さぁ、ショーが始まる。 未来への幕が開く。

【2004年】 第61回ヴェネチア国際映画祭コンペティション トロント映画祭 バンクーバー国際映画祭 ニューヨーク映画祭 ヴィエンナーレ ロンドン映画祭 台北・金馬奨映画祭 【2005年】 ロッテルダム映画祭 エーテボリ映画祭 ヴェスール映画祭 審査員グランプリ ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア映画祭 金賞(最優秀作品)、撮影賞 ドーヴィル・アジア映画祭 脚本賞 香港国際映画祭 クロージング作品 コペンハーゲンNAT映画祭 ブエノスアイレス映画祭 チョンジュ映画祭 台北映画祭 ブリスベーン映画祭

2005年/日本・フランス・中国/カラー/133分/シネマスコープ/HD->35mm/ドルビーデジタル 配給:オフィス北野、ビターズエンド

中国映画の全貌 2007にて上映::http://www.ks-cinema.com/schedule.html 2006年07月28日よりDVDリリース 2005年10月22日、 銀座テアトルシネマにてロードショー 大阪:テアトル梅田、名古屋、名古屋シネマテーク、京都:京都みなみ会館、 神戸:神戸アートビレッジセンター、札幌:シアターキノ、広島:横川シネマ ほか全国順次公開!!

(c) 2004「世界」製作委員会

ビデオ時に変わった場合の題名 世界 ジャ・ジャンクー

公開初日 2005/10/22

配給会社名 0020/0071

解説



【華やかな舞台の裏に、ドラマがある】
中国・北京市郊外に実在するテーマパーク、「世界公園」。インドのタージ・マハール、パリのエッフェル塔、エジプトのスフィンクスなど、100を超える世界の名所を縮小して忠実に再現したユニークなテーマパークで、北京の新しい人気観光スポットになっている。
主人公はこの「世界公園」に所属するダンサー、タオ。ある時はインドの踊り子に、ある時は着物を着て日本女性に、またある時は国際線のスチュワーデスに、彼女はさまざまに衣裳を変えてステージで踊り、また野外で華を添える。
明るく心優しい彼女は同僚たちから「姐さん」と慕われ、満員の観客を魅了する華やかな舞台でゴージャスに光り輝く。だが舞台を降りれば、女子寮の中での堅実な暮らしが待っていて、恋北京を出ないで世界を回ろう
人タイシェンとの関係はどこか不安定でもあり、20代半ばの女性としての悩みや不安も抱えている。
映画はタオとその同僚のダンサーたちやタイシェンの周囲の男たちの人間模様を描きつつ、2008年のオリンピック開催を前に、さまざまに激動する北京の“いま”を鮮やかに映し出していく。

【北京を出ないで世界を回ろう】
地方のさびれた町から北京に出てきた若者たち。
この発展めざましい大都会の暮らしも数年を経て、いつしか大きな夢も忘れ、ただ漠然と明日への不安を抱いて毎日を過ごしている。この広い世界の中で、日を追うごとに希薄になっていく、自分は今ここで生きているという実感。それは北京のみならず世界中の大都市に生きる若者たちに共通の、空虚な浮遊感だ。ちっぽけだけれど、かけがえのない、そんな彼ら1人1人の人生の瞬間を、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督は愛しみつつも、感傷を抑えて活写していく。
きらびやかな衣裳をまとって「世界」を巡りながら、タオ自身の世界は大都会の片隅に限定されている。園内を走るモノレール「スカイトレイン」に乗って移動する彼女は、このミニチュアの「世界」の中で、糸の切れた凧みたいに空中を浮遊しているよう。現実感の希薄な空間で、タオは現実世界の厳しさに幾度も心を傷つけられる。だが、自分の気持ちをごまかさない彼女は、そのたびに少しこれまでの3作品で、故郷・山西省を舞台に、急速に変貌する中国地方都市の青春群像を描いてきた賈樟柯。彼はこの第4作目で初めて舞台を首都・北京に移し、作品世界をさらに広げて、奇跡的な傑作を作りあげた。

