深い深い海の底でも、消せない愛。

2001年6月8日スペイン初公開

2001年/スペイン/カラー/ビスタサイズ/100分/ドルビーデジタル 配給:ギャガコミュニケーションズ

2004年02月27日よりDVDリリース 2002年2月2日よりお正月第2弾よりシネ・リーブル池袋にてロードショー

公開初日 2002/02/02

配給会社名 0025

公開日メモ 「ハモン、ハモン」でペネロペ・クルスを見出したスペインの巨匠、ビガス・ルナ監督の今回のミューズは注目の新星レオノル・ワトリング。共演は「ブロウ」「パズル」など、幅広く活躍中のジョルディ・モリャ。ポエティックな作風と独特の美学に基づいたエロスで人気を博すビガス・ルナ監督の最新作。

解説



『マルティナは海』は愛の物語である。抑えきれない愛の犠牲者である男女の物語。ここで描かれるのは、死んでも引き裂くことのできない運命を背負った恋人たち。完壁な愛は、死を抜きにしては存在しない。

地中海沿岸の小さな町。カフェで働く美しい娘マルティナと、赴任してきたばかりの文学教師ウリセス。2人は激しい恋に落ちるが、ウリセスの突然の失踪により、愛の日々は突然の終わりを迎える。数年後、町の有力者と再婚し、平穏な生活を取り戻したマルティナの前に死んだはずのウリセスが現れ……。

海とオレンジ畑とウリセスが語る愛の詩を背景に、激情の愛が美しく官能的に描かれる。

監督は、愛と官能の巨匠、ビガス・ルナ。「愛と性欲は常に一緒に存在する二つの別々なもの。性欲を愛と切り離すことは不可能だ。どんな性行為でも、金を払って行うものでも常に僅かばかりの愛を含んでいる。確実にそこには愛がある。だからこそわれわれは、性行為について語るとき”メイクラブ”という表現を選ぶ。『マルチィナは海』で私はできる限りパワフルに、愛のロマンティックな視点を伝えたかった」と語るように、愛と性について独自の美学を持つビガス・ルナの本領が、本作では存分に発揮されている。自身が「官能的な海」と言う地中海に徹底的にこだわっているのも、その作風と無関係ではないだろう。『ハモンハモン』(92)『ゴールデン・ボールズ』(93)『おっばいとお月さま』(93)のイベリア半島三部作を、故郷カタロニア地方への思いで作り上げたとすれば、『マルティナは海』は地中海への思いで作り上げた作品。ルナは故郷のバルセロナをこのふたつの視点で愛しているのだ。嵐のような熱情に翻弄される運命の恋人たち、マルティナとウリセス。切り離すことのできない愛と性で結びつく二人を演じたのは、新星レオノル・ワトリングと、『ブロウ』(Ol)でハリウッドデビューも果たしたジョルディ・モリャ。大胆なラブシーンも多いこの作品に体当たりの熱演を見せている。二人の息はぴったりと合い、美しく激しく抑えようのない感情のほとばしりをスクリーンに刻み付けた。
75年生まれの新進女優で本作が日本初登場となるレオノル・ワトリングを、ビガス・ルナは、イタリアの名女優、シルヴァーナ・マンガーノの再来と大絶賛。映画の冒頭、まだあどけない少女のようだったマルティナが、恋を知り女へと成長するさまを実に自然に体現してみせたレオノルに、数々の女優を育てたビガス・ルナも感服したという。ペネロペ・クルスを見出したルナの言葉には説得力がある。均整の取れた美しい裸体を惜しげもなくさらし、激しくも美しいラブ・シーンを演じているのも、『ハモンハモン』のべネロペ・クルスを思い起こさせる。奇しくも、レオノルの次回作は、ペドロ・アルモドバル監督作品。やがてスペインを代表する女優になることは間違いない。
スペイン映画の新・黄金期を作り出したベテランプロデューサー、アンドレス・ヴィセンテ・ゴメスのもとに始まったこの作品には、ルナ作品を支える気心の知れたスタッフたちが集められた。アカデミー賞を受賞した『ベルエポック』(92)、そして最近の話題作『蝶の舌』(99)の脚本家でもあるラファエル・アスコナ。美術監督のピエール・ルイ・テヴネは『パットン大戦車軍団』で1970年度第43回アカデミー賞美術監督賞を受賞。原作者マヌエル・ビセントの96年映画化作品も手がけている。撮影監督のホセ・ルイス・アルカイネはルナ組の常連。ルナのイベリア半島三部作を手がけ、彼好みの構図や色彩、光を心得ている撮影監督だ。音響のリカルド・カサルスそしてエルネスト・ブラシ。ブラシはルナと『欲望の裏側』(85)で組んでいる。サントラを担当したのはイギリスのコンテンポラリー・ミュージックのグループ、ピアノ・マジックである。

