原題:1980

テクノポリスの空の下、乙女心は乱れる。

2003年/日本/カラー/123分/ビスタサイズ 配給:東京テアトル/配給協力:東北新社

2007年12月21日よりDVDリリース 2004年07月07日よりDVD発売開始 2003年12月6日よりテアトル新宿にてロードショー

公開初日 2003/12/06

配給会社名 0049

解説


ケラリーノ・サンドロヴィッチが初めて映画を撮った。そう。その動員&影響力において日本の演劇界をフレッシュ方面ヘリードする「ナイロン100℃」の作・演出家だ。
映画は、1980年の東京で暮らす三姉妹を中心に描く。岡崎京子のエイティーズ漫画の傑作「東京ガールズ・ブラボー」(90/93)へのオマージュでポップに幕を開け、数々のファニーなシーンを経て、ニュー・ウェイヴ版小津、あるいはウディ・アレン『インテリア』(78)のコメディ・ヴァージョンのような「せつない」余韻を残して終わる。
ともさかりえ(『クロエ』01)は、デタラメに男に惚れっぽい元アイドルをセクシーかつコミカルに好演。蒼井優(『リリイ・シュシュのすべて』01)は、聖子ちゃんカットで全力投球。エキセントリックな役が多かったナイロン100℃の看板女優、犬山イヌコのナチュラルな演技も素晴らしい。10代、20代、30代—いくつになっても訪れる「女の子なんだもん」的な気持ちを、3人は絶妙に演じている。おっと。男子の観客は蒼井演じるリカの「おっかけ」をするテクノポップ少年・衣笠目線で、むくわれない愛に涙しよう。絶妙といえば、及川光博の演歌出身の歌手!当て書きされたかのようなハマリ具合だ。逆に、劇中で流れるミッチーの「セルロイドの夜」(02)は『1980』のために書き下ろされたかのような挿入ぶりである。その他、82年からニューウェイヴ・テクノバンド「有頂天」を結成し、翌年からインディーズ・レーベルの元祖ナゴム・レコードを運営してきたKERA人脈による豪華「友情出演」陣もうれしい。
監督は時代考証にこだわり、でかい留守番電話機、スライム、ウォークマン(ファースト・モデル)、YMO「ライディーン」(79)……と、80年12月までに存在したモノだけで画面を構成した(一部演出意図で例外あり)。しかし、映画が描き出すのはノスタルジーというよりも、ジョンの死からコンピュータ・ミュージックへ向かう「過渡期の世界」に生きた人々への優しい眼差しなのだ。

ストーリー



1980年12月9日。ニューヨークでジョン・レノンが暗殺された翌朝であったが、東京都内の星隆高校では何事もなかったような登校風景が……と思いきや、アイドルの一之江キリナ(ともさかりえ)が校舎へ入っていくのに生徒たちが気づいて騒然となった。
キリナ(本名:羽柴レイコ)は1年間の失踪後、B級の芸能生活に見切りをつけ、母校で英語の教師をやろうと教育実習にやってきたのだ。困ったのは羽柴リカ(蒼井優)と歌川カナエ(犬山イヌコ)である。星隆高2年のリカは姉の訳の分からない授業を受けるハメに、星隆高教師のカナエ(旧姓:羽柴)は異常に男に惚れやすい体質の妹が同僚になってしまうからだ。
しかも、羽柴三姉妹はそれぞれ問題を抱えていた。リカはボーイフレンドで映画研究会OBの室井のために、今年の映研の映画で仕方なくヒロインを演じていたが、最終日にはヌードにならなければならないシーンがあった。カナエは夫の久男(みのすけ)がノーパン喫茶に行った(らしい)ことがきっかけでケンカ、実家に帰ったまま引っ込みがつかないでいる。レイコは元・マネージャーの瀬戸(田口トモロヲ)が自分についてのあることないことを書いた暴露本を出版するので、キレかかっている。
そんな三者三様の乙女心も知らずに、300万円もかけた自主制作映画の撮影はどんどん進み、久男に電話をかければ留守番電話だし、暴露本「ロンリー・ドール」はベストセラーになりそうな勢い。おまけにある夜、レイコは元恋人の歌手・東馬健(及川光博)と再会してしまう。
果たして羽柴家は無事に年を越せるのだろうか?

スタッフ

監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
製作:林哲次/榎本憲男
撮影:鈴木一博
照明:守利賢一
美術:金田克美
音楽:岸野雄一
衣装:宮本まさ江
製作:東京テアトル
配給:東京テアトル

キャスト

羽柴レイコ/一之江キリナ:ともさかりえ
歌川カナエ:犬山イヌコ
羽柴リカ:蒼井優
東馬健:及川光博
羽柴誠十郎:串田和美
マネージャー瀬戸:田口トモロヲ
衣笠:大山鎬則
室井:吉永雄紀
歌川久男:みのすけ

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