原題:OFFICE KILLER

ニューヨークの人気アーティスト シンディ・シャーマンついに監督デビュー 電気が消えたオフィス。 何が起きてるのか誰も知らない。 電灯がチカチカする、地下室のもうひとつのオフィスへ。 電気が消えたオフィス。 彼女の小さな世界が壊れていく。

1988年アメリカ/ミラマックス・グッドマシーン・カーダナ、スィンスキー・フィルムス提供 グッド・フィアー・フィルム作品/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビー/84分/日本語字幕・石田泰子 提供・ポニーキャニオン、アスミック・エース エンタテインメント/配給・エース ピクチャーズ

2000年3月17日よりDVD発売 1999年7月31日よりHAUNTED GARDEN THEATER(恵比寿ガーデンシネマ)にて公開決定

公開初日 1999/07/31

配給会社名 0007

解説

●少女から怪物へ…
彼女のポートレイトにおける変貌はとどまるところを知らない
自分の肉体を使って、様々な人間に“変貌”する。そして“変身”した自分の姿を自ら撮影する。一人遊びにも似たセルフ・ポートレイトで一躍脚光を浴び、今や現代アート界を代表する女性アーティストシンディ・シャーマン。
最近では、ニューヨーク近代美術館“MOMA”が初期「アンタイトルド・フイルム・スティル」全作品を購入、さらに熱狂的なファンであるマドンナがスポンサーになってレトロスペクティブが行われた。また96年東京都現代美術館で日本発の大規模な回顧展が行われ、4万人近い動員を記録、大反響を呼んだ。
モノクロ映画によく登場する女性からテレビのメロドラマの主人公、さらに男性雑誌のピンナップ・ガール、あるいはデザイナーズ・ブランドのファッション・モデルと、様々なタイプの“架空の女性”を自ら演じ、その姿を写真に収め、鮮烈な印象を残してきたシンディ。
その後、写真の中の彼女は次第にグロテスクな容貌を見せはじめた。死体や汚物にまみれ、目をそむけたくなるようなものに自ら扮し、ファンをアッと言わせた。腐臭を放ち、妖しく輝くポートレイトはさらにエスカレートし、人形=医学用人体模型や作り物の身体パーツを使い、タブーとして隠蔽されながら、メディアによってもてあそばれている“性”で、一度見たら忘れられない作品を挑発的なまでに次々と発表した。
少女から怪物“モンスター”へ。彼女のポートレイトにおける変貌はとどまるところを知らなかった。

●アート meets ホラー
「私自身の恐怖の感覚のすべてが、主人公の眼差しに含まれています」
シンディ・シャーマンがついに“映画”に“変貌”した。それもホラー映画に。「“私は関係ない”という安心感を揺るがすものが“恐怖”です」と彼女が言うように、ここでは何でもないオフィスにいる、気弱で臆病な女性が、いかにしてビザールな殺人マニアと化していったかを描き出している。グロテスクで不気味な描写は、まさに彼女のアート作品が動き始めるといった趣向だ。
しかし、ドライなホラー映画を装いながら同時に、小さく臆病な人間が感じ取ってしまう、日常の人間関係に潜む暴力性や悪意がじわじわと描き出される。リストラ、社内イジメ、幼児虐待、親との隔絶、疑似家族、現実逃避…まるで居心地の悪い恐怖が見る者にまとわりついてくるのだ。これこそ、シンディのアートにも通じる悪夢のように醜いものが映し出す現実的な“おそれ=恐怖”だろう。

●嫌いな上司は殺しましょう あなたの隣にもオフィスキラー
これは出版社に勤めるさえないOLの奇妙な殺人願望についてのホラーである。リストラを余儀なくされた主人公ドリーンは、ふとしたことから殺人に目覚め、地下室で不気味なコレクションを始める。夜のオフィスを動き回る影、怪しいメール、不気味に光るコピー機、現れては消えるトイレの人影、非常階段の足音…いつしか地下室には人形のように釣り下げられた“人体パーツ”のコレクションが…。
こわ〜い地下室で、死体とおままごと。次はあなたの職場で殺します。

