マンタ

『リバイアサン』『ザ・デプス』に迫る、超深海モンスター・パニック！
D.N.A.実験で生み出された深海獣と人類の戦い。その勝者が地球の命運を握る—。
巨匠ロジャー・コーマンの下に、ハリウッドを代表するＳＦＸスタッフが集結。
圧倒的なヴィジュアルとスピーディーな展開で、見る者を興奮のるつぼに引きずり込む。

【チェック・ポイント！】

　これまた懐かしいね。かって、ＮＨＫ衛星第２放送の深夜枠で一度だけオン・エアされたコーマン印の海洋ＳＦ映画の初ソフト化。89年怒涛の如く製作された深海ＳＦ映画５連荘の内の１本だが、解説にあるように『リバイアサン』『ザ・デプス』…さらにはスペイン製の『新 リバイアサン リフト』を加えてもいいのだが…路線のモンスター大暴れパニック映画…では決してありません。作品の完成度は兎も角として、物語のノリとしては一番正統派(が言いと言ってるわけではないけど)の『アビス』に近い、深海ファースト・コンタクトもの。これでモンスター・カップを謳うのは、どんなもんかな？。巨大マンタのパッケージに、“ボスタング”大暴れ(『ウルトラＱ』ね、そう言えば劇場版『コスモス２』にも、マンタ型怪獣“レイジャ”が登場したし、かって流れたプロジェクトだけど『デビル・マンタ』なんてのがあったり、日本って、世界一のマンタ・モンスター生産国なのかも)を期待した人はごめんなさい(僕が書くことじゃないけどね)。実際僕も、最初に予告を見て『ローズ・オブ・ザ・ディープ』であることに気付いた時は、ぶっとんだもんな(笑)。実際、なんか実験はしていたけど、ＤＮＡモンスターなんて設定全然語られてないじゃん。
　当時『アビス』に感動したのも事実だが、同時にすんげー小さな映画館で捨てるようにかかっていた『新 リバイアサン リフト』の、稚気溢れるグロモンスター大集合に大喜びした者にとっては、中途半端にもっともらしく説教臭い本作の物語の進行は、イマイチノリが悪く感じる。深海基地を運営する企業の上層部の人として、通信モニターに姿を見せるコーマン御大ですが、そのモニター越しの非道な仕打ちには、若手映画人にチャンスは与えるけど、同時に絞れるだけ絞る本人の姿が重なって見えて興味深かったです。でも、今回は一番真っ当な深海映画に、似せてみました姿勢が感じられるだけで、イマイチ便乗的にもはじけてないのが残念。キャスト的には、基地の司令官役として、『ピラニア』(78)、『スォーム』(78)、『燃える昆虫軍団』(75)、『大襲来！吸血コウモリ』(74)と生物襲撃系パニック映画の“ジョージ・ケネディ”(笑)とも言うべき、ブラッド・フォード・ディルマンが登場。ここはやっぱ、「環境を守ろう、皆友達！」じゃなくて、「殺れ！殺せ！」的なマンタとのバトルを楽しみたかったぞ。なお、マンタ風エイリアンの造形は、『インセクト』(87)などのマーク・ウィリアムズが担当している。
　なお、本作もリリース資料に拠れば、邦題は原題片仮名表記となっていますが、各種資料やＮＨＫ放映時の原題は『LORDS OF THE DEEP』。『U.M.A2002』『ジュラシック・ジョーズ』そして本作と、原題が知らないタイトルに変わってることが続いたんで、資料等を依頼する際にメーカーさんにこの件を訊ねたところ、それぞれ権利元からきているタイトル通りとのこと。で、今回の『ジュラシック〜』『マンタ』って作品自体を見てみると、オープニング・タイトル部分に原題が出てこないのね。権利元が改題して、タイトルを消しちゃったってことなのかな？
（殿井君人）