原題:Le Principe de l'incertitude

悪魔かそれとも天使か。時に清楚に、時に妖しく。 不思議な女の魅力に、やがて愛する者たちの運命さえも翻弄される…。

2002年9月11日フランス初公開

2002年/ポルトガル、フランス/カラー/35mm/133分/ドルビーSRD/1:1.66ヴィスタサイズ/ 配給:アルシネテラン

2003年5月10日よりシャンテシネにて独占ロードショー

©Madragoa Filmes, Gemini Films, 2002

公開初日 2003/05/10

配給会社名 0013

解説



時に清楚に、時に妖しく。

不思議な女の魅力に、やがて愛する者たちの運命さえも翻弄される—。

驚異的な94歳の巨匠マノエル・ド・オリヴェイラ

『クレーヴの奥方』(99)では17世紀の恋愛小説を現代に甦らせ、「Palavra e Utopia (言葉とユートピア)」(00)を挟んだ後の『家路』(01)では、老俳優が自らの衰えや孤独と向き合いながら生きていく様を見つめた、ポルトガルの巨匠マノエル・ド・オリヴェイラ。94歳を迎えたオリヴェイラは90年代以降、年に1本という驚くべきペースで新作を世に送り出しているが、21世紀に入っても、その勢いは衰えるところを知らないようである。2001年は『家路』に加え、自らの生まれ育った故郷ポルトを懐かしく振り返るセミ・ドキュメンタリーの中篇「Porto da minha infancia(わが幼少時代のポルト)」をヴェネツィア映画祭で発表し、続く2002年のカンヌ国際映画祭では、本作『家宝』をコンペテイション部門に出品し、この恐るべき劇映画最長老監督に惜しみない賞賛が送られたのだった。

オリヴェイラ流ファム・ファタールの物語

ドウロ河流域に広がる豊かな丘陵地帯にある”聖母マリア荘”。この屋敷の遺産を相続したアントニオと結婚した美しいカミーラは、その悪魔とも天使ともつかない魅力で、人々を惹きつけずにはおけなかった。彼女を愛するメイドの息子ジョゼと、アントニオの元”恋人”ヴァネッサもその1人であり、危うげなカミーラの振る舞いは、次第に4人の運命をも大きく狂わせようとしていた…。原作はオリヴェイラ監督の古くからの友人であり、また創作意欲をかきたてる存在でもある、現代ポルトガルを代表する女流作家アグシティナ・ベサ=ルイーシュ。「フランシスカ」(81)、『アブラハム渓谷』、「Inquietude(不安)」(98)の第3話など、これまでにも彼女の小説をたびたび映画化し、また『メフィストの誘い』(95)では小説を原案にイメージを膨らませて脚本を執筆しているオリヴェイラ監督は、本作では原作の意味深な台詞をそのまま生かしながら、オリヴェイラ流のアイロニーのエッセンスを加え、謎めいたファム・ファタールの物語を作り出した。

輝きを放つ2人のミューズ

『アブラハム渓谷』のエマを彷彿とさせる不思議な女性カミーラを演じるのは、ベサ=ルイーシュの孫であり、本作でヒロイン役に抜擢されたレオノール・バルダック。貞淑な妻かと思いきや、時にまわりの人々を惑わす複雑な女性像を見事に体現し、批評家からも絶賛を浴びた。もう1人の妖艶な女性ヴァネッサ役には、オリヴェイラ監督のミューズとも言うべきレオノール・シルヴェイラが扮しており、その存在感は抜群である。また、カミーラに心を寄せるジョゼ役にオリヴェイラ監督の孫リカルド・トレパ、どことなく謎を秘めたアントニオに、これがオリヴェイラ作品初登場となる期待の新人イヴォ・カヌラシュ、物語の鍵を握る屋敷のメイドのセルサにイザベル・ルト、密かにカミーラに心を寄せるロペール氏にルイーシュ・ミゲル・シントラといった、オリヴェイラ常連組とも言える顔ぶれとなっている。

レナート・ベルタによる美しいポルトガルの田園風景

撮影はポルトガル北部ドウロ河流域の葡萄畑が広がる丘陵地帯を中心に行われた。『アブラハム渓谷』でも舞台となった豊かで美しい渓谷の風景や、”聖母マリア荘”をはじめとする、重厚な家具の設えられた薄暗い部屋に注ぐ微妙な光のニュアンスなど、レナート・ベルタによる映像は息を呑むほどである。また、ドウロ河に沿って走る列車に乗るカミーラの姿を繰り返し映し出されるが、そのシーンにはシュモロ・ミンツの演奏による、パガニーニ《24の奇想曲》1.ホ長調のソロヴァイオリンの調べが効果的に使用されている。その他スタッフには、製作のパウロ・ブランコをはじめ、録音のアンリ・マイコフ、美術のマリア・ジョゼ・ブランコ、衣装のイザベル・ブランコ、助監督のマリア・ヴァシュ・ダ・シルヴァ、脚本協力のジャック・パルジ、そして原作のアグシティナ・ベサ=ルイーシュに撮影のレナート・ベルタと、おなじみの面々がオリヴェイラ監督を支えている。

ストーリー



“聖母マリア荘”を受け継ぐ良家の出のアントニオと、家の切り盛りをしているセルサの息子ジョゼは、幼い頃から一緒に遊んだ仲だった。アントニオの両親がアフリカで暮らしていたため、セルサが2人を実の子供のように育ててきたのだ。

ジョゼは”青い雄牛”と呼ばれ、ヴァネッサという美しい女性と組んで、いかがわしい仕事にも手を染めていた。彼女は裏の世界にも通じており、バーや娼館を経営していた。そして、アントニオの恋人でもあった。

しかし、セルサの口添えもあり、アントニオは幼なじみのカミーラと結婚した。ジョゼは昔からカミーラを愛していたが、彼女はジョゼではなく、愛していない男との結婚を選んだのだった。

アントニオとカミーラの結婚によって、それまで闇に隠れていた4人の複雑な関係が、微妙な変化を見せ始めた。そして、カミーラの存在が、次第に4人の運命を大きく狂わせようとしていた・・・。

アントニオとこの家で楽しんで。
侮辱とも思わないわ。
私の愛は見返りを求めないの。

男の人は自分と違う女を演じれば喜ぶもの。
夜から朝まで、私は演技ばかりしてる。
面白いことって、みんな偽りよ。

納得したの。惹かれた訳じゃないわ。
魅力は納得した心ほど続かない。
私たちの結婚は永遠よ。

お前が5歳の時から好きだ。
キッチンの椅子でよくピアノを弾いてたな。
俺に聞かせるためだろ?

スタッフ

監督・脚色・脚本・台詞:マノエル・ド・オリヴェイラ
原作:アグシティナ・ベッサ=ルイーシュ
製作:パウロ・ブランコ
撮影:レナート・ベルタ
美術:マリア・ジョゼ・ブランコ
音楽:パガニーニ《24のカプリース》
衣装:イザベル・ブランコ
配給:アルシネテラン

キャスト

レオノール・バルダック
レオノール・シルヴェイラ
イザベル・ルト
リカルド・トレパ
イヴォ・カネラシュ
ルイーシュ・ミゲル・シントラ
ジョゼ・マヌエル・メンデシュ
カルメン・サントシュ
セシリア・ギアラエシュ
ジュリア・ビュイゼル
ディアゴ・ドリア
アントニオ・フォンセカ
デュアルト・ド・アルメイダ
ジョアン・マルケス
アントニオ・コスタ
ダヴィッド・カルドゾ

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