原題:SHIKIJITSU

スタジオカジノ第一回作品 『明日、何の日かわかる?』 『明日は、私の誕生日なの。』

2000年/日本映画/シネスコサイズ/上映時間128分/ドルビーSR

2000年12月7日(木)より東京都写真美術館(恵比寿ガーデンプレイス)にて公開

公開初日 2000/12/17

配給会社名 0168

解説

描くべきテーマを見失い、虚構の世界を構築することに意義を無くした主人公「カントク」は、都会を離れて故郷を彷徨っていた。
あてどなく原風景を訪ね歩く最中、彼は深い孤独を抱えて「誕生日の前日」を生き続ける「彼女」と出会う。「彼女」の背負った悲しみとは何か?何故、「彼女」はこうも今日を繰り返すのか?彼はビデオカメラを通じて「彼女」とのコミュニケーションを試みる。明日を拒絶し、「儀式」と称した不可解な行動を繰り返す「彼女」、そんな「彼女」に興味を抱き、次第に惹かれていく「カントク」。延々と繰り返される今日と、一向に訪れない明日。
妄想に逃げ込みたい「彼女」と、妄想から逃げ出したい「カントク」。
いずれ訪れるであろう明日を捜して、”孤独な二人”の曖昧な日々が始まる…。
『式日』しきじつ。それは古い言葉で儀式を執り行う日のこと。この映画は、人間なら誰にでもある式日、つまり誕生日を迎えられない「彼女」とそれを見守る「カントク」の明日探しの物語を、詩的かつ斬新な映像で綴ったラブストーリーです。
脚本・監督は、『新世紀エヴァンゲリオン』で、今までのアニメーション表現の枠を超えたダイナミックなアクションとキャラクター像、そして主人公の内面に深く切りこむ独自の映像世界を展開し、多くの若者に熱狂的な支持を受けた庵野秀明。
この『式日』は、デジタルビデオを駆使した初監督作品『ラブ&ポップ』に続いて挑む実写映画監督第2作となります。自伝的な作品ともいえる本作の撮影は庵野監督の故郷である山口県宇部市で行われました。
出演者は、庵野監督の分身ともいえる主人公「カントク」役に、『Love Letter』『スワロウテイル』の映画監督・岩井俊二が俳優に初挑戦。この映画の原作者でもあり、不思議な雰囲気を持つ「彼女」を演じるのは『ガメラ』シリーズの藤谷文子。
また、「彼女」の母親役に大竹しのぶ、自転車の男役に『ナビィの恋』の村上淳、劇中ナレーションを人気声優の林原めぐみ、今もっとも注目される劇作家の松尾スズキが担当するなど個性豊かな俳優陣が脇を固めました。
『式日』は、徳間書店が新しいスタイルの実写映画製作を目指して設立した新レーベル《スタジオカジノ》(スタジオジブリのある小金井市梶野町に由来する)の記念すべき第一回作品。
本作品は、国内外の映画祭への出品を行うほか、本年12月より東京都写真美術館で限定上映されることが決定しています。

ストーリー

儀式を執り行う日を古い言葉で、式日(しきじつ)という。この物語は、人なら誰しもが持っている自分だけの『式日』、つまり誕生日を迎えられない少女を巡って展開する。

パパもママも病んでいる
みんな病んでいる
そして私は一番病んでいる

明日を拒絶し、”儀式”と称した不可解な行動を続ける彼女

映画監督として成功をおさめたものの、創作のモチベーションを失ってしまった男『カントク』は、自分の故郷の街で線路の上に横たわる不思議な『彼女』に出会う。廃虚ビルに自分だけの居場所を築き、線路で、屋上で、地下室でと、奇妙な「儀式」を執り行う彼女。「明日は、私の誕生日なの」と、今日も明日も同じ言葉を繰り返すが、一向に誕生日は訪れない。そんな彼女に興味を覚えた男は、ビデオカメラを手にとり、彼女を被写体として見守ろうとする。

彼女にとっての真実は、自分を傷つけるだけの敵かもしれない

誕生日とは、自らの存在を世の中から祝福される日。その日を迎えることを拒絶している彼女の過去には、いったい何があったのか?ささやかな触合いを通じて、男には少しづつ彼女の心に潜む闇が見えてくる。
肉親の死の悲しみ、置いてきぼりにした母への愛憎、いつも比較された姉への復讐……。辛い現実から逃げ出したいがために、今日を繰り返すという狂気に彼女はとらわれていたのだ。

彼女の持つ淋しさや不安を、少しでも和らげたいと願った。

被写体から、いつの間にか彼にとってかけがえのない存在となっていた彼女のために、男は、彼女と母とを対面させようとする。それはまた、虚構の世界の構築から逃れようと苦悩する男の再生行為であるのかもしれない。彼女は誕生日を迎えられるのか?その時そこに、男は居るのか?

藤谷文子の繊細な原作と、岩井俊二の自然な演技を、庵野秀明の美しき映像が紡ぐ。

『式日』は、このうえない淋しさを抱えた男女の出会いから”その日”までの1ヶ月間の物語を、詩的かつ斬新な映像で綴った異色の作品です。脚本・監督は、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』で、多くの若者から熱狂的な支持を受けた庵野秀明。この映画『式日』は、画期的な映像表現で話題となった前作『ラブ&ポップ』に続いて庵野監督が挑む実写映画第二弾です。
舞台は高度経済成長期を担った典型的な地方工業都市。撮影は庵野監督の故郷である山口県宇部市にて行われました。これまでの庵野作品で好んで描かれた風景の原点がそこにあったことを発見できるでしょう。
『カントク』役は、今回が映画初出演となる『Love Letter』『スワロウテイル』の映画監督・岩井俊二。不思議な雰囲気を持つ『彼女』役を、本作の原作を手掛けた藤谷文子が演じます。また、物語の鍵を握る『彼女の母親』役を大竹しのぶが、『彼女』を知る唯一の第三者として出現する『自転車の男』役を『ナビィの恋』の村上淳が好演。さらにモノローグを人気声優の林原めぐみと、今もっとも注目される劇作家の松尾スズキが担当するなど、異色のキャスティングも見所となっています。
また、大胆なセンスのメイクアップとコスチュームは、赤を基調とした幻想的な背景美術と相まって、淋しさにさいなまれ狂気にとらわれつつある『彼女』の心情を見事に表現しています。さらに、作曲家・ピアニストとして世界的に高く評価され、NHK『映像の世紀』でも知られる加古隆の音楽と、Coccoのエンディング・テーマによって、主人公の孤独と救済が鮮やかなコントラストで描かれます。

スタッフ

脚本・監督:庵野秀明
製作総指揮 / 徳間康快
製作 / 鈴木敏夫
プロデューサー / 高橋望、南里幸
撮影監督 / 長田勇市(J.S.C)
美術 / 林田裕至
照明 / 長田達也
録音 / 橋本泰夫、清水和法
編集 / 上野聡一
衣裳 / 伊藤佐智子
ヘア・メイク監督 / 柘植伊佐夫
助監督 / 大崎章
製作担当 / 山本章
製作:徳間書店
シネコサイズ / 2時間8分
原作 / 藤谷文子:"逃避夢"
音楽 / 加古隆

エンディング・テーマ
"Raining"Cocco(ビクター・スピードスターレコード)

キャスト

岩井俊二
藤谷文子
村上淳
松尾スズキ
林原めぐみ
大竹しのぶ

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