原題:MAX

2002年/ハンガリー・カナダ・イギリス合作/1時間48分/ヴィスタ/SRD/ 配給:東芝エンタテインメント

2004年08月27日よりDVD発売開始 2004年08月27日よりビデオレンタル開始 2004年2月7日よりテアトルタイムズスクエアにてロードショー

公開初日 2004/02/07

配給会社名 0008

解説


 1918年ドイツのミュンヘン。
 第一次大戦後の混乱と未来への希望が満ち溢れる街で、大戦で片腕を失い画商として新しい人生を踏み出したばかりのマックス・ロスマン(ジョン・キューザック)と、画家志望の平凡な青年、アドルフ・ヒトラー(ノア・テイラー)は出会った。ヒトラーの心の内に秘めた孤独や怒り、そのすべてを絵画へ傾けるように示唆するマックス。しかし、芸術への情熱で結びついた友情は、次第に皮肉な運命をたぐり寄せてゆく・・・。
   もうひとつの顔を切り捨てたアドルフという青年が、誰もが知る歴史に悪名高いヒトラーへと変化してゆく。
 独裁者アドルフ・ヒトラーが誕生する、その起点を歴史に題材を取りつつも大胆な解釈で描き出したため、ヒトラーを理解しようとすること自体が彼の行為への正当化につながるとの批判の声もあがったが、アドルフ・ヒトラーにも別の人生を歩むチャンスはあったのではないだろうか?と本作は果敢にも問いかける。
 ふとしたすれ違いから、夢を諦めざるを得なくなったアドルフのあがきは共感を呼び、その絶望は観る者の心を激しく揺さぶることだろう。
 画家を目指す一人の青年アドルフとの奇妙な友情を築くのは、ユダヤ系ドイツ人の画商マックス。
 芸術に情熱を傾けるこの男は、第一次大戦後の時代の狂気を表現しようと試みた前衛芸術家や、ヒトラーの絵画を共に売ったユダヤ人の友人など実在の人物を融合させて作られた架空の存在である。
 幸せな家庭と裕福な生活、そして地位があり有能なマックスは、アドルフの孤独をより一層際立たせる。
 そしてアドルフ・ヒトラー。すでに怪物的な独裁者として画一的なイメージを持つこの男を、本作では大胆にもひとりの人間、画家志望のさまよえる若者アドルフとして描くことで、その後の彼の決断がもたらしたことの恐ろしさを、より鮮明に浮かび上がらせることに成功した。自らが招いた結果により、画家への夢を諦めざるを得なくなったアドルフ。そのあがきは共感を呼び、彼が感じた絶望は観る者の心を激しく揺さぶることだろう。
 ナチスによる残虐な場面は全くないばかりか、独裁者となる以前のアドルフ・ヒトラーを軸とした物語であるにも関わらず、『アドルフの画集』資金集めは難航した。プロデューサーを務めたアンドラス・ハモリも、ナチスに迫害を受けた家系に育ったため、当初は製作に難色を示していた。
 そんな状況を一転させたのがジョン・キューザックの存在だった。彼は『アドルフの画集』の脚本を、高い評価を得た『マルコヴィッチの穴』以来、彼がそれまで出会った中で最高の傑作だと感じ「読むとストーリーがページから跳び出してくるような、まれに見る出来だった。ほかに類を見ない独自性を持ち、その言い分は新奇だが信ぴょう性が感じられる」とノーギャラでの出演を自ら希望し、本作の完成を大きく後押しした。
 芸術に情熱を傾けるユダヤ人画商、マックス・ロスマンを演じたジョン・キューザックは、ハリウッドを代表する俳優として、日本でも公開作が相次ぐ。主な出演作として『セレンディピティ』『マルコヴィッチの穴』がある。本作には製作にも深く関わり、アソシエイトプロデューサーとしてもクレジットされている。ジョン・キューザックと磁力のように引き合いながらも反発しあう、アドルフ・ヒトラーを演じたのはノア・テイラー。アカデミー賞を受賞した『シャイン』『バニラ・スカイ』が代表作の個性派。誰もが知るヒトラーという実在の人物を並々ならぬ雰囲気を漂わせ演じた。
 マックスの愛人で前衛芸術家のリセロアを『愛ここにありて』のリーリー・ソビエスキー、マックスの妻ニーナを『赤い部屋の恋人』のモリー・パーカー、そしてアドルフの友人、陸軍将校を演じた『セレブレーション』のウルリク・トムセン。いずれも確かな演技に定評のある役者が脇をかため、『カラーパープル』でアカデミー賞にノミネートされた経歴を持つ、メノ・メイエス初監督作品である本作に花を添えている。

