小さな中国のお針子
原題:Balzac et la petite tailleuse chinoise
本を禁じられた日々、 恋するあの子に物語を語り聞かせたい 世界30ヶ国でベストセラーとなったほろ苦い恋の記録
2002年10月16日フランス初公開
2002年/フランス/中国語/110分/カラー/ドルビーSRD/ 提供:テレビ東京、ニューセレクト 配給:アルバトロスフィルム
2003年11月07日よりDVDレンタル開始 2003年11月07日よりビデオレンタル開始 2003年1月25日よりbunkamuraル・シネマにてロードショー公開
公開初日 2003/01/25
配給会社名 0012
解説
1971年、中国。文化大革命の嵐が吹き荒れる只中、山奥に送られた2人の青年ルオとマーは、村の美しいお針子に恋をした。時代は西洋文学を読むことを禁じていたが、青年たちは、こっそり彼女に物語を語り聞かせるのだった。やがて3人の間には愛と友情が芽生えるが、本は、お針子に、想像もしなかった未知の世界があることを教え、彼女はある決心をする…。
監督は89年に『中国、わがいたみ』で長編デビューし、その年の新人監督賞(ジャン・ヴィゴ賞)を受賞したダイ・シージェ。フランスを拠点に活動を続け、自身が書いた本作品の原作本がフランス国内で40万部を突破、世界30カ国で翻訳されるベストセラーとなった。ロケ地は壮大な美観で知られる湖南省・張家界。本が禁じられ、無数の芸術家や知識人が命を落とした暗い世相を背景としながらも、ユーモアをもって少年少女の恋と成長を爽やかに描いた本作品は、本年度カンヌ映画祭「ある視点」部門オープニング作品にも選ばれ大絶賛を浴びた。
しなやかな美しさに強さを秘めたお針子役には、『ふたりの人魚』の主演で本国ではチャン・ツィイーを凌ぐ人気の新鋭女優ジョウ・シュン。さらに『山の郵便配達』の息子役で好演したリィウ・イエ、チュン・コンなど、中国の若手人気俳優が顔をそろえる。
そして、幻想的に美しい湖南省・張家界の風景は、このほろ苦い恋愛物語を、忘れられない宝物に昇華させることだろう。
ストーリー
1971年、中国。文化大革命の嵐が吹き荒れる只中、医者を親に持つ17歳のマーと18歳のルオは、反革命分子の子として再教育のため山奥深くに送り込まれた。そこは、チベットとの国境沿い、鳳凰山という名が示す通り、手つかずの自然とけわしい山々がそびえる、忘れられた地域…。雲に至る石段を上がると、小さな村と湖がひっそりと姿を現わす。村人は素朴で、読み書きを知らず、村長によく従っていた。
二人の再教育生活が始まった。彼らを待っていたのは、屈辱的な仕事や、つらい畑仕事、そして未開の鉱山から素手で鉱石を抽出するなどの過酷な作業だった。
ある日二人は、年老いた仕立て屋と美しい孫娘のお針子に出会う。仕立て屋の持っているのは時代遅れのミシンだが、西洋文明からかけ離れたこの村ではモードを生み出す近代化の象徴だった。
ルオはたちまちお針子に恋をする。そして文盲のお針子に物語を語り聞かせてあげたいと思い立つ。
お針子は、ルオとマーに、やはり再教育で来ている若者が、外国小説を寝床の下のかばんいっぱいに隠していると伝える。この若者は、作家を父に、詩人を母に持ち、あだ名を“めがね”といった。
彼らはこのかばんを盗むことを決意する。そして、そこで見たものは、まさしく宝物と呼ぶべき本の数々だった。フロベール、ユーゴー、トルストイ、ディケンズ、ロマン・ロラン、デュマ、ルソー、そしてバルザック。これらすべての文学は高度に反動的とされ、禁止されていた。見つけたことは誰にも言えない。ルオとマーは、昼間は働き、夜になると誰にも見つからないように読書にふけった。同じ危険を冒す3人は結びつきをより深め、恋愛と友情の間で揺れ動いた。
