原題:The Kid Stays In the Picture

2002年/アメリカ/カラー/ビスタサイズ/93分/ 配給:アミューズピクチャーズ

2004年03月26日よりDVD発売開始 2003年9月20日より、ヴァージンシネマズ六本木ヒルズにて くたばれ!with Loveロードショー!

公開初日 2003/09/20

配給会社名 0008

解説


■ハリウッド映画界を震撼させた伝説のカリスマ・プロデューサー、ロバート・エヴァンズ

古いスタジオ・システムが崩れようとしていた70年代のハリウッド映画界に彗星のごとく登場し、映画の流れを大きく変えてしまった男がいた。現在の巨大化したハリウッドの映画産業の基盤を作り上げたといわれる彼の名はロバート・エヴァンズ。30代でパラマウント映画のカリスマ・プロデューサーとなった彼は、『ゴッドファーザー』や『ある愛の詩』といった名作を次々と製作。ダスティン・ホフマンやジャック・ニコルソンなどの超大物スターたちと交流を深め、旧世代の重役たちが権カを誇っていたハリウッドに、強烈パンチを食らわせた。実生活では数々の女優やモデルたちと華やかなロマンスをくり広げ、ハリウッドで最もセクシーな製作者としてマスコミを湧かせた。再現ドキュメンタリー『くたばれ、ハリウッド!』では、ハリウッドを激震させた“エヴァンズ神話”が赤裸々に暴かれる。

■映画よりおもしろい!天国と地獄を見た革命児エヴァンズのパワフルで華麗な人生ドラマ

ハリウッドで世界を手にいれようとしたハンサムでセクシーなプロデューサー、エヴァンズ。兄と共同経営していたアパレル会社の成功で、若くして巨万の宮を築いた彼は、ビヴァリーヒルズのプールサイドで大物女優ノーマ・シアラーに見出され、一躍スターダムに上る。だが彼が求めていたものは俳優ではなく全権力を握ったプロデューサーだった。34歳の時ニューヨーク・ポストに掲載された記事がもとで、パラマウント映画の若き幹部に抜擢され、『ローズマリーの赤ちゃん』では変わり者といわれたロマン・ポランスキーをヨーロッパからハリウッドに呼び寄せ、この傑作を撮らせた。また、後に夫人となるアリ・マッグロー主演の大ヒット作『ある愛の詩』ではラブ・ロマンス映画ブームを作り、まわりの反対を押し切って製作した『ゴッドファーザー』や『チャイナタウン』も不朽の名作となり、アカデミー賞でも大きな話題を呼んだ。ハリウッドで革新的な映画作りを続けたエヴァンズだったが、80年代は『コットンクラブ』の興行的な失敗や殺人事件に巻きこまれ、麻薬に溺れていった。そして、女優だった最初の妻、アリ・マッグローと離婚し、ハリウッド中の美しい女性たちがデートしたといわれる華麗なる女性遍歴を繰り返した。人生の天国と地獄を体験し、最後にハリウッドに奇跡の復活を遂げるエヴァンズの壮絶パワフル人生は、並みの映画より100倍スリリングでおもしろい。

■主人公自らがナレーターとなり自分を語るという前代未聞の“オレサマ映画”

『くたばれ!ハリウッド』では主人公の映画プロデューサーが自らの激励の人生を90分間、自分自身で語りおろすという型破りで斬新な構成がとられ、見る人にかつて映像で体験したことのなかった衝撃を与える。当時の膨大なスチール写真や記録映像をバックにしたグラフィックな画面構成、傑作『ゴッドファーザー』の誕生秘話や70年代のミューズ、女優アリ・マッグローとの破局のいきさつを、自身がナレーターとなってドラマティックに演じてみせる究極の“オレサマ映画”。元・俳優という前歴を持つエヴァンズにしかできない前代未聞のポップなドキュメンタリーが誕生したのだ。この作品は昨年のカンヌ映画祭でオープニング上映され、2002年のボストンやシアトルの批評家協会賞や2003年のゴールデンサテライト賞の最優秀ドキュメンタリー賞も獲得。近年、最もおもしろいドキュメンタリーの1本として高い評価を受けた。

