原題:QUATRO DIAS "FORDAYS IN SEPTEMBER"

夢見たのはもっとささやかな明日だった

97年アカデミー賞外国語映画部門ノミネート

1997年/ブラジル/カラー/ヴィスタサイズ(1.85)/ドルビーSR/110min 字幕翻訳:細川直子/配給:シネカノン

2000年5月20日よりビデオレンタル開始 1999年6月5日(土)よりBOX東中野にてロードショー

公開初日 1999/06/05

配給会社名 0034

解説

○1969年9月4日、リオデジャネイロ。アメリカ大使誘拐。事件発生からの四日間”クアトロ・ディアス”、ブラジルは、そして世界は、夢見がちな青年によってざわめき始めた。
『クアトロ・ディアス』はブラジルで実際に起こった、学生グループによるアメリカ大使誘拐事件を映画化した。ブラジル映画界の重鎮ブルーノ・バレット監督の最新作。実際に事件に関与していたフェルナンド・ガベイラの自伝的小説『O que e’isso,companheiro』をベースにしている。
アメリカ大使誘拐事件はその後、全世界で後続事件を引き起こすほどの影響をもたらした。この事件の首謀者は、フェルナンドという、ごく普通のイノセントで理想に燃えた学生であった。彼は、世界の注目を集めるために無謀な思いつきを実行に移してしまった。
ブルーノ・バレト監督は歴史的な政治事件を題材にしながら、政治色に偏ることなく重厚に描いていく。囚える側と囚われる側の心の葛藤を、見事に息詰まる人間ドラマに仕立て上げ、見る者の魂を揺さぶる。

○事件の当事者による実話、ブラジルでベストセラーになった自伝の映画化作家フェルナンド・ガイベラのベストセラーの映画化は、プロデューサーのルーシー&ルイス・カルロス・バレットの長年の夢だった。エグゼクティヴ・プロデューサーのルイス・カルロス・バレットは、出版される前に原稿を読み、これがベスト・セラーになると同時に映画化の権利を収得した。
当時、本作が政治的でかつ、事件が起きてから時間が経ってなかったため、企画が本格的に動き出すまでに12年もの歳月を要してしまった。しかし、その熟成期間にこの拉致・監禁事件に関わったすべてのブラジル人にインタビューを行い、米国側の見解を映画に盛り込む為に渡米、ロサンジェルス大学及びワシントンの国会図書館でリサーチをした。さらに、チャールズ・エルブリック大使の実娘に会い、その対話は、大使の心理を理解するための要となった。「過酷な状況下にある両側(ゲリラ側と人質にとられた側)の人間の感情の動きの探求というのが始めからのねらいだったのです。」と、プロデューサーのルーシーは語っている。
製作補にアメリカ/コロンビア・ピクチャーズとソニー・コーポレーションを迎え、450万ドルをかけて製作された。ポストプロダクションには細心の注意が払われ、編集・ミキシングの両方がロスで行われた。そして、アメリカ公開時にはミラマックスが150万ドルをかけて大々的にキャンペーンを行った。これはブラジル映画始まって以来のことである。

○97年アカデミー外国語映画賞ノミネート作品
76年『未亡人ドナ・フロールの理想的再婚生活』で1200万人という未だ破られることのない国内最高動員記録を持っているブラジル映画界の重鎮、ブルーノ・バレット監督がメガフォンを握り、アメリカ大使エルブリックにアラン・アーキン(68年『愛すれど心さびしく』でアカデミー賞主演男優賞ノミネート)、他に86年の『死ぬまで愛して』でカンヌ映画祭で主演女優賞を受賞したフェルナンダ・トーレス、『セントラル・ステーション』で数々の賞に輝くフェルナンダ・モンテネグロほか豪華キャストを迎え、撮影は『私が愛したグリンゴ』のフェリック・モンティ、音楽は『ウォール街』、『リフ・ラフ』のスチュワート・コーブランド。挿入曲は『イパネマの娘』『朝日のあたる家』と共に様々なブラジリアン・ミュージックがムードを盛り上げている。

ストーリー

ジャーナリスト志望の学生、フェルナンド・ガイベラは、友人の神学校生セザル、俳優アルトゥールとアパートで独裁政権に対する不満をこぼしていた。フェルナンドトセザルは、10月8日革命運動MR−8(注1)に参加するというが、アルトゥールは、彼らの計画は自身の俳優行よりも虚栄的で無益だと、この「自殺行為」に関与することを拒む。