ストーリー



地中海に面した小さな港町。オレンジの林に囲まれた鄙びた町の高校に文学の教師が赴任してくる。
彼の名はウリセス(ジョルディ・モリャ)。ギリシャ神話ならばオデュッセウスと読む名を持つこの新任教師は、教室で「オデュッセイア」を講じ、「アイネイス」を愛読する。
そんな彼の前に現れたのは町のカフェの娘、マルティナ(レオノル・ワトリング)だった。魅惑的な肉体を持つ美しいマルティナには、町の若き有力者シエラ(エドゥアルド・フェルナンデス)も言い寄っている。しかしマルティナは、いつも彼の誘いをすげなくはねのけていた。
カフェの2階に下宿することになったウリセスはマルティナと親しくなってゆく。
外の世界に憧れ、4年前にこの町で撮影された映画に出た俳優とのささやかな触れ合いを宝物のように心に秘めているロマンチストのマルティナ。彼女にとってウリセスは、この町の男たち、金持ちのシエラですら与えてくれないものを持つ男。詩を語り、文学を読み、女を女神のように讃え、敬う男。さびれた港の船着場に繋がれたヨットで、マルティナの世界の全てであった小さな町を見下ろす丘の頂きで、二人は心を通わせ合う。
望む物なら何でも与えてやるのに、なぜあの男を選ぶのかと迫るシエラにマルティナは言う。「彼は物語を話せるわ」
洞窟の奥にひっそりと静かな水をたたえる湖。ウリセスはマルティナに詩の一節をささやく。
「静かな海の底から2匹の蛇が現れる。巨大なとぐろを巻いて、波の上へ。1匹が私の周りで2度渦を巻いて襲いかかる。そして二重に巻きつき体を強く締めつける…」
詩の調べに酔うかのように、二人の体は重なり合う。波のように押し寄せる官能の悦びに我を忘れるマルティナ。乳房をそっと手のひらで包み、ウリセスはつぶやく。
「君の胸は海のようだ……」
二人の逢瀬はくりかえされ、そしてマルティナに新しい生命が宿る。
結婚し、アベルと名づけた息子と3人の生活。しかし平穏な日々の中で徐々に小さなひび割れが生まれていた。マルティナを独占したいウリセス。ウリセスの愛を疑うマルティナ。二人の間に白々とした雰囲気が漂いはじめる。
そしてついにある日、ウリセスは舟で釣りに出たまま帰ってこなかった。
それから数年。シエラと再婚したマルティナはすっかり富豪の妻の生活に馴染んでいる。プールが二つある邸宅。ドレスに宝石、車にエステ。アベルはシエラを父と信じて大きくなった。シエラの事業は上手くいき、マルティナは自由を楽しむ余裕もある。しかしシエラとのセックスはウリセスとのそれのようにマルティナを官能の渦で翻弄することはない。
シエラに抱かれるたび、マルティナの脳裏にウリセスの声がよみがえるのだった。
そんなある日、1本の電話がマルティナの平穏な、しかし空虚な日々を打ち破る。
「世界中の海を旅して気がついた。僕は君なしでは生きられない」
忘れもしないウリセスの声。
再会した二人に愛と官能がよみがえる。シエラにウリセスの帰還を気づかせぬため、マルティナはウリセスを海岸にそびえ建つマンションの一室に閉じこめる。マルティナだけのウリセスにするために。二度とマルティナを捨てて遠くに行ってしまわぬように。二人の愛の時間に邪魔が入らぬように。
俗世から隔離されたような建物の最上階、ブラインドを下ろした薄暗い部屋の中で失われた時間を埋めるかのように、体の中に海の記憶を探しながら、愛し合う二人。しかし、波が引いた後、シエラのもとへ帰るマルティナが部屋の鍵を閉める音を聞きながらウリセスは思う。明日も彼女は来るのだろうか……。自分はいつまでここにいるのだろうか、二人は昔に戻れるのだろうか。オレンジの匂い、海の匂い。マルティナの体は屋外の匂いをウリセスに運び、ウリセスの香りをシエラに運ぶ。どんなに洗い流しても落ちない愛の残り香に、シエラの嫉妬心はかきたてられていた。そして……。

スタッフ

製作:アンドレス・ヴィセンテ・ゴメス
監督:ビガス・ルナ
プロダクション・ディレクター:ルイス・グティエレス
撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ
美術監督:ピエール・ルイ・テヴネ
キャスティング:コンソル・トゥラ
衣装:マカレナ・ソト
メイク:マリロ・オスナ
ヘア・スタイル:マイテ・メンディビル
音響:アルベルト・マネラ
編集:エルネスト`ブラシ
SFX:レイエス・アバデス
宣伝:ピラール・モリジョ

キャスト

マルティナ:レオノル・ワトリング
ウリセス:ジョルディ・モリャ
シエラ:エドゥアルド・フェルナンデス
ハビエル:セルヒオ・カバジェロ
ロゼタ:ネウス・アグジョ
バシリオ:ペップ・コルテス
校長:フアン・ムニョス
アベル:リッキー・コロメル
ホルヒト:パブロ・リベロ
赤いドレスの女:カルラ・コジャド

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