●殺人鬼に心惹かれる不感症世代が感じる、おぞましさの知られざる魅力
残業しながら人殺し…『オフィス・キラー』はまるで“悪い冗談”のようだ。
しかし今、“殺人”に対するちょっと不気味な社会現象が起こっている。ラブ・ストーリーより殺人鬼。サイコドラマにこわい童話。普通の若い女性の間で、殺人についての本が売れているという。
初めは単なる“コワイもの見たさ”だったのが、やがて、ドギツイ刺激が癖になりエスカレート。フィクションぐらいでは物足りなくて、本当にあった話、それが凶悪で猟奇的であればあるほど魅かれてしまう。まさに暗黒のレクリエーションにハマっていくのである。今、とりわけ20代の女性は、思いもよらないストレスに苛まれている。特に人間関係で気付かぬうちに鬱積していくストレスは大きい。彼女たちは、殺人鬼が次々に犯していく殺人でカタルシスを得、クセになり虜になっていく。雑誌におけるストレス解消法やアロマでは癒されず、皮肉にも殺人鬼に救われる。コワイもの見たさではなく、ひとつの“美容法”となってしまったのだ。

●シンディ・シャーマンに魅かれ結集したスタッフ&キャスト
今回ホラー映画で監督デビューを飾ったシンディ・シャーマン。ニューヨーク映画界を中心に彼女の作品に魅かれるスタッフとキャストが集結、例えようもなく刺激的なこわ〜い世界を作り出した。
共同脚本を『恍惚』の監督であり、『アンディ・ウォホールを撃った男』の製作・脚本のトム・ケイリン。さらに脚本協力に『ベルベット・ゴールドマイン』のトッド・ヘインズが参加した。製作は同じく『ベルベッド〜』の女性プロデューサーで現在『アメリカン・サイコ』を製作中のクリスティン・バション。音楽はジョン・ルーリーの弟エヴァン・ルーリー。またホラー映画に欠かせない特殊メイクは、『クリーン・シェイブン』により「今年もっとも吐き気のする場面」(デイリー・ニューズ)と絶賛されたロブ・ベネヴィデス。
主役のドリーンには、『アニーホール』『夕暮れにベルが鳴る』等で風変わりなキャラクターが印象深いキャロル・ケイン。『プリティ・イン・ピンク』『この愛に生きて』等のブラック・パック映画で一世を風靡したモリー・リングウォルドが今回の“スクリーム・ガール”。シンディのアート作品のコレクターでもある、『氷の微笑』『ザ・ファーム』『ウォーター・ワールド』のジーン・トリプルホーンは、出演出来るなら何でもすると直接アプローチ。さらにドイツのベテラン女優でシンディの個人的な友人でもあるバーバラ・スコーヴァは、ロンゴの『JM』に続きアーティストのデビュー作に出演。また『クロッカーズ』等のスパイク・リー作品の常連マイケル・インペリオンは、ドリーンにとって殺人快楽のきっかけである最初の犠牲者を演じる。

●ロッテルダム国際映画祭“THE CRUEL MACHINE”部門正式出品作品
人体パーツで遊ぶFUNNY HORROR登場!

毎年ユニークな特集上映が話題となるオランダ・ロッテルダム国際映画祭。この年は何と「THE CRUEL MACHINE=(殺人鬼)」と題された特集が組まれ、“人はなぜ殺人鬼に変貌するのかの考察”というテーマのもと、映画祭中最も大きな話題をさらった。上映作品もアメリカから『エンド・オブ・ヴァイオレンス』『ライアー』、フランスから『ドーベルマン』『アサシンズ』『ベルニー』、カナダから『キスト』そして日本から『CURE』等、計24本、短編6本が上映された。
世界各国から集められたそれらの作品の中で、女性監督の作品は本作と『キスト』の2本だけという事もあり、最も注目を集めた。特に本作は場内満席の中行われ、時に「ウゲッ!」という奇声のもと退場者が出たかと思うと、突然大爆笑の渦が巻き起こるという上映だった。まさに「この作品は不気味だけど“ファニー”なホラーなの」とシンディが目指した様に、「FUNNY=[1.妖しく/2.冗談のように不思議で/3.吐き気がする]」ファニー・ホラーとして絶賛を浴びたのだ。

GO FUNNY!

