人への配慮に無関心/利益のために嘘を続ける/罪の意識がない/社会規範や法に従えない」というすべての項目に該当し、完壁な”サイコパス(人格障害)”という診断結果のもとに、すべては利益のために働く機関としての企業の様々な症例を分析していきます。

総勢40名の証言者の一人、マサチューセッツ工科大学教授のノーム・チョムスキーは”民営化とは、公共機関を善良な人に譲ることではなく、専制政治へそれを委ねることです。公共機関には利点もあったが損をすることもある。利点があれば、損をしてもよかったのです”と言い、また「ブランドなんか、いらない」(原題:Nologo/はまの出版)の著者ナオミ・クラインは、”ブランドの宣伝目的は製品ではありません.成功企業や未来の企業が製品の代わりに作るのは、ブランドのイメージです。製品への取り組みを宣伝し、その思想をばら撒くのです”と発言しています。そして、『華氏911』のマイケル・ムーア監督は最後に観客にこう語りかけます。”俺は人々がこの映画を見て立ち上がり、行動すると信じている。世界を我々の手に戻すために”

ストーリー

◇ボリビアの水道民営化を阻止した民衆の運動

2000年1月から4月にかけて、ボリビア第3の都市コチャバンバで起こった、水道民営化に反対する大規模な抗議行動。1990年末に、世界銀行はボリビアに対して、コチャバンバの公営水道システムの民営化を受諾しなければ、債務軽減やその他の開発援助を提供しないと脅して、民営化を押しつけた。1999年に、公営だった水供給公社は民間会社であるロンドン国際水供給会(lntemationalWatersLimitedofLondon:IWL)に売却された。IWL社は米ベクテル社(BechtelCorporation)の完全子会社で、コチャバンバでは「トゥナリ水供給会社(AguasdeTunari)」と名称した。
水道システムを引き継いでから数週間も経たないうちに、ベクテル社は地元の水道利用者に膨大な料金値上げを課した。月額60ドルの最低賃金で生活する地元の家庭に、月収の25パーセントにものぼる水道料金の請求書をつきつけたのだ。この値上げに対して大規模な抗議行動が起こり、その収束を図るために政府は戒厳令を宣告して、数千人の兵士と警官を配備した。4月12日にトゥナリ水供給会社は事業撤退を表明。ボリビア政府も最終的に抗議者たちの主張を全て受け入れることを表明したが、これに対して世界銀行は援助停止の形で圧力をかけた。
このコチャバンバの紛争は、1980年代から1990年代にかけてアメリカ合衆国がラテンアメリカなどの諸国において進めてきた新自由主義経済モデルに対する初めての拒絶行動であり、すなわち経済の自由化や民営化、特に水資源の民営化に対する反対運動であった。

◇ホンジュラスの労働搾取工場の実態

全米労働者委員会チャールズ・カーナガンが、ホンジュラスのキャシー・リー・ギフオード工場で暴いた過酷な労働環境とそれに基づく裁判。カーナガンは、ホンジュラスであまりにもひどい労働環境に耐えかねた労働者達からの連絡を受け、潜入取材をしようとしたが、会社からのスパイに阻止された。しかし、何人かの女性労働者達がテーブルの下で、カーナガンに手渡した給与明細からキャシー・リー・ギフォードの工場のものだと判明した。製品タグには「収益の一部を子供たちに」とあった。カーナガンはギフオードと、K.L.ギフオード・ブランドを売る、巨大小売企業ウォルマートに面会を求めた。そしてアメリカの証言台の場で、ウェンディ・ディアスという少女が、工場での過酷な労働について証言をした。このことについてギフォードは、「ウェンディ、ごめんなさい。知らなかったのよ。二度とこのようなことを起こさないよう誓うわ」と少女に諸罪した。その夜、合意書が起草され、ギフォードはそれに署名した。労働搾取工場を使うことをやめること、まっとうな賃金を払うこと、そして独立査察官が彼女の工場を査察し、人権や労働関係法を遵守しているかどうかを確認するというものであった。だが1999年の時点でもキャシー・リー・ギフォードのハンドバッグは中国の工場で作られており、そこでは1日14時間、週7日、月30日の労働が行なわれている。

◇インターフェイス社の環境への取組み

インターフェイス社は世界最大のカーペット製造販売会社である。CEOレイ・アンダーソン氏はこう話す。
「私は21年間、わが社の製品が資源を搾取し、地球を痛めていたとは知りませんでした。しかし1994年に環境保護主義が市民権を得て、顧客から”何か環境対策を?”と訪ねられた時には”特には…”と答えるのが精一杯でした。この出来事に私も従業員もショックを受け、そして対策委員会を設け、世界中の拠点から委員を呼び寄せました。私は一体何をすればよいのかと考え、生態系の本を読み始めました。そんな時出会ったのがP・ホーケンの著作「サステナビリティ革命」(原題:TheEcologyofCommerce/ジャパンタイムズ社)でした。そしてこの本から[誕生の死]という言葉を見つけました。ウィルソンの[種の絶滅]という言葉とともに、この言葉は私の心に突き刺さり、そして私の考え方を根本的に変えてしまいました。まさにパラダイムの変革です。私は今までの自分が略奪者であったことに気付きました。自然には限りがあり、産業革命以降の文明は欠陥品であり、後世まで続かない間違ったものだと。企業は原料を抽出することで人と地球との命綱を脅かしてきた。しかしその原料は再生可能な燃料で何度も利用すべきなのです。私達は[持続可能]という山に登ろうとしているのです」

スタッフ

監督:マーク・アクバー、ジェニファー・アボット
製作:マーク・アクバー、バート・シンプソン
原作:ジョエル・ベイカン
編集:ジェニファー・アボット
ナレーション脚本:ハロルド・クロックス、マーク・アクバー
ナレーター:マイケラ・J・マイケル
原作:「ザ・コーポレーション」(ジョエル・ベイカン著/酒井泰介訳/早川書房)
共同製作:カリ・グリーン、ネイサン・ニューマー、トム・シャンデル
TVO委託編集:ルディ・バティニョール
アソシエイト・プロデューサー=ジョエル・ベイカン、ドーン・ブレット
アーカイブ調査:ポーラ・サワドスキー
音響効果&音楽監督:ヴェルクロウ・リッパー
音楽:レナード・J・ポール

キャスト

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す