【世界が注目する若き巨匠・賈樟柯の最高傑作!】
ベルリン、ベネチア、カンヌと、弱冠30歳過ぎにして世界3大映画祭を制した中国新世代の監督賈樟柯。巨匠マーテイン・スコセッシが「君の映画は素晴らしい。私は皆に君の映画を見るように薦めている」と賛辞を贈るなど、その国際的評価は1作ごとに高まってきた。
長回しを多用した独特のスタイル、俳優たちへの的確な演出、そして映画が撮られている現場の空気をそのまま掴んできたような臨場感あふれる映像は、映画という枠を越え、一つの時代の記録としてもこの上なく貴重だ。撮影監督・余力為(ユー・リクウァイ)がじっくりと切り取る画面のひとつひとつが、深みのあるディテールに満ちた一幅の絵になっているのだ。

【したたかな女たち】
同時代を真摯に見据えてきた賈樟柯監督は、これまでの3作でも、青春の焦燥の中から独特のユーモアを巧みに引き出してきたが、今回も人間存在の妙を笑いに昇華させた場面がいくつも出てくる。
恋人が携帯電話に出なかっただけで執拗に問い詰める青年。あまりの執念深さに彼女が別れを告げると、彼は彼女の目の前で自分のジャケットに火をつけてしまう。そんな男の狂気に出会った彼女が下す、意表を衝く決断。あるいは、団長の任につくために色仕掛けを行使したダンサーが、その現場を偶然目撃したタオに行なう仕打ち。タ
オの恋人タイシェンを惹きつけた年上の女性チュンの、熟練した男のあしらい方。たくましく生きる女たちの姿もまた万国共通で、そのしたたかさに思わず笑ってしまう。この「世界公園」から実際に外の世界へと出て行くのも、2人の女性なのだ。

【常連俳優と、初のプロ俳優】
タオを演じた趙濤(チャオ・タオ)は、賈樟柯のミューズだ。女優デビュー作『プラットホーム』では厳格かと思えば『青の稲妻』では奔放に生きるモデル兼ダンサーの光と影を好演。そして本作では、華やかに踊るダンサーであると同時に、恋人と一線を越えることに躊躇する古風な面もある女性を、凛とした姿で演じきっている。
これまであえてアマチュア俳優と組んできた賈樟柯が、初めてプロの俳優を起用したことも、本作の注目点だ。タイシェンを演じる成泰?(チェン・タイシェン)は新しい中国映画界を担う気鋭の俳優。地方の村に来た映画撮影隊と地元の少年を描いた李継賢(リー・チーシアン)監督の『思い出の夏』で助監督役を好演し、朱文(チュウ・ウェ
ン)監督の「海鮮」(日本未公開)ではナント三大陸映画祭最優秀男優賞に輝いている。
一方、これまで監督を支えてきた“名優”たちも健在だ。建築現場で働くサンライを演じるのは、『一瞬の夢』『プラットホーム』で主役を演じ、『青の稲妻』にも顔を見せた“小武(シャオウー)”こと、王宏偉(ワン・ホンウェイ)。彼と一緒に北京に出てきたアークーニャンの兄サンミンを演じるのは、『プラットホーム』でもやはり田舎暮らしの無口な文盲の男、その名もサンミンを演じたのと同一人物だ。
タイシェンの先輩で、何やら怪しい商売をしているソンを演じているのは、『プラットホーム』の後半で文化劇団の新リーダーになるソンを演じた人。彼らは経済格差の激しい中国のひずみにそれぞれに晒され、言葉では何も語らないからこそ、その傷の深さが観客の胸を打つ。なお、『一瞬』の夢』『青の稲妻』の美術監督であり、『プラットホーム』では俳優として出演した梁景東(リャン・チントン)が、外の世界へと旅立つ唯一の男リャンズーを演じている。