不安を感じながらもフェルナンドとセザルの二人はMR−8に加わるが、その際、氏名、住所、そして親族を偽ることを余儀なくされる。そのままゲリラのトレーニングを受けるようになるが、神経質で経験不足のパウロ(フェルナンド)は、リーダーのマリアになじられ恥をかく。彼女は気難しかったが、美しかった。
MR−8はまず、独裁政権と結びついた銀行を襲って、声明文を読み上げる。計画は成功したかのようにみえたが、負傷したセザルは逮捕され、拷問を受ける。そして、彼らの声明文は政府の弾圧のためマスコミに公表されることはなかった。苛立ったパウロ(フェルディナンド)は、政府へより効果的なダメージを与えるために、米国大使チャールズ・パーク・エルブリック〈アラン・アーキン〉の誘拐を提案する。
彼らは別のゲリラ組織ALN(注2)よりベテラン二人を迎え入れる。そして大使の邸宅に張り込み、ヘネがエルブリック邸の警備員のヘッドを誘惑、綿密に行動パターンを調べあげた。9月4日、まんまと大使をさらい、計画は成功を遂げた。MR−8は、大使の身柄と引き換えに投獄されている15人の政治犯を釈放し、テレビ、ラジオで彼らの声明を報道するように要求する。

政府からの回答に4日間の猶予を与えた彼らは、お互いと大使だけの緊迫した雰囲気の中、郊外の別荘に缶詰になり、初志への決意の堅さや忠誠心をためされる。彼らは、顔を隠すためにマスクを被り、交替で夜を徹し、大使の監視につく。しかし、大使は尊厳を欠く事なく果敢に耐えていた。妻エルビラ〈キャロリーン・カヴァ〉に出すことを許された手紙には、心の底には優しさを宿すテロリストたちへの同情が込められ、隠れ家での様子が書き連ねられていた。
近所で8ピースのローストチキンを買い求めたことが災いし、彼らの隠れ家に政府からの追手が忍び寄る。絶望的な状況下、パウロ(フェルナンド)とマリアの間に親密な感情が芽生える。マリアは、自分たちがしてしまったことで死を迎えるより投獄されるほうがいいと、パウロ(フェルディナンド)に涙ながらにうちあける。
一方、政府から派遣された、エンリケ〈マルコ・リカ〉は、国家と責務に尽くす実直な男であるが、自分の任務に疑問を抱き、葛藤に苦しむ。自分が殺した男の影におびえながら眠れぬ夜を過ごしていると、同僚に告白する。
‘69年9月7日の独立記念日、事件は終決を迎えた。要求どおり15人の政治犯罪者たちは、メキシコへ釈放され、エルブリック大使は釈放される。同時にゲリラたちは、サッカーの試合が終ったマラカンナスタジアムからはきだされる観客にまぎれ、見事に追手から逃げ果せる。
5ヶ月後、パウロ(フェルナンド)と今では恋人関係にある同志、マリアが逮捕され、拷問にかけられる。しかし1970年6月、拉致・監禁された西ドイツ大使の身柄と引き換えに、パウロ(フェルナンド)とMR−8のメンバーたちを含む40人の政治犯たちが釈放され、アルジェリアへ亡命する。

(注1)学生党員がブラジル共産党(PCB)を批判して、独立結成した。MR-8の名称はリオでつぶされた無名のゲリラ組織に対して警察が勝手に命名したもので、エルブリック誘拐事件がそれを利用したという説もある。10月8日は、チェ・ゲバラが死んだ日。フェルナンドの部屋にはゲバラのポスターが貼られている。
(注2)民族解放運動。1967年にカルロス・マリゲーラがサンパウロのブラジル共産党(PCB)非主流を集めて結成。

スタッフ

監督:ブルーノ・バレット
製作総指揮:ルイス・カルロス・バレット
製作:ルーシー・バレット
製作協力:マリー・アン・ブラバッハ
原作:フェルナンド・ガイベラ著『O que e'isso,companheiro』
脚本:レオポルド・セラン
撮影:フェリックス・モンティ
編集:イザベラ・ラザリー
美術:マルコ・フラクスマン
衣装:エミリア・ダンカン
音楽:スチュワート・コープランド
製作進行:アンジェロ・ガスタル

キャスト

アメリカ大使チャールズ・バーク・エルブリック:アラン・アーキン
フェルナンド・ガイベラ(パウロ):ペドロ・カルドーゾ
マリア:フェルナンダ・トーレス
マルカン:ルイス・フェルナンド・ギマランイス
ヘネ:クラウディア・アブラウ
トレド:ネルソン・ダンテス
ジョナス:マテウス・ナケテガル
エンリケ:マルコ・リカ
ブランダン:マウリコ・ゴンサルベス
ジュリオ:カイオ・ジュンケイラ
セガル(オズヴァルド):セルトン・メロ
アルトゥール:エドヴァルド・モスコヴィス
エルヴィラ・エルブリック:キャロリーン・カヴァ
モウィンケル:フィッシャー・スティーブンス

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