原題:Ten Tiny Love Stories

ロドリゴ・ガルシア監督最新作!

2000年/アメリカ映画/カラー/ドルビーSR/シネスコ(1:2.35)/96分 提供:メディア・スーツ

2004年03月24日よりDVD発売開始 2002年8月10日より渋谷シアター・イメージフォーラムにてロードショー

公開初日 2002/08/10

配給会社名 0066

公開日メモ 日本でも大ヒットを記録した『彼女を見ればわかること』によって、一躍、アメリカ映画界の星として熱い注目を浴びる存在となったロドリゴ・ガルシア。野心的な仕上がりの劇場用作品監督第2作

解説



2000年カンヌ国際映画祭[ある視点]部門グランプリに輝き、日本でも大ヒットを記録した『彼女を見ればわかること』によって、一躍、アメリカ映画界の星として熱い注目を浴びる存在となったロドリゴ・ガルシア。
そのガルシアが映画のさらなる可能性に踏み込むために斬新なスタイルでアプローチした、野心的な仕上がりの劇場用作品、監督第2作の登場である。
 前作では、転機を迎えた8人の女性の心情を浮びヒがらせた5つのストーリーを、巧みな構成で1つにまとめあげて絶賛を浴びたが、10のストーリーからなるこの作品では“物語ること”をより先鋭化し枝葉を切り落としていく。それぞれのストーリーで画面に登場するのはひとりの女性。映像は家の中にいる彼女と後ろに映り込むインテリアを切り取るのみ。あくまで10人の女性たちが自らの恋愛(性愛)体験をカメラに向って話し掛けるスタイルで押し通す。
ちょっとしたアヴァンチュールの気分になった他愛ないものから、悔悟にみちたものまで、さまざまな出会いと別れがモノローグされる。まるで親しい人に語りかけるように、彼女たちの話はあからさまで無防備。それだけに痛みと哀しみ、そして孤独がストレートに伝わってくる。ガルシアのモチーフである、コミュニケーション不毛に陥った現代に生きることの疎外感、悲しみが全編がら、シンプルなスタイル、対象を凝視するカメラワークで、演じる女優たちの内面にも切り込んでいく。キャラクターを演じているうちに、仕草、声音に感情がこもり、自分自身をにじませる女優たちフィクションから真実が露わになる瞬間をピュアなかたちで抽出すること、それこそが本作品でガルシアが狙ったことだった。
 そのために彼はあえてフィルムを使わず、ソニーのハイデフィニション24Pのカメラを導入。美しく、リアルなデシタル映像に挑むことになった。キャラクターになりきり演じることを極めようとする女優たちと、その奥にある女性としての真実の声をつかみとろうとするガルシア。まことに刺激的な緊張関係が静かな画面に火花となって交錯し、それぞれの想いがうねりあい、やがて大きな感情の流れに結実する。フィクションとドキュメンタリーの境界にある真実をガルシアは軽々とすくいあげてみせている。
 ラテンアメリカ文学の巨星ガルシア=マルケスを父にもちながら、七光りを潔しとせず、スチールカメラマンから出発。『バードケージ』などで撮影オペレーター、『ボディ・ショッツ』の撮影監督を経て、映画づくりのすべてを身につけてから脚本、演出に進出したガルシアは、フリーダ・カー口の軌跡を描いた『フリーダ』のプロデュースと脚色が待機中、テレビシリースにも挑戦するなど活躍目覚しいが、この作品を完成させたことで自らの作家性にシヒアに向き合うことができたとコメントしている。
 こうしたガルシアの挑戦を受けてたった女優たちは演技派、個性派ばかり。『彼女を見ればわかること』で子離れを迎えたシングルマザーをみごとに演じきったキャシー・ベイカーに、ブロードウェイで活躍しテレビの『ハムレット』ではオフェーリア、映画では『ジャノキー・ブラウン』に出演したリサ・ゲイ・ハミルトン。オーストラリア出身で『ピッチブラック』のヒロインを演じたラダ・ミッチェル。『ラ・バンバ』のエリザベス・ぺーニャ。『ドメスティック・フィアー』のレベッカ・ティルニー。『クラッシュ』で鮮烈な印象を残したテボラ・アンガー、『セシル・B・ザ・シネマ・ウォース』のアリシア・ウィット。『花嫁のパパ』で初々しい魅力を発揮したキンバリー・
ウイリアムズ。『シーズ・ソーラヴリー』のテビ・マツァー、『誘う女』のスーザン・トレーラーまで、いずれもすばらしい輝きをみせている。
 撮影監督は、メキシコで数々の賞を手中に収め、日本では『ポワゾン』で知られるロドリゴ・プリエト。『フリーダ』でも彼が起用されるなど、ガルシアの信頼は絶大だ。美術は『バグダッド・カフェ』や『インフィニティ/無限の愛』のバーント・カプラ。プロデュースは『ガス・フード・ロジング』や『グレイス・オブ・マイ・ハート』のシド。カルシアが『フ月一・ルームス』のアリシア・アンダーソン編の撮影監督を担当して以来の盟友となっている。
 女性の心の叫びをひたすら映像に焼き続けるカルシアの、これは2002年を代表する作品である。

ストーリー


1:再会
「キスをすると、何かこう、匂いの記憶が頭によみがえってきて、それが奇妙なことに愛おしく感じるのよね」。友人たちと映画館で並んでいると、突然、昔のボーイフレンドから声をかけられた。懐かしさが蘇る。相手は、明朝、この町を出る前に電話したいといってきた。番号を教えるが、その晩、彼女は現在のボーイフレンドの家に泊まるつもりだった…。

