2004年/日本/カラー/118分/ 配給:エデン

2005年/01月/01日よりビデオレンタル開始 2005年/01月/01日よりDVD発売開始 2004年7月17日、恵比寿ガーデンシネマ10周年記念作として公開

公開初日 2004/07/17

配給会社名 0113

解説


映画が娯楽の王様だった頃、日本中を熱狂させたヒーローがいた。
つぶれた右眼の上に走る大きな刀傷。純白の着物の下に女物の真っ赤な襦袢を身に付け、名刀“濡れ燕”を左腕で振り上げながら痛快な活躍を繰り広げる隻眼隻腕の怪剣士。
その名は“丹下左善”。

1927年に毎日新聞に連載された林不忘の時代劇小説「新版大岡政談・鈴川源十郎の巻」に登場し、大河内傳次郎、嵐寛寿郎、坂東奏三郎、月形龍之介、大友柳太郎、萬屋(中村)錦之助…、日本映画界を代表する大物映画スターたちが演じてきたこの日本映画最高のヒーローが、今スクリーンに蘇る!1966年製作の『丹下左膳・飛燕居合斬り』(東映・中村錦之助主演)以来38年ぶり、21世紀初の左膳を演じるのは映画・ドラマ・CMで幅広く活躍し、カリスマ的な人気を誇るトップスター、豊川悦司。かつてなくスタイリッシュでセクシー、そして史上最もスケールの大きな左膳の誕生である。

信じる者に裏切られ、片目、片腕を失って侍を捨てた男、丹下左膳。その窮地を救い、伴侶となったお藤、そして、彼らの前に現われたみなし児、ちょび安。修羅の道を生きてきた男と女がはじめて知った親の愛、子の愛。やがて起こる、大江戸八百八町を舞台にした柳生家の秘宝“こけ猿の壺”の争奪戦。奇妙な運命と愛情で結ばれた3人の家族もその騒動に巻き込まれ、可笑しくも哀しい人問模様に感動のクライマックスが訪れる…。

本作は、1929年から1966年まで、34本製作された左膳映画の中でも最もユニークで人気が高く、日本映画史上屈指の名作として国際的にも評価されている巨匠・山中貞雄監督作品『丹下左膳余話 百万両の壷』(1935)の正式かつ完全なるリメイクである。
いわゆるチャンバラ時代劇ではなく、人情味溢れたユーモラスな世話物時代劇であるオリジナル版の魅力を再現すると共に、ここではカラー作品であることを意識して美術や衣装の色彩に凝り、これまでの日本映画にはなかった鮮やかな色彩感覚で、まるで浮世絵のような江戸風景を35ミリ・フィルムによる奥行きのある映像で描いていく。
また、“時代劇の聖地”東映京都撮影所の全面バックアップを受け、時代劇のプロフェッショナルたちによる伝統の技術を最大限に取り人れて、日本映画黄金時代の活気をフィルムに焼き付けることに成功。さらに、今回新たにデザインされた三種類の左膳の衣装をはじめ、女優陣が次から次へと魅せる、最高級の若物の数々も大きな見所となっているほか、現存するオリジナル・フィルムには欠落しているチャンバラ・アクションを復活させるべく、迫力ある殺陣シーンが随所に登場(その場面の撮影中、幻となっていたチャンバラ・シーンの一部が発見されたというニュースが飛び込んできて現場が騒然となる一幕もあった)するなど、まさに全編が見せ場の連続である。

この映画で劇場川映画監督デビューを果たすのは、東映京都撮影所で撮影助手としてキャリアをスタートさせ、その後数々のCMやテレビ・映画の撮影を担当、「冷静と情熱のあいだ』では日本アカデミー賞優秀撮影賞を受賞した“映像の魔術師”津田豊滋。もちろん撮影監督も兼任し、初監督とは思えない見事な現場指揮力を発揮して計算されつくした映像&色彩センスを披露すると共に編集まで手掛けている。映像で物語を語る、映画のハートを知り尽くした本格派の大物新人である。
原作を大胆に脚色した三村伸太郎のオリジナル脚本の良さを活かしながら、丹下左膳を知らない世代にも理解できるように背景やキャラクターの説明を加え、オリジナルよりも“泣かせる”エンディングが用意された脚本はプロデューサーも兼ねる江戸木純が執筆。物語の中心となる鮮やかな矢場をはじめ、豪華なセットの数々をデザインした美術は『魔界転生』の松宮敏之、パワフルでエモーショナルなサウンドトラックは、平成『ガメラ』シリーズ、『精霊流し』の大谷幸が各々担当している。

