ある日、恒夫は乳母車に乗った脚の不自由な少女と出会った

第16回東京国際映画祭・NCFメディア・セレクション2003出品作品::http://www.tiff-jp.net/

2003年/日本/1時間56分/ヴィスタサイズ/ドルビーSR/ 配給:アスミック・エース エンターテイメント

2004年08月06日よりビデオリリース 2004年08月06日よりDVD発売開始 2003年12月13日よりシネクイントにてロードショー公開

公開初日 2003/12/13

配給会社名 0007

解説



日本映画に新しい風が吹き抜ける。『二人が喋ってる。』『金髪の草原』犬童一心の監督最新作は、田辺文学初の映画化『ジョゼと虎と魚たち』。主演に、現在もっとも過激な活躍を見せる妻夫木聡と、弱冠二十一歳ながら円熟の演技を披露する池脇千鶴を迎え、新しい恋愛映画の地.平を踏み越えてゆく。悠揚とした空気を繋ぎながらきめ細かく感情を織り込んでいく、驚きの渡辺あや初脚本。確かな技術が冴える練達のスタッフが構築する魅力的で不思議な映画世界。存在感あふれる独立な地位を獲得している脇役、他分野で精力的に活躍する才能を精妙に配したユニークなコラボレーション。そんなファンタジックな設定の中に、普遍的でありながらく今日的ともいえるリアルな恋愛感情を活写。人肌を感じさせる風合いに厳しい現実の刻印を潜ませる、マジカルな犬童ワールドが屹立する。どこにでもいそうな大学生の垣夫と、脚の不自由な少女ショゼの不思議にキュートでピュアな恋愛。それぞれの過去を持つ観客たちの、様々な記憶を覚醒させる鑑賞後感。既存の映画に無かった、まったく新しい重層的感情を呼び起こしてくれるだろう。大学生の恒夫と脚が不自由なジョゼと名乗る少女の、不思議にキュートでピュアなラブ・ストーリー。
主役の垣夫に2003年最大の旬の俳優妻夫木聡、主演初の恋愛映画。TVシリーズ「ブラックジャックによろしく」七月公開『さよならクロ』八月公開『ドラコンヘッド』ニ00四年公開予定『きょうのできごと』『69』
ヒロインのジョゼは、犬童一心監督作品『金髪の草原』や、一心脚本の『大阪物曹の池脇千鶴。TVシリーズ『大奥』など。映画最新作は妻夫木聡共演作『きょうのできごと』

共演は『チルソクの夏』、NHK連続テレビ小説「てるてる家族」の上野樹里、『青い春』『さよなら、クロ』『赤目四十八瀧心中未遂』の新井浩文、『桃源郷の人々』『油断大敵』の江口徳子、阪本順治監督作『ぼくんち』の新屋英子、『DRIVE』『幸福の鐘』の監督SABU、『ピンポン』の荒川良々、『ピンポン』の大倉孝二、『殺しの烙印』ヒロインの真理アンヌ、劇団惑星ビスタチオの演出家にして怪優、西田シャトナー
脚本は岩井俊二ヴェブサイト”シナリオど一んとこい(現”シナどん)出身の主婦脚本家渡辺あや第一回脚本
プロデューサーは『黄泉がえり』『とらばいゆ』久保田修と『ピンポン』『リング0』小川真司のコラボレーション。

音楽はサウンドトラック初挑戦のくるり。イメージ・フォトは二000年度木村伊兵衛賞受賞の佐内正史、
イメージ・イラストはCDデビューも果たしたD。スタイリストは“ロック”なスタイリングで熱い支持を集める伊賀大介。

ストーリー


深夜の麻雀屋。大学生の恒夫は、その雀荘でアルバイトをしている。今日の客の話題は、最近近所で見かける謎の老婆のこと。決まって明け方にボロボロの乳母車を押して歩く老婆……乗せているのはミイラか?札束か?はたまたヤク……。客の妄想はつきない。明け方、いつものように店のマスターの愛犬と散歩に出かけた垣夫は坂の上から乳母車が走ってくるのに遭遇する。垣夫が近寄り、中を覗くと、包丁を握り締めた少女がいた。恒夫は危うく刺されそうになるが、間一髪で難を逃れる。乳母車の中身は老婆の孫だった。彼女は原因不明の病いで生まれてから一度も歩いたことがないという。老婆は近所に孫の存在を隠して暮らしており、夜明け間もない時間に乳母車に乗せて散歩させていたのだった。そのまま垣夫はふたりの家に連れて行かれ、朝食をごちそうになる。味噌汁に煮物にだし巻き—どれも美味しい。こうして、恒夫と脚の不自由な少女は出会った。
 常夫が少女に名前を尋ねると、彼女はジョゼと名乗った。老婆はくみ子と呼んでいるのに。垣夫は、不思議な存在感を持つジョゼに興味を持つ。一方で恒夫は大学の同級生の香苗に好意をもっている。竜顔に不釣合いな豊満ボディ。福祉関係の就職を希望している香笛との会話のネタに脚の悪いジョゼが家の中のあっちこちからダイブすることなども持ち出したりするが、いいとこのお嬢様だけに門限が厳しく思うように関係は進まない。ジョゼのことも気になる恒夫は、事あるごとに家を訪ねる。ショゼの部屋には祖母が拾ってきた様々なジャンルの本が溢れ返っている。その中から、恒夫が抜き出した一冊がフランソワーズ・サガンの「1年ののち」。いつもそっけないジョゼがその本の続編を読みたいと強く言う。恒夫は既に絶版となっていた続編「すばらしい雲」を古本屋で探し出し、プレゼントする。「ねえ、その主人公がジョゼっていうんだよね?」という恒夫の問いかけにジョゼは全く応じず、夢中で本を読みながら柔らかな笑みを浮かべる。そんなジョゼを見つめながら恒夫も微笑む。恒夫の計らいで国の補助金が降り、ジョゼの家の改築工事がはじまった。完成が迫ったある日、突然、香苗が見学に訪れる。戸惑う恒夫。「彼女?恒夫くんが言ってた、すごい元気な女の子」押入れの中でふたりの会話を聞きながらうつむくジョゼ。その日の夜、再び恒夫はジョゼを訪ねる。ジョゼは泣きながら本を投げつけ「帰れ!」と叫ぶ。恒夫は祖母に、もう二度と来ないようにと釘をさされる。

