原題:The Short Cut

戦場の黙示録———、狂気。

1991年/アメリカ=イタリア合作/98min 発売・販売:ファインアーツエンターテイメント(DVD税抜4,800/ビデオ税抜:16,000)

2002年9月6日DVD発売/2002年9月6日ビデオ発売&レンタル開始

ビデオ題名が変わって再発された場合の題名 タイム・トゥ・キル 愛と勇気の戦場

解説


『ウインドトーカーズ』『ワンス・アンド・フォーエバー』等今世紀初の戦争映画ブームの渦中にあるサマーシーズン、『ウィンドト—カーズ』でも主演のニコラス・ケイジが戦争を狂気というキーワードで描いた問題作。本作は約6分間の未収録シーンを追加した『タイム・トゥ・キル 愛と勇気の戦場』(91年)の完全版、初リリースとなる。

【チェック・ポイント!】

 『ウィンドトーカーズ』(02)に併せてのニコラス・ケイジ主演戦争映画の再リリース版。ただし、単なる再発売ではなく旧版『タイム・トゥ・キル 愛と勇気の戦場』よりも6分間長くなった完全版というのが、ニコラス・ファンには嬉しいところか。但し、ジャケットでニコラスの顔の横を飾る、『ウィンドトーカーズ』ばりにハードっぽそうなバトル・グラウンドでのアクションを期待しちゃいけない。監督は『死刑台のメロディ』(71)など社会派人間ドラマも手掛けていたジュリアーノ・モンタルドと言うことで、主眼は戦場という地獄巡りを続けるニコラスが、自分で自分を追い詰めていく姿をたんたんと描いていきまして、所謂銃弾が飛び交うような戦闘場面は一切無しだ。
 舞台は第二次大戦初期のアフリカ、エチオピア戦線を進軍するイタリア軍。うんざりするような戦場の日々の中で、彼を迷宮に迷い込ませるきっかけは、虫歯。痛みに耐えかね一人隊を離れた若きエンリコ中尉は、道に迷った末現地人の美しい娘と出会い、言葉は通じぬもののお絵かきを交えつつムードで押し切っちゃったエンリコは、娘と一夜の関係を結ぶのだが、たまたまうろついていたハイエナを追い払おうと銃で撃ったところ、兆弾して娘に命中。止む無く娘を安楽死。基地に戻ったエンリコは、友人にそのことを話すが、報告したところで彼女は帰らぬと説得される。ところが、どうやらその娘がハンセン氏病を患っていたらしいことを知ったエンリコは、治りの遅い手首の傷口から既に自分も業病に感染したのではないかという不安に苛まれ…。
 『ウィンドトーカーズ』での来日記者会見の席上で、アクターズ・スタジオ的なアプローチは卒業したと語り、近作ではその無表情ぶりが評判?のケイジだが、ここでは病は気からを体現するように、困惑と不安を剥き出しにして異国の地を彷徨うのが一つの見物か。また、軍の物資を横流しして私服を肥やしていた中佐役として、『ハンニバル』(01)『ミミック』(97)のジャン・カルロ・ジャンニーニがいかにもイタリア人らしい陽気さと、こすっからい感じのキャラクターを演じていて、イメージどおり。その悲惨な運命には、何も知らないエンリコに変わって同情を禁じえましぇん。
(殿井君人)

ストーリー


第二次世界大戦初期、エチオピアに兵を進めるイタリア軍。その中にエンリコ中尉がいた。エンリコは戦地とは思えぬ静かな泉で偶然に少女マリアムと出会う。瞬く間に慧かれ合った2人は肉体を重ねることになる。しかし愛と快楽の時も束の間、エンリコの銃弾が事故によりマリアムを貫く。虫の息のマリアムは死を待つしかなく、エンリコは彼女を楽にさせてしまう。吏にその後、エンリコはマリアムが伝染病を患っていたことを知ることになる。ただでさえ狂気漂う戦場で、エンリコは罪と病気の恐怖という底無しの渦にはまり込む。

スタッフ

監督・脚本:ジュリアーノ・モンタルド『死刑台のメロディ』『明日よさらば』
製作:レオ・ペスカロ—ロ、グイド・ディ・ラウレンティス『遥かなる蝿郷」
撮影:ブラスコ・ジェラート『ニュー・シネマ・パラダイス』『みんな元気』
音楽:エンニオ・モリコーネ『マレーナ』『海の上のピアニスト』

キャスト

エンリコ:ニコラス・ケイジ『ウインドトーカーズ』『コレリ大尉のマンドリン』
マリオ:リッキー・トニャッツィ
マリアム:パトリス・ブラッソ
少佐:ジャンカルロ・ジャンエ一二『ハンニバル』『ミミック』

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