ストーリー

彼女はいかにして“オフィスキラー”になったのかHow to be an OFFICE KILLER

リストラ

「コンシューマー・マガジン」編集者。その日もドリーンは真面目に働いていた。時代遅れの服を着た40代半ばのドリーンは16年前に入社したときと変わらず、完璧に仕事をこなしていた。あの茶封筒を受け取るまでは。
「…労働の能率が悪く、今後は在宅パートで…」。突然のリストラ通告。
ドリーンは子供の頃に起きた交通事故で父を亡くし、半身不随になった母親と暮らしている。いちいち呼び鈴を鳴らす、電動イスの小うるさい母親の世話をする毎日。唯一、世の中の人々と接する場であったオフィスを失った今、ドリーンと世間をつなげるのは、一台のパソコンだけとなってしまった。

上司と同僚

喘息持ちでヘビースモーカーの女社長ヴァージニア。短期ですぐ怒鳴るセクハラ上司ゲイリー。ゲイリーと不倫している、美人編集アシスタントのキム。そしてリストラ担当で野心いっぱいの新入社員ノラ。リストラ通告書を受け取らずに済んだ人達。
ノラはドリーンに同情してくれるが、社長は人をクビにすることを何とも思わないし、大体ドリーンの名前さえ覚えていない。ゲイリーとキムにいたっては、仕事ばかりで内向的なドリーンを“ねずみ女”と呼んで気味悪がっている。

残業、そして一つの偶然

出社したドリーンは、ゲイリーの原稿のチェックを頼まれた。誰もいなくなった、薄暗いオフィス。切れそうな電球のチカチカというノイズ。そんな時、突然、パソコンが妙な音を立て始めた。画面に現れた意味不明な記号。
まだ社内に残っていたゲイリーに助けを求めるが、肩を触れられ、ドリーンは異常に動揺する。高まる動悸。噴き出る汗。忌々しい過去が蘇える。なんとかトイレで落ち着きを取り戻し、真っ暗になった社内に戻ってきたドリーンは、誤ってブレーカーを上げてしまい、ゲイリーを感電させてしまう。ゲイリーの体からゆっくりと上る煙。慌てて、警察に電話するが、ドリーンは何も言わずに電話を切った。彼女の中に“何か”芽生え始めていた。
「…あなたは意地悪だったわ。あんなに怒るなんて。私は悪くないのに…」死体を自分の家の地下室に運び、ソファに座らせる。「お客さんが一人だけじゃ、可哀相だわ」。こうして、地下室に出来たもう一つの“オフィス”で、ドリーンの“人体パーツコレクション”が始まった…。

スタッフ

監督:シンディ・シャーマン
製作:クリスティ・バション、パメラ・コフラー
製作総指揮:トム・カルーソ、ジョン・ハート、テッド・ホープ、
ジェームス・シューマス
脚本:エリーズ・マカダム、トム・ケイリン
脚本協力:トッド・ヘインズ
撮影監督:ラッセル・ファイン
編集:メリル・スターン
音楽:エヴァン・ルーリー
音楽監修:ランダル・ポースター
特殊メイク:ロブ・ベネヴィデス
衣装:トッド・トーマス

キャスト

ドーリン・ダグラス:キャロル・ケイン
キム・プール:モリー・リングウォルド
ノラ・リード:ジーン・トリプルホーン
ヴァージニア・ウィンゲート:バーバラ・スコーヴァ
ダニエル・ヴァーチ:マイケル・ペリオリ
ランドー:マイク・ホッジ

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