原題:Kiss of Life

あなたが最後にキスしたいひとは誰ですか

2003年カンヌ国際映画祭“ある視点”部門正式招待作品

2004年1月7日フランスにて公開

2003/イギリス=フランス合作/1時間26分/カラー 提供:エレファント・ピクチャー+ユーロスペース 配給:ユーロスペース

2004年12月18日、ユーロスペースにてロードショー

公開初日 2004/12/18

配給会社名 0131

解説

突然の死を迎えたとき、私たちは愛する人々にどんな思いを残して逝くのだろう。
そして残された私たちは、いかにしてその死を受け入れ、
生き抜いていくための叡知を授かることができるのだろう。
すべての人々にとって避けられない“死”というテーマを真摯に見据えながら、
愛すること、生きること、そして家族の絆についての根源的な意味を問いかけ、
2003年のカンヌ国際映画祭“ある視点”部門で上映されるや絶賛を博した感動作一それが『キス・オブ・ライフ』です。

死は愛を蘇らせる
 家族の世話に追われた退屈な日常。あるいは気持ちの倦怠。おざなりになってしまった、うまく表すことのできない“愛”という感情。黒澤明監督が『生きる』(52)で描いたように、そして近年では『死ぬまでにしたい10のこと』(03)が描いたように、本当はかけがえのないそれらは、日常の毒に飲み込まれてしまっている時、本来の輝きを放つことはない。いつかやがてそれらを本当に見失ってしまうまでは…。
 しかし非日常の出来事でしかなかったはずの“死”がヘレンに起きたとき、それは彼女に鮮烈な感情を蘇らせる。一方クロアチアの地で“死”を体現するジョンは、“家族の絆”についてより以上に思いを強くする。そして老いが進み最も“死”に近かったはずのヘレンの父は娘の死により、家族の愛情を深い記憶の底から引き上げ、それを慈しむ。ヘレンの死はそれぞれの愛へと連鎖すべく、その力を発揮していく。

魂の交流
 映画史を眺めると、死者との愛の交流を描いた作品には枚挙にいとまがない。有名なところでは『天国から来たチャンピオン』(78)や、『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)、『ポネット』(96)などがある。『キス・オブ・ライフ』は、その悲痛なまでのリアルさで見る者の胸を深く打ちのめすという点については、フランソワ・オゾン監督の『まぼろし』(01)、クシシュトフ・キェシロフスキの『終わりなし』(84)に極めて近い肌合いを持っていると言えるだろう。

ポーランド映画の影響を受けたイギリス人監督の誕生
 監督はこの作品がデビュー作となるエミリー・ヤング。イギリス映画界では珍しいポーランドのウッチ国立高等映画学院(キェシロフスキも卒業生のひとりである)を卒業した、1970年生まれの女性監督。ヘレンに扮したインゲボルガ・ダプコウナイテはニキータ・ミハルコフ監督の『太陽に灼かれて』(94)の好演で知られる硬質な美貌が印象的な女優。ジョンを演じたピーター・ミュランは、ケン・ローチ監督の『マイ・ネーム・イズ・ジョー』(98)の名優でカンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞している。

ストーリー

人は失い、再び愛を知る—–
 愛する人のために、何ができますか

 ヘレン(インゲボルガ・ダプコウナイテ)は父親(デヴィッド・ワーナー)とふたりの子供とともにロンドンに住んでいる。夫のジョン(ピーター・ミュラン)は、国連のスタッフとしてボスニア難民救援のためクロアチアに行ったまま、家族の元にもう長い間帰っていなかった。週末はヘレンの誕生日だが、約束の日にジョンは戻れそうにない。
すれ違いが続く関係に、ヘレンは孤独感をかみ締めて生きるしかなかった。
 ある朝、息子のテリーを学校へ送った帰り、彼女は車にはねられ帰らぬ人となってしまう。一方ヘレンとの電話で激しく言い争ったことを深く後悔したジョンは、何も知らぬまま家族の元へ帰ろうと、戦火で荒れ果てた大地をくぐり抜けようと決心する…。
 ヘレンのジョンへの、子供たちへの果てせなかった痛切な思い。その思いは魂と姿を変え、愛する人それぞれへの最後のキスを遂げるべく、地上にとどまるのだった。

スタッフ

監督:エミリー・ヤング

キャスト

インゲボルガ・ダプコウナイテ
ピーター・ミュラン
デヴィッド・ワーナー

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