南風 わたしは わたしらしく跳ぶ

2004年/日本/111分/カラー/ビスタ 配給:シネカノン

2007年12月21日よりDVDリリース 2005年09月22日よりDVDリリース 2005年3月26日、渋谷シネ・アミューズほか全国ロードショー!

公開初日 2005/03/26

配給会社名 0034

解説


五・七・五——-それは心の扉を開く魔法の十七音。

03年のベルリン国際映画祭で特別顕彰された『バーバー吉野』のスマッシュヒットも記憶に新しく、その卓越したストーリーテリングと独自の笑いのセンスで今もっとも期待されている気鋭の若手女性監督、荻上直子。彼女の監督第二作目となる本作で取り上げるのは、なんと俳句!!

高山治子はクラスになかなかなじめない、いやなじまない帰国子女。彼女は、半ば強制的に俳句部へ入ることになってしまった。同じように集まってきたのは、外見重視のチアガールをクビになったマコ、万年野球部補欠のまま甲子園の夢破れた山岸、治子に憧れる不思議ウクレレ少女Pちゃんに、寡黙な写真部員ツッチーこと土山。
てんでバラバラな5人は気弱な顧問教師のマスオちゃんとともに俳句甲子園を目指すことになるが、俳句に関しては山岸以外ズブの素人。何やら恋の予感も手伝って、前途多難な彼らのゆくえは!?

「俳句甲子園」とは、愛媛県松山市で全国の高校生たちが5人1チームになって対抗戦を繰り広げる俳句大会。
ルールは、題に沿って句を作り、自分の句の解説と相手の句を鑑賞することで、優劣を決するというシンプルなもの。ある晩、この俳句甲子園のドキュメンタリーをみたプロデューサーの1本の電話がすべての発端だった。
俳句はいったい映画になるのか?結果はみごとに史上初の文科系スポコンムーヴィーの完成という快挙を成し遂げた。

出演は、ヒロインの帰国子女、治子に、「爽健美茶」のCMで鮮烈デビューを果たした関めぐみ。
彼女は、次回作として大ヒット韓国映画のリメイク『八月のクリスマス』で山崎まさよしと主演するなど、今もっとも注目を集めている将来有望な若手女優である。
一方、治子に恋をするカメラ少年、ツッチーこと土山に、『ぼくのおじさん』『GO』などキャリア抜群の若手の演技派、細山田隆人が扮するほか、太めの体型が愛嬌たっぷりのマコに舞台で活躍する小林きな子、“シンプルな顔”の野球部補欠の山岸に新鋭の橋爪遼、ウクレレ大好きの不思議少女、Pちゃんにテレビドラマなどで人気のアイドル、蓮沼茜と、絶妙の個性派若手アンサンブルが結成されたほか、杉本哲太、高岡旱紀、柄本明、もたいまさこら実力派演技陣が、しっかりと彼らの脇を固めている。

十七音の凝縮された世界を通して描かれるのは、誰もが心に抱くトキメキ、不安に恋の悩み。それらは笑いというオブラートにくるまれ、そして画面にみずみずしく焼き付けられている。
俳句は「ダサい」?年寄りの趣味?いやいや今や俳句は“ポップ”なのだ!!
ちょっぴり切なくかなり笑えるかつてない青春映画がここに誕生!!

ストーリー

夏の高校野球予選で甲子園出場の願い空しく敗れ去った松尾高校にとって、統廃合の時は2年後に迫っていた。何とかして「我が校の名を残したい」と願う校長(もたいまさこ)は、悲観してばかりはいられないと、俳句甲子園への出場を宣言する。そして、その顧問に命じられたのは、気の弱い国語教師、高山マスオ(杉本哲太)であった。

松尾高校2年生の高山治子(関めぐみ)はクラスになじめない、いやなじまない帰国子女。日本文化に対するカルチャーギャップのせいか、いつも不機嫌そうに、クラスの様子を斜めから見ているような今ドキの女子高生だ。
そんなとき治子は、ちょっぴり太めの容姿が災いしてチアリーダー部をクビになったマコ(小林きな子)が、チビの男子クラスメートにからかわれているのを目撃し、思わずチビを投げ飛ばしてしまう。そんな治子の姿を、ウクレレを胸に抱えて、憧れのまなざしで見つめているのは、1年生のPちゃん(蓮沼茜)だ。
一方、絶望のどん底に突き落とされたマコは、校舎の屋上に駆け上がり、柵をまたいで、今まさに飛び降りようというそのとき、ひとりの男子学生から声をかけられる。写真部の土山(細山田隆人)である。彼から「言い残すことは?」とクールに言われたマコは、大声で「次の世は/ましな私で/生まれたい!」と叫ぶ。「辞世の句なんて、センスいいな」と言い残して屋上から立ち去る土山を見つめるマコの表情に、新たに生きる喜びが浮かんでいた。
その頃、治子はヨーコ先生(高岡早紀)から呼び出されていた。漢字の書けない治子は、答案用紙にすべて「ひらがな」で記入されていることを指摘され、夏休みの間、漢字ドリルで猛勉強するか、俳句甲子園のメンバーになるかの二者択一を迫られるのだった。