ストーリー



楽屋から楽屋へと「バンドエイドない?」と歌うように言いながら歩いていくタオ。インド風衣裳をまとった彼女に、やっとバンドエイドを差し出してくれるのは、韓服をまとった女性だ。26歳のタオは年下のダンサーたちから「姐さん」と慕われている。今も西洋風のドレスを着た後輩のウェイが背中のジッパーを上げてくれと泣きついてくる。そして彼女たちは満員の観客を前に、ステージに出て優雅に踊り始める。
ここは北京郊外のテーマパーク「世界公園」。エッフェル塔、ピラミッド、ピサの斜塔など、世界各地の名所旧跡が縮小されて点在している。タオが楽屋に戻ると、ウェイの彼氏ニュウが来る。
「昨日、携帯電話を切ってどこに行ってた?」。あまりにも疑り深いニュウにうんざりするウェイ。そこに、ロシア人ダンサーの一行が連れてこられる。楽屋を訪ねてきた青年リャンズーは、タオのかつての恋人で、モンゴルのウランバートルに行く前にタオに会いに来たのだった。「世界は日々変わる」と言ってタオにパスポートを見せるリャンズー。タオは現在の恋人タイシェンを紹介する。タイシェンは公園の守衛主任。3人は北京駅まで行き、そこ
でリャンズーはあっさり立ち去っていく。
その後、2人は駅前の安ホテルに行く。リャンズーに会って激しい嫉妬心を抱いたタイシェンは、「俺を愛していると今証明してくれ」とタオに迫るが、タオは拒絶する。

北京郊外のパリ
ホテルでの言動にまだ怒りを鎮められないタオをなだめるタイシェン。彼はタオの手を取って、カメラの前に立つ。魔法の絨毯に乗った2人がエッフェル塔のそばを飛んでいる合成撮影をしてもらうのだ。はしゃぐうちにタオは怒りを忘れていく。

ウランバートルの夜
タイシェンのところに山西省の友人が訪ねてくる。同世代のサンライと、若いアークーニャンだ。学校嫌いのアークーニャンに手を焼いた両親がサンライに託したという。2人は北京には金になる仕事があると聞き、上京してきた。
タイシェンに同郷の先輩ソンから電話がかかる。何やらいかがわしい商売を営んでいるソンの事務所には、金の無心に来た青年ビンがいるが、ソンは取り合わない。タイシェンは、偽の身分証を作ってくれとソンに頼まれる。
寮の洗面所でタオが洗濯していると、ロシァ人ダンサーのアンナが横に来る。アンナは小さな息子2人の写真を見せてくれる。身分証を届けに行ったタイシェンに、ソンは新たな仕事を頼む。借金を作って太原に逃げたビンのも
とに、その姉チュンを連れて行ってくれという依頼だ。2人は長距離バスで6時間かけて太原に行く。
タイシェンは魅力的なチュンに心を惹かれる。
アンナとタオがお酒を飲んでいると、テレビからウランバートルという言葉が聞こえてくる。アンナはウランバー
トルの歌をうたい、タオも一緒に声を合わせる。
数日後、タイシェンの携帯にチュンからメールが入る。
「時間があったら私の店に来て」。チュンの工房を訪れたタイシェンは、ラジオから流れる劉若英(レネ・リウ)の歌に合わせてチュンとダンスをする。思わずチュンにキスをしようとするが、うまくかわされてしまう。チュンには同郷の夫がいたが、何年も前に密航してパリのベルヴィル地区に住んでいる。

