きみにためにできること
どんなに思っていても伝わらないことがある。人をた大切に思うことの大切さ…。 人の心をめぐる映画の誕生。
☆大阪シネマドリームいずみさの映画祭'99出品作品
1998年日本映画/88分/ヨ−ロッパ・ビスタ/カラ−/製作:日活/配給・宣伝:日活/宣伝協力:スロー・ラーナー
1999年6月19日よりシネマミラノ他、全国にて順次ロードショー!
公開初日 1999/06/19
配給会社名 0006
解説
コバルトブルーの沖縄・宮古島。訪れる人を温かく包むその島には、心を込めて織られる宮古上布という伝統的な織物があります。この映画はそんな宮古上布の縦糸と横糸のように、初々しい恋心や仕事の中で傷ついた痛みなど、さまざまな人の想いを問いかけ、その中でひとりの青年の成長する物語を、心やさしく見つめさせてくれるヒーリング的なヒューマン・ドラマです。
Eメールという最近の若者のコミニュケーション・ツールを通して描く、恋人とのふれあいと距雌。恋愛とは、相手と結ばれることやそばにいることだけではなく、相手を思いやること…。大自然を背景に素直に自分の心と向き合う一青年の澄んだ想いは、日常で見失いがちなものを静かに呼び覚ましてくれるはずです。駆け出しの録音技師・高瀬俊太郎は、21歳。この仕事についたきっかけは、高校時代に撮った8ミリがとある映像フェスティバルに佳作で入選し音を活かした俊太郎の才能を、録音界の巨匠・木島隆文が高く評価してくれたことだった。TVのドキュメンタリー番組を作るために宮古島を訪れた俊太郎は、ガールフレンドの吉崎日奈子とEメールの交流で心を通わせる一方、レポーターである美人ヴァイオリニスト鏡耀子に心魅かれてい<。さらに、運命的な木島との再会。ところが木島と耀子は、ただならぬ関係だということに気づく俊太郎。仕事、学生時代からのGFと別の人生を歩み始めたことで生じた悩み、そしてあこがれの女性の不倫という心の揺れ動きが、甘酸っぱくさわやかに描き出されています。
撮影のほとんどが宮古島で行なわれたこの作品は、都会の喧騒とは異なる南の島独特のゆったりとしたリズムが流れている。TVクルーによる宮古島の人々のドキュメンタリー・シーンでは、実際に土地の人違が登場しており、その素朴な表情と言葉には、都会で忙しい日常を送る人達を癒す温かみが満ちています。監督の篠原哲雄は、森田芳光や中原俊らの助監督を経験したいわば生粋の映画監督。93年に『草の上の仕事』で多くの海外の映画祭から招待を受け、96年の山崎まさよし主演の『月とキャベツ』ではセンシティブに人と人との距雌感を描き、若者から高い支持を得たのも記憶に新しい。原作は「天使の卵」で第6回小説すばる文学賞を受賞し、その繊細な心理描写が女性ファンに人気の村山由佳「野生の風」「海風通信カモガワ開拓日記」など、自然に満ちあふれたシチュエーションの中で人間の内面を繊細に綴る村山作品の魅カを、本作は音や色彩にこだわった宮古島ロケ撮影により、見事に映像化しています。
主演の俊太郎を演じるのはJUNONスーパーボーイコンテストでグランプリを受賞し岩井俊ニ監督のヒット作『LoveLetter』(95)や、本作でも共演している田口浩正監督『MIND GAME』(98)で確かな演技カを見せた柏原崇。人気TVドラマ「白線流し」で人気沸騰、実カ派の若手俳優として注目される柏原崇は、脚本作りの段階からこの作品に参加し、青年期のナイーブな心を、織少に表現して見せました。俊太郎のガールフレンド役に、『月とキャベツ』(96)から引き続き篠原作品に出演となる真田麻垂美。俊太郎のあこがれの木島役を岩城晃一が演じるほか、『HANA-BI』(98)で98年の助演男優賞を総ナメにした大杉漣、『Sha11weダンス?』(96)など周防正行監督作品の常連である田口浩正、自身もヴァイオリニストであり、根岸吉太郎監督『絆』(98)で映画デビューした川井郁子がレポーター耀子を演じ、その腕前も披露しています。主題歌を唄うのは、常に恋や生きることへのエネルギーを与えてくれる山下久美子。キュートなエンディングに流れる彼女の歌声は、映画とともに観客をいたわり、そして励ましの応援歌として心に届くことでしょう。
ストーリー