同じ頃、写真部の暗室で現像をしていた土山は、マスオ先生から部会があると呼び出される。部室に向かった土山は、そこに治子の姿を目にして、明らかに動揺してしまう。そして、もうひとり、野球部の補欠選手、山岸(橋爪遼)が満面の笑みを浮かべて座っていた。こうして、ことの次第を訝しがる土山は、マスオ先生から思いがけない事実を聞かされる。写真部は夏休みの間、俳句部になるというのだ。そして、俳句甲子園に出場するのだと。唖然とする土山。
ちょうどそのとき、土山を追って、マコが部室に現われ、入部を希望する。これでメンバーは4人。けれど、俳句甲子園には5人1組でしか出場できない。「俳句なんて、ダサいっつうの。全然カッコ良くないし、おしゃれじゃないし」と激しく抵抗する治子だが、ちょうどそのとき、今度は治子を追ってPちゃんがやって来た。これで5人だ。

こうして、5人の“俳句修行”が始まった。俳句に対して、並々ならぬ情熱を注いでいるのは“シンプルな顔”の山岸ただひとり。ほかはズブの素人の4人だが、四苦八苦しながらそれぞれの“5・7・5”をノートに書き連ねてゆく。しかし、土山はなかなか自作の句を発表しようとしない。実は、土山は治子に恋をしていていたのだ。常日頃からカメラで彼女を盗撮していた土山が俳句甲子園に参加しようという気になったのも、思いがけず治子のそばにいられる幸運を逃したくないという一心からだった。
やがて彼らの心に、俳句に対する興味と情熱が不思議とわきあがってくる。

数日後、マスオ先生率いる俳句部の5人組は、去年の優勝校である古池高校の見学へ出かける。まるで体育会系のノリで練習する古池高校の姿に、気負される治子たち。そして、練習句会に臨むが、唯一の頼みの綱だった山岸が緊張のあまり言葉に詰まり、コテンパンにやられてしまう。帰りのバスの中で、失意に沈むメンバーに、マスオ先生はこう慰め、励ますのだった。「楽しんで詠んでください。楽しく詠んだ俳句は、しっかり伝わるはずです」
どしゃぶりの雨の日、俳句大会を開くメンバーたち。教室の床一面に広げられた半紙に、思い思いに筆を走らせる5人。その姿は、まるで童心に戻った子供のようだ。こうして、いつしか大雨の夜は更けてゆく……。

いよいよ俳句甲子園の初日。全国から集まってきた参加校の異様な熱気に、圧倒される松尾高校のメンバーたち。試合が始まっても緊張感は抜けきらず、しどろもどろの治子、無言の土山、泣きじゃくるマコ、言葉の詰まる山岸、ピント外れのPちゃん……あっけなく2連敗し、意気消沈する彼らのそばを、古池高校のメンバーが意気揚々と通りすぎ、ますます落ち込む治子たち。
そんな彼らに、マスオ先生は敗者復活戦のため、松山城まで吟行に行こうと呼びかける。果たして、松尾高校の起死回生の反撃は叶うのか、それとも夢と消えるのだろうか?そして、土山と治子の恋のゆくえは……?!

スタッフ

製作:二宮清隆、李鳳宇、細野義朗
企画:瀬崎巖
プロデューサー:林哲次、田辺隆史

音楽:井出博子
撮影:柴崎幸三
照明:市川元一
録音:林大輔
編集:阿部亙英
装飾:斉藤暁生
助監督:石川久
製作担当:巣立恭平

俳句監修:夏井いつき

エンデイング:「シンクロ」little by IittIe(ソニー・レコーズ)

製作協力:フェローピクチャーズ
制作:東北新社クリエイツ
監督&脚本:荻上直子

キャスト

高山治子役:関めぐみ
内海マコ:小林きな子
田中弘美:蓮沼茜
土山義仁:橋爪遼
山岸実:細山田隆人

藤井タ役:佐藤めぐみ
タのとりまき女子:浜田麻希
夕のとりまき女子:松原静香
山田治役:箕輪裕太

ヨーコ先生役:高岡早紀

中村役:中村靖日
三浦役:嶋田久作

校長役:もたいまさこ(友情出演)

爺ちゃん役:柄本明

高田マスオ役:杉本哲太

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