クルセイダーズ

『グラディエー夕ー』の大ヒット＆アカデミー受賞で復活を果たしたスペクタクル・アドベンチャー。その流れは今年の大ヒット作『ロード・オブ・ザ・リング』へと連なり、今や最注目のヒット・ジャンルとなっている。そんな最高のタイミングで登場する最新超大作がこの『クルセイダーズ』だ。十字軍遠征の史実に基づき、その歴史の渦に身を投じた若者たちの苛烈な闘いを描く大河ロマン。そのドラマティックな盛り上がり、感動のラストに至る作品クオリティの高さは目をみはるものがある。そしてこのジャンルには欠かせない大スペクタクル・シーン。撮影には100人ものスタントマンや6000人以上のエキストラが参加するという大掛かりなものとなった。加え300頭以上の馬、見事な美術セット・衣装、最新ＣＧ映像まで投入。また『グラディェーター』のフランコ・サラマンがアクション監督を担当。クライマックスのエルサレム攻防戦のシーンなど、ハリウッド大作にもひけをとらないスケール感で観る者を圧倒する。この夏、最大級の注目を集める超大作がついに登場！

【クルセイダーズ＝十字軍とは……】
11世紀後半にイスラム世界を制覇したトルコ人はさらなる領地を求め、東ローマ帝国を侵略。野心家のローマ教皇ウルバヌス２世は、東西教会の統一と権力強化を目指し、イスラム教徒に対する聖戦、すなわち十字軍遠征を決議する。聖地エルサレムを目指した十字軍は合計７回。約200年もの間、ヨーロッパと中東の地を戦火で包んだ。

【チェック・ポイント！】

　コピーはなんだか『ハリポタ』『ＲＯＴＬ』で流行のファンタジー路線を意識している風だけど、11世紀から13世紀にかけて７回にわたって行われた西欧のイスラエル奪回のための対イスラム兵団“十字軍”の遠征中、1096年から99年にかけて行われキリスト教徒によるイェルサレム王国を建てた第一回遠征を舞台背景にしたのが本作。
　イスラムと欧州二つの血を受け継ぎそのアイデンティティに悩み傷つくピーター、ピーターの義兄弟として育ち、自らが為し得るものを求めるアンドルー、タラント公領アウカストロの領主の世継ぎとして生まれたが、父である領主を亡き者にした叔父の息子を殺害したためリチャード。故郷を追われた３人が、第１回十字軍遠征の旅に参加し、信仰と聖戦、理想と現実等様々な問題に直面しながら、成長しそれぞれの道へと進んで行く青春史劇といった趣か。
　兵士個々がガチンコで激しくぶつかりあうようなシーンは必ずしも多くはないのだが、それでも特に後半、城砦に取り囲まれたエルサレムでの攻防は、ロングで捉えたモブ・シーンなどがかなりの迫力で観る者に迫ってくるし、櫓で攻め入ろうとする十字軍と、ビザンチンに伝わるギリシア砲で応戦しようとするイスラムの戦いは、その小道具の面白さも注目。まぁ、ギリシャ砲（火炎放射砲）なんてほとんど実戦では役に立っていないのだけど、デモの場面でみせる火力と威容は強い印象を残すはず。
　主人公の３人に扮する役者は、ピーター役のアレッサンドロ・ガスマンのみ『ゴールデン・ボールズ』(93)他数本の日本公開作品があるくらいで、あまり馴染みのないキャスティングだが、ピーターの育ての親アレッシオを演じているアーミン・ミューラー＝スタール、イスラムの学者アズールを演じているフランコ・ネロといったベテランが、それぞれ前半・後半のキー・キャラクターとしてスパイスを利かせている。
　なお監督のドミニク・オッセン・ジラードは、日本のホラー・ファンには『ハロウィン５／ブギーマン逆襲』(89)、『オーメン４』(91)などシリーズ末期的続編作品の監督として知られていたが、本作では前後篇併せて3時間強を飽きさせずに見せてくれて別人のような仕事ぶり。完全版をじっくりと楽しむことをお勧めする。
（殿井君人）