出演は左膳役の豊川悦司の他、矢場を営むその強く、優しい伴侶、お藤に『虹の僑』バースデイプレゼント』の和久井映見、“こけ猿の壷”を探して江戸の町をさまよう司馬道場の婿養子、柳生源十郎に『学校の怪談』シリーズ、『花と蛇』の野村宏伸、その美しくも恐い新妻、萩乃に『アイデン&ティティ』『キャシャーン』の麻生久美子、左膳とお藤に育てられることになるみなし児ちょび安には300人の候補者の中からオーディションで選ばれた6歳の天才子役、武井証。その他、吉本興業の超人気夫婦漫才師、かつみ&さゆりが、回収屋夫婦役で映画初出演し、『天使の牙』『半落ち』の豊原功補がクライマックスに登場する最強の用心棒役でダイナミックなアクションを披露するのをはじめ、渡辺裕之、金田明夫、荒木しげる、坂本長利、堀内正美、渡辺篤史らのベテラン演技陣が的確な芝居でキッチリと脇を固め、『月の砂漠』『きょうのできごと』の柏原収史、『破線のマリス』、TV『プライド』の山下徹大、『王様の漢方』の中山一朗、『ピンポン』『ドラッグストア・ガール』の田中千絵、『死者の学園祭』の坂本三佳、モデル出身で本作が映画デビューとなる由樹といった若手演技派たちがフレッシュな魅力を発揮するなど、豪華キャストの競演にスクリーンから一瞬も目が離せない。

全編を彩る笑いと涙、江戸の人情に夫婦愛、華麗なる映像美と鮮烈なアクション、そして眩いばかりのスターのオーラ…、娯楽映画のすべての要素を盛り込み、世界に向けて贈る伝統と斬新を併せ持つ本物の時代劇。映画の黄金時代の輝きに満ちた、2004年日本映画界最高の話題作である。

ストーリー

時は享保、八代将軍、徳川吉宗の時代。刀剣マニアの主君の密命を受けた奥州中村藩士、丹下左膳は、江戸の名門道場が秘蔵する乾雲・坤竜の大小二刀を手に入れようと盗みに入るが逆襲を受け、さらに主君に裏切られて右目と右腕を失ってしまう。
それから数年後、左膳は侍を捨て、窮地を救ってくれたお藤の伴侶となり、彼女の営む矢場の用心棒として暮らしていた。

その頃、柳生の里では藩主、柳生対馬守が幕府から日光東照宮の改修奉行を任命され、途方にくれていた。泰行といえば聞こえはいいが、実情は藩の金で改修せよという命令で、財政に窮する柳生藩にはとても支えきれない重荷だった。そんな折、対馬守は柳生家に代々伝わる家宝“こけ猿の壺”に、莫大な隠し軍資金の在り処が塗りこまれていると知る。しかし、その壺は数日前に、江戸の司馬道場へ婿養子に入った弟、柳生源三郎の結婚祝いとして渡してしまった後だった。
対真繕守の側近、高大之進は源三郎から壷を取り戻す作戦を練るが、源三郎の新妻、萩乃は、見た目にはただの汚くみすぼらしい壺である“こけ猿の壷”を廃品回収屋に売ってしまい、壺は江戸の町に紛れてしまう。壷の秘密を知った源三郎は、その日から壺を探して使用人の与吉と共に江戸の町をさまよい歩くことになる。

五歳の少年、ちょび安は幼い頃に両親と死に別れ、屋台のそば屋を営む祖父の弥平と二人、とんがり長屋で暮らしていた。ある日、弥平に金魚を買ってもらったちょび安は大喜びするが、はしゃぎ過ぎて金魚の入っていたガラスの容器を割ってしまう。同じ長屋に住む回収屋夫婦茂三とハチは、それを見てそのI日回収してきた廃品の中にあったひときわ汚い壺を金魚鉢としてちょぴ安にあげるのだった。