数ケ月後。
就職活動中の垣夫は、ジョゼの家の改築工事をした会社の見学へ。工事で知り合った現場主任から、ジョゼの祖母が急逝したことを知らされ呆然とする恒夫。恒夫は急いでバイクにまたがりジョゼの家へと急ぐ。もう訪ねることもないと思っていた懐かしい家。心なしかくすんで見える玄関。ジョゼは静かに恒夫を家に招き入れる。お葬式から最近の暮らしぷりまで、淡々と語るジョゼだったが、垣夫がショゼの行動に口をはさんだ途端に「帰れ!帰って、もう!」とわめきながら恒夫の背中を殴り始める。その怒鳴り声は、いつしか泣き声に変わり、やがて—久しぶりに再会したふたりは、お互いの存在を確認しあう様にひとつになる。ジョゼにとってははじめての経験だった。恒夫とジョゼは一緒に暮らし始める。ジョゼの家に運び込まれる恒夫の荷物。部屋が変わっていくのを不思議そうに見回すジョゼ。「ずっと一緒にいような」と恒夫が言う。ジョゼはぼんやりと空を見つめて微笑む。恒夫は徐々にジョゼのことを知っていく。二人は動物園に行って虎を見る。ジョゼには夢があった。いっか好きな男の人ができたときに、世の中で一番怖いもの…虎を見る、という…。濫の向こうで吼える虎と怯えて恒夫の腕にしがみつくジョゼ。それを見ながら恒夫は優しく笑う。

一年が経った。
社会人となった恒夫は繁華街で煙草を手に踊るキャンペーンガールの中に香苗をみつける。卒業以来初めて顔をあわせ、喫茶店で向かい合うふたり。香苗は恒夫に、一年前にジョゼを殴ったことを打ち明け、ボロボロ泣き出す。恒夫はそんな香苗を可愛いと思う。

ジョゼにとって生まれて初めての旅行。目的地は恒夫の実家。流れ行く景色、カーナビ、トンネル、全てに驚き歓声を上げるジョゼ。しかし、恒夫は実家にいる弟に電話をして、仕事の都合で帰省を取りやめると伝える。どうしても行きたかった水族館は休館日。子供のように半泣きで怒るジョゼをどうにかなだめ、恒夫が運転する車は海へと向かう。ジョゼにとって海はあまりに眩しく、恒夫はジョゼを背負って波打ち際でキラキラ光る貝殻もとめて駆けまわる。夜、ジョゼの目にとまったのは、”ラブホテルお魚の館〃の大きな看板。結局、ジョゼのわがままでそこに泊まることになり、大きな貝殻のベッドで愛し合う。そこはまるで海の底にいるかのような不思議な空間。寝息をたてている恒夫と、それをぼんやりと見ているジョゼ。二人を包み込むように部屋の中を泳ぐ魚たち。二人で過ごすささやかな幸せは、どこに流れついていくのだろうか…。

スタッフ

原作:田辺聖子
監督:犬童一心
脚本:渡辺あや
プロデューサー:久保田修、小川真司
共同プロデューサー:井上文雄
撮影:蔦井孝洋
美術:斉藤岩男
照明:疋田ヨシタケ
録音:志満順一
編集:上野聡一
衣裳:石井明子

キャスト

恒夫:妻夫木聡
ジョゼ:池脇千鶴
香苗:上野樹里
幸治:新井浩文
ジョゼの祖母:新屋英子
ノリコ:江口徳子
麻雀屋客:真理アンヌ、SABU、大倉孝二、西田シャトナー
本屋店員:荒川良々
現場主任:板尾創路
近所の中年男:森下能幸
先輩の社員:佐藤佐吉

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