美しい街ベルヴィル
先輩のダンサーに誘われてパーティに行くタオ。ビジネスマンたちのカラオケ・パーティで、タオは一人の中年男にしつこく言い寄られる。逃げ出してトイレに入ると、偶然にもアンナが入ってくる。アンナは今、そこでホステスとして働いていた。アンナの境遇を思ってタオは泣き出す。
タオとタイシェンは、サンライたちが働くビルの建設現場を訪れる。“二番目の娘”という意味の名で呼ばれるアークーニャンは、その理由をタオに語る。荒涼とした建築現場の上を飛行機が飛んで行く。
「飛行機にはどんな入たちが乗っているんだろう?」とアークーニャン。「わからない。私の知り合いに飛行機に乗った人なんていないから」と答えるタオ。
その時、飛行機の中には、ウランバートルへと向かうアンナの姿があった。
タオとタイシェンはホテルに泊まる。「私を裏切らないでね。あなたに裏切られたら私には本当に何もなくなってしまう」とタオ。「裏切らない。でもそんな風に人を信用するんじゃない。頼れるのは自分だけだ」と答えるタイシェン。その夜、2人は初めて結ばれる。
ウェイはニュウの嫉妬深さに堪忍袋の緒が切れ、別れを宣言する。するとニュウは発作的に自分のジャケットに火をつけてしまう。
タイシェンが可愛がっていた従兄弟のアーシャオは、楽屋で盗みを働いたことがばれて公園を追い出される。ピラミッドの前でアーシャオを何度も殴りつけるタイシェン。
タオがホテルでタイシェンを待っている時、彼はチュンと一緒にいた。チュンはついにフランスのビザが取れたという。そこにサンライから電話が入る。
深夜作業中にアークーニャンが事故に遭ったのだ。ベッドに横たわるアークーニャンに、タイシェンは言いたいことがあれば紙に書けと言う。彼が書いたメモは、「借金があります。リュウに35元、ハオに18元、小学校前の屋台に3元……」だった。それを読み、泣き崩れるサンライ。

東京物語
散歩中、年の離れたカップルのデートを目撃するタオ。それはヨウヨウと重役だった。公園の日本家屋の縁側で着物姿で正座するタオの横にヨウヨウが来て、「お互い何があっても秘密にしましょう」と言う。そこにウェイが結婚式の招待状を渡しにくる。ウェイはニュウと結婚することにしたのだ。
その時、タイシェンから、アークーニャンの死を知らせるメールが届く。
アークーニャンの両親と兄のサンミンが田舎から出てきて、小額の補償金を受け取る。タオとタイシェンは、3人とともに、紙銭を燃やしてアークーニャンを弔う。
ダンサーたちの前で重役が「ヨウヨウが新しい団長になる」と告げる。挨拶に立ったヨウヨウは、明日CM撮りがあるから遅れないようにとみんなに言い渡したあと、「タオ、あなたには黒人の役をやってもらうわ」と言う。
夜の道をタオとタイシェンが乗った車が走る。「タイシェン、結婚しましょう」と言うタオ。だが、タイシェンは何も答えない。

日々変わる世界
ウェイとニュウの結婚披露宴。中座したタイシェンが置き忘れた携帯電話を何気なく覗いたタオは、そこに届いていたメッセージを見て表情をこわばらせる。「あなたに会えてよかった。あなたのことは忘れないわ。チュンより」
その夜、タオは寮に帰らない。タイシェンはタオの携帯に電話するが、繋がらない。翌日、女子寮を訪ねると、入ってきたばかりの若いダンサーたちが明るい笑顔でダンスの練習をしている。タオは寮にいない。

スタッフ

監督:ジャ・ジャンクー
撮影:ユー・リクウァイ
音楽:リン・チャン
製作:バンダイビジュアル、TOKYO FM、電通、テレビ朝日、
ビターズ・エンド、オフィス北野、ルーメン・フィルム(フランス)、
エクストリーム・ピクチャーズ(中国)

キャスト

タオ:チャオ・タオ
タイシェン:チェン・タイシェン
ウェイ:ジン・ジュエ
ニュウ:チャン・チョンウェイ
ヨウヨウ:シャン・ワン
イェンチン:リュウ・チュエン
サンライ:ワン・ホンウェイ
リャンズー:リャン・チントン

LINK

□公式サイト
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す