原題:songcatcher

1907年、アパラチア。ここには人間を支える”歌”があった

2000年サンダンス映画祭 特別審査員賞 2000年ドーヴィル映画祭 観客賞 2001年インディペンデント・スピリット・アワーズ 新人賞、最優秀助演女優賞

2000年12月1日アメリカにて初公開

2000年/アメリカ/カラー/109分/ドルビーデジタル/ヴィスタサイズ 配給:松竹/宣伝:ムヴィオラ

2004年09月25日よりDVD発売開始 2004年09月25日よりビデオレンタル開始 2003年11月8日より、シブヤ・シネマ・ソサエティにてロードショー

ビデオ時に変わった場合の題名 Songcatcher 〜歌追い人〜

公開初日 2003/11/08

配給会社名 0003

解説



今から100年ほど前。まだ電気録音も、音楽産業もない時代のアメリカ、ノースカロライナ州。山並連なる遥かアパラチアに、人々とともに生きる“歌”があった……。アパラチアの山中で“幻の歌”に出会い、“歌を集める”音楽学者リリー・ペンレリックに、トニー賞・ゴールデングローブ賞受賞者でアカデミー賞ノミネートにも輝く英国出身の名女優ジャネット・マクティア。この映画は、歌の心の奥深くへの旅であると同時に、「山の民(マウンテン・ピープル)」と呼ばれたアパラチア山脈の人々の歴史の断片であり、また独りの女性が山の人々の生き方と音楽に出会うことで、自分の中に眠っていたエモーションを見つけ、頭でなく心で生きることを学ぶ物語である。
共演には、『マイケル・コリンズ』『ミュージック・オブ・ハート』などの人気俳優エイダン・クイン。本作で見事な歌声を披露し、観客を魅了する天才少女エミィ・ロッサムは、この映画がデビュー。現在はクリント・イーストウッドからローランド・エメリッヒの新作まで、引っ張りだこのニュースターとなった。そして演技陣で何より特筆されるのは、山の老女ヴァイニーに扮する「アメリカ・エンタテインメント界の皇后」とも呼ばれるパット・キャロルである。古くはレッド・バトンズ・ショウから新しくはディズニーの大ヒットアニメ『リトル・マーメイド』の魔女ウルスラの吹き替えまで、50年を優に超えるキャリアを持ち、エミー賞・グラミー賞の受賞者であるパット・キャロルはまさにアメリカのショウビズの生き字引。彼女が演じるヴァイニーの、いるだけで微笑むだけで幾霜もの時を感じさせる存在感が、この映画に豊かな滋味を与えている。また本作では、オペラ出身のエミィ・ロッサムだけでなく、エイダン・クイン、そしてもちろんパット・キャロルも味わい深い歌声を聞かせる。彼ら主演陣のアンサンブルの素晴らしさにサンダンス映画祭は特別審査員賞を授けている。
監督は前作「The Ba11ad of Little Jo」で、サイレント時代以来初、という女性の脚本・監督による西部劇を発表し、大絶賛されたマギー・グリーンウォルド。本作を「時代物」としても「女性物」としても堪能できる練り上げられた脚本と演出手腕が光る。撮影には、『ハリケーン・クラブ』などモーガン・J・フリーマン監督作品で高く評価される気鋭のエンリケ・チェディアクがあたり、アパラチアの孤高ともいえる美しさを存分に捉えている。音楽監督は、グリーンウォルド監督の夫であり、『天国の門』などで知られるデイヴィッド・マンスフィールド。自らアパラチアへ赴きリサーチを行い、素晴らしいバラッドの数々を選曲、アレンジし、土地の空気を映すような美しいオリジナル・スコアも提供している。
なお本作には、アメリカのトラディショナル・ミュージック、カントリー・ミュージックシーンの本物のスター達、アイリス・ディメント、ヘイゼル・ディケンズ、シーラ・ケイ・アダムスが出演し、心に沁み入る歌を披露。また伝説のブルース・ミュージシャン、タージ・マハールも短い出演場面ながらファンを唸らせる演奏を聞かせる。エンディング曲を歌うのは、カントリー界の大スター、エミルー・ハリスである。映画のスマッシュヒットとともに、サウンドトラックが記録的なセールスとなり、本作はアメリカ中に“バラッド・ブーム”を巻き起こした。映画のインスパイア・アルバムである「Songcatcher 2」もリリースされ、こちらも大ヒットしている。