ストーリー


 1918年、ドイツ-ミュンヘン。
 第一次世界大戦後の混乱が街に退廃的な雰囲気を漂わせ、人々の間には未来に対する期待と不安が渦巻いていた。
 ユダヤ人の裕福な家庭で育った、元軍人のマックス・ロスマン(ジョン・キューザック)は、戦場で右腕を失いはしたが帰還した。バレリーナの美しい妻、ニーナ(モリー・パーカー)と人生を立て直すために、鉄工所の跡地に画廊を開くマックス。
 絵画の売買は順調だったが、魅惑的な前衛芸術家の愛人(リーリー・ソビエスキー)の存在が夫婦の間に影を落としていた。
 いつものように画廊で催されたパーティで、マックスは偶然、ポートフォリオを抱えた復員兵の青年に出会う。
 同じ戦地で戦ったことが分かり、打ち解ける二人。その貧しく平凡な青年こそが、画家を目指す若き日のアドルフ・ヒトラーその人だった。
 なけなしの金をはたいてスーツを買い、マックスに絵画を見せにやってきたアドルフ。しかし絵画から肉声が聞こえてこない、とマックスから言われ、すっかり落胆したアドルフは戦争から戻るとすべてを失っていた自分の身の上を語り出す。
 マックスの言葉を頼りに芸術へ情熱を傾けるアドルフ。
 貧しい彼に対して、陸軍将校(ウルリク・トムセン)は宣伝のための演説をすれば生活の保証をすると誘う。
 街頭で演説をするアドルフ。
 マックスはその反ユダヤ的な演説に気分を害するが、無邪気にもアドルフは演説を聞いた感想を訊ねる。
 芸術への意見を交わすうちに、二人の間には緩やかな友情が芽生え始めていたが、アドルフの言動に不安を感じたマックスは、さらに絵画へ打ち込むように諭す。
 今まで以上にうっ積した思いのすべてを、絵画にぶつけるアドルフ。
 なかなかマックスの心を動かす絵画は描けずにいた。二人の芸術への意見がすれ違い始めたある日、マックスはアドルフが描いたデッサンに目を奪われる。
 マックスは近いうちにアドルフのために個展を開く約束と、その夜、残りのデッサンを見る約束をし教会へ向かう。
 そのころ、アドルフは代理での演説を任されていた。これを最後の演説にして絵画に打ち込むはずのアドルフだったが、彼の反ユダヤ発言に観衆は狂喜する。
 約束のカフェでマックスを待つアドルフ。
 しかし、いつまでたってもマックスは現れない。
 アドルフが行った最後の演説によって、アドルフとマックス、二人の運命は皮肉にも動き始めていた。

スタッフ

監督・脚本:メノ・メイエス
製作者:アンドラス・ハモリ
製作総指揮:ジョナサン・デビン、トム・オルテンベルク、フランソワ・イヴェルネル、キャメロン・マクラッケン
共同製作者:アンドレア・アルバート、デイモン・ブライアント
製作助手:シドニー・ブルーメンタール、ジョン・キューザック、ラチア・コルニロ
撮影監督:ラホス・コルタイ
編集者:クリス・ワイアット
作曲者:ダン・ジョーンズ
美術デザイナー:ベン・ヴァン・オス
キャスティング・ディレクター:ニナ・ゴールド

キャスト

マックス・ロスマン:ジョン・キューザック
アドルフ・ヒトラー:ノア・テイラー
リセロア・フォン・ペルツ:リーリー・ソビエスキー
ニーナ・ロスマン:モリー・パーカー
キャプテン・マイヤー:ウルリク・トムセン
マックスの父:ダヴィッド・ホロヴィッチ
マックスの母:ジャネット・サズマン
下士官:アンドラス・ストール
ニーナの父:ジョン・グリロ
ニーナの母:アンナ・ナイ
ニーナの兄弟:クリスツィアン・コロヴラトニク

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