原題:The Elephant Man

全世界に衝撃と感動を与えた名作『エレファント・マン』が、 作品生誕25周年を記念してニュープリント版で甦る。

1980年度アカデミー賞 8部門ノミネート 1980年度英国アカデミー賞 3部門受賞 3部門ノミネート 1980年アヴォリアッツ・ファンタスティック映画祭  グランプリ・批評家特別賞 受賞

1980年/アメリカ=イギリス/124分/モノクロ 配給・宣伝:ザジ フィルムズ

2011年11月02日よりDVDリリース 2008年09月11日よりDVDリリース 2005年02月25日よりDVDリリース 2004年11月20日より銀座テアトルシネマ、池袋テアトルダイヤにてレイト・ロードショー!

公開初日 2004/11/20

配給会社名 0089

解説



エレファント・マン…
それは19世紀のロンドンに実在した心優しき青年ジョン・メリックを人々が、その容姿ゆえに恐れと侮蔑を込めて呼んだ呼び名。
エレファント・マン…
それは鬼才デイヴィッド・リンチの名を世に知らしめた美しくも哀しい物語。

1981年の日本初公開時、邦洋合わせたその年の全公開作品中ナンバーワンの配給収入を記録し、全国で350万人以上を動員した驚異の大ヒット作『エレファント・マン』。社会現象とも言える当時のブームから四半世紀、その後スクリーンで上映される機会の少なかった本作が、作品生誕25周年を記念して劇場の暗闇にニュープリントで甦る。
人の心に宿る“やさしさ”と“偽善”は表裏一体なのか?異形の青年ジョン・メリックの存在を通して人間の本質を炙り出した本作は、興行面での成功に加え、作品自体も高い評価を受け、1980年度米・アカデミー賞8部門にノミネート、英国アカデミー賞では作品賞・主演男優賞・美術賞を受賞、アヴォリアッツ・ファンタスティック映画祭ではグランプリに輝いたほか、世界各国で数々の賞を受賞。80年代を代表する名作の1本に数えられている。
今でこそ新作が公開されるごとに、世界中で作品研究がなされるデイヴィッド・リンチだが、当時は33歳の無名に等しい監督の1人。新会社ブルックス・フィルムを設立したばかりのメル・ブルックスが、リンチの前作『イレイザーヘッド』(77)を高く評価し白羽の矢を立てたのだった。若き脚本家クリストファー・デ・ヴォアとエリック・バーグレンと共にあらゆる「エレファント・マン」の史実と資料を研究し、外科医サー・フレデリック・トリーブスによる著書などを基にして脚本を書き上げたリンチは、モノクロ映像による独特の美的演出を施し作品を完成させた。
初公開時、日本では誰1人その名を知る人がいなかったデイヴィッド・リンチは、本作の成功により一躍人気監督の仲間入りを果たし、『ブルーベルベット』(86)、『ワイルド・アット・ハート』(90)、そしてテレビシリーズ『ツイン・ピ一クス』(90)で独自の世界観を広げ続け、熱狂的ファンを増やしていった。果たして本作は、彼のフィルモグラフィの中で原点なのか?異端なのか?今、それを確かめる時が来た…。
英米映画・演劇界を代表する豪華キャストの競演
悲劇の青年ジョン・メタリックに扮したのは、『エイリアン』(79)のジョン・ハート。本作で英国アカデミー賞主演男優賞を受賞、米・アカデミー賞主演男優賞にもノミネートされた。外科医トリーブスを演じるのは『白いカラス』(03)のアンソニー・ホプキンス。『羊たちの沈黙』(91)の“レクター博士”役で鮮烈な印象を残し、米・アカデミー賞主演男優賞を受賞、その後も『日の名残り』(93)、『ニクソン』(95)、『アミスタッド』(97)で3度オスカー候補となり、名優の名を欲しいままにするホプキンスは、当時43歳。一見地味な受けの演技でありながらトリーブスの心の葛藤を見事に表現している。他にケンドール夫人役に、メル・ブルックス夫人でもあるアン・バンクロフト、カー・ゴム病院長にサー・ジョン・ギールグッド。英米映画・演劇界を代表する名優たちのコラボレーションが堪能できる。
映画版の初公開からさかのぼること4年、1977年にロンドンで幕を開けた舞台版『エレファント・マン』は、1980年に劇団四季が日本版を上演・2002年には藤原竜也主演で再び上演され大きな話題を呼んだ。なぜ人々は、エレファント・マンの哀しい物語に惹かれるのだろうか。異形の者に対する好奇、差別、偏見は、21世紀を生きる私たちの心の中にも脈々と、息づいており、現代を取り巻くさまざまな社会問題の源である、と言っても過言ではないでしょう。肥大化するメディアやネットは、時に現代の巨大な見世物小屋と化している。今だからこそ受け取れる『エレファント・マン』からのメッセージとは…。