2:初体験
「ケガをすると傷口が気になって、かさぶたを取ってわざと血を出そうとする。あれと同じで自分が傷つくのをみていたわけ」
彼の母が留守中に体験した初めてのセックスは、ときめきで始まった。痛さを越え、彼のイクときの顔に笑うが、ことが終わり彼の寝顔をながめていると、キスされたり身体を触られるのが嫌になる。なぜか亡き母のことを思い出す。

3:ブラインド・デート
「人生初のデートでもないのに他のことは考えられないの。情ないったらないわ!」
友人夫婦に紹介されたラテン男とのデート。期待で胸を膨らませて約束のデリに出向いた。待っていたのは、ダドリー・ムーアも顔負けのチビながら魅力溢れるハンサムだった。
いまひとつ、雰囲気が盛り上がらないまま食事を終えたのに、誘われるままに彼の自宅についていき、フェラチオの奉仕までしてしまう。だが、相手はひとかけらの歓びを与えることなく、カウチで寝るように命じる。

4:機上の男性
「本気で愛されたら肌で感じるものよ。心地よいハミングを聞いている気分よね。その相手と別れても思い出は残る…そんな風に愛されたい」
恋人の待つユカタンヘの飛行機で、ケーキ職人と隣り合わせた。外見はハゲ頭でシャツがはちきれそうな小太りながら、レディに対するマナーを持ち合わせていて“心から愛した女性は一生ににひとり”という彼に、すっかり魅了される。
翌日、恋人とプールサイトに寝そべりながら、ふと”私は彼にとって運命の女だろうか”と考え、別れても想い出が残るように愛されたいと願う。

5:旅の想い出
「仰向けになるのは最後まで拒んだわ。彼にすべてをゆだねたかったから」
女友達ノラと訪れたギリシャのレストランで、ハンサムなウェイターに目をつける。彼は背が高く、毛深くない。なにより白いシャツが良く似合う。レストランを出て散歩をしていると、先ほどのウェイターがもうひとりと煙草を吹かしていた。暗黙のうちに4人は2組のカップルに分かれ、背の高いウェイターに導かれるまま、畑の小屋に辿り着く。枕のないベッドであわただしい行為を終えると賑やかな街角に戻った。

6:恋人選びのルール
「傷つくのが怖くて、自分から身を引く方が賢いもの。相手が私を見なくなる前に。私なんて壁紙みたいな女だから」
恋人に選ぶのは、だらしなく、身の回りに気を使わない男ばかり。穴だらけのシャツを着ていても平気な男に、爪の手入れの仕方からアイロンのかけ方、ベッドでのマナーまで調教するのが定番だ。男が見違えるように変身したら、いつものように別れを告げる。傷付くのが怖くて、相手から見放される前に身を引く…。

7:最愛の人
「離婚も乗り越えるわ。でも立ち直れたとしても、元には戻れないものよ」
離婚した夫からの最後のプレゼントだった犬を、ガンで失った。哀しみを分け合うために電話をしたのは現在の恋人ではなく、別の家庭を作っている元の夫だった。犬を安らかに天国へ送った後、彼とホテルで慰めあった。大好きだった父を失った喪失感から元の夫が立ち直らせてくれたように、
現在の状況から恋人が救ってくれることを願うばかりだった。

8:人形遣い
「愛情表現の貧しい男が世の中、あふれているけれど、彼ならエリザベス女王も抱けるわ」
常に人形のことを気遣い、古い磁器製の顔を傷つけないように爪先にエナメルを塗る人形遣い。彼とデートしたとき、本能の赴くままにベッドをともにする。お互いに激しく求め合ったが、彼は“君は僕を捨てる”と予言。2週間後、そういわれたせいか、予言どおり次の恋をするために飛び立つことになった。

9:忘れられないこと
「結婚は例えていうなら、不毛の荒野。荒涼としていて2本か3本の植物が地面に生えているだけ」
従兄弟に紹介された12歳年上の男と4年間の結婚生活を送っていた。初めてのデートで、彼は涙もろい一面をさらし、同居していないけれど子供がいると打ち明けた。
それで数ヶ月後のプロポーズに応じ、処女を夫に捧げた。だが破局の兆しは突然で、アーティチョークの茄で加減というささいなことからいさかいが始まった。ガンで死んだ姉との関係や子供の問題ーー浮気に走って家を出るしがなかった。

10:愛の与えてくれるもの
「愛とは、他人を受け入れ安定することよ。安定こそ喜び。理想の相手なら手放しで愛すのに、大抵の人々は相手のアラを探してばかり」
夫の、事故による突然死から3年。結婚前に関係した男の数も少なくはないが、愛した男は夫だけ。いまも恋しく思うけれど、悲しみは乗り越えた。好きになるタイプはいつも同じ。背が低くヒゲの濃い、兄弟のように似ているハンサムな男たちと、3人で寝ている夢をよくみた。ボーイフレンドとは付き合う期間もたいてい2か月。自分の人生に踏み込まれないうちに退散していく。結局のところ何も望まない生き方を選ぶしかない。

スタッフ

監督・脚本:ロドリゴ・ガルシア
プロデューサー:ダン・ハッシド、ゲイリー・ウィニック、アレクシス・アレクサニアン
製作総指揮:ジョナサン・セリング、キャロライン・カプラン、ジョン・スロース
撮影監督:ロドリゴ・プリエト
美術:バーント・カプラ
編集:ルイス・カマラ
音楽:マーク・カロール
キャスティング:ビッキー・トーマス

キャスト

キャシー・ベイカー
キンバリー・ウイリアムズ
デボラ・アンガー
エリザベス・ぺ一ニャ
ラダ・ミッチェル
アリシア・ウィット
リサ・ゲイ・ハミルトン
レベッカ・ティルニー
スーザン・トレーラー
デビ・マツァー

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