犯罪を犯した少年に、日本の風景が語りかける

リージョナル・フィルム・フェスティバル2004正式出品作::http://www.riff.jp/

2004年/日本/カラー/90分 配給:シマフィルム

2007年10月26日よりDVDリリース 2005年7月30日より東京 ポレポレ東中野にて鮮烈ロードショー 8月6日より大阪 第七藝術劇場にてロードショー 名古屋シネマスコーレ 岡山シネマ・クレール他、全国順次公開予定

公開初日 2005/07/30

配給会社名 0620

解説


孤独な少年の旅に託された、生きるための問い

◇真のアウトサイダー若松孝二、入魂の最新作!
常に時代に先行、あるいは並行しながら数々の問題作、衝撃作を世に送り、同世代を生き抜いてきた映画人、映画ファンはもちろんのこと、その過激にして爽快な生き様に、60年代・70年代の熱狂を知らない若者達からも近年、絶大な支持を得ている若松孝二。その最新作もまた、若松孝二以外には決して撮ることのできない、独自のモチーフと手法が際立つ、ドキュメンタリー・ドラマとも言うべき作品として異彩を放っている。

◇なぜ人を殺してはいけないのか
2000年に岡山県で起きた17歳の少年による母親殺しの事件に想を得たこの作品は、1975年に製作されたドキュメンタリー作品『略称連続射殺魔』において、若松の盟友・足立正生が、主人公の永山則夫が歩み見た風景をその等身大の視線によって描き出したように、事件に関する安易な答えを封印し、「問い」は「問い」のままに、風景の中に少年が見い出す何かをひたすら待ち続けるという極めて困難なテーマに挑んでいる。

◇敗戦後60年、戦争体験の風化に抗う
ひとりぼっちの少年にも旅の途上で出会う人々がいる。「自分が17歳の時は国のために死ぬことしか考えていなかった」と語る老人(針生一郎)の戦争体験にじっと耳を傾ける少年。戦時中に強制的に連行されてきた在日朝鮮人の老婆(関えつ子)は雪深い里山の家に少年を迎え入れ、もの悲しい故国の唄を歌う。戦争の時代を次代に語り継いでおかなければならないという若松孝二自身の痛切な思いとメッセージが、そこに仮託される。

◇俳優、撮影、音楽の絶妙なコラボレーション
監督の過酷な撮影スタイルと飽くなき要求にキャスト、スタッフが十全に応え、『美しい夏キリシマ』で鮮烈なデビューを飾った柄本佑が、ほとんど台詞がない少年役を好演。また、本作のために抜擢された辻智彦の果敢にして斬新なキャメラワークがとらえた迫真の映像、そして吟遊詩人・友川かずきが書き下ろした詩と音楽が呼応し、立ち現れるみずみずしくも峻厳な風景は、見る者に何かを語ってやまない力を持っている。

ストーリー

あんたはいつも遠くから見ているだけだ……富士山を仰ぎ見ながら少年はそう呟き、北へ向かって自転車をこぎだす。若者達が群れる東京・渋谷の繁華街、朝の通勤ラッシュの人の群れに逆らうように独り歩く少年。彼や彼と同世代が起こした事件についての新聞記事、ラーメンを食べながら母親を殺した少年について語り合う高校生達。母親や勉強部屋、自分が犯したことから身を引き剥がすようにして、ひたすら自転車をこぐ少年。三国峠から六日町、柏崎から象潟、男鹿半島へと北上していく、その目に映るのは北の峻烈な風景だけである。招き入れられた雪洞で大人達が交わす会話、海辺の青海川駅の待合室で出会った老人が語るその青春と戦争体験、漁業の行末を憂える猟師達……ただじっと彼等の話に耳をそば立てるばかりで何もしない少年。そんな少年が、通りかかった村の雪道に倒れ、救いを求める老婆を背負って家まで連れていく。その家で味噌汁をかけただけの飯をほおばりながら、朝鮮から連行されてきた老婆が唄う祖国の歌を聞き、チョゴリに身を包む自分と同じ年頃の少女を重ね見る。なおも続く少年の旅。竜飛岬へ、さらに北へ、もっと遠くへと続いていく……。

スタッフ

プロデューサー・監督・原案:若松孝二
脚本:山田孝之、志摩敏樹、出口出
撮影:辻智彦
制作:シマフィルム
配給:シマフィルム

キャスト

柄本佑
針生一郎
関えつ子
小林かおり
井端珠里
不和万作
田中要次
鳥山昌克
丸山厚人

LINK

□公式サイト
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す