毎晩、ルオとマーは村人たちに「ユルシュール・ミルエ」や「モンテ・クリスト伯」の冒険話からヒントを得た物語を聞かせていた。もちろん、革命を称える要素を巧みに盛り込みながら。村長は、偉大なる指導者毛沢東の功績をほめている限りはご機嫌だったのだ。仕立屋の老人が魅せられたのは、デュマが描いた人物の優雅な姿だった。仕立屋としての創作意欲が地中海のそよ風に刺激され、あたかも物語から抜け出したような洋服を作って村の娘たちを変身させてしまったほどだった。
ルオとマーは見つけた小説から知性の糧を得て、誘惑する方法も習得していった。お針子はお気に入りの作家、バルザックの小説を通して感情教育を受けていく。バルザックの小説は、女性の美についてとてもよく書かれているから好き、と彼女は言った。しだいにお針子は自由という意識に目覚めていく。まわりを気にせず、ルオとマーと行動をともにし、自由に生きることを始めた。さらに読み書きを学び、自由に考えることを始めた。また、ルオとマーが教えたこと以上に大きなことを夢想し、自由に夢を抱くことを始めた。そして彼女はルオと愛し合い、人を自由に愛することを知った。
その後、ルオは病気の父を見舞うため特別の許しを得て、2ヶ月間村を離れることになった。彼女が妊娠しているなどと夢にも思わずに。マーはお針子をひそかに愛していたが、ルオヘの友情のために気持ちをひた隠しにしていた。そのマーが、彼女のために病院へ行き、ロマン・ロランの小説一冊と引き換えに、医者に内密に手術をすることを引き受けさせる。ルオが村に戻ってきた時、お針子は村を出る決意をする。たったひとりの出発だった。バルザックが、彼女に新しい地平線を開き、四川省の山々の向こう側には、もっと自由な大地が拓けていると思わせたのだろうか。
27年後。
有名なヴァイオリニストとなったマーは、現在パリで生活している。ある日、あの村が三峡ダム建設のため、まもなく水に沈むというニュースを知る。再教育を受けた思い出の地に行こうと、中国に向かうマー。そこで、彼は懐かしい人たちとの再会を果たすのだった。次にマーは上海へ行き、現在では名医として知られるルオを訪ねる。青春時代の思い出を語りあう二人。数々の思い出、今は亡き人々のこと。仕立屋の老人はすでに亡くなっていた。あの村も揚子江の川底に沈んでいく。そして二人が恋したお針子がいまどこにいるのかを知る術もなかった…。
スタッフ
監督:ダイ・シージェ
脚本:ダイ・シージェ、ナディヌ・ベロン
原作:ダイ・シージェ
「バルザックと小さな中国のお針子」(早川書房刊)
プロデューサー:リズ・ファヨル
撮影:ジュン=マリー・ドルージュ
録音:ウー・ラーラー
美術:ツァオ・ジュービン
助監督:ジャオ・チュンリン
メイクアップ:ヤン・ダンダン
衣装:トン・ファミオ
編集:ジュリア・グレゴリー、リュック・バルニエ
音楽:ワン・ブージュン
製作総指揮:ベルナール・ロラン、ワン・ジャービン
キャスト
お針子:ジョウ・シュン
ルオ:チュン・コン
マー:リィウ・イエ
村長:ワン・シュアンパオ
仕立屋:ツォン・チーチュン
めがね:ワン・ホンウェイン
めがねの母:シャオ・ション
粉引きの老人:タン・ヅォフィ
村長の妻:チュン・ウェイン
自治体長:チュン・ティエンルー
医者:ファン・チンユン
村長の息子の妻:スー・ワー
ルオの妻:ヤン・ダンダン
LINK
□公式サイト□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す