あなたの痛みを私に見せて

第60回ベネチア国際映画祭コントロコレンテ部門(コンペティション)正式出品作品 第28回トロント国際映画祭正式招待作品

2003年/日本/ヴィスタサイズ/117分/ 配給:オフィスシロウズ/配給協力:シネカノン

2004年07月23日よりビデオレンタル開始 2004年07月23日よりDVD発売開始 2004年1月10日より渋谷シネ・アミューズほか全国順次ロードショー

公開初日 2004/01/10

配給会社名 0220

解説


熊切和嘉監督の長編第3作「アンテナ」はベストセラー作家、田口ランディの同名小説の映画化である。田口ランディはインターネットマガジンのコラムで脚光をあび2000年に小説家としてもデビュー。「アンテナ」は彼女の長編小説第2作になる。
主人公、荻原祐一郎は15年前に失嫁した妹について、自分はなにかを目撃していたのではないか、という罪悪感にさいなまれている。心を閉ざして自分を守ってきた祐一郎が、S&Mの女王ナオミと出会い、”アンテナ”(=真実を感じ取る力)を獲得し、遂には封印してきた家族の向かい合うまでが描かれている。
 この作品な映像化することに挑んだのが、若き鬼才・熊切和嘉監督。大学の卒業制作『鬼畜大宴会』では極限状態の集団狂気を描き、タオルミナ国際映画祭でグランプリに輝くなど海外でも高く評価された。その後、2001年には『空の穴』を発表。中年男の恋を静かなタッチで描き、作家としての奥行きを感じさせた。『アンテナ』という題材に出会い、応まざまな現代の情報、キーワードが入り込んでいて一見、ポップに見えるが、その底には人間くささが潜んでいたし、性的な隠楡や心理描写などが自分の映画とリンクしていると感じた」と熊切は云う。
 『アンテナ』の繊細な主人公を魅力的に演じるのは加瀬亮。『ロックンロールミシン』『アカルミライ』など活躍が続いている。「祐一郎は彼しかいない!にいう監督のラブコールに応え、同い年の強力なタッグが組まれた。
S&Mの女王、ナオ〜には『PARTY7』『DRIVE』の小林明実。エキゾチックな
美貌で祐一郎のトラウマを解いていく。母親役の麻丘めぐみ、テレビディレクター役の宇崎竜童が、若い監督の熱意に応え、新たな表情をみせているのも魅力。また、舞台でも活躍中の実力派、大森博、小市慢太郎が脇を固める。『空の穴』の主演、寺島進のカメオ出演も聞き逃せない。本作は、第60回ベネツィア国際映画祭コントロコレンテ部門(英語ではUpstream=逆流という名のコンペティション部門。2002年には塚本晋也監督の『六月の蛇』が出品されている)に正式出品された。一般上映では1000人以上の大会場が満席となるなど好評を博し、全2作に続いて海外での評価を高めている。

ストーリー


大学で哲学を専攻する荻原祐一郎(加瀬亮)は、幼い頃に妹・真利江が失踪している。雨の夜に消えた妹はいまだに生死もわからない。隣に寝ていた祐一郎は母親(麻丘めぐみ)から「何か、見ていたんじゃないの、お兄ちゃんでしょ」と責められ、ずっと、その自責の念に苦しんでいる。母親はその後、宗教に頼るようになり、父親(大森博)は祐一郎が16の時に病死している。
 出雲で監禁されていた少女が発見された、というニュースが荻原家を刺激する。母親は「あれは真利江だ」と言い、弟の祐弥(木崎大輔)は真利江が帰ってくる」と言い出して狂乱する。しかたなく、実家に戻ることにした祐一郎だが、家には重苦しい空気がよどんでいる。増築な重ねた2階には、非常階段へと続く非常扉があり、真利江失跡の夜はそこから雨が吹き込んでいた。一方、かつて荻原家の事件をテレビ番組で追っていたディレクター、相馬(宇崎竜童)も出雲の事件に刺激されて、ふたたび現れる。彼も又、妻の謎の矢線な、どう受け止めていいかわからないまま生きている男だった。
 祐弥は退院にあたって、祐弥は「これからは真利江として生きてみようと思う」と兄に話す。母親がひそかに買い続けている真利江の服を着て、玄関口に立った祐弥に母は「おかえり」とほほえんだ。ふたりの様子にいたたまれない気持ちになった祐一郎は、S&Mの女王ナオミ(小林明実)に電話をかける。人が苦痛から
いかに解放されるかな探求するため彼はS&Mな研究テーマに選んでいたからだ。取材という名目で知り合ったナオミの前で祐一郎はそれまではき出せずにいた苦しみをはきだす。「おまえの身体存傷つけられるのは主人の私だけだかね」と言われてからは、祐一郎の自傷癖もおさまっていく。
 祐一郎は相馬からの依頼な受けて、風水師の調査も受け入れることにする。このままではいけない、という想いが、奇妙なバランスを保っていた家族にゆさぶりをかける。女装存した祐弥をおぶって雨のなかに飛び出してきた母親を必死でとめようとする祐一郎。その壮絶さに相馬はキャメラを回すことをあきらめる。
封印された記憶「もっと、見て!」
祐一郎はナオミとの時間が自分の中のなにかを解き始めていると感じていた。祐一郎がふたたび、ナオミを訪れると、「私を思ってオナニーしたね。妄想ってもれるものよ」と責められる。彼女の面前で自慰を強制されながら、祐一郎は自分が封じ込めていた記憶なたぐりよせる。 
 6歳の真利江への叔父(小市慢太郎)の性的悪戯。祐一郎は何度もそれを目撃しながらも、妹を救えなかった罪悪感。その苦悩をはき出した祐一郎はナオミによって許されることで現実に立ち向かう力を得る。そうして、祐一郎は現実と妄想の狭間へと歩き出すのだった…。

スタッフ

原作:田口ランディ
監督:熊切和嘉
脚本:熊切和嘉、宇治田隆史
製作:オフィスシロウズ、グルーヴコーポレーション
撮影:柴主高秀
音楽:赤犬/松本章

キャスト

萩原祐一郎:加瀬亮
ナオミ:小林明実
萩原祐弥:木崎大祐
萩原シゲノブ:小市慢太郎
相馬:宇崎竜童
萩原房江:浅丘めぐみ
萩原祐作:大森博
堕天使従業員:寺島進

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