木村威夫第一回監督作品

2004年/日本/カラー/35min/DV 配給:ワイズ出版

2004年7月3日(土)よりポレポレ東中野にてプレミアムロードショー公開! 同時開催:木村威夫美術監督大回顧展

公開初日 2004/07/03

配給会社名 0339

解説


日本映画美術界の巨匠、木村威夫が85歳にして初めて監督に挑んだ中篇『夢幻彷徨 MUGEN‐SASURAI』がついに完成。自らの戦争体験に基づき、戦火のなかで出会った男女の宿命的な恋の旅路が描かれる。

キャリア60年、手がけた作品は200本以上を数える映画美術の第一人者にとっても監督業は異例の体験であり、自身も「処女のごとく恥じらいながら撮った」と語る。台詞をいっさい廃し、映像と音楽・音響だけで構成された前衛音楽絵巻とでもいうべきスタイルは驚くほどに若々しく、みずみずしい。既成の映画文法にとらわれない演出は、サイレント映画の創世記やヌーヴェルヴァーグの誕生を彷彿とさせる、自由で大胆な表現に満ちている。

日の丸と星条旗。ノスタルジアとモダニズム。闇と光。リアリズムと誇張。エロティシズムとリリシズム。記憶と忘却。デジタルとアナログ。過剰と簡略。そして男と女……。さまざまな要素が渾然一体となった摩訶不思議な世界は、まさしく無限=夢幻の迷宮。豊穣なイメージの連鎖は「まず初めに物語ありきではなく、より自由なイメージを優先させた」と語る演出プランによるものだが、それは「映画に自分自身の少年の日の思いが乗り移ったのかもしれない」という木村の体験と記憶の反映でもある。

主人公たちがさすらう迷宮のセットは『肉体の門』(64)、『ピストルオペラ』(01)、『蒸発旅日記』(03)など、かつて木村が手がけた作品のセットを再現、劇中にたびたび挿入される絵画の数々も木村の手によるものである。わずか35分の掌編ながら、ここには木村美術のエッセンスが凝縮されている。ポスト・プロダクションと編集には1年近い時間をかけ、納得ゆくまで作業を重ねた。

85歳の新人監督をサポートする面々も異色の顔ぶれだ。脚本の山田勇男、監督補の森崎偏陸、撮影の白尾一博はともに、木村が美術監督を担当した『蒸発旅日記』に続いての参加。出演は『蒸発旅日記』の銀座吟八、藤野羽衣子、秋桜子に加え、映画デビュー作『夢みるように眠りたい』((86)で出会って以来、木村に私淑する佐野史郎とその妻でもある石川真希のふたりの個性派が賛助出演している。

本作の上映は、木村威夫が美術を手がけた映画31本を上映する回顧展(6月下旬、ポレポレ東中野)内にて行われるほか、木村威夫・荒川邦彦著による単行本「映画美術 擬憬・借景・嘘百景」(ワイズ出版、4月予定)の出版、映画にも使われた絵画の個展(下北沢LA CAMERA、6月予定)も開催される運びとなっている。

ストーリー


目隠しをした若い男と女が巨大なオブジェの前に立っている。ふたりは空襲のさなかに出会った。戦後、男は魂の自由を求めてさすらい、女は体を売って生計を立てていた。しかし女は男への愛に目覚め、男を捜し求める。長いすれ違いの末に、男と女は再びオブジェの前で出会った。女は自らの目隠しをとり、男の目隠しも取り払った。そして女は男の手を引いて、永遠の道行きへと向かう。その果てない二人の道行きの彼方に、天からの優しい光が降り注いでいる。

スタッフ

監督・原案・美術思考:木村威夫
監督補:森崎偏陸
脚本:山田勇男
撮影監督・編集:白尾一博
企画・製作:岡田博

キャスト

銀座吟八
藤野羽衣子
秋桜子
飯島大介
石川真希
佐野史郎

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