コバルト・ブルーの海を進む、沖縄・宮古島行きのフェリー。船上では“命、時の流れをへて伝わり続ける思い”というテーマの番組を撮るために東京からやってきた、ドキュメンタリー番組のクルーらが撮影をしている。録音技師の高瀬俊太郎(柏原崇)、カメラマンの西田(大杉漣)、ディレクターの近藤(田口浩正)、ADの若林(倉持裕之)らの一行を港で出迎えたのは、レポーターを努める美人ヴァイオリニスト鏡耀子(川井郁子)だった。
到着早々にせわしなく撮影を進めるクルーと、芸術家肌の耀子は波長が合わず、最初の夕食から彼女は浮いてしまう。俊太郎はそんな彼女にどこか魅かれるものを感じとっていた。俊太郎には学生時代からつきあっている吉崎日奈子こと愛称ピノコ(真田麻垂美)という実家の造り酒屋を切り盛りする恋人がいて、ふたりは離れ離れでもEメールで欠かさずお互いの気持ちを確認している。「ヴァイオリニストの鏡耀子って、知ってる?」という俊太郎からのメールに、日奈子はただならぬ気配を感じ取り、ふくれっつらに。
宮古上布の取材のため、一行は都子伝統工芸センターを訪れる。機織り人が一糸ごとに心を込めてトントンと寄せるやすらかな音と、藍地に白緋の模様が美しい宮古上布の魅カに、耀子は魅了されていく。その夜、クルーをもてなす宴が開かれ、途中から俊太郎と耀子は浜辺で二人っきりになったた。俊太郎は耀子に、高校時代に8ミリをフィルム・コンテストに出品し、それを佳作に推したのが録音界の巨匠・木島隆文(岩城晃一)という人物なのだと告げる。その言葉になぜか耀子は愕然とする。
ある日、82歳の老婆が紡ぐ糸が、芸術品と呼ぱれるまでに細<美しいと知ったクルーはぜひ取材したいと出向くが、頑固なその老人にあっさり断られて途方にくれてしまう。困り果てたところに、耀子が説得できる人物がいる、と申し出た。それは、あの木島だった!俊太郎は耀子と木島が知りあいだったことに驚くが、それよりも木島が自分の作品を覚えて声をかけてくれたことに感動し、仕事への励みを感じる。だが、その夜木島の家に招かれた俊太郎は、耀子と木島がただならぬ関係だということに気づく。「木島さんの家に耀子さんがいた」という俊太郎からのメールを読んだピノコは、すぐそばにいる同僚とデートし、「私だってモテます」という意地っ張りなメールを返信する。
ある夜、再び木島の家を訪れた俊太郎は、木島の耀子に対する想いが、もはや過去のものであることを知った。そんな時、次の朝ピノコから、彼女の母親が倒れたという電話が入る。俊太郎の助けが欲しいピノコと、駆けつけることのできなし俊太郎。二人はお互いの間にいつしか生まれてしまった距離を感じていた。俊太郎は最近、ピノコからのメールをまめに見ていなかったのだった。さらに理想の音を求めるあまりカメラマンの西田と仕事上で食い違い、衝突してしまうのだった。
東京に戻った一行は、翌日から次の撮影に。次のロケ地はピノコの実家の近所だったが、俊太郎は何の違絡も入れていない。ふとした視線に気づくと、そこにはピノコが立っていた。俊太郎の耀子への気持ちにメールで気づいたピノコは、泣きながら別れを告げて去った。その胸に、俊太郎と二人で8ミリ映画を作った思い出が蘇る。音にこだわり、作品に登場する風鈴を選んだ記憶…。
ある日、俊太郎は、耀子から木島の「音の個艮」への誘いのメールを受け取る。その会場で木島の妻と遭遇した耀子は、夫婦の素晴らしい愛情関係を知りショックを受けた。そんな耀子を無理やり会場から連れ出した俊太郎は、彼女をマンションヘ送っていく。傷心の耀子は俊太郎に抱きつくが、俊太郎はそれよりも他の方法で耀子を支えたい、とやさしく彼女を見守った。翌日、俊太郎は一つの決心を胸にピノコの元を肪れる…。
スタッフ
製作総指揮:中村雅哉
企画:吉田 達
プロデューサー:工藤俊機、森本精人、莟 宣次
監督:篠原哲雄
原作:村山由佳「きみのためにできること」(集英社刊)
脚本:高橋美幸
撮影:上野彰吾
照明:矢部一男
美術:金勝浩一
録音:田中靖志
助監督:大崎 章
ラインプロデューサー:大里俊博
音楽:村山達哉
主題歌:山下久美子「天使の唄」(東芝EMI)
製作協力:バズ・カンパニー
製作・配給:日活
キャスト
高瀬俊太郎:柏原 崇
吉崎日奈子:真田麻垂美
鏡 耀子:川井郁子
近藤一樹:田口浩正
木島美佐:永島暎子
西田勇造:大杉 漣
木島隆文:岩城滉一
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