■250人の承諾のもとに製作されたエヴァンズ流ハリウッド・セレブの世界

富と権力、セクシーな魅カとすべてに恵まれたエヴァンズだけに、ハリウッドでの顔の広さもただごとではなかった。ジャック・ニコルソン、ダスティン・ホフマン、ロバート・レッドフォードといったエヴァンズにゆかりの深い人気男優から、『ゴッドファーザー』のフランシス・F・コッポラや『ローズマリーの赤ちゃん』のロマン・ポランスキーといった巨匠監督、また、エヴァンズ夫人だったアリ・マッグローからエヴァンズがスターにしたミアファロー、さらにエヴァ・ガードナーやタイロン・パワーといった今は亡き往年の大スター、ヘンリー・キッシンジャーといった大物政治家まで、この映画には数多くの有名人が登場。スチールや出演作の承諾許可が必要だった俳優の数は250人におよんだが、声をかけた有名人全員が快く協カを承諾してくれたという。こんなところにもエヴァンズの懐の深い大物ぶりが出ている。

■エヴァンズが30年間愛したゴージャスな屋敷、時代を象徴する豪華なヒット・ソング

この映画のもうひとつの主役となっているのが、エヴァンズが長年住んでいたハリウッドの豪華な屋敷。インテリア・デザイナーのジェームズ・ペンドルトンの持ち家であり、かつては伝説の女優グレタ・ガルボの隠れ家だったといわれる、大きな薔薇園や噴水もあるこの夢のようにゴージャスな屋敷で、エヴァンズは30年間暮した。監督のブレット・モーゲンが「エヴァンズにとっての聖なる場所」と語るこの屋敷が映画では大きな役割をはたす。それはハリウッドそのものの象徴であり、華やかな彼の栄光の日々を思わせる。また、この屋敷にまつわる親友ジャック・ニコルソンの心熱くなるエピソードは、劇中、最も感動的な場面のひとつとなり映画のカタルシスを与えてくれる。また、『華麗なるギャツビー』や『ある愛の詩』のテーマ・ソング、エルトン・ジョンやスティーリー・ダンのヒット曲など、70年代の曲が全編に散りばめられ、誰にも真似のできないエヴァンズのオンリー・ワンの人生ドラマを盛り上げていく。

■アカデミー賞候補になった若き才能とハリウッドのイコン、エヴァンズとの幸運なる出会いから生まれた傑作ドキュメント

この映画の原作となったのは、エヴァンズ自身が94年に発表した自伝「くたばれ!ハリウッド」(日本では文套春秋社刊)だが、アメリカではエヴァンズ自身が吹きこんだオーディオ・カセット・ブックが話題となり、ヴァニティフェア誌の編集長だったグレイドン・カーターをひきつけた。彼はエヴァンズの伝記映画を作ろうとしていた実力派のドキュメンタリー作家、ブレット・モーゲンとナネット・バースタインと共同で今回の映画に着手した。ふたりは“On the Ropes”(日本未公開)でアカデミー賞候補になったこともある若手の注目監督だった。撮影は『恋愛小説家』の名カメラマン、ジョン・ベイリーが担当。編集は新人のジュン・ディアズ。一中のすべてのナレーションはエヴァンズ自身によるものだが、エンド・クレジットではダスティン・ホフマンの貴重なフィルムが使われ、爆笑トークを見せてくれる。

