原題:Whale Rider

2002年トロント国際映画祭・観客賞受賞 2003年サンダンス映画祭ワールドシネマ部門・観客賞受賞 2003年ロッテルダム映画祭 Canal+観客賞受賞

2003年1月30日ニュージーランド初公開

2002年/ニュージーランド・ドイツ/カラー/102分/ドルビーデジタル/6巻2789m/ スコープサイズ/翻訳:太田直子 配給:日本ヘラルド映画

2004年06月25日よりDVD発売開始 2004年06月25日よりビデオレンタル開始 2003年9月13日より恵比寿ガーデンシネマほかにてロードショー公開

公開初日 2003/09/13

配給会社名 0058

解説


果てしなく広がる青い海と空、豊かな大自然を誇る楽園の島ニュージーランド。あの『ロード・オブ・ザ・リング』の舞台としても有名な南国で生まれた1本の映画が、今、空前の大ヒットとなり、奇跡を呼び起こしている。本国では、並みいるハリウッド大作を押し退け、6週間No1を獲得、トロント、サンダンス、ロッテルダム映画祭でも、世界中の人々から絶賛され、見事観客賞をトリプル受賞するなど、その勢いは止まることを知らない。そして、いよいよ日本でも、この話題の映画『クジラの島の少女』が公開される。

クジラに乗ってやってきた勇者伝説を信じるマオリの一族。代々、男を族長として続いてきた一家の長男ポロランギは、双子の男女を授かったにもかかわらず、出産時の不幸から、妻と後継ぎになるはずの男の子を失い、女の子が1人残された。孫娘の誕生を心から喜ぶことができない父親コロとの確執の末、ポロランギは家を出ていく。離ればなれになっていく家族の絆。自分が女で生まれてきたことに悩み、期待されないがゆえの孤独と戦いながらも、12歳に成長した少女パイケアの元に、クジラたちが次々と姿を現し始める。伝説の勇者”ホエールライダー”の魂を受け継ぐ者として、クジラが導く不思議な運命に立ち向かい、ニュージーランドの海と大地に奇跡を起こしていく。少女のルーツをめぐる愛と勇気の物語は、現代版『みにくいアヒルの子』、女の子版『リトル・ダンサー』であり、ニュージーランド版『風の谷のナウシカ』とも言える感動作に仕上げられた。

劇中で印象的に使われているロープ(縄)。これはまぐれもなく脈々と引き継がれてきた先祖、家系の絆を意味している。ロープが切れるとき、それはイコール家族の崩壊であり、血がたえることを暗示する。一千年前、海を越えてニュージーランドにやってきた勇者パイケアの血を受け継ぐ少女は、このマオリの危機を救うことができるたった1人の人間である。しかし、その真実に気づくものはいない。少女が12歳を迎えた時、クジラの出現によって運命が変わり始める。クジラだけが知っているのだ。少女が救世主であることを・・・。

孫娘を心から愛していながらも、女であるがゆえにその存在を認めようとはしない祖父や、古い因習とプレッシャーに耐えられず、家を出て行った父親、残された孫娘を1人の人間として優しく見守る祖父。少女をとりまく登場人物を、温かい視線で、時にはユーモアも交えて描きながらも、いまだ男性社会にあるマオリの、いや、世界の因習に疑問を投げかける。

この物語の原作者は、主人公と同じくマオリ出身の作家、ウィティ・イヒマエラ。「小さな勇気が世界を変え、女の子でもヒーローになれる。これは地球上のあらゆる社会や文化にも共通するメッセージです。」この小説を映画化するために、ニュージーランドでは破格の1千万NZドルという制作費が投入され、世界最高峰のスタッフ、キャストが集結した。

監督・脚本は、デビュー作でいきなりカンヌ映画祭出品、追って新作を発表するほとにヴェネチア映画祭、カンヌ映画祭でコンペ上映されるなど、若くして成功を手にしている女性監督、ニキ・カ−ロ。彼女のもとに『ロード・オブ・ザ・リング』のプロデューサー、ティム・サンダーズや『グラディエーター』のスコアを手がけたリサ・ジェラードなど、アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞を受賞した最高峰スタッフたちが結集。キャストは全てマオリ族で、中でも主人公パイケアを演じたケイシャ・キャッスル=ヒューズは一万人の中から選ばれた天才少女として、華々しいスクリーンデビューを飾った。12歳の繊細さと、黒い瞳から伝わる意志の強さを兼ね備えたこの少女に、世界中のマスコミから多くの絶賛の声が寄せられている。祖父母役のラウィリ・パラテーンとヴィッキー・ホートンはニュージーランドでも有名な名俳優、名女優。そして『ブロウ』『インサイダー』『トレーニング デイ』といった数々のハリウッド大作にも出演する俳優、クリフ・カーティスが父親役としてストーリーに深みを与えている。

撮影場所は原作通り、ニュージーランド北島の町ファンガラを選んだ。そこで暮らす人々は、今でもこのクジラ伝説を信じているという。映画が公開されて一番嬉しかったのは、マオリ族である彼らの物語、彼らの神話が世界中の人々に勇気と希望をあたえたことだと監督は語っている。