その夜、お藤の矢場ではちょっとした騒ぎがあった。遊び人の七兵衛が、若い不良旗本、鈴川十郎と森山平蔵の二人に絡まれ、喧嘩となったのだ。その場は左膳が割って入り、旗本たちを追い返すが、彼らは七兵衛と左膳を待ち伏せし、弥平の屋台でそばを食べている二人に襲いかかった。左膳は七兵衛を守りながら十郎たちの剣をかわし、反撃に転じるが、弥平が巻き添えとなり、瀕死の重傷を負ってしまう。やがて弥平は、左膳にちょび安のことを頼むと言い残すと息を引き取った。

子供嫌いのお藤は子供の面倒を見るなどごめんだと左膳を責めるが、とんがり長展で腹をすかせながら弥平を待ち続ける健気なちょび安を見るや可哀相になり、家に連れて帰ってくる。最初は数日で真実を話し、どこかよそへやろうと考えていた二人だったが、やがて情がうつり、ちょび安を我が子のように可愛がるようになっていくのだった。

“こけ猿の壷”を探して江戸の町を歩き続けていた源三郎は、いつしか与吉と別行動を取るようになり、壺を探さずにお藤の矢場の常連客となっていた。彼は婿養子としての家での窮屈な生活から解き放たれ、町で思い切り羽根を伸ばすことを覚えてしまったのだった。
やがて、源十郎はちょぴ安がいつも抱えている壷が“こけ猿の壷”だと気付くが、矢場で働くお久と楽しげに遊んでいる姿を萩乃に目撃され、外出禁止令を出されてしまう。
一方、高大之進は司馬道場を首になった与吉を雇い、“こけ猿の壺”に似た壷を一両で買い取るという貼り紙を江戸の町中に貼り出させた。噂を聞いた町民たちは我先にとさまざまな壺を持って柳生家の下屋敷へと殺到し、江戸の町は大騒ぎとなる。

その頃、ちょぴ安は近所の両替屋、上州屋の息子とメンコをやって勝ったと、六十両もの価値のある大判を持って家に帰ってきた。驚いたお藤にすぐに返してくるようにと怒られたちょび安が大判を持ってとぼとぼと道を歩いているところに通り掛かった与吉は、ちょぴ安の手から大判を奪い取り、逃げ去ってしまう。その夜、上州屋が矢場に六十両を返せと押しかけてくる。左膳とお藤は明日の晩までには必ず返すとその場は逃れたものの、彼らに大金を作るあてなどなかった。左膳はちょび安を連れて賭場へ行くが、あっという間にお藤の若物を質に入れて作った元手をすってしまうのだった。

万策尽きたかに見えた左膳だが、最後の手段として道場破りを思いつくと近隣の道腸へ向かった。ある道場で左膳は次から次へと門弟を叩きのめし、「主を出せ!」と師範代に詰め寄る。やがて道場の主として出てきたのはなんと柳生源三郎だった。腕に自信の無い源三郎は、三膳に門弟の前で負けてくれれば金を払うともちかけ、左膳は見事に六十両を手にすると共に、源三郎からちょぴ安が持っている壺こそ“こけ猿の壷”であることを知らされる。
だが、佐膳が六十両を持って家に戻ってきたとき、ちょび安は壺を売るために柳生家の下屋敷へと向かっていた。家を飛ぴ出した左膳は、柳生家への長い行列の脇を走り抜け、壺を売り渡す寸前だったちょび安を抱きしめた。

矢場では壺を取り戻して上機嫌の源三郎が、左膳やお藤と談笑していた。そのとき、ふと源三郎はちょび安が腰にぶら下げていた小さなお守り袋に目を溜めた。それは、まさしく柳生家の紋章だった。やがて、ちょび安の驚くべき出生が明らかになる。しかし、その事実は左膳とお藤の2人にとって、ちょび安との別れを意味していた…。

スタッフ

原作:林不忘
監督・撮影・編集:津田豊滋
プロデューサー:江戸木純、川崎のり子
脚本:江戸木純
オリジナル版脚本:三村伸太郎

キャスト

豊川悦司
和久井映見
野村宏伸
麻生久美子
武井証
金田明夫
坂本長利
かつみ・さゆり
柏原収ニ
山下徹大
渡辺篤史
堀内正美
荒木しげる
豊原功補

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