ストーリー


ロバート・エヴァンズについて

20歳のとき俳優志願の若造としてパラマウントの門をくぐったロバート・エヴァンズは見学にもぐりこんだスタジオで、いまは神話となった映画の撮影風景を目撃する。ビリー・ワイルダーが『サンセット大通り』を演出していたのだ。エヴァンズのなかでなにかが爆発する。以来、エヴァンズにとって映画は変わらぬ愛を注ぐ恋人となったのである。10数年後、パラマウントの門をふたたびエヴァンズがくぐったとき、彼の肩書きは俳優ではなく、撮影所のトップとなっていた。その存在感は強烈だった。プロデューサーがスターの誰にも増してマスコミの注目を一身に集めることになった。トップとしては信じがたいほどの若造であり、いつクビになるかが賭けの対象でもあったからだ。しかしエヴァンズには情熱と魅力があった。だれもが彼にほれ込んだのである。女性はいうまでもない。
当時数多くのハリウッドの女性たちと関係していたウォーレン・ビーティ、ジャック・ニコルソン、ロマン・ポランスキーが一目置いていた存在、それゆえに(?)無比の友情で結託することになった才能が、エヴァンズなのである。エヴァンズは、いかにもといった感じのハンサムで(それが俳優としてのブレイクをさまたげた)、とても石油会社に買収され閉鎖・消滅の危機にあった最下位パラマウントを、『ローズマリーの赤ちゃん』、『ある愛の詩』、『ゴッドファーザー』などのプロデュースを通じてトップに押し上げたハリウッド史上まれに見る起死回生再建男とは思えない。しかしこの若造がパラマウントだけではない、疲弊しニューシネマでお茶を濁し先の見えない袋小路にあったハリウッド映画のイメージをゴージャスで正統なものに戻したのだ。
エヴァンズはのちに自伝「くたばれ!ハリウッド」を書く。それがこのドキュメンタリーの原作だが、これほどの疾風怒涛人生を生き抜いてきたプロデューサーはいないだろう。三流役者が、役者や監督以上の存在としてプロデューサーにあこがれ、あれよあれよとのしあがっていくアメリカン・ドリームだが、同時にそれは神経をすり減らすナイトメアと隣り合わせのギャンブル人生だった。巨大な金が動きほとんどが赤字で終わる映画製作はギャンブルそのものだ。エヴァンズが成り上がったのは、まだ1本も映画をプロデュースしたことのない彼をパラマウントの製作のトップに据える決定を下したガルフ&ウェスタン社主、チャーリー・ブルードーン、カポネの弁護士あがりで政治・経済・社会のトップ・レベル交渉を電話1本で済ます裏の仕口人というべきシドニー・コーシャックといった自分の後ろ盾となるべき年上の男のハートをつかむ、いってみれば親父転がし、権力者転がしにたけていたことがあげられる。そういう魅力は天性のものとしかいえない。プロデューサー・デビューに手をさしのべてくれたフランス映画界の若きドン、アラン・ドロンとの交流とか、大統領を影の存在にするほど国務をとりしきったヘンリー・キッシンジャーとか、大物転がしの才も本物だ。難点はプロデューサーの黄金時代1940年代から50年代とちがって、エヴァンズの地位は雇われマダムだったことだ。会社の金は使い放題としても、いくら映画がヒットしてもエヴァンズには入ってこない。本人はそのあたりの運のなさを自伝で嘆きっぱなしだ。
シャロン・テイトの誘いにのってポランスキーの屋敷へ遊びにいっていれば、チャールズ・マンソンの記下の者にまちがいなくエヴァンズも惨殺されていたはずで、そうなると『ゴッドファーザー』は生まれてはいなかった。本や映画ではいかにも軽く装っているが、すれすれのスリルがエヴァンズ主演ドラマの基醐なのだ。『コットンクラブ』のときは殺人事件の容疑者扱いの辱めをうけた。
ところでプロデューサーとは?エヴァンズが言うには、ハイスクール中退者でも俳優、脚本家、監督の何たるかはわかるが、プロデューサーについてはロウズ奨学生でもわからない、らしい。そして自分のようなプロのプロデューサーは絶滅寸前だと。製作予算、キャスティング、製作準備段階、製作、ポスト・プロダクション、最終的な編集、上映館の選択、宣伝、市場開発、収益の回収といった作業を3〜5年にわたって展開する、気が遠くなるような雑務の日々。そして、成功したとき名誉は監督や俳優のものとなり、失敗はプロデューサーがかぶる。わたしは尊敬されていない、とエヴァンズは嘆くのである。映画に出てみない?、と女に近づくプロデューサーは正規の手口ではない、とエヴァンズは講釈するのだが、ビーティはエヴァンズをそうは見ていなかったようだ。
若き日の出演作『日はまた昇る』を降ろされそうになったとき、ダリル・F・ザナック(20世紀フォックスの大プロデューサー)の鶴の一声、”その若造は映画にとどまれ”(The kid stays in the picture)でエヴァンズは救われた。ザナックヘのあこがれからプロデューサーを目指した男はいまも若造(現役)でありつづける。

スタッフ

キャスト&ナレーション:ロバート・エヴァンズ

キャスト

監督・製作:ブレット・モーゲン&ナネット・バースタイン
製作:グレイドン・カーター
編集:ジュン・デイアズ
撮影:ジョン・ベイリーA.S.C.
音楽:ジェフ・ダナ
アソシエイト・プロデューサー:クリストファー・J・キーン
共同プロデューサー:ケイト・ドライヴァー、クリス・ギャレット、サラ・マークス
デジタル・サービス:スコット・クレイン
サウンド・デザイン監修:クロード・ルテシエ
原作:「くたばれ!ハリウッド」ロバート・エヴァンズ
脚色:ブレット・モーゲン

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