ストーリー


ニュージーランドの小さな浜辺の村。その村には今を遡ること1千年前、遠くハワイキから新しい地を求め出発した勇者パイケアが、苦しい航海の途中、クジラに助けられて導かれて、辿り着いたという伝説が語り継がれてきた。そのパイケアを先祖に持つマオリ族は、代々男を族長として続いてきた。

時は現代。族長の長男ポロランギは男女の双子を授かるが、不幸にも男の子と母親は出産時に命を落とし、女の子が1人残された。彼女の名前はパイケア。伝説の勇者と同じ名前がつけられた。

悲しみに打ちひしがれた父親が村を離れ、パイケアは祖父母のもとで育てられる。後継者の誕生を心待ちにしていた祖父のコロは、生存したのが女の子であったという落胆から、パイケアの存在を受け入れることができない。一方祖母のフラワーズは後継者の問題よりも、愛情を必要としる1人の子供として彼女を見守っていく。

パイケアが育つにつれ、やがてコロ自身も孫を愛することを学び始める。彼女が12歳になった時、ドイツから今や世界的アーティストになったポロランギが戻ってくる。コロは、彼が運命を受け入れて自分の後継者となることを強く望んでいた。しかし、身も心もすっかりマオリ族から離れてしまっていたポロランギには、族長になるつもりはなく、コロとの激しい口論のすえ、愛娘を連れ村を出ていくことに。一度は父と共に出ていく決心をしたパイケアだが道中祖父のことが頭から離れず、父親の車を降り祖父母の家に舞い戻る。

後継者は息子しかいないと思っていたコロが、新たな後継者探しを急いだ。一族の不幸の原因はパイケアの出生にあると確信する彼は、村中の12歳となる少年たちをマラエ(集会所)に集め、部族の伝説や、伝承歌、闘いの技術などの訓練を開始した。

女であるがゆえ訓練に加われないパイケアは諦めきれず、マラエの陰からコロの教えを学ぼうとするが、「マラエに女が来ることは神聖な場所を乱すことだ」とコロから激しく叱責されてしまう。女として誕生したのは誰のせいでもないのに、そのために大好きな祖父から拒絶されるパイケアは、自分の存在を恨めしく思いはじめる。しかし、祖母のアドバイスを受け、叔父のラウィリから秘密の特訓を受けはじめた。

時が過ぎ、猛特訓を終えた少年たちを、海での最終試練が待ち受けていた。彼らと共にボートで沖合いにでたコロは代々族長に伝わるクジラの歯の首飾りを海に投げ入れ、「拾ってきた者が次の族長となる」と彼らに告げる。少年たちは素早く海に飛び込むが、誰も見つけてくることは出来なかった。族長選びが失敗に終わり気を落とし寝込む祖父に、何とか元気を出してもらいたいという一心でパイケアが首飾りを探すと、それは難なく見つかった。だが、首飾りはすぐにコロの元には返らず、祖母の手に託される。

翌日、コロの枕元みは学芸会の招待状が置かれた。パイケアは会のラストにコロを驚かせるものを用意していた。それは、彼女がスピーチコンテストで1位を獲得した、大好きな祖父コロに捧げる詩の発表であった。パイケアは、コロに伝説の勇者パイケアが祖父と同じく孤独に苛まれた時、力を与えてくれるよう祖先に祈ったと伝わる詩を捧げたかったのだ。涙ながらにスピーチを披露するパイケア。しかし、そこにコロの姿はなかった・・・。

その頃、まるでパイケアの悲しい運命と呼応するかのように、海の底からクジラの一群が浜に打ち上げられた。この出来事を一族の終末の暗示であると信じ込むコロのもと、クジラたちを海に返そうと村中の者が力を合わせるが、何十トンもあるクジラはぴくりともせず、彼らを海の方に向かせることすらできなかった。

その時、大好きな祖父母たちと一族を救うため、パイケアがひとり、ゆっくりとクジラに近付いていった−−−。

スタッフ

監督・脚本:ニキ・カーロ
製作:ティム・サンダーズ、ジョン・バーネット、フランク・ヒューブナー
原作:ウィティ・イヒマエラ「ザ・ホエール・ライダー」
製作総指揮:ビル・ギャヴィン、リンダ・ゴールドスタイン・ノールトン
共同製作:レインハード・ブランディグ
アソシエイト・プロデューサー:ウィティ・イヒマエラ
音楽:リサ・ジェラード
編集:ディヴィッド・コウルソン
衣装:カースティ・キャメロン
撮影監督:レオン・ナービー
プロダクション・デザイン:グラント・メイジャー
キャスティング:ダイアナ・ローワン

キャスト

パイケア:ケイシャ・キャッスル=ヒューズ
コロ:ラウィリ・パラテーン
フラワーズ:ヴィッキー・ホートン
ポロランギ:クリフ・カーティス
ラウィリ:グラント・ロア
ヘミ:マナ・タウマウヌ
ジェイク:ティロン・ホワイト
ロパタ:タウプア・ワカタカ=ブライトウェル
ウィレム:テニア・マクラッチー=ミタ
シロ:レイチェル・ハウス

LINK

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