ストーリー



19世紀の末、産業革命による栄華を極めたイギリス・ロンドン。ロンドン病院の優秀な外科医フレデリック・トリーブスは、見世物小屋で“エレファント・マン”と呼ばれる青年ジョン・メリックに出会う。メリックの異様な姿にこれまでにない大きな衝撃を受けたトリーブスは、見世物小屋の主人パイツと交渉し、メリックを自分の研究対象として病院で預かることにした。
右腕が利かず、歩行も困難、言葉もはっきり発音できないメリック
トリーブスの学会での研究発表は大きな反響を呼ぶが、メリックの快復の見込みは皆無であった。そんなメリックを病院に留めておくことはできないと反対していた院長カー・ゴムは、トリーブスに他の病院に移すよう告げるが、ある時、メリックが、自分の意志で聖書の中の詩篇を暗唱しているのを聞き、知性を持った心優しい青年である事に気づき、深く感銘を受け、彼に病院の永住権を与えた。
聖書を暗唱するメリックに深く感銘を受ける病院長とトリーブス
ある日、トリーブスは、メリックを自宅に招き、妻のアンを紹介した。メリックは、自分を人間らしく扱ってくれるアンに、母の面影を重ね合わせ、耐え忍ぶ日々の支えとなる母の写真を手にしながら、やさしさをかみしめた。あまりにも純粋なメリックに触れたアンは、思わず涙を流した。
舞台の名女優ケンドール夫人と「ロミオとジュリエット」の台詞をやりとりする
タイム誌に記事が報じられたメリックは一躍有名人になった。上流階級の人々がいれかわりたちかわり彼の部屋に訪れるようになった。舞台女優ケンドール夫人もその一人だった。しかし一方で、メリックは人々の好奇心の的となっていた。病院の夜警員の男は、好奇心にかられた人から金をせしめて、メリックの部屋に忍び込み卑劣な行為を行なった。そんな中、外科医トリーブスに“商売道具”メリックを騙し取られたと反感を持っていた見世物小屋の主人バイツが、メリックを病院から連れ去り、ヨーロッパ大陸へ向かった。再び動物のような扱いを受け、容体の悪化したメリックは、この状況を見るに耐えられなくなった見世物小屋の仲間に救われる。メリックは船でイギリスへ辿り着く。仮面とマントで身を隠すメリックは、そこでも好奇の的となる。少年に追いかけられ、少女も悲鳴を上げる中、必死で逃げるメリック。大きくふくれあがった群集に取り囲まれ、逃げ場を失ったメリックは叫ぶ。
「僕は人間だ。動物じゃない。人間なんだ。」
この直後、トリーブスは、メリックがイギリスに戻ってきたことを知り、2人は再会を喜んだ。治療のおかげで、元気を取り戻したメリックだったが、病状は悪化していた。ある夜、ケンドール夫人のはからいでメリックは観劇に訪れた。終演後、メリックに向け、会場から拍手が沸き立つが、彼はぎこちない会釈をする。感激のひと時を過ごし部屋に戻ったメリックは、以前から作り続けていた、窓から見える聖パトリック寺院の模型を完成させ、そこに自分の名前を書き込んだ。メリックは、その日、いつものうずくまった姿勢で眠ることをやめて、部屋の壁に貼られているベッドで眠る少年の絵のように、人間らしく眠りについた。しかし、それはメリックにとっては、致命的な姿勢であったのだ。はたしてメリックは、それを承知の上でしたのだろうか…。

スタッフ

監督:デイヴィット・リンチ
製作:ジョナサン・サンガー
製作総指揮:スチュアート・コーンフェルド
脚本:クリストファー・デ・ヴォア
   エリック・バーグレン
   デイヴィット・リンチ
音楽:ジョン・モリス
編集:アン・V・コーツ
美術:スチュアート・クレイグ
撮影:フレディ・フランシス
衣装デザイン:パトリシア・ノリス
サウンドデザイン:アラン・スプレット
         デイヴィット・リンチ
“エレファント・マン”のメイク・デザインと創作:クリストファー・タッカー
原作:サー・フレデリック・トリーブス「エレファント・マンとその他の思い出1923」
アシュリー・モンタギュー「エレファント・マン人間の威厳に関する一研究」

キャスト

ジョン・ハート(ジョン・メリック)
アンソニー・ホプキンス(フレデリック・トリーブス)
アン・バンクロフト(ケンドール夫人)
サー・ジョン・ギールグッド(カー・ゴム)
ウェンディ・ヒラー(婦長)
フレディ・ジョーンズ(バイツ)
マイケル・エルフィック(夜警)
ハンナ・ゴードン(トリーブス夫人)
ヘレン・ライアン(アレックス皇紀)
ジョン・スタンディング(フォックス)
デクスター・フレッチャー(バイツの連れの少年)
レスリー・ダンロップ(ノラ)
フィービー・ニコルズ(メリックの母親)

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す