ストーリー



1907年、アメリカ。当時の女性としては珍しく博士号を持つ音楽学者リリー(マクティア)は、ニューヨークの大学で主任教授への昇進を望んでいたが、その望みは単に女性だからという理由でまたも断ち切られた。妻ある身でありながらリリーと愛人関係にある教授のウォレスは、彼女と都合のいい関係を続けることにしか関心がない。ニューヨークの生活に絶望を感じたリリーは、妹が入植地の教師をしているノースカロライナ州の遥かアパラチアヘと向かおうと思い立った。
ようやく辿り着いたアパラチアのクローバー入植地学校。妹のエレノアは“エルナ”と呼ばれ、同僚のハリエット、孤児のディレイディスとともに暮らしていた。都会で「山では野蛮な連中が蛮行を繰り返している」と聞かされていたリリーは、彼女の歓迎のためにと歌ったディレイディスの歌の素晴らしさに、心底驚いた。それは学界ではすでに失われた歌とされていた、200年以上前のスコッツ・アイリッシュ移民の伝統歌そのままだったからであった。リリーは、都会から録音機を取り寄せ、山の人々の歌を録音し採譜して出版しようと決意する。
山の人々には、都会から来た学者先生が、なぜ自分達のなんでもない歌をそれほどに聞きたがるのか、さっぱり判らなかった。しかしリリーは、重く大きな録音機を汗まみれになって運び、あの家からこの家へと訪ねて歩き、村びとに彼らの音楽の素晴らしさを訴えてまわった。村びとに信頼篤い老女ヴァイニー・バトラーは、そんなリリーの頑固な情熱に自分に通じるものを感じ、彼女の“歌集め”に協力するようになる。しかし、ヴァイニーの孫のトムは、リリーへの不信を露にする。トムは、軍人として海の向こうで戦い、都会でも暮らした経験を持ちながら、山に戻ってきた男だった。妻を相次いで亡くした過去も彼を苦しめていた。そんな頑な心が、リリーを“山の人間の歌を盗むもの”として激しく拒絶させるのだった。そんなある日、リリーは妹のエルナがハリエットと同性愛の関係にあることを知って愕然とする。世間体や常識を重んじるリリーは、2人の関係を受け入れることはできなかった。
リリーはヴァイニー、そして今や優秀な助手となったディレイディスの協力を仰ぎながら、歌の収集を続けた。その中で、リリーは山の人々の厳しい暮らしを目の当たりにする。物々交換だった時代から貨幣の文化へと移行する中で、山の人々は貧困に苦しみ、なけなしの土地さえ手放さなければならなかった。間もなく臨月だというのに、夫が、同じ村の女の家に行ったままで苦しむ女性もいた。今や音楽への情熱に突き動かされたリリーは、しだいにエルナとハリエットの関係をも受け入れはじめていた。自分の中にもある強いエモーションに気づきはじめていたのだ。ある日、村の集会所がわりの納屋でダンスパーティーが開かれた。村人達の数少ない楽しみの一つだ。バンドには、ギターとバンジョーの弾き手であるトムの姿もあった。ヴァイニーに連れられ訪れたリリーが村びとに混じってダンスを披露するのを見て、彼女の山の音楽への純粋な尊敬を感じたトムは、しだいにリリーを愛するようになる。同時にリリーもまた山の文化を愛するトムに惹かれるのを感じ、2人はその夜結ばれた。
リリーとトム、エルナとハリエット。4人で出かけた晴れた日のピクニック。トムはエルナ達の関係にも寛容だった。しかし、青年フェイトが届けに来た「君の発見は素晴らしい。ホイットル教授がそちらへ向かうので助手をするように」というオルドリッチからの手紙を読み、リリーは落胆する。そのうえフェイトがエルナ達の抱き合う姿を目撃。保守的な山の人々にとって同性愛は悪魔の仕業だった。彼らによって、学校は焼き討ちにあう。炎に包まれる入植地学校。リリーが精魂込めて集めた歌の数々も、灰となった。
すべてが無に帰して、リリーは山を下りることを決めた。リリーはトムに「一緒に来てほしい」と想いを伝える。彼女はトムとともに山に伝わる歌を2人で出版し、レコードにし、山の文化を多くの人に知らせる仕事をしようと提案する。ディレイディスも一緒だ。山を下りる3人。そこへすれ違おうとする車。そこにはホイットル教授が乗っていた。教授はリリーの業績を認め、自分がリリーの助手としてアパラチアでの歌の採集を手伝いたいと申し出る。リリーが夢見ていた業績を残すチャンスがそこにあった。しかし、リリーはトムとの新しい生活を選ぶ。
アパラチアの歌は、今や彼女の心の中に息づき、成功以上に大切なものをリリーに気づかせてくれたのだった。

スタッフ

監督・脚本:マギー・グリーンウォルド
製作:エレン・リガス・ヴェネティス、リチャード・ミラー
製作総指揮:ジョナサン・シアリング、カロライン・カプラン
音楽監督・作曲:デイヴィッド・マンスフィールド
撮影監督:エンリケ・チェディアク
美術:ジンジャー・トウガス
編集:キース・レアマー

キャスト

リリー・ペンレリック:ジャネット・マクティア
トム・ブレッドソー:エイダン・クイン
ヴァイニー・バトラー:パット・キャロル
エルナ・ペンレリック:ジェーン・アダムス
フェイト・ハニカット:グレッグ・ラッセル・クック
ローズ・ジェントリー:アイリス・ディメント
アリス・キンケイド:ステファニー・ロス・ハバール
アール・ギデンズ:デイヴィッド・パトリック・ケリー
ハリエット・トリヴァー:E.キャスリーン・カー
デクスター・スピークス:タージ・マハール
ディレイディス・スローカム:エミィ・ロッサム
バーリー・ジェントリー:ミューズ・ワトソン
納屋のバンド)
ダルシマー:ドン・ペディ
バンジョー:シーラ・ケイ・アダムス
シンガー:ボビー・マクミリオン
シンガー:ヘイゼル・ディケンズ

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