原題:Le Fils/The Son

人を受け入れることから、愛が生まれる。

第55回カンヌ国際映画祭正式招待作・男優賞

2002年10月16日フランス初公開

2002年/フランス・ベルギー/103分/ 配給:ビターズエンド

2004年05月28日よりDVD発売開始 2004年05月14日よりビデオリリース 2003年12月13日よりユーロスペースにてロードショー!

公開初日 2003/12/13

配給会社名 0071

解説


オリヴィエは職業訓練所で大工仕事を教えている。ある日、その訓練所にフランシスという少年が入所してくる。フランシスは大工のクラスを希望したが、オリヴィエは手一杯だからと断り、フランシスは溶接のクラスに回される。しかし、オリヴィエは人に気づかれぬよう、フランシスを追う。フランシスとは誰なのだろう?
何故、オリヴイエは訓練所の廊下、街角、ビルの中までフランシスを尾けるのか?何故、オリヴイエはそんなにもフランシスに興味を持つのか?何故、オリヴイエはそんなにもフランシスに怯えるのか?成長していく上での指針を持たずに育ってきた少年フランシス。少年は目指すべき大人を知らず、自分を受け入れてくれる人を無意識のうちに求めていた。一方、ある事件から心を閉ざしてしまったオリヴィエ。彼は他人を受け入れることができなくなっていた……。
観客はオリヴィエの後ろ姿を追ううちに彼の日常を知り、周囲の人々を知り、そしてフランシスとの関係を知る。その衝撃。観客は父オリヴイエの働突に共感する。やがてオリヴィエの視線を通してフランシスを見つめ、フランシスの視線にさらされるオリヴィエという男性に向き合う。本作は「人は聖者にならずに最も憎い人間さえも受け入れることができるのか」というテーマを描いている。最も憎い相手さえも受容する一果たしてそれは可能なのだろうか。その厳しい命題に対して、ダルデンヌ兄弟は現実の痛みと苦しみと悲しみを回避しようとはしない。しかし、最後に彼らが用意したラストシーンはその向こう側にある、人間の尊厳を慎み深くそっと差し出す。『息子のまなざし』はすべての装飾を剥ぎ取り、人間の本質を描き出す珠玉の作品な
のである。
映画とは思えない現実のエモーション、しかも、映画でしか成しえない真実の表出。ジャン=ピエール&リュンクタルテンヌ兄弟監督が描き出す究極の映像表現。前作『ロゼッタ』でカンヌ国際映画祭パルムドール大賞を受賞したダルデンヌ兄弟監督の最新作『息子のまなざし』は2002年のカンヌ国際映画祭において主演男優賞とエキュメニック特別賞を受賞、彼らの最高作と呼んでもさしつかえない出色の作品である。キャメラは主人公の首筋を追う。そうすることで観る者は主人公とほぼ同じ目線で映画を体験していく。主人公の理屈では説明のつかない行動、理解不可能な感情さえも、同時体験として観るからこそ、違和感なく「ひとりの人間の複雑な気持ち」を理解することができるのだ。あたかもドキュメンタリー・フイルムのように見える本作だが、各シーンのテイク数が平均20テイクというほど、ダルデンヌ兄弟の完聖なる演出プランの元に撮影がされている。スタッフは前作『ロゼッタ』と同じチームが結集、そのチームワークにより、繊密で緊迫感あふれる映像世界を見事に作り上げた。
 主演のオリヴィエ1グルメは『イゴールの約束』『ロゼッタ』に続いて、ダルデンヌ兄弟作品に出演、3本目にして初主演した。本作には感情を吐露させる台詞はほとんどない。表情の演技、それ以上に肉体により感情を表現する、という偉業をグルメは成しえてしまった。2002年のカンヌ国際映画祭。アカデミー賞を受賞したエイドリアン・ブロディ(『戦場のピアニスト』)等が名を連ねる中、見事、グルメは主演男優賞を獲得した。カンヌ史上最少の台詞による主演男優賞受賞者であろう。この後もミヒャエル・ハネケ監督の作品に出演するなど、ヨーロッパ中の監督達からラブコールが相次いでおり、本年のカンヌ国際映画祭でもグルメの出演作品は3本も出品された。

ストーリー


水曜日
オリヴィエは職業訓練所で大工仕事を教えている。この日、訓練所にフランシスという少年が入所してくるフランシスは大工仕事のクラスを希望したが、オリヴィエは手一杯だからという理由で断る。フランシスは溶接に回される。オリヴィエが家に帰ると、別れた妻マガリが訪ねてくる。彼女は再婚することになったらしい。また、マガリは妊娠していることも彼に告げる。

木曜日
オリヴィエは、フランシスが気になって仕方がない。結局、大工のクラスに彼を受け入れる。彼に仕事を教え、なおかつ彼の後を尾けるオリヴィエ。オリヴィエは、マガリの店を訪ねる。フランシスが訓練所に来たが、一杯で他のグループに回されたと告げる。「彼を受け入れたほうが良かったかな?」というオリヴィエに対して、マガリは「私たちの息子を殺した人間を何故、受け入れるの?」となじる。夜、ホットドッグ・スタンドでオリヴィエはフランシスと出会う。目測で距離を測ることの出来るオリヴイエに対して、尊敬の念を抱くフランシス。

金曜日
オリヴィエはフランシスの鍵を盗み、外出のついでに彼の部屋を盗み見る口家族のことを尋ねるオリヴイエに対して、フランシスは「父はどこにいるか知らない」と答える。フランシスを車に乗せて帰ろうとしたオリヴィエの前にマガリが現われる。一緒にいたのがフランシスだと知って彼女は気を失う。「息子を殺した人間に対して誰もこんなことはしない。どうしてなの?」と詰問するマガリに対して、「何故だか分からない」と答えるオリヴィエ。オリヴイエは帰りの車の中で、明口材木を仕入れに同行しないかと、フランシスを誘う。彼はふたつ返事で引き受ける。

土曜日
オリヴィエはフランシスを車に乗せて材木を仕入れに行く。フランシスが少年院にいたことを聞き何故、少年院に入ったのかオリヴィエは尋ねる。「盗みとか」と口を濁すフランシス。途中立ち寄った店で、オリヴィエに後見人になって欲しいとフランシスは頼む。盗み以外に何をしたのか、と更に追求するオリヴィエに対して「車からラジオを盗もうとした時に離してくれなかったので、子供を絞め殺した」とフランシスは告白する。材木置き場に到着したふたり。オリヴィエはついに「お前が絞め殺したのは俺の息子だ」と告げる。「5年間少年院に入って充分償った」と叫び、フランシスは逃げる。追いかけあうふたり。森の中でオリヴィエは彼を捕まえるロフランシスの首に手をかけるが、オリヴィエは手を放してしまう。材木を車に積むオリヴィエの前にフランシスが現われる。一緒に材木を積むふたり。彼らにとっての新しい人生がここから始まる。

スタッフ

監督・脚本:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック=ピエール・ダルデンヌ
撮影監督:アラン・マルコァン
キャメラ:ブノワ・デルヴォー
録音:ジャン=ピエール・デュレ
編集:マリー=エレーヌ・ドゾ
美術:イゴール・ガブリエル
衣裳:モニク・パレール

キャスト

オリヴィエ:オリビエ・グルメ
フランシス:モルガン・マリンヌ
マガリ:イザベラ・スパール
フィリポ:レミー・ルノー
オマール:ナッシム・ハッサイーニ
ラウル:クヴァン・ルロワ
スティーヴ:フェリシャン・ピッツェール
職業訓練所所長